不動産投資コラム

高額特定資産を取得した場合の消費税の納税義務の免除の特例

1. 課税売上割合が著しく変動した場合の調整

課税事業者が調整対象固定資産(棚卸資産以外の建物等の一定の資産で、一の取引単位の価額が100万円以上(税抜)のものをいいます)を取得し、課税仕入れ等に係る消費税額(以下「仕入税額控除額」)について、課税売上割合(総売上高に占める消費税が課税される売上の割合)を乗じて計算している場合(消費税額の全額を仕入税額控除額として計算した場合を含む)において、その計算に用いた課税売上割合が、その取得した日の属する課税期間以後3年間の通算課税売上割合(仕入等の課税期間開始の日から3年を経過する日の属する課税期間まで)と比して著しく増加又は減少したときは、第3年度の課税期間(仕入等の課税期間(以下「仕入課税期間」という)開始の日から3年を経過する日の属する課税期間)の仕入税額控除額に次の「①と②の差額」を加算し又は控除することとなります。

なお、この規定は第3年度の課税期間末日において調整対象固定資産を保有していない場合には、適用されません(消費税法(以下、「法」)33条)。

① 調整対象固定資産の仕入れに係る消費税額×仕入課税期間の課税売上割合
② ①に係る消費税額×通算課税売上割合

例えば、調整対象固定資産に係る仕入課税期間の課税売上割合が100%であり、その調整対象固定資産の仕入税額控除額を控除した場合において、第3年度の課税期間に係る通算課税売上割合がほぼ0であるときは、控除を受けた調整対象固定資産の仕入税額控除額のほぼ全てを第3年度の課税期間の仕入れに係る消費税額から控除することなり、控除しきれない金額は、納付すべき消費税額に加算されます。

この規定は、第3年度の課税期間において事業者免税点制度や簡易課税制度の適用を受けている場合には、適用がなく、原則課税の場合にのみ適用があります。

これを利用して、新築の賃貸マンションやアパートが完成する課税期間に自動販売機を設置することにより、課税売上割合を100%とし、マンション等の建築に要した仕入税額控除額の還付を受けたうえで、通算課税売上割合がほぼ0となり本来であれば当該還付金相当額を納付することとなる第3年度の課税期間に事業者免税点制度や簡易課税制度の適用を受ける事により、本来納付すべき消費税額を免れる対策が散見された為、後述2以下の規定が設けられています。

2. 平成22年度改正

あえて課税事業者を選択し、課税事業者が強制・・・・・・・・される(課税事業者になってから)2年間の期間内に調整対象固定資産を購入した場合には、3年間は事業者免税点制度および簡易課税制度を適用せず原則課税が強制され(法9⑦)、前述1の規定が適用されます。

しかし、課税事業者を選択した後、課税事業者が強制される2年間の期間が終わるまで、例えば法人を休眠状態とし、その後にマンション等を取得した事業者は、その取得した課税期間の翌課税期間から事業者免税点制度・簡易課税制度の適用を受ける事ができたため、平成28年度税制改正で3の制度が創設されました。

3. 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度および簡易課税制度の特例(平成28年度改正)

事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けていない課税期間において、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には、以下の規定が設けられています。

①高額特定資産の仕入課税期間の翌課税期間からその高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において、事業者免税点制度の適用を受けることはできません(法12の4)。

②高額特定資産の仕入課税期間の初日から、同日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間において、簡易課税制度選択届出書を提出する事ができません(法37③三)

(注)高額特定資産とは、一の取引の単位につき、消費税が課税される仕入れに係る支払対価の額(税抜)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます(法施行令25の5①)。

上記規定により、あえて課税事業者となってから2年間の課税事業者が強制される期間後にマンション等を取得した場合であっても、取得してから3年間は、前述1の調整規定の適用が強制されます。

ただし、高額特定資産を取得する課税期間の前の課税期間において、既に簡易課税制度選択届出書を提出している事業者については、高額特定資産を取得した課税期間後の課税期間においても簡易課税制度の適用に制限はないため、基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間を除き、高額特定資産を取得した課税期間の翌課税期間においても簡易課税制度を利用できます。

税理士法人タクトコンサルティング

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