今年(平成28年)からマイナンバー制度の運用が始まりました。
さて、マイナンバー制度は不動産投資家にとってどんな影響を与えるのでしょうか。
そもそもマイナンバーとは?
日本国内で暮らす全住民一人ひとりに12ケタの番号が与えられ、社会保障、税、災害対策などの分野で効率的に情報を管理し、活用されるものです。
マイナンバーの目的は、税金の負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行うことにあります。
反面、「情報が筒抜けになってしまうのでは?」「自分の行っている不動産投資が明るみになってしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃるかと思います。
もちろん会社の就業規則に反して不動産投資している方は擁護できません。
ただ、就業規則に違反してなくても、不動産投資をしていることを会社に知られたくないという方もいらっしゃることでしょう。
果たしてマイナンバー制度によって、不動産投資をしていることを会社に知られる可能性はあるのでしょうか。
マイナンバー制度の誤解
まず、マイナンバーは利用目的が厳格に決められています。
社会保障、税、災害の分野のみに限定されています(今後は拡大されていく方向です)。
そして、マイナンバーの個人情報が見られるのは行政機関だけです。
たとえば、税務署に提出する給与の源泉徴収票に記載するため、マイナンバーを会社に提示する必要があります。
しかし、そのマイナンバーをつかって、会社が個人情報を見ることはできません。
ですから、社員が不動産投資をしていても直接的に会社に知られることはありません。
会社に不動産投資が知られてしまう可能性
マイナンバー制度ができたことにより、新たに情報が明るみになるということはありません。
しかし、サラリーマン大家さんからは、会社にマイナンバーを提示することにより不動産投資を知られてしまう可能性があるのか、ご質問が多いため、改めてその懸念点について解説していきます。
給与所得と不動産所得を確定申告することで、会社が把握している給与にかかる住民税と、実際にかかる住民税が異なることになり、その金額が会社に通知されることで、会社に知られてしまう可能性があります。
ただ、不動産所得にかかる住民税を会社に通知されないようにすることができれば、住民税から知られる可能性は低くなります。
そのためには、下記の手続きが必要です。
1.不動産所得を赤字にしない
不動産所得が赤字になってしまうと、給与所得から控除されることになり、給与にかかる住民税が低くなり、その金額および不動産所得があることが会社に通知されます。
2.確定申告の第2表で、給与所得以外の住民税の選択を「普通徴収」にチェック
不動産所得が黒字の場合には、給与の住民税と分けて普通徴収にする(自分で納付する)ことができます。
このチェックをすることで、不動産所得にかかる住民税を会社に通知されないようにできます。
また、上記の手続きをしても、住宅ローン控除を受ける場合、医療費控除を受ける場合、ふるさと納税などの寄付金控除を受ける場合は、住民税の計算が異なることになり、その際に不動産の収入も会社に通知される可能性があります。
3.法人化すると知られない?
では、自分で会社を設立(法人化)して不動産投資をすることで、会社に知られないようにできるのでしょうか。
次のような場合には、会社に知られてしまう可能性があります。
3-1.住民税からわかる
法人から給与が払われている場合には、法人の給与と、お勤めの会社の給与が合算されて住民税が計算されます。
会社が把握している給与にかかる住民税と、実際にかかる住民税が異なり、その金額が会社に通知されてしまいます。
不動産所得の場合と異なり、給与所得の場合には、副業の給与分だけ、普通徴収にすることができません(地域によっては、普通徴収にしてくれるところもあるようですが)。
3-2.社会保険からわかる
会社を設立すると、社会保険の強制適用事業者になり、社会保険に加入しなければならなくなります。
お勤めの会社と、自身の会社で社会保険の加入になると、社会保険料の算定は、それぞれ払われた給与の合計金額によって行われます。
その保険料を、それぞれの給与分で按分して、負担することになります。
例えば、お勤めの会社A社で月50万円の給与をもらい、自身の会社B社で20万円の給与をもらうとすると、50万円+20万円=70万円にかかる保険料が算定されます。
そして、A社で保険料×(50万円/70万円)が徴収され、B社で保険料×(20万円/70万円)が徴収されることになります。
そうなると、お勤めの会社に、他の会社からいくら給与をもらっているのかを知られてしまいます。
今までは、個人がどこからいくら給与をもらっているか、国(社会保険庁)として把握できない部分がありました。
しかし、マイナンバー制度ができたことにより、その情報が簡単にわかることになります。
そうなると、社会保険の加入および保険料の算定が厳密になるのは間違いありません。
ちなみに、法人化と社会保険については、後日このコラムで紹介したいと思います。
3-3.本店住所からわかる
マイナンバーは、個人だけでなく、法人にも付されます。
法人番号は、個人とは異なり、利用が限定されていません。
どのような利用(例えば、マーケティングなど)も可能です。
さらに、法人番号は公表され、インターネットでも検索はできます。
現在、「法人番号」「商号」「本店住所」のいずれかで検索できます。
http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
自宅住所を法人の本店にしている場合には、自宅の住所で検索をかければ、会社名が出てくることになります。
法人マイナンバーサイトでは会社名は出ても役員名までは出てきません。
しかし、その会社の謄本を取得すれば、役員の記載が出てきます。
役員については今までも、会社の謄本を取得すればわかる情報ではあったのですが、インターネットで検索できるという意味では、従業員が自身で会社を設立しているかのアタリをつけることが容易になります。
なお、ご自身が株主(合同会社の場合には、業務執行しない社員)となり、奥様やご家族を代表者にするという方法もあります。
この場合には、会社にわからず、また、就業規則にも反しない場合も多いのではないでしょうか。
(社会保険の扶養にしている家族に給与を支払う場合には、扶養から外れるなどの問題がありますので、注意をしてください)
マイナンバー制度によって、国は個人の情報を収集・把握しやすくなります。
その情報を会社が直接知ることはできませんが、社会保険など間接的に個人情報がわかってしまうことがあります。
もう一度お勤めの会社の就業規則を確認していただき、他の業務に従事することについて禁止されていたり、許可を受けなければならなくなっていたりしないかを確認してみてください。
もし、不安な方は専門家に相談するようにしましょう。