不動産投資コラム

所有物件 調査・購入ドキュメント(2) 後編

マンション購入ドキュメント。2棟目の後編は、現地調査から価格交渉に至る経緯と、その後の運営状況についてお話したいと思います。

現地調査

このマンションは購入時の空室が40%と、地域平均を考えても非常に高いものでしたが、場所といい設備・間取りといい、そこまで空室率が高くなるような要素がありません。賃貸物件のポータルサイトにしっかり掲載されていれば、それなりに内見もあるはずです。

家賃相場についてもチェックしたのですが、こちらは1棟目のドキュメントに挙げた物件とは違い、家賃が割高ということもありませんでした。

このような情報を頭に入れつつ、現地に向かいます。建物を見た感想としては、事前に入手していた写真どおりの重厚な感じで、日当たりも良くて住みやすそうな印象を受けました。

低層マンションの場合は、相対的に延べ床面積と比べて屋上の面積が広くなり、屋上防水費用も高くなりますので、その状況もチェックしました。購入直後に大規模修繕が必要かどうかを確認するためです(ちなみに、かなり頼りのないハシゴを使って屋上に昇るのは怖かったです)。

周辺施設については、コンビニ、スーパーとも徒歩圏にあるため合格。ちょっと難点かなと思えたのは、敷地に入ってくるときに少し段差があり、車高の低い車の場合は擦ってしまう可能性があることくらいでした(こちらはマンション購入後に改善済みです)。

不動産自体は特に問題がないと判断できたので、一番の懸念点である「賃貸募集がしっかりされていない」という点について確認してみることにしました。

まずは売主さん側の不動産会社が近くにありましたので、アポを取って訪問します。賃貸管理をメインにやっていて、不動産の売買仲介はあまり積極的ではないようでしたが、売主さんとは多少顔見知りだったこともあり、仲介を引き受けたのだそうです。

他の会社に管理を委託しているわけでもなく、いわゆる自主管理物件であることがわかりました。賃貸物件の管理を自分ですると、手間が掛かるだけでなく、賃貸仲介の会社にしっかりと募集してもらいにくくなる傾向があります。

管理料は家賃の4~6%程度と高いものではありませんが、管理会社としては管理を請け負っていることにより、更新料収入や原状回復工事の紹介料、保険の取り扱いなど付帯収入がかなりあります。

従って、管理契約を維持することは非常に重要度が高いわけですが、管理会社がいいかげんに募集をやっていると、管理を他の会社に移されてしまうリスクが高まるので、管理会社は自社管理物件を優先して入居付けする傾向にあります(地域にもよります。地方に行くほど、そういう傾向が強いようです)。

しっかりと広告料などを支払えば、自主管理でも力を入れて募集してもらうことは可能ですが、このマンションの売主さんは、広告料の類はまったく出していなかったこともわかりました。

また、他の不動産会社を訪問してヒアリングした感触から、どうやら売主さんはちょっと気むずかしいところがあるらしく、例えば内見者からの条件交渉などがあったときに応じてくれなかったり、積極的に募集をしようという意欲をそがれるような大家さんであることが感覚的に理解できました。

先にも書いたように物件自体は十分競争力があるので、しっかりとした会社に管理を任せて、他の仲介会社さんが物件に抱いているネガティブなイメージを払拭できれば、入居率の向上は十分に可能だと判断しました。

価格交渉

さて、価格交渉については利回りを基準に約1千万円の交渉を行いましたが、売主さんにはあまり理屈で追求するようなことはせず、「銀行融資の関係で、これくらいの価格でないと購入できないのです」というような感じで情に訴えました。

空室が多い物件に購入意欲を示す人は少ないので、価格交渉は意外と成功することが多いのです。

ただ、交渉の途中で売主さんが物件の仲介を依頼していた不動産会社さんとトラブルになり、一時は物件が売り止めにするというハプニングがありました。

ぼくがすぐに売主さんに電話をして事なきを得ましたが、売主さんの意向で仲介会社なしで契約することになりました。売買契約書のひな形をダウンロードして、駅前の喫茶店で契約手続きをしたのです。

仲介手数料が掛からずコスト節減になりましたが、重要事項説明の問題もありますので、あまりおすすめできる方法ではありません。地元の不動産会社に応援されなくなるのも無理はないなということが、このようなトラブル事例を見てもわかりますね。

融資・運営

さて、無事に決済も終わったのが11月。前編にも書いたように、広い土地のおかげで積算評価が非常に高い物件だったので、融資については問題ありませんでした。

また、すでに同じ地域に不動産を所有しているので、管理は同じ会社にお任せしました。翌年の3月までに満室にしようと考え、店長さんと近隣の不動産会社へ挨拶周りをし、オーナーが変わったことを印象づけるようにしました。
管理会社の人と挨拶回りをする大家さんは少ないので、先方に覚えてもらえる確率が高まります。

空室数が多い物件を短期で満室にしようとする場合、できる施策を一気に行うことが大切です。空室改善方法はたくさんありますが、小出しにするとインパクトが不足します。一気に沸騰させる意気込みが必要です。今回のテコ入れでは...

  • 敷金、礼金をキャンペーンでゼロに
  • 広告料を増額
  • キッチンのシート張りなど、一通りのリフォーム。
  • 雑草の処理
  • 外回りの清掃

などを行いました。

募集条件は、ちょっとやりすぎかなとも思いましたが、とにかく満室にすることを優先させました。もし、あっという間に入居が決まりすぎてしまうようなら、次に退去が出たときから条件を変えようと思いました。

ここまでやっても、年明けくらいまでは何の成果も出ませんでした。少し気弱になって家賃を下げようかとも思いましたが、「物件のプラスイメージが定着するまでは、しばらく時間がかかるはず。決まりだしたらあとは早い」という確信のもと、近隣の仲介会社さんにメールや電話で連絡を取り続けるうちに、最初の入居が決まりました。

そして当初の予測どおり、入居が決まり出すと次々と内見が入るようになり、3月末には満室を達成したという経緯です。

利回りの高い物件というのは、「価格の設定間違い」である以外は、何かしらのイマイチな点があるものです。

今回のような空室が多いという以外にも、大規模なリフォームが必要だったり、おかしな入居者がいたりということもあり得ます。そこを自分なりに改善できるかどうかを見極めることが、物件購入判断のポイントになるのではないかと思います。
そして、もし、自分の予測どおりにイマイチな要因を改善できた場合、とても質の良い高利回り物件が入手できますので、運営に労力を惜しまない覚悟がある場合は、ぜひチャレンジしてみてください。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。

 

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