1.はじめに
2023年10月1日から消費税の納付税額の計算において適格請求書等保存方式が導入されます(2023年10月1日施行の消費税法30等)。今年10月1日からの消費税(+地方消費税)の税率の引上げ&軽減税率制度への対応とともに、それに合わせて適格請求書等保存方式への対応も考えておくべきと思われます。
2.適格請求書等保存方式が導入される意味
消費税では、課税対象の売上げに係る消費税(いわゆる預り消費税)から、課税対象の財貨やサービスの仕入れに係る消費税を控除(この控除を仕入税額控除といいます。)して納付すべき消費税額が計算されます。
適格請求書等保存方式の下では、仕入税額控除を行うための要件として、現在でも必要な一定の事項が記載された「帳簿」の保存に加え、原則として「適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書」の保存が求められます。
適格請求書ではない請求書では、その請求書に係るモノやサービスを購入する取引で、本体価格に消費税分が上乗せされた請求額を支払っていたとしても、その消費税分を売上げに係る消費税額から控除することはできません(同法30①、⑦等)。その結果、消費税の納税額は仕入税額控除が適用される場合に比べてその分多くなります。適格請求書の「適格」とは、仕入税額控除における適格(性)を意味すると理解できます。
適格請求書は、課税事業者(モノやサービスの仕入れ先)が税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、適格請求書発行事業者 として登録を受けている場合に、取引相手から求められたときに発行することができる、次に掲げる事柄を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類です。
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
二 課税資産の譲渡等を行った年月日
三 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(その課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
四 課税資産の譲渡等に係る税抜価額
五 消費税額等
上記の登録を受けていない事業者が発行する請求書はそもそも適格請求書に当たりません。
上記の登録を受けていない事業者からどれだけモノやサービスを買っても、そしてどんな請求書等をもらっても、その取引は仕入税額控除の対象となりません。
逆に、あなたやあなたの会社がその登録を受けていないと、あなたやあなたの会社からモノやサービスを買ってくれたお客様は、その買ったものに係る消費税を自分の消費税の計算上控除することができません。
3.適格請求書発行事業者の登録
2で述べた適格請求書発行事業者の登録を受けることができるのは、課税事業者だけです(同法 57 の2①)。つまり、免税事業者のまま登録を受けることはできません。このことは、免税事業者からの仕入れについては、その請求書などを受領・保存していても仕入税額控除ができないということです。
免税事業者が上記の登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書を提出し、まず課税事業者となっておく必要があります。
適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者は、納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出する必要があります(同法 57の2②)。 なお、登録申請書は、適格請求書等保存方式の導入の2年前である2021年10月1日から提出することができます(同法附則1八、44①)。
その登録申請書の提出を受けた税務署長は、登録拒否要件に該当しない場合には、適格請求書発行事業者登録簿に法定事項を登載して登録を行い、登録を受けた事業者に対して、その旨を書面で通知することが原則です(同法 57 の2③④⑤⑦)が、登録申請書は、e-Tax を利用して提出することもでき、その場合の上記通知は e-Tax を通じて行われます。
4.2023年10月1日からの経過措置
下記の一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています(同法附則52、53)。経過措置の内容は次のとおりです。