不動産投資コラム

アパート・マンション経営の違いとは?魅力やリスクなどを解説

アパート・マンション経営の違いとは?魅力やリスクなどを解説

アパート・マンション経営は、どのように始めたらいいのでしょうか。アパート・マンション経営のメリットや魅力、注意点なども含めて解説します。賃貸経営は長期間にわたるので、適切な運営や管理の方法で経営していくことが必要です。また、次の世代にどのようにバトンタッチしていけば良いのかも大切なポイントです。

アパート経営とマンション経営の違いとは?

一見すると同じように感じるアパート経営とマンション経営ですが、多くの違いや特徴があります。具体的にどのような違いがあるのかを見てみましょう。

建物の構造や規模の違い

まず、建物の構造は、木造、軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造に分けられます。
最近は建材や工法の進化によって木造でも鉄骨造や鉄筋コンクリート造並みのクオリティを保てるようになっていますが、一般的には木造や軽量鉄骨造の建物がアパート、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物がマンションと呼ばれることが多いです。
木造では3階まで、鉄骨造や鉄筋コンクリート造では4階以上の建物の建築が可能となり、それぞれの特性を活かして50坪くらいまでの土地であれば木造、100坪程度の広い土地であれば鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築に適しています。

投資に必要な資金の違い

アパート経営とマンション経営には、どのくらいの資金や融資が必要になるのでしょうか。
1棟の建築となると、木造では数千万円ほど、鉄骨造や鉄筋コンクリート造では1億円近くかそれ以上の資金が必要となり、さらに土地から購入する場合は上記の2倍ほどの資金が必要です。
また、マンションは1戸単位で購入することができ、その場合は1,000~2,000万円ほどの資金で手に入れられます。
しかし、これほどの資金が手元にあれば良いですが、用意できる方はそう多くはいないと思います。多くの場合は銀行などから融資を受けて資金を調達する必要があるでしょう。

賃貸収入額の違い

家賃はアパートよりマンションのほうが高めの傾向があります。比較的堅牢な構造であることや、設備やセキュリティがマンションのほうが充実しているケースが多いことが理由の一つです。
また、立地や部屋の広さ、戸数、築年数などによっても大きく差があります。
都心か郊外か、または駅からの距離によって家賃は変わり、一般的に中心地や駅から離れていくに従って家賃は下がっていく傾向です。
基本的には、所有している部屋数に従って家賃の収入は多くなっていきます。
部屋の広さも20㎡のものより、30㎡、40㎡のほうが家賃は高くなりますが、2倍3倍となっていくかというとそういうわけではありません。

必要な経費の違い

ローンや税金、管理費など必要な経費を把握しておきましょう。収入があれば、当然ですが、そのために必要な費用も発生してきます。

1:固定資産税 

毎年土地や建物にかかる税金です。土地面積が広大であるほど高額になりますし、建物構造によっては減税されるなど、税額が異なります。

2:不動産取得税 

土地や建物を取得した時に一度だけかかる税金です。建物を新築した時は6ヶ月から1年ほど遅れて課税されますので忘れた頃にやってきます。地価や建物の構造、床面積によって税額が決まりますが、納期の猶予は1ヶ月ほどしかないので慌てないようにしっかりと資金をプールしておきましょう。比較的に土地面積が広い、重量鉄骨や鉄筋コンクリートのマンションのほうが木造のアパートより税額が高くなります。

3:借入返済金 

金融機関でローンを組んだ時に生じます。毎月返済金に利息が加算されて請求されます。当然ですが、高額のローンであればあるほど、毎月の返済額も高額になります。ただし、建物の構造によって融資期間が異なり、木造アパートは短く、鉄筋コンクリート造のマンションは長期の融資が可能な傾向があります。融資期間の長短でも毎月の返済額は大きく変わりますので、事前にシミュレーションを行いましょう。

4:水道光熱費 

共用部の電気代や水道代です。アパートよりもマンションのほうが共有部分の面積が広いことが多く、水道光熱費も高額になりやすいです。

5:管理料   

建物や部屋の管理を管理会社にお願いした時にかかる費用です。毎月の入金分の5%前後くらいかかることが多いです。これとは別途にエントランスや共用部の掃除やエレベータの管理に費用がかかってきます。一般的にアパートにはエレベータがないですし、マンションと比べて規模が小さいので、管理料を抑えることができます。

