住宅ローンを借りる際の「審査」で見られるポイントは?
2017年10月03日
夢のマイホームを実現するには、住宅ローンを借りられるかどうかにかかっています。住宅ローンを借りる際に、金融機関はどこを見て審査しているのかについて、知っておきましょう。
フラット35の「借入条件」
希望する住宅ローンを利用するには審査にパスする必要がありますが、その基準は、ローン商品や金融機関によって異なります。しかし、審査に落ちても、原因を教えてもらえないのも悩ましい部分です。
住宅ローンを借りようと思ったら、まずすべきことはその金融機関が提示している借入条件をクリアすることです。条件は大きく分けると、人に関する条件と、物件に関する条件とがあります。
まずは、フラット35で示されている借入条件を整理してみましょう。これをクリアしなければ申込むことができません。
ちなみに、「返済負担率」とは、「年間の返済額」を年収で割った割合です。「年間の返済額」には、住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローン、フリーローン、クレジットカードのキャッシングや分割払い、リボ払い分等も含めて計算します。
利用できる人 | ・申込時の年齢が満70歳未満(親子リレー返済は満70歳以上も可) ・日本国籍の方、永住許可を受けている方または特別永住者の方 年収400万円未満 30%以下 年収400万円以上 35%以下 ・共有物件の場合は、申込み本人が共有持分を持っている |
資金使途・対象住宅 | ・本人または親族が住む新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金 ・住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅 ・住宅の床面積が基準に適合する住宅 一戸建て住宅等 70m2以上 マンション等 30m2以上 ・住宅の建設費(土地取得費含む)または購入価額が1億円以下(消費税含む)の住宅 |
借入額 | ・100万円以上8,000万円以下(1万円単位) |
借入期間 | ・15年(本人か連帯債務者が60歳以上は10年)以上で、(1)(2)のいずれか短い年数。 (1)80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ、親子リレー返済は後継者の年齢) (2)35年 |
担保 | ・対象住宅・敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定 |
民間融資の借入条件は?
フラット35は適合住宅でなければそもそも利用できず、物件に関する条件が厳しめと言われています。一方、民間の金融機関は人に関する条件、つまり返済能力のチェックが厳しめだとされています。
図表2は三菱東京UFJ銀行の例ですが、サイトなどに出ている条件では次のように表示されています。かつては最低年収や、勤続年数、返済負担率の目安なども表示されていたのですが、あえて示さないということは、全体の信用力でみるということなのでしょう。
利用できる人 | ・借入時に20歳以上70歳の誕生日まで、完済時に80歳の誕生日まで ・保証会社の保証を受けられる ・団体信用生命保険に加入できる(親子リレー返済は子が加入) ・日本国籍の人、または永住許可等を受けている外国人。 |
資金使途・対象住宅 | ・本人が住む住宅の建築・購入・増改築資金、住宅ローンの借り替え資金・借り替え費用。 ※所在地や面積等により利用できない場合がある。 ※建築基準法その他法令の定めに合致していることが必要。 ・住み替えの際の既存住宅売却に伴う既存住宅ローンの返済資金。 ※売却価格と既存住宅ローン残高の差額のみ対象。 |
借入金額 | ・30万円以上1億円以内(10万円単位) ※年収による制限がある。 ※担保評価や同時に利用される公的融資額等により制限される場合も。 |
借入期間 | ・2年以上35年以内(1年単位) ※中古物件の場合等は一部制限がある。 ※借り替えの場合は、借り替え対象の借入期間により制限される場合あり。 |
担保 | ・購入する土地・建物または借り替え対象となる土地・建物に保証会社を抵当権者とする抵当権を設定。 ・建物に長期火災保険をつけ、保険金請求権に保証会社を質権者とする質権を設定が必要な場合あり。 |
少なくとも、明記されている事項で問題がある場合は、利用できないと考えるべきでしょう。
民間金融機関では物件の要件は定めていないようにも見えますが、どんな物件でも借入れできるのかというとそうではありません。三菱東京UFJ銀行では、「所在地や面積によっては利用できない」と書かれていますが、売却しにくい物件は担保価値が低く見られることもあり、借入れができない場合もあります。建築基準法に違反している物件は借りられない金融機関もあります。
データで見る審査項目
三菱東京UFJ銀行に限らず、フラット35に比べて、民間融資の条件は明記されていないものが多いようです。そのため、国土交通省「平成28年度民間住宅ローンの実態に関する調査」のデータも見てみましょう。
民間金融機関が「融資を行う際に考慮する項目」のうち、金融機関が「考慮する」と答えた割合が高かった上位15項目が図表3です。金融機関が審査の際にどこを見ているかがわかるのではないでしょうか。
図表3 融資を行う際に考慮する項目(割合が高い順)
(国土交通省「平成28年度民間住宅ローンの実態に関する調査」)
1・完済時年齢 |
2・健康状態 |
3・借入れ時年齢 |
4・担保評価 |
5・勤続年数 |
6・年収 |
7・連帯保証(保証会社の保証など) |
8・金融機関の営業エリア |
9・返済負担率 |
10・融資可能額(購入の場合) |
11・雇用形態 |
12・融資可能額(借換えの場合) |
13・他の債務の状況や返済履歴 |
14・国籍 |
15・取引状況 |
ココに注意!実はこんな審査項目も!
