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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンテクニック

家はどのタイミングで買う?知っ得、子どもの成長と住宅取得

2017年10月23日

マイホームを買うタイミングはいつがいいのでしょう? それぞれメリット・デメリットや注意すべきことがあって、答えが出しにくいことかもしれません。ここでは、ファミリー世帯にクローズアップして、「わが家の住宅取得」について考えてみましょう。

データで見る住宅取得年齢

まずは実際の住宅取得年齢のデータを見てみましょう(表1)。
国土交通省「平成28年度住宅市場動向調査」によると、初めて住宅を取得した「一次取得」の年齢は、戸建てもマンションも30代が多く、次に多いのが40代です。2回目の取得となる「二次取得」は60代以上が多くなっています。

表1 住宅はいつ買っている?
年代一戸建てマンション
一次取得者二次取得者一次取得者二次取得者
30歳未満 7.3% 3.9% 8.5% 1.4%
30代 40.3% 3.9% 35.6% 10.8%
40代 36.6% 25.5% 31.4% 25.7%
50代 8.9% 23.5% 14.4% 24.3%
60代以上 6.3% 43.1% 10.2% 37.8%
国土交通省「平成28年度住宅市場動向調査」

一方、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査2016」のデータ
からは、世帯主の年代別持ち家率(2人以上世帯)がわかります(表2)。これは年代ごとの持ち家の「割合」を示しています。持ち家率が年代でぐんと上がるのが30代(+37.9%)、次に増加する割合が高いのが40代(+15.6%)です。

データは、「購入による取得」と、「相続による取得」に分けられていますが、「購入による取得」だけで見ても、やはり30代の上昇率が高く(+31.7%)、次が40代(+14.8%)となっています。ちなみに、相続で取得する割合が高いのは50代(+9.3%)です。

表2 世帯主の年代別持ち家率(2人以上世帯)
年代持ち家率(購入)(相続)
20代 12.0% 10.7% 1.3%
30代 47.9%(+37.9%) 42.4%(+31.7%) 5.5%(+4.2%)
40代 63.5%(+15.6%) 57.2%(+14.8%) 6.3%(+0.8%)
50代 75.4%(+11.9%) 59.8%(+2.6%) 15.6%(+9.3%)
60代 82.8%(+7.4%) 61.3%(+1.5%) 21.6%(+2.0%)
70歳以上 81.8%(-1.0%) 63.0%(+1.7%) 18.8%(-2.8%)
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査2016」

家を買う時期別メリット・デメリット、注意点

さて、上記はあくまでも年代別の平均データに過ぎません。実際には、それぞれのご家庭の家族構成やライフステージ、所得、貯蓄状況その他諸々の事情によって、購入するタイミングが異なるのは当然です。ここからは、ファミリー世帯のタイミング別に、メリット・デメリットや注意点について整理してみましょう。

<結婚前後で買う>
結婚前後で家を買うメリットとしては、新たな環境で新生活をスタートできるということでしょう。親に余力があれば、経済的な支援も受けやすく、買いやすいタイミングではあります。

ただし、新婚だと、家計が定まらない状態での購入になりがちで、住宅ローンの返済が重すぎる結果になることがあります。結婚後の妻の働き方について十分話し合わずに2人の収入を前提に住宅を購入すると、妻が妊娠・出産などで仕事を辞めた場合、高負担の住宅ローンになってしまうことも。また、それぞれの仕事先からの交通の便と予算だけで住宅を選ぶ方法もありますが、出産後も妻が働き続けるのであれば、「保活」(妻が働き続けるために、育休後に子どもを預かってもらう保育園を確保する活動のこと)のしやすさなども調べて物件選びをする必要があります。

そのため、結婚前後で家を買う際には、家計やその後のライフプラン、妻の働き方などを考慮した予算を組むほか、子どもが生まれたときの保活がしやすいエリアかどうか、子育てしやすい環境かどうかまで調べた上で、物件選びをするようにしましょう。当方にも婚約中にライフプラン相談や住宅取得相談が来ることもありますが、第3者を入れてライフプランを立てるのも1つの方法だと思います。

なお、婚約中に家を買う契約をした夫婦の失敗談ですが、住宅ローン実行・物件引渡しまでの間に婚姻届けを出したことで名字が変わり、売買契約書を作成し直すことになってしまいました。くれぐれもご注意ください。

<出産前に買う>
出産前のまだ妊娠していない時期や妊娠中に家を買うメリットとしては、保活や子育てを考慮してエリアや物件選びをしやすいことと、結婚して時間も経ち、家計も把握できている上、出産後の妻の働き方にも思いが及びやすいことで、現実に合った予算を組みやすい点でしょう。生活スタイルや家計も把握できてきた結婚1年後くらいから、ライフプランを踏まえた予算を設定し、時間をかけて物件を見て歩くといいでしょう。

この時期に家を買うデメリットとしては、もしも妊娠中だった場合、じっくり物件選びができない可能性があることでしょう。また、妻が働き続ける前提でも、妊娠後期などの場合は、収入合算や2人で住宅ローンを組む希望があっても利用できない可能性が高いでしょう。また、子どもが生まれたことと、住宅ローンが始まってすぐに産休・育休に入ることの2つが重なるため、家計のバランスが崩れがちというのもデメリットです。

