ぼくが実際に購入した収益不動産について、購入や運営の経緯をご紹介する今コラム。全部で4物件についてご紹介させていただく予定ですが、今回が2物件目になります。
人口42万人の環境モデル都市で購入したRCマンションについて、前編・後編で振り返ってみたいと思います。
当時の状況
不動産投資を始めたばかりの頃、先輩の大家さんにお会いして、その方が実際に購入した物件を見学させていただく機会が何度かありました。現地に連れて行ってもらい、外観を見ながら、どういうところに着目して購入を決めたのか、懸念点はどこにあったのか、そのほか運営状況や募集条件などについても教えてもらうのです。
新築の内覧会とは違って建物の中には入れませんが、自分が物件を購入するときの「基準」のようなものができていくのが分かり、とても勉強になったのを覚えています。ほとんどの大家さんは、自分の持ち物件を人に見せるのが好きなので、大家さんの勉強会などで親しくなった方がいる場合は遠慮なくお願いしてみると良いと思います(笑)。
今回ご紹介する物件は、2007年の11月に購入したもので、自分の中では4物件目にあたる一棟ものマンション。当時の家賃収入は満室時で3千万円程度でした。前回紹介した空室だらけのマンションを無事に軌道に乗せた経験もあり、自分の中で「空室が多くても、やり方次第で改善できる」という手応えを感じていました。「こんな条件の物件を購入したい」という基準が明確になっていたので、不動産会社さんも紹介がしやすかったのか、当時はたくさんの情報をいただくようになっていました。
物件概要
そんな中で、地元の不動産会社から紹介いただいたのは下記のようなマンションでした。
- 鉄筋コンクリート造 3階建て共同住宅 15戸
- 敷地面積 1543.01m2
- 延床面積 789.98m2
- 平成7年11月築(当時築10年)
- 売出価格 1億円
デザイン的には普通、悪くいえばありきたりな感じですね。
物件写真を見たときも普通だなと思いました(笑)。
紙の調査(1)~無理のある利回りと余裕のある利回り~
物件資料をたくさん読んでいくと、電卓を取り出して積算価格を計算する前に、敷地面積と延床面積、構造と築年数をチェックすれば、だいたいの感触をつかめるようになります。エリアを絞って物件を探していると、土地の路線価についてもだいたいの相場観ができてきますので、「明らかにダメ」「かなりすごい」くらいの区別は瞬時につくようになるのです。
このマンションの資料を見たときも、「おお!!」と思いました。1500平米を超える、広い敷地面積がその理由です。
不動産投資で大切な指標である「利回り」を軽視することはできませんが、利回りが同じであっても、良い物件もあれば悪い物件もあります。ぼくしか使っていない言葉なのですが、「無理のある利回り」と「余裕のある利回り」があるのです。
一般的に、収益物件の利回りは以下のような傾向にあります。
- 戸あたりの面積が狭いほど、利回りが上がる。
- 部屋数が多いほど、利回りが上がる。
- 建蔽率や容積率を目一杯使うほど、利回りが上がる。
しかし、1~3の方法で利回りを上げると、今度は「競争力が下がる」のです。部屋が狭いと住みづらくなりますし、今は同じ面積でも細かく区切るよりゆったりした間取りが好まれます。建築できる面積ギチギチに建物を詰め込むと、駐車場スペースが取れなかったり、建物や部屋の配置にも無理がでてきますので、やはり競争力が落ちます。
ですので、同じ利回りの場合は「余裕のある利回り」であることが望ましいです。このマンションは、利回りこそ普通でしたが、建蔽率と容積率には余裕がありすぎるくらいで、そのおかげで戸あたり2台の駐車スペースが取れていました。このエリアは大人1人で1台自動車を所有していることが珍しくありませんので、ここは物件のウリになるだろうと考えました。
また、3階建てでエレベーターがないこともプラス材料でした。その前に購入したマンションで実感したのですが、エレベーターというのは本当にお金を食います。毎月の保守点検費用で3~5万円。さらに電気代が掛かります。エレベーターがあるだけで、1~2部屋分の家賃がなくなってしまうくらいに考えておいた方が良いくらいです。
とはいえ、4階建てでエレベーターがないと入居時の敬遠材料になってしまうので、2~3階の低層物件で、かつそれなりの利回りがあるのがベストだと考えています。
土地の路線価と建物の積算評価は売出価格を上回っていましたので、これは良さそうだと判断しました。あとはキャッシュフローを確実にプラスにするために、価格交渉によって利回りをもう少し上げたいところです。
紙の調査(2)~レントロール~
「空室が多くてもかまいませんので紹介してください」と各業者さんにお願いしていたので、こちらのマンションも空きが目立ちました。購入時に6部屋が空いていたので、空室率は約40%ということになります。
空きが多い場合は、必ず以下の2点を確認することをおすすめします。
- ネットや賃貸情報誌で、当該物件がどのように募集されているかを確認する。
- 敷金・礼金、部屋ごとの家賃のばらつき
2については第2回のコラムで説明していますが、このマンションの場合は1が特徴的でした。賃貸ポータルサイトをいくつかチェックしても、ほとんど掲載がないのです。
この原因として予測できるのは、「不動産会社さんとの関係が悪く、積極的に募集がされていない」「それを大家である売主さんがチェックできていない」の2点です。不動産会社としっかりコミュニケーションを取り、ネットや雑誌の掲載をしっかりお願いするようにしていけば、入居率は比較的容易に改善できるのではないかという期待が持てます。
逆に、どのサイトにもしっかり掲載がある場合は、物件や条件に魅力がないために「募集はされているけど選ばれていない」ということになります。こちらの方が、購入リスクが高いわけです。
紙の調査(3)~間取り図~
間取り図も一応確認します。2DKタイプのありきたりな感じで、あまり魅力を感じませんでしたが、なぜか「サンルーム」と呼ばれる洗濯物を干す目的の2畳程度のスペースがありました。もしかしたら、このサンルームは部屋干しをする方へのPRポイントになるかもしれません。全体的には可も不可もないなという感じでした。
事前調査での購入判断
以上のポイントを、詳細資料をいただいてから1時間くらいで見ていくわけですが、全体を通じての購入判断としては、以下のような感じでした。
- 積算評価が高いので、融資を通すには有利な物件。
- 空室が多い現況としては、利回りはいまひとつ。少しは交渉したい。
- 入居募集がしっかりされていない理由を確認しなければならない。
- 入居ターゲットは2人組の夫婦?エリア的に需要があるかを確認する必要がある。
物件を購入する判断は、ぼくはむしろ紙やネットの情報が大切だと思っています。何の情報もなしに、アパートやマンションを眺めても意味はなく、むしろ現地調査は「事前の予測が正しかったかを確認する」ためのものだと思っています。入念に調査をしたうえで、現地へ行きましょう。
現地確認以降は、次回に続きます。