目次
【相続税・贈与税】《「平成30年度税制改正大綱」P45~48》
改 正 案
1.非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例の創設(P45~48)
(1)特例後継者(注1)が、特例認定承継会社(注2)の代表権を有していた者から、贈与又は相続もしくは遺贈(以下1において「贈与等」)によりその特例認定承継会社の非上場株式を取得した場合は、その取得した全て(現行の納税猶予の場合は、総議決権株式の3分の2が上限)の非上場株式に係る贈与税又は相続税の全額(現行の相続税の納税猶予の場合は、80%相当額)について、その特例後継者の死亡の日等までその納税を猶予する。
(注1)特例後継者:次の要件を全て満たす個人をいう(後継者が2名又は3名以上の場合の要件は割愛)。
① 特例認定承継会社の特例承継計画(注3)に記載された、その特例認定承継会社の代表権を有する後継者であること。
② ①の後継者は、同族関係者と合わせてその特例認定承継会社の総議決権数の過半数を有する者であること。
③ ②の同族関係者のうち、その特例認定承継会社の議決権を最も多く有する者であること。
(注2)特例認定承継会社:平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に特例承継計画を都道府県に提出した会社で、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」第12条第1項の認定を受けたもの(以下「対象会社」という)。
(注3)特例承継計画:認定経営革新等支援機関(注4)の指導及び助言を受けた対象会社が作成した計画であって、その対象会社の後継者、承継時までの経営見通し等が記載されたもの。
(注4)認定経営革新等支援機関:税務、金融及び企業の財務に関する専門的知識を有し、経営革新計画の策定等の業務について一定の経験年数を持つ者として国が認定した法人・個人・機関等(例:金融機関、税理士、商工会議所など)。
(2)特例後継者が、対象会社の代表者以外の者から贈与等により取得する対象会社の非上場株式についても、特例承継期間(5年)内にその贈与等に係る申告書の提出期限が到来するものに限り、本特例の対象とする。
(3)現行の事業承継税制における雇用確保要件を満たさない場合であっても、次の要件を満たす場合には納税猶予の打ち切り(納税を求められること)にならない。
①雇用確保要件を満たせない理由を記載した書類(認定経営革新等支援機関の意見が記載されているものに限る)を都道府県に提出すること。
②雇用確保要件を満たせない理由が、経営状況の悪化である場合又は正当なものと認められない場合は、対象会社は認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受けて、その書類にその内容を記載すること。
(4)経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合(注)において、特例承継期間経過後に、①対象会社の非上場株式の譲渡をするとき、②対象会社が合併により消滅するとき、③対象会社が解散をするとき等には、原則として次のイとロの合計額(ただし当初の納税猶予税額を上限)を納付することとし、イとロの合計額が当初の納税猶予税額に達しないときには、その差額を免除する(さらに①と②には特例があるが割愛)。
イ.[1]対象会社の非上場株式の譲渡又は合併の場合:その対価の額([譲渡等の時の株式の相続税評価額×50%]を下限)
[2]対象会社の解散の場合:その解散の時のその株式の相続税評価額
を基に、再計算した贈与税又は相続税額等
ロ.譲渡等の前5年間に、特例後継者及びその同族関係者に対して支払われた配当及び過大役員給与等
(注)上記の「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」とは、原則として次のいずれか(対象会社が解散をした場合はeを除く。)に該当する場合をいう。
a.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、対象会社が赤字である場合
b.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、対象会社の売上高が、その年の前年の売上高に比べて減少している場合
c.直前の事業年度終了の日における対象会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6月分に相当する額以上である場合
d.対象会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価(直前の事業年度終了の日以前1年間の平均)が、その前年1年間の平均より下落している場合
e.特例後継者が対象会社における経営を継続しない特段の理由がある場合
(5)特例後継者が贈与者の推定相続人以外の者(その年1月1日において20歳以上である者に限る。)であり、かつ、その贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、相続時精算課税の適用を受けることができることとする。
(6)その他の要件等は、現行の事業承継税制と同様とする。
(7)現行の事業承継税制についても、上記(2)と同様に複数の者からの贈与等を対象とする。
(注)上記の改正は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用される。
【相続税・贈与税】《「平成30年度税制改正大綱」P48~49、55~56》
改 正 案
2.一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し(P48~49)