本来であれば、家計とライフプランを固めた上で、妊娠前から家探しを始めるくらいが理想かもしれません。保活のことも踏まえて物件選びができます。注意点として、引き渡しが出産直後となると、体力回復や育児に追われ、引越しはかなりの負担になりますので、タイミングは慎重に検討しましょう。

<育休中に買う>
育休中は、前半は体力回復と慣れない育児に追われ家のことなど考える余裕はないかもしれませんが、落ち着いてからであれば多少の時間は取れます。その時期に情報収集や物件を見て歩くこともできるでしょう。子どもが生まれたことで、より実感をもって家探しができるのはメリットでしょう。また、育休中にとは限りませんが、住宅ローン控除が適用されることで所得税だけでなく住民税の還付を受ける場合は、保育料が下がる可能性もあります。というのは、保育料は住民税額(所得割額)によって決まるためです。

参照:知っ得!住宅ローン控除のツボ

しかし、住宅ローンを夫1人で組むなら問題はないのですが、収入合算や2人で住宅ローンを組む場合は、育休中だと金融機関が限定されます。また、育休中といえば保活の時期でもあり、保活が始まる11月、12月頃には引越しを終えておきたいもの。タイミングが合わないと、保育コストが高くなるリスクがあるのもデメリットです。

この時期に家を買う注意点としては、妻が働き続けるのであれば、保活を意識しつつ買うことでしょう。購入や引越しのタイミングなども含めると、かなり戦略を練る必要があります。妻が働き続けるつもりでいたのに、引越し先で保育園に入れないと、家計には大きな打撃となりますので注意しましょう。

<乳幼児期に買う>
乳幼児期に家を買うメリットは、妻の働き方も明確になっていて、予算を組みやすいことでしょう。また、子育て環境や子どもの教育環境などから、小学校をどこにしたいかなども考慮してエリアを絞り込めるメリットもあります。お客様の例では、お子さんが幼児であるにも関わらず、将来通わせたい私立中学に通いやすいことなども織り込んでエリアを決められた方がいました。

デメリットは、お子さんが保育園児の場合、転居先の保育園に空きがなければ、保育園難民に陥ってしまう可能性があることです。現在働いていても、保育園に入れる保証はありません。また、やんちゃ盛りいたずら盛りの子どもたちですから、壁に落書きをしたり、あちこち多少の損壊が発生することは覚悟する必要があります。

最も注意すべきは、やはりママが働き続ける場合の保活問題です。事前に引越し先の自治体の福祉事務所などに連絡を取る等、また最も入りやすい年度の募集のタイミングを逃さない、など十分に注意しましょう。

<子が小学生の時期に買う>
この時期に家を買うメリットは、子どもが落ち着いているので一緒に物件を見て回るなどもできることでしょう。妻の働き方などもほぼ確定しているので、予算が現実とずれることも少ないでしょう。また、中学から私立に行かせたいなど考えている場合は、通いやすいエリアへ引っ越すこともできます。

一方で、子どもには友達もでき、スポーツや習い事、塾などの環境が固まっているなどで、本人が引越しを嫌がることもあります。その場合、今の住まいの近くで買うなど、限定される可能性もあります。

注意すべきは、まだお子さんが小学校1年くらいだと、今度は学童保育問題が発生します。それも踏まえてタイミングやエリアを検討する必要があります。

<子が中学・高校の時期に買う>
この時期に買うということは、人によっては年齢が40代半ばから後半になっているはずです。ここからの住宅取得は、子どもの高校・大学進学の他、自分たちの老後なども視野に入れてエリアや物件を検討することができます。あるいは、そろそろ親の見守りが必要な時期にさしかかるため、帰省しやすいなどの条件も加味して選ぶこともできるでしょう。

この時に買うデメリットは、老後資金の準備にいそしむべき時期と重なるため、両方を並行して進める必要があることでしょう。また、今の年収が高い場合やこだわりが出る年代でもあることから、予算を高く設定しすぎてしまう可能性もあります。

人生100年時代と言われ、老後が長くなっています。そのため老後資金の準備も手が抜けませんので、バランスを加味して無理のない住宅ローンを組む必要があります。

<定年時に買う>
転勤族だった方や、定年後は実家の近くに住む、などと考えている人の場合は、定年時に家を買う方もいます。メリットは文字通り、定年後の生活の拠点やライフスタイルを決めての選択ができます。60代で買うということは、「終の棲み家」となる可能性も高いでしょう。

デメリットは、定年後は住宅ローンが組みにくいこと。また、組めたとしても、持病や既往症があって団体信用生命保険に入らずにローンを組むようなことになると、リスキーです。また、退職金を使って現金で買うと、今度は自分たちの老後資金が不足することになりかねません。

そのため、現金で買っても老後資金が残る範囲の予算で買うことは忘れてはいけません。資金的に不足するけれど、でもどうしても家を買いたいという場合は、定年前に住宅ローンを組み、それを返し続けられるように仕事を続けることなどが大事です。慎重な方はファイナンシャルプランナー相談などにいらっしゃる方もいますが、老後資金とのバランスを図ることが最も注意すべき点と言えます。

いろいろなタイミングで家を買う際のメリット・デメリットや注意点を見てきましたが、デメリットや注意点がない年代はありません。一番は、自分たちがどうすれば幸せでいられるかです。家は買い替えることもできますので、ぜひマイホームで楽しい人生を送ってくださいね。

執筆者:豊田 真弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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