不動産投資コラム

~税制改正大綱に盛り込まれた相続税・贈与税・個人所得課税等の主な項目は次のとおり~

【相続税・贈与税】《「平成31年度税制改正大綱」P41~45、P47~48》

改 正 案


1.個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設等


(1)個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設


①認定相続人が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、相続又は遺贈(以下「相続等」)により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が猶予される。


(注1)「認定相続人」とは、承継計画に記載された後継者であって、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の規定による認定を受けた者をいう。


(注2)「特定事業用資産」とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く。以下同じ。)の用に供されていた土地(面積400m2までの部分に限る。)、建物(床面積800m2までの部分に限る。)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税若しくは軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る。)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものをいう。


(注3)「承継計画」とは、認定支援機関の指導・助言を受けて作成された特定事業用資産の承継前後の経営見通し等が記載された計画で、平成31年4月1日から平成36年3月31日までに都道府県に提出されたものをいう。


(注4)被相続人は相続開始前に、認定相続人は相続開始後に、それぞれ青色申告の承認を受けている必要がある。


(注5)この納税猶予の適用を受ける場合には、特定事業用宅地等について小規模宅地等に係る相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができない。


②猶予税額の計算方法は、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例と同様となる。ただし、被相続人に債務がある場合には、特定事業用資産の価額からその債務の額(明らかに事業用でない債務の額を除く。)を控除した額が猶予税額の計算の基礎とされる。


③認定相続人が、その死亡の時まで、特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合等には、猶予税額の全額が免除される。同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合等には、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例に準じて、猶予税額の-部が免除される。


④認定相続人が特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には、猶予税額の全額を納付し、特定事業用資産の譲渡等をした場合には、その譲渡等をした部分に対応する猶予税額を納付する(別途利子税も納付する)。


⑤認定相続人は、相続税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければならない。


(2)個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度の創設


①認定受贈者(18 歳(平成 34年3月31日までの贈与については、20 歳)以上である者に限る。以下同じ。)が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その認定受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税が猶予される。


②認定受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人以外の者であっても、その贈与者がその年1月1日において 60 歳以上である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができる。


③猶予税額の納付、免除等については、相続税の納税猶予制度と同様とされる。


④贈与者の死亡時には、特定事業用資産(既に納付した猶予税額に対応する部分を除く。)をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税が計算される。その際に、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることができる。


(注)上記(1)及び(2)の改正は、平成31年1月1日以後に相続等又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される。


2.特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し


小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く。)が除外される。


(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用される。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用されない。


3.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(一般措置・特例措置共通)

一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合も、その該当した日から6ヶ月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとされる。


【相続税・贈与税】《「平成31年度税制改正大綱」P57~58》

改 正 案


4.民法の改正に伴う措置


(1)配偶者居住権の評価額(①)=建物の時価-建物の時価×(残存耐用年数-存続年数)÷残存耐用年数×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率


(2)配偶者居住権が設定された建物(以下「居住建物」)の所有権の評価額=建物の時価-①


(3)居住建物の敷地の利用に関する権利の評価額(②)=土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率


(4)居住建物の敷地の所有権等の評価額:土地等の時価-②


(注1)「建物の時価」及び「土地等の時価」は、配偶者居住権が設定されていない場合の建物の時価又は土地等の時価。


(注2)「残存耐用年数」は、居住建物の所得税法に基づいて定められている耐用年数(住宅用)に1.5を乗じて計算した年数から居住建物の築後経過年数を控除した年数。


(注3)「存続年数」は、①配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合は配偶者の平均余命年数、②①以外の場合は遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続期間の年数(配偶者の平均余命年数を上限)


(5)特別寄与者(無償で被相続人の療養看護等を行った、相続人以外の被相続人の親族をいう。)が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合は、その特別寄与者がその特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税される。


(6)上記(5)の事由が生じたため新たに相続税の申告義務が生じた者は、その事由が生じたことを知った日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出しなければならない。


(7)相続人が支払うべき特別寄与料の額は、その相続人に係る相続税の課税価格から控除される(更正の請求が可能)。


【個人所得課税(所得税等)】《「平成31年度税制改正大綱」P18~19、P21、P26~27、P40》

改 正 案


1.住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例(東日本大震災の被災者等に係る制度は別途)の創設


個人が、住宅の取得等(適用される消費税等の税率が10%である場合の住宅の取得等に限る。)をして平成31年10月1日から平成32年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合、適用年の11年目から13年目までの各年の住宅借入金等特別税額控除額について、次の(1)又は(2)のいずれか少ない金額を控除できる特例が創設される。


(1)住宅借入金等の年末残高(4,000万円*を限度)×1%


(2)〔住宅の取得等の対価の額又は費用の額-その住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等〕(4,000万円*を限度)×2%÷3
*認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合は、5,000万円


(注1)「住宅の取得等」とは、居住用家屋の新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは既存住宅の取得又はその者の居住の用に供する家屋の増改築等をいう。


(注2)「住宅の取得等の対価の額又は費用の額」は、その住宅の取得等をした居住用家屋等のうちにその者の居住の用以外の用に供する部分がある場合は、その居住用家屋等の床面積のうちにその居住の用に供する部分の床面積の占める割合を乗じて計算した金額となる。また、その住宅の取得等に関し、補助金等の交付を受ける場合又は直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等の適用を受ける場合であっても、その補助金等の額又はその適用を受けた住宅取得等資金の額は控除しない。


(注3)その他の要件及び控除額等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様とする。


2.空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の見直し


老人ホーム等に入所をしたことにより、被相続人の居住の用に供されなくなった家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等は、次に掲げる要件その他-定の要件を満たす場合に限り、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用し、他の整備を行った上、その適用期限が4年延長される。


(1)被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、相続開始の直前まで老人ホーム等に入所していたこと


(2)被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による-定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用される。


3.非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)の拡充


非課税口座を開設している居住者等が一時的な出国により居住者等に該当しないこととなる場合において、その居住者等がその出国の日の前日までにその非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所長に、継続適用届出書の提出をしたときは、その出国の時から、その者がその金融商品取引業者等の営業所長に、①帰国届出書の提出をする日と、②その継続適用届出書の提出をした日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日とのいずれか早い日までの間は、その者が居住者等に該当する者とみなされて、本措置が引き続き適用される。


4.都道府県・市区町村(以下「都道府県等」)に寄附をした場合の個人住民税の寄付金税額控除の見直し


総務大臣は、①寄附金の募集を適正に実施すること、②返礼品は地場産品とし、その返礼割合を3割以下とすること等の要件を満たす都道府県等を、都道府県等の申し出に基づき、ふるさと納税(特例控除)の対象として指定する。


(注)上記の改正は、平成 31年6月1日以後に支出された寄附金について適用される。

税理士法人タクトコンサルティング

創業以来、一貫して資産の移転・承継・活用に係る税務=資産税の分野を専門とし、決断と実行を提供しているコンサルティング会社。
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