収益物件の売却を考えたとき、市況によって変化する需要と供給のバランスを見極めることは重要です。 一方で、不動産は一点もの、個々の物件によって有効な売却術も変わってきます。
一般的には、需要が高く供給の少ない物件の方が売却には有利です。しかし、売却に成功しているのは多くの投資家に人気の物件だけというわけではありません。今回は厳しい条件を抱えながらも早期売却に成功した事例をご紹介します。
目次
「築古」「オーナー住戸付き」条件の厳しい一棟アパート
今回のケースは、東京都の城北エリア、最寄り駅から徒歩5~6分の場所にある軽量鉄骨造の一棟アパートの売却です。賃貸需要は高いエリアなのですが、投資家の需要は決して高いとは言えません。また、この物件に関してはエリア特性以外にも、売却にあたって不利な要素がいくつかありました。
まず、築23年という築年数の古さです。築年数が古いと、購入側にとっては融資期間が制限されるため、マイナス要因となってしまいます。
また、1階に100平米弱のオーナー住戸が1戸、2階に20平米弱の1Kが4戸というのは、アパートとして運営するには難しい造りです。これまで売主様が自己使用していた1階のオーナー住戸は、賃貸しようとしても家賃の総額が高くなり、借り手が付きづらいでしょう。
更に、土地の形状が整形地ではないということもありました。これらさまざまな要因から、当初、売却は苦戦するのではないかと思われました。
アプローチできるお客様の母数や物件の見せ方も重要
売主様は、ご高齢の女性で、賃貸経営の一切を取り仕切っていたご主人様がお亡くなりになったため、自宅兼賃貸アパートである今回の物件を売却することになりました。
当社を含め5社程度の大手仲介会社に問い合わせたところ、電話口で市場相場より高めの概算価格を提示する会社が大半だったそうです。条件の厳しい物件とはいえ、ある程度の規模感の23区内の物件ですから、不動産業者として「取りに行く」トークをするのは当然でしょう。
ただ、当社はマイナス面も織り込んで適正に査定し、その内容をお伝えしました。他社と比べれば安すぎると受け取られかねない状況ですが、売主様の相場観と合致しました。まずは当社を信頼いただき、そのうえで売却活動を始めることができたわけです。
販売資料の作成においては、賃貸履歴のない1階のオーナー住戸の賃料設定がキーポイントになりました。賃料を高く見積もれば想定収入が上がり、収益還元法で査定した際に売却価格も高く設定できます。しかし、無理をして高く見せたところで投資家が疑念を持てば成約に至らないと考えたため、実際の賃料相場を調べ、市場ニーズに沿った賃料で設定しました。
最初の査定額の提示でもそうですが、実際の相場やニーズを適正に反映させることが結果として最善の策だと考えています。
購入検討者の集客は、当社にお問い合わせいただいたことのあるお客様へ配信しているメールDMと、外部の収益物件情報サイトのメール配信サービスを利用しました。当社のメールDMは、希望条件で該当した約3,600通を配信、情報サイトのメールも同様に、条件の合う370通を配信し、合計で約20件の反響がありました。
アプローチできるお客様の母数が多ければ、それだけ興味を持っていただけるお客様と出会える確率も上がります。数の多さだけではなく、当社で収益物件に関心の高いお客様を数千件という単位で確保できていたので、それだけの反響が得られたのだと思います。
■十数万円の投資で物件の印象は大きく変わる
適正な売り出し価格と販売資料づくり、購入可能性のある人へのアプローチだけでなく、物件そのものについても、できることがありました。
実はこの物件の敷地内には、植木や錆びた物置などが置いてあり、雑然とした印象でした。そこで売主様に、見た目を綺麗にしてから売り出すことを提案しました。
物件の管理状態について指摘することは売主様の気分を害する可能性もありますが、それと天秤にかけても、第一印象をよくする提案は伝えるべきと考えました。ご相談を受けて以降、ご高齢の売主様が安心して売却できるよう直接会ってお話しするようにしていたこともあり、提案を快く受け入れてくださいました。
売主様は早速、区役所に相談して廃棄物処理業者を紹介してもらい、不用品の処分と敷地内の整理をすすめました。また、私も簡単な除草作業をお手伝いするなどしました。その結果、売主様が処理業者に支払った十数万円の費用で、見違えるほど物件の印象が改善したのです。
さて、当初は苦戦が予想された物件ですが、実際には約1ヵ月半という早さで売却が決まりました。
買主様は、以前にも当社と取引実績のある、当社のメールDMを読んでお問い合わせをされたお客様でした。土地の坪単価に割安感を感じたことに加え、ちょうどご自宅の売却を検討中で、次の住居として1階のオーナー住戸に興味をお持ちになりました。図面だけではマイナスポイントの敷地形状も、現地を見た買主様は使い勝手があると判断されました。これは敷地内の不要物を処分した効果です。
売却には半年程度かかるものと覚悟されていた売主様も、スムーズに売却できたことを非常に喜んでくださいました。
今回、スムーズに売却できたポイントは次の3点にまとめることができます。
- 収益物件専門の部署が、市場にマッチした適正な査定を行った
- 収益物件に関心の高い大勢のお客様にアプローチした
- 買主視点に立って、第一印象のアップに努めた
一棟物件は、極端に言えば、いくらで売るかは査定する業者と売主様次第です。また、今回の物件は、買える人が限られる条件のものでした。多くない購入可能なお客様にきちんとアプローチし、興味を持ったお客様には物件を最善の状態で見ていただくことがスムーズな売却に必要でした。
そうした手段を持ち、信頼できる会社・担当者とお付き合いいただくことは、どのような収益物件の売却においても、重要なポイントだと思います。
さらに二極化が進む2018年後半の不動産投資市場
2018年後半の市場は、基本的に2018年前半の大きな流れ(参考:2018年前半は待ったなし。主役の変わった不動産市場で取るべき戦略)を引き継ぐと考えられます。
具体的には、
- 金融機関の融資引き締めの顕著化
- 1~2億円までの売却物件は、物件数増加・価格下落の傾向
- 富裕層にとっては買い時
というものです。
特に金融機関の融資姿勢は、半年前より更に厳しくなっています。サラリーマン投資家に2割の自己資金を求められるようになってきたと感じていた状況が、今はさらに3割を求められるケースも出てきました。そのため、1年前までサラリーマン投資家が好んで購入した1~2億円の物件が市場に増加し、価格も下落傾向にあります。一方、融資の引き締めに影響を受けない富裕層は、以前よりも好条件で物件を購入しています。今回の事例の買主様は事業を営む富裕層のお客様でしたが、フルローンで購入されました。
全体の市況としては売却が難しくなりつつありますが、今回ご紹介した事例のように、一見不利な物件でも売り方次第でスムーズな売却に繋げることができます。マーケットに即したホットな情報をいち早くキャッチし、物件の特徴やお客様の事情をふまえて提案できるコンサルティング力が当社の強みの一つです。
もし、いま売却をご検討であれば、是非一度お話をお聞かせください。