6:リフォーム費用 

建物は時間が経過するにつれて傷んできます。傷んでくると賃貸には適さなくなってくるので補修が必要になります。内装も傷みが出てきたり設備も壊れたりします。修繕や設備の入れ替えの費用が必要になります。マンションで屋上がある場合は、ここの補修や防水も必要でその分アパートよりも費用はかさみます。コンスタントにかかるものではありませんが、建物の規模や部屋数が多くなれば多額になってきます。そのためにも資金は日頃からプールしておくことが必要です。

7:区分マンションの経費

区分マンションの場合は、固定資産税や取得税、借入返済金の他、管理費と修繕積立金がかかってきます。共用部の水道光熱費は管理費に含まれるのでかかりません。建物自体の修繕は修繕積立金から支出されるので基本的にはかかりませんが、部屋のリフォームは各自で行う必要があります。

アパート・マンション経営の魅力

アパート・マンション経営の魅力を紹介します。

定期的な家賃収入が得られる

家賃収入が毎月定期的に得られるのが、賃貸経営の一番の魅力です。
賃貸経営も事業の一つですが、物を製造したり販売したりすることと違い毎日の売り上げを気にすることはありません。1ヶ月や数ヶ月単位で収入を考えていけるのも賃貸経営の良いところです。
最近は賃貸物件も数が多いので、入居してもらうための努力は必要です。しかし、一度入居してもらえると何ヶ月何年という単位で家賃が入ってくることになるので少しの努力で安定した収入を得ることが可能です。

関連記事:家賃収入を得て生活はできるのか?仕組みやメリット・デメリットを解説

少ない自己資金で始められる

賃貸経営を始めるにあたっては、数千万円から規模が大きくなれば億単位の資金が必要になってきます。しかしこれだけの資金をすべて揃えられる人はかなり限られてきます。それではどうしたら良いのでしょうか。
賃貸経営をしている多くの方は、金融機関から融資を受けています。そうすることで自己資金が少なくても始められます。購入する土地や建物を担保として資金を借り入れることもできます。以前はほぼ全額の資金を借り入れることができましたが、昨今は20%程度の手持ち資金が必要になっています。

節税につながる方法がある

賃貸経営では、固定資産税や取得税などの税金が軽減されることがあります。

所得税の申告方法には青色申告と白色申告の二種類があり、一般に白色は給与所得者、青色は事業所得者の申告です。

青色申告は事業所得や不動産所得がある人が対象で、税制上の優遇措置もあります。
青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出する必要がありますが、賃貸経営開始から2ヶ月以内に提出すれば、その年度から青色申告ができます。

青色申告に切り換えると、青色申告特別控除があり10万円が所得から控除されます。5棟10室(賃貸用の戸建てが5棟かアパート、マンションの10室)以上の賃貸経営規模があり複式簿記によって記帳をしているのなら、65万円の所得控除を得ることも可能です。青色申告用の会計ソフトを利用すれば、画面上で必要項目を打ち込んでいくと自動的に複式簿記ができるので安心してください。

また、事業で使うパソコンやプリンター、机などの備品を購入した時には、30万円以内であれば一括で経費に計上できます。もし、自宅を事務所として使用する場合は、電気代、電話料金、インターネット料金なども按分して一部を経費として計上できることを覚えておくと良いでしょう。

賃貸経営を始めて何年かすると、建物の修繕でかなりの出費が発生することがあります。もし、所得以上に出費があっても赤字分は3年間繰り越せるのでその分の税金を抑えることができます。
賃貸経営の規模が大きくなり、家族にも働いてもらうようになった際は、専従者給与と言ってその分の給与も経費として認められます。

アパート・マンション経営のリスクと対策

アパート・マンション経営の注意点を把握して対策を立てましょう。

空室リスク

空室があると、当然ですがその分の家賃収入が減少してしまいます。賃貸経営では常に満室ということはありません。
入居者の事情で転勤、結婚、一戸建ての購入や、騒音、トラブル、周辺の環境など賃貸物件自体の原因で退居して空室が発生します。
退居した理由が何であるのかを突き止めて、素早く対処して次の入居につなげて収入を確保していくことが大切です。

