不動産投資コラム

個人事業者に相続があった場合の消費税の納税義務の判定

1.消費税の納税義務の判定(原則)

個人事業者のうち、その年に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、その年中に国内において行った課税資産の譲渡等について、原則、消費税の納税義務が免除されます(消法9)。

ただし、相続があった場合の納税義務の免除については、別途特例規定が設けられています(消法10)。

2.相続があった年の納税義務の判定

(1)相続があった場合の納税義務の免除の特例
その年に相続があった場合において、その年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人が、その基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したときは、その相続人の相続のあった日の翌日からその年の12/31までの間における課税資産の譲渡等については、上記1にかかわらず消費税の納税義務が免除されません(消法10①)。

ここで、「その年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人」には、相続のあった日において現に事業を行っている相続人はもちろん、事業を行っていない・・・相続人も含まれる(消基1-5-1)ので注意を要します。

(2)相続があった年の12/31までに未分割の場合
上記(1)の場合において、相続人が2人以上いるときは、相続財産の分割が実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定しないことから、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱うものとされています。

この場合において、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、その被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の民法第900条(法定相続分)等に規定する相続分に応じた割合を乗じた金額によるものとされています(消基1-5-5)。

例えば、被相続人の基準期間における課税売上高が2,400万円、相続人は配偶者と子2人であった場合、納税義務の判定に用いる被相続人の基準期間における課税売上高は、配偶者については2,400万円×法定相続分1/2=1,200万円、子2人については各2,400万円×法定相続分1/4=600万円となります。

(3)相続があった年の12/31までに分割された場合
相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について、法令通達では明確な定めがありません。

ただし、平成27年3月24日大阪国税局文書回答事例では、納税義務の判定は、年の中途に分割された場合であっても、事業者が判定時点での適正な事実関係に基づき消費税関係法令等の規定に従って納税義務が判定されたものである場合には、上記2(2)と同様に、被相続人の基準期間における課税売上高に各相続人の法定相続分の割合を乗じた金額により、納税義務の判定をすることで差し支えないとされています。

同文書回答の中で照会者は、「①消費税は事業者が販売する商品等の価格に含まれて転嫁していくものであること、②課税事業者となる場合には消費税法に規定する帳簿の記載に対する事前準備や簡易課税制度等の選択のためその課税期間の開始の日の前日までに届出書を提出する必要があることなどから、課税事業者に該当するかどうか事業者自らが事前に予知しておく必要があるとされていること、③相続財産が未分割の場合における納税義務の判定方法が消基1-5-5に示されていることなどから、上記判定が認められるものと解するのが相当であると考えるため。」としており、大阪国税局もその見解を認めています。

なお、平成24年9月18日東京国税局文書回答事例においても同様の照会者の見解が認められています。

3.遺産分割があった年の翌年の納税義務の判定

相続により2以上の事業場を有する被相続人の事業を複数の相続人が事業場ごとに分割して承継した場合の被相続人の基準期間における課税売上高は、被相続人の基準期間における課税売上高のうち、相続人が相続した事業場に係る部分の金額とするものとされています。

例えば、被相続人の基準期間における課税売上高が2,000万円(うち店舗1,500万円、駐車場500万円)である場合のその課税売上高は、店舗を相続した甲については1,500万円、駐車場を相続した乙については500万円となります。

税理士法人タクトコンサルティング

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