不動産投資コラム

家賃収入を得て生活はできるのか?仕組みやメリット・デメリットを解説

家賃収入を得て生活はできるのか?仕組みやメリット・デメリットを解説

不安定な情勢が続いている日本ですが、だからこそ、副業や投資でお金を稼ぎたいと思っている人も増えています。中でも、不動産投資で得られる家賃収入は安定的な収入と言われています。金融機関から融資を受けることもできるので、やってみたい投資の一つとして考えられることも多いです。当記事では、家賃収入を得て生活できるのかについて、考えてみたいと思います。

家賃収入の仕組みとは

まず家賃収入の仕組みについて解説しましょう。

家賃がそのまま残るわけではない

家賃収入とは、基本的には所有する物件を貸し出し、入居者から得られる収入のことを指します。

ただし、家賃収入がそのまま手残りになるわけではなく、家賃収入から借入金の返済、経費、税金など、すべてを差し引いた金額が手残りとなります。

したがって、物件を購入する前には、どのような経費がどのぐらい必要で、税金がいくらぐらいかかるのかについて、しっかりと精査しておく必要があります。

家賃収入の種類

続いて家賃収入の種類について解説します。

家賃、礼金、敷金、保証金

家賃収入が得られる代表的な不動産としては、区分所有マンション、戸建て、一棟アパート、一棟マンション、一棟ビル、駐車場などがあります。また、入居が決まった時には、家賃とは別に、礼金、敷金、保証金が入ってくるケースが一般的です。

ただし、敷金や保証金など、入居者が退去した際に返還するものは、税金の観点では収入とはならず、将来返すべき負債となります。

収益性を表す表面利回り

物件価格に対して、年間の家賃収入の割合を計算したものが、表面利回りとなります。
例えば、2億円の物件で1,000万円の年間家賃収入が入るのであれば、表面利回りは5%となります。

1,000万円÷2億円×100=5%

表面利回りは物件の構造や築年数、立地により期待される値(期待利回り)が異なります。
ここで気を付けておくべきことは、空室率と家賃下落です。
表面利回りが高くても、空室が多くなれば、当然入ってくる家賃収入は少なくなりますし、家賃下落が進めば、徐々に家賃収入が少なくなっていきます。
地域の不動産会社や管理会社に、購入したい物件のエリアの家賃相場や、地域の情報をヒアリングし、調査することが必要です。

その他の収入

家賃収入の他には、自動販売機や携帯電話のアンテナ設置料、電柱の敷地利用料、太陽光発電などがあります。
金額の少ないものから多いものまで様々ですが、自分が購入したい物件に、どのような収入が発生するか確認しておきましょう。

支出の種類

支出には借入金の返済や、経費や税金があります。それぞれ見ていきましょう。

家賃収入を得るために借りた借入金の返済

投資用不動産を購入する際、金融機関から融資を受けるケースがあります。
その場合は、融資の返済金額を把握しておく必要があります。

返済の内訳には、元金と利息がありますが、元金と利息を合わせて家賃収入の50%以下が理想的です。
50%以上になると、空室で家賃収入が想定以下になってしまったり、思わぬ修繕などで経費が多くかかったりしてしまうと、お金が残らなくなってしまいます。

家賃収入を得るための経費

家賃収入を得るためには、経費がかかります。
物件を所有していて必ず必要になるものとしては、固定資産税、水道光熱費、修繕費、入居付けの際の広告宣伝費、管理を委託している場合は管理費、修繕費、火災保険・地震保険料などがあります。

また他には、事務所や駐車場を借りる場合は地代家賃、税理士報酬などの支払手数料が必要になることもあります。
これらの経費は、全体で家賃収入の20%程度が目安になります。

家賃収入にかかる税金

支出で意外と忘れがちなのは、所得税や法人税、消費税などの税金です。
特に不動産会社や建築会社が出してくるシミュレーションには、税金が入っていないケースがあるかと思いますが、個人の所得税・住民税は利益に対して15%から55%、法人税は利益に対して21%から34%程度かかりますので、事前にシミュレーションをして数字を確認しておく必要があります。
ちなみに、所得税法では家賃収入から経費を差し引いた利益が不動産所得に分類され、この不動産所得が課税対象となります。