前出の図表3の中で、借入条件などに表示されることがない、あるいは特に注意したい審査項目を取り上げてみました。太字にした部分です。
<健康状態>
民間金融機関の住宅ローンのほとんどの借入れ条件に、「団体信用生命保険(団信)に加入できること」という項目があります。団信に入っていれば、借入者が亡くなったときに保険金で住宅ローン残債を完済できます。健康状態が悪い場合は団信に入れないこともありますが、最近は、持病があっても入れるタイプの団信(有料)を用意する金融機関もあります。また、フラット35のように団信なしで加入できる住宅ローンもありますが、何かあったときに遺族に残債を残すのはリスク。健康状態は実は重要です。
<勤続年数>
民間金融機関では、勤続年数も重要な審査項目です。最近は、勤続年数が「1年以上」が多くなってきているようですが、「3年以上」のところもまだまだあります。そのため、転職直後などの場合は勤続年数が短くて借入れできない場合もありますので、注意しましょう。金融機関によっては、転職直後でも、同じ業界で年収アップの転職で勤務先もしっかりしている場合は借入れできるケースもあるようです。いずれにしても選択肢は狭まりますので、転職を考えているなら転職前の方が借入れしやすいでしょう。
<年収>
審査の際には、最低年収も見られます。かつては「200万以上」「300万円以上」など高めでしたが、最近は「100万円以上」「150万円以上」が多くなっているようです。収入合算などもあるためでしょう。フラット35には年収制限はありませんが、返済負担率があるため、結果的に、借入れ額に応じた年収が必要になります。
<金融機関の営業エリア>
「この金融機関を利用したい」と思っても、営業エリア外だったために利用できなかったというケースもあります。条件としては、金融機関の営業エリア内に「住んでいる」、「勤務している」と2タイプがあります。営業エリアについては各金融機関で異なりますが、「店舗から原則1時間以内」などと設定している金融機関もあります。念のため、該当エリアかどうか、事前に確認しておくことも大事です。
<雇用形態>
雇用形態も重要度の高い審査項目です。正社員は問題ないですが、契約社員や派遣社員を対象としているかどうかは、金融機関によって異なります。フラット35では雇用形態は問われません。
<他の債務の状況や返済履歴>
自動車ローン以外の各種ローンのほか、クレジットカードのキャッシングや分割払い、リボ払い等、住宅ローンの他に借入れがないかどうかや、過去5年以内に延滞したことがないかなども審査項目です。奨学金も一定以上延滞すると信用情報に登録されます。銀行の定期預金を担保にした貸越や、生命保険の契約者貸付などは「借入れ」に加える必要はありません。
見落としがちな項目なども見てきましたが、まずは候補として考えている住宅ローンの借入れ条件をしっかり見極め、さらには図表3のような項目にも注意を払う必要があります。審査に落ちても理由は教えてくれませんので、どうしても納得がいかない場合は、全国銀行個人信用情報センター、日本信用情報機構(JICC)、CICといった信用機関に開示請求手続きをして確認するのも一法です(有料)。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。
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