建物老朽化リスク

賃貸経営を続けていくと建物は老朽化するので、修繕や設備の交換に費用がかかります。建物は年月が経つにつれて内も外も劣化していきます。
屋根や外壁が劣化していくと雨水などが室内に侵入してきて雨漏りの原因にもなりかねません。水道管が劣化して破損すれば、水漏れでその部屋だけでなく階下の部屋にも被害が広がってしまうこともあるでしょう。電気系統では停電だけならまだしも、ショートによって火災が発生して建物まるごとの被害になってしまいます。
エアコンや給湯器、お風呂、ガスコンロ、IHヒーター、照明機器などの設備も年月が経てば不具合やトラブルが生じてきます。修理で対応できる場合もありますが、10年を超えるような場合は機器の交換もやむを得ないことがあります。
建物本体の補修になると、かなり多額の出費になるでしょう。日頃からこの資金を少しずつでもプールしていくことも大切です。

自然災害などのリスク

地震や火災などの災害で建物が倒壊したり、焼失して賃貸経営ができなくなったりしてしまうことがあります。地震はいつ発生するのか予測はできません。建物が建っている地域がどういうところなのかを把握しておくことで被害はある程度は防げます。ハザードマップで地盤がしっかりしているのか、液状化は起こらないのか、津波の心配はないのかなどを日頃から確認しておき対処していくことが大切です。
台風や雷については天気予報である程度は到来する予想はつきますが、洪水や落雷などの被害を防ぐには日頃の対策が重要です。
そうは言っても、自然の力の前に人間の力は微力です。被害を受けてしまった時に役立つのが損害保険です。火災で建物が焼失してしまった場合だけでなく、風雨や洪水、落雷、雪による被害もカバーしてくれます。しかし、被害を被った時に損害をきちんと補填してもらわないと保険をかけている意味はありません。どんな被害を受けた時にどのくらいの保障が受けられるのか、最近は損害の程度や保険金額が細分化されて契約に手間がかかりますが惜しまずに一つひとつ決めていってください。この手間が想定外の災害時には大きな差になってくるでしょう。
孤独死の問題も多くなっていますが、これをカバーする保険もありますので加入しておくことをおすすめします。後片付けや特殊清掃の費用をカバーして、募集家賃の下落にもある期間対応してもらえます。

安定した賃貸経営をするためのポイント

安定した賃貸経営をするためのポイントを紹介しましょう。

立地を間違えない

建物は建て替えることができますが、土地については動かすことはできません。ですので、どこで賃貸経営を始めるかは大切です。
ライフスタイルによって住みたいところは変わるので、必ずしも駅の近くや街中にこだわることはありません。
単身者、1人で生活する人は利便性を求めるので駅から近いところを希望するでしょう。家族で住む人たちは、必ずしも駅距離にはこだわらずゆったりと暮らしたいとか、子供をのびのび育てたいというところがあるかもしれません。
駅近の街中であれば、1Kや1DKなどの一人暮らし向きの部屋を、郊外であれば2DKや3DKなどの家族向けの部屋を考えていけば良いと思います。
また、大企業や大学などの近くのアパート・マンションはそこに通う人たちに需要はあるでしょう。ただし、ひとたびこれらの施設が移転してしまうと賃貸の需要はなくなってしまうというリスクもあります。

管理や運営の方法を把握しておく

賃貸経営をしていくためにいくつかの管理や運営の方法がありますのでご紹介します。どの方法を採用すべきかを考える参考にしてみてください。

サブリースを利用する

空室に関係なく一定の家賃収入があり、入居者の募集もしてもらうすべてお任せの方法です。
管理会社やサブリース会社と1棟まるごと賃貸借契約を結ぶので、空室のありなしにかかわらず毎月一定の賃料が入ってきます。
○年一括借り上げ、というCMを目にしますが、これは何年間賃貸借契約を結びますということで、何年間家賃は変わらずお支払いしますというものではありません。年数を経て募集家賃が下がることもあります。また、空室が増えて毎月の家賃の支払いが厳しくなれば値下げの交渉もしてきます。
契約当初の数ヶ月間は募集期間ということで、広告料として家賃を取られて実際に入金するのが3ヶ月くらい先からということも多くあります。
契約によっては、建物のメンテナンスや部屋のリフォームを特定の業者で行わないといけない場合もあるので、契約書はよく読み込んで納得がいってから契約をしたほうが良いです。
契約期間が明記されていない場合は、契約を解除する時はかなり面倒になりかねません。