家賃収入のメリット・デメリット

家賃収入のメリット・デメリットにはどのようなものがあるかも把握しておきましょう。

メリット

ここまで家賃収入の種類や、支出の内容についてお伝えしましたが、これらを盛り込んでしっかりと目標を立て、事前にシミュレーションをし、それに近い形で運営できれば、家賃収入は非常に安定した収入となります。

また物件購入代金については、金融機関が融資をしてくれるため、レバレッジを効かせることができます。
この点は、株式投資などの他の投資に比べて、メリットと言えるでしょう。

デメリット

デメリットは、当初の見通しが甘く、家賃収入を得るために物件を購入したにも関わらず利益が出ない状態の場合、その物件を所有している手間ばかりがかかり、借入返済を続けるだけで利益はゼロ、という状態が続いてしまう恐れがあります。

また、不動産は株などと違い、流動性が乏しく、売ろうと思っても、すぐに売却できないこともデメリットと言えるでしょう。

家賃収入で暮らす

生活費はいくらかかっている?

では、実際に家賃収入だけで生活することはできるのでしょうか?
それには、まず、あなたの生活費が年間、どれほど必要かということがスタートとなるでしょう。
当然、生活費が少なければ、少ない家賃収入でも生活できますし、かかる生活費が多ければたくさんの家賃収入を得る必要があります。
私のところに相談に来られる人は「まず自分の年収程度を、家賃収入からのキャッシュフローで賄いたい」という方も多いです。

家賃収入の20%を残そう!

では、どのぐらいの家賃収入があれば、いくらぐらいのお金が残るのでしょうか?
年間の家賃収入が1,000万円の物件を購入したとして、これまでに解説した指標で手残りを見ていきましょう。
まず、借入の返済額は家賃収入の50%以下が安全ですので、年間の返済額は500万円とします。

家賃収入1,000万円×返済比率50%=返済額500万円

次に、経費は家賃収入の20%程度が目安ですので、年間の経費は200万円とします。
この段階で、300万円のお金が残っていますね。

家賃収入1,000万円-返済額500万円-経費200万円=300万円

そして、最後に税金がかかりますが、ここは人によって変わります。
仮に年間100万円の税金が発生したとすると、年間200万円のお金が残ることになります。
年間200万円とすると、家賃収入の20%になります。
まずは、家賃収入の20%程度のお金が残るのか、しっかりと見極める必要があります。

生活費から逆算して投資規模を算出

では、年間の生活費が400万円必要な人だと、どのぐらいの家賃収入を得ることが必要でしょう?
家賃収入の20%が残るとすると、2,000万円の家賃収入が必要になることがわかります。

手残り400万円÷20%=家賃収入2,000万円

年間の生活費が多ければ、20%で割り戻した家賃収入も、その分多くなります。
そして、仮に表面利回り5%だとすると、4億円の投資規模が必要になります。

家賃収入2,000万円÷5%=4億円

表面利回りが8%だとすると、2億5,000万円の投資規模となります。
このように、生活費から逆算することによって、必要な投資規模を算出することができます。

不動産投資を検討したいがまだ一歩踏み出せない方は、以下の記事もぜひご覧ください。
不動産投資とは?【初心者向け】仕組みや、メリット・デメリットを解説

まとめ

家賃収入を得る不動産投資、不動産賃貸業は、融資を受けて購入する場合、物件価格の2%のお金を残すことが目標とされています。
しかし、私が見てきた大家さんの中でも、物件価格の2%のお金を残せている人は、それほど多くいません。
それほど、家賃収入を得て生活することは簡単なことではなく、不動産投資と「投資」という言葉が入っていても、経営の要素の強い事業です。
したがって、不動産会社や建築会社の言葉を鵜呑みにせず、しっかりと自分の頭で数字を理解、把握して、物件を購入することが必要です。

叶 温
叶 温

叶 温

叶税理士事務所代表。広告代理店の営業として3年間勤務後、税理士を目指し会計事務所に転職。勤務時代に年収400万円で、1億円のマンションを購入。現在は自社ビルを含む2物件のオーナーでもある。著書『大家さん税理士が教える 不動産投資で効率的にお金を残す方法』(ぱる出版)他。
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