(1)特定一般社団法人等(注1)に対する相続税の課税
① 特定一般社団法人等の理事である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において、その理事であった者を含む。)が死亡した場合には、その純資産額をその死亡の時における同族役員(注2)の数で除して計算した金額に相当する金額を、その特定一般社団法人等が、その被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その特定一般社団法人等に相続税を課税する。
② ①により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について、相続税法66条4項により既にその特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額を控除する。
③ その他所要の措置を講じられる。
(注1)特定一般社団法人等:次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人又は一般財団法人(公益認定を受けたもの、非営利型法人その他一定の法人を除く。以下「特定社団等」という)。
イ.相続開始の直前において、総役員数に占める同族役員(注2)数の割合が1/2を超えること。
ロ.相続開始前5年以内において、総役員数に占める同族役員数の割合が1/2を超える期間の合計が3年以上であること。
(注2)同族役員:特定社団等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族、その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)。
(注3)上記の改正は、平成30年4月1日以後の特定社団等の役員の死亡に係る相続税について適用する。ただし、同日前に設立された特定社団等については、平成33年4月1日以後のその特定社団等の役員の死亡に係る相続税について適用し、平成30年3月31日以前の期間は(注1)ロの「1/2を超える期間」に該当しないものとする。
(2)一般社団法人等に対して贈与等があった場合の贈与税等の課税の見直し
個人から一般社団法人又は一般財団法人(公益認定を受けたもの、非営利型法人その他一定の法人を除く)に対して財産の贈与等があった場合の贈与税等の課税については、贈与税等の負担が不当に減少する結果とならないものとされる現行の要件(役員等に占める親族等の割合が1/3以下である旨の定款の定めがあること等)のうち、いずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されることとし、規定を明確化する。
(注)上記の改正は、平成30年4月1日以後に贈与又は遺贈により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用する。
3.小規模宅地等に係る相続税の課税価格の計算の特例の見直し(P55~56)
(1)特定居住用宅地等の特例の対象者となる、持ち家に居住していない者 (いわゆる「家なき子」)から、次に掲げる者を除外する。
① 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
② 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
(2)貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等(相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている者が、その貸付事業の用に供しているものを除く)を除外する。
(注)上記の改正は、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。
ただし、上記(2)の改正は、同日前から貸付事業の用に供されている宅地等については適用しない。
【個人所得課税(所得税等)】《「平成30年度税制改正大綱」P17~20、23》
改 正 案
1.給与所得控除額を一律10万円引き下げ、さらに給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
2.公的年金等控除額を一律10万円引き下げ、さらに公的年金等収入が1,000万円を超える場合は、控除額に上限(一律 10万円の引下げ分を含めた上限額は195.5万円)を設ける。また公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円を超える場合は控除額を10万円引き下げ、2,000万円を超える場合は控除額を20万円引き下げる。
3.上記1と2の一方で、基礎控除額を10万円引き上げて48万円とする。ただし合計所得金額2,400万円超から基礎控除額は32万円、16万円と下がり、2,500万円超で適用なし(0円)とする。
(注)上記の改正は、平成32年分以後の所得税及び33年度分以後の個人住民税について適用する。
【法人税(組織再編税制)】《平成30年度税制改正大綱」P75》
改 正 案
1.当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転することが見込まれている場合にも、当初の組織再編成の適格要件のうち従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととする。
2.いわゆる無対価組織再編成について、適格組織再編成となる類型の見直しが行われるとともに、非適格組織再編成となる場合における処理の方法が明確化する。