管理を委託する

建物の管理や入居者の募集やクレームなどを管理会社に任せてしまう方法です。 
これは管理会社と建物管理契約を結んで家賃の入金管理、入退居に伴う契約や精算、クレームの処理などを毎月の入金分の3~5%ほどの管理料で代行してくれます。
賃貸経営のほかに何か仕事を持っているような時には便利です。

自主管理

入居者募集からクレーム対応、リフォームまですべてオーナーが行います。
すべてのことを自身で対応していくので上の二つのケースに比べて手間はかかりますが、管理料など余計な出費はなく毎月の家賃はすべて入ってきます。
リフォームなどは材料や業者の選定から行わなければならず、かなり時間も手間もかかりますが自分の思っているとおりの部屋に仕上げることができるでしょう。
また、入居者と直接やりとりをするのでお互いの人となりもわかって長期の入居につながることもあります。

部屋に工夫を施す

魅力的な部屋にするにはどうしたら良いのでしょうか。魅力的な部屋作りと言われても、どこをどうしたら良いのか?考えてしまいますね。百聞は一見にしかずで、いろいろな部屋や間取りを見せてもらうことです。ハウスメーカーの新築見学会や大家仲間のお知り合いに部屋を見せてもらって、間取りや設備の気に入ったところを自分の賃貸住宅に取り入れていきましょう。
気に入った壁紙や床材、設備などがあったら型番をメモしたり、メーカーを教えてもらったりしましょう。
魅力的な部屋作りとは、まず自分が住んでみたいと思える部屋作りです。いろいろな間取りや設備を研究して使いやすい、魅力的な部屋に仕上げていきましょう。
またステージングと言って、分譲マンションのショールームのように家具を設置しておいてその部屋に住んだ時の感じをイメージしてもらって入居につなげるという方法もあります。

エントランスや共有部をきれいに保つ

賃貸経営を安定化させるのは、長期間住み続けてもらうことです。1年や2年で入居者が代わっていくようだと、そのたびにクリーニングやリフォーム、入居募集などのお金も手間もかかってしまいます。
ある程度長く住み続けてくれることは、そこが住みやすい、気に入っているということになります。
そして見落としがちなのが、エントランスや共用部をきれいに保つことです。ゴミやホコリが落ちていれば、入居者の方が気持ちよく住めないだけではなく、物件探しで内見に訪れた方の印象も悪くなり、なかなか新規の入居につながりにくくなります。
週に1回くらいでいいですから、ご自身でホウキとちりとりを持って掃除をしてみてください。これを続けていくと、建物の損傷なども見つけることができて素早い対処ができます。

必要な設備を見極める

管理会社やサブリース会社から入居促進のために新しい設備の導入を提案されます。しかし、これらの提案をいちいち受け入れていたらコストばかりかかってしまいます。
最近では、浴室乾燥機やお風呂の追い炊き機能などは人気がありよく提案されます。たしかに家族で暮らすとなると、洗濯量も多くなり雨が続いた時などは助かります。入浴の時間もバラバラになりがちなので便利な設備です。
1人暮らしの場合だとどうでしょうか。洗濯物が干せなくても室内のエアコンで十分乾かせますし、入浴の際にお風呂を沸かし直す必要はあまりありませんよね。むしろ、宅配ボックスや、無料で使えるインターネットやWi-Fiがあるほうが喜ばれます。 
設備は入居者にあった物を揃えていくべきです。また技術の進歩でいまは最新型でも5年もすれば旧型になってしまいます。
常に最新の人気のある設備を備える必要はありませんが、いかに住まいやすい部屋を提供できるかを考えていくことが大切だと思います。

情報には敏感に

とはいっても、いまどんな設備や間取りが人気なのか?新しい情報に触れておく必要があります。
賃貸募集サイトや賃貸経営者向けのポータルサイトで人気の設備ランキングが見られます。
いまどのような設備が人気なのか、求められているのか、チェックしてみてください。

アパート、マンションどちらにしますか?

自分の現状を把握しよう

数年前の金融機関が関わった不動産投資に関わる不正融資事件以来、収益不動産に対する金融機関の融資姿勢は厳しくなっています。
多くの場合、新築や購入する不動産物件の融資額の20〜30%の自己資金が求められます。
数千万から億単位にまでなる融資金額の20%といってもかなりの額になってきます。自己資金といっても、すべてを現金で用意しなければならないこともありません。定期預金、外貨、株、FX投資、生命保険の返戻金や担保提供できる不動産など、要するにこれから不動産経営をしていく時に災害など不測の事態が起きてもしっかりと返済をしていけるのかを確認したいということです。
これを踏まえて、一度ご自分の資産をすべて棚卸ししてみるのも良いと思います。
それによって、アパート経営かマンション経営でも大丈夫か、まずは区分マンション経営からスタートしたら良いのか、判断できるのではないでしょうか。

借入・収支の面で無理をしない

賃貸経営を開始したにもかかわらず、思うように入居が決まらず収入が入ってこないということもあります。
当初の1ヶ月、2ヶ月なら良いですが、半年、1年と続いていくと返済にも滞りが起きて周囲にも迷惑がかかってきます。
金融機関が融資をする指標として、ストレステストというものがあります。これは、入居率60%、融資金利が4%でも返済ができるのかという一つの基準です。
満室経営をしたいとは誰しも願うことですが、収支計画を作る時には入居率を80%とか70%に設定して収入を考え、これから管理費や光熱費、修繕費、固定資産税、金融機関の返済分などを差し引いて収支を見極めていくことがポイントです。

不動産売却など先を見据えておくことも重要

不動産の売却や次の世代にどのように渡していくのかは、重要なポイントです。アパートやマンションなどの不動産は長期で保有するかなり大きな資産になります。しかし時代を経ていくと不動産の価値というものは大きく変動していくことがあります。

不動産の価値が変動する可能性も

鉄道や高速道路が通ることや工場や学校が進出することで価格が大きく跳ね上がることがあれば良いですが、一方で工場や学校などの施設が撤退して一気に家賃収入が激減してしまうこともあります。しかし、土地や建物を所有しているので固定資産税は払い続けなければなりません。金融機関の借入が残っていれば払い続けなければなりません。いままで収益を生んでいたものが、一気にお荷物、負債を抱えるものになってしまいます。また、ご自身でまとまった資金が必要になってくることがあるかもしれません。こうなると手放そうにも、すぐには売却できない可能性があります。必要な資金を得ることができず売るに売れず、ただ税金や残債を払い続ける面倒で厄介なものになってしまいます。

賃貸経営の成功に向けて

それではどうすればこの危機を回避できるのでしょうか。それには絶えず情報のアンテナを張っておくことです。何も特別な情報を得るということではありません。いつどこに道路や鉄道が通るとか、いつ頃に工場が移転しそうだとか早い段階で情報をキャッチできればどうにもならない事態はある程度回避できたり、値上がりを待って売却できたりするということも可能です。
毎年3月に発表される公示地価や7月に発表される路線価もチェックしておきましょう。前年に比べて上がっているのか下がったのかは、その土地の価格に影響してきます。
また、所有しているアパートやマンションの付近で売りに出されている物件が、築何年でどのくらいの大きさでどんな構造のものが利回り何%で売りに出されているのかを確認しておくことも大切です。もし、自分の物件を売りに出したらいくらで売れるのかはおおよその見当はつけられます。急に売却することになっても価格が借入額を下回ってしまったら、売ったは良いが借金が残ってしまい本末転倒になってしまいます。もしおおよその売却額がわかっていれば、もう少し売り時を延ばすとか、この程度の残債ならば返せるとか判断がつけられて慌てることもありません。
これは相続をさせるから別に価格に関してはあまり気にしなくてもいいという訳ではありません。自宅以外に不動産を所有していると相続税がかかってくるケースが多くあります。納税の資金をどうするのか?詳しくは税理士さんに計算してもらう必要がありますが、不動産の価格を頭に入れておくことで資金計画が立てられ次の世代にスムーズに移行できるようになります。
賃貸経営は物件を手に入れて家賃収入が入ってくればそれでゴールではありません。ここからどのように長年にわたって安定した家賃収入が得られて、そして最終的にどのくらいのお金を手元に残せるのかという一大事業なのです。

佐藤 哲夫
佐藤 哲夫

佐藤 哲夫有限会社ワークス佐藤代表取締役、一般社団法人日本不動産経営協会代表理事

1989年にサラリーマン大家として賃貸経営をスタートし、30年にわたる不動産経営の経験を生かして不動産投資や新築、空室対策などのアドバイスやコンサルティングに取り組む。月刊誌「家主と地主」などに賃貸事例の掲載の他、講演活動も行っている。

 

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