住宅ローン控除を受ける人は「ふるさと納税」に注意!
2016年12月07日
前回、「知っ得!住宅ローン控除のツボ」というコラムを書きました。その際に取り上げたツボの1つに「ふるさと納税」がありました。今回はそのふるさと納税と住宅ローンの関係を掘り下げたいと思います。
ふるさと納税とは?
まず、ふるさと納税とはどのようなものかを、整理しておきます。これがしっかり頭に入っていないと、住宅ローン控除との関係性が理解しにくいと思います。
今は都会に住んでいても、自分を育んでくれたふるさとに少しでも納税できる制度があっても良いのではないか――。そんな考え方から作られた制度が「ふるさと納税」です。
「納税」という言葉がついているものの、実質的には自治体への「寄付」です。ふるさと納税は、自己負担額の2,000円を除いた分が全額控除の対象になります(上限あり)。
好きな自治体を選んで寄付ができ、そのお礼として特産品などがもらえるということで人気は加熱。自治体はこぞって返戻品を魅力的なものにした結果、納税者側もほしい返戻品からふるさと納税先を選ぶという現象も起きています。
2015年からは控除の上限額が約2倍に拡大されたほか、「ふるさと納税ワンストップ特例」もできて、確定申告が不要な給与所得者であれば、年間5自治体までのふるさと納税分は確定申告が不要にもなり、さらに利用が広がっています。
ただし、確定申告の申請手続きは必要です。又、住宅ローン控除や医療費控除などで確定申告を行う人はふるさと納税の確定申告も必要です!
ふるさと納税の控除額はどうなっている?
ふるさと納税で「得をしたい」と考える人のなかには、上限まで利用したいと考える人もいます。ふるさと納税でわかりにくいのは、控除額の計算方法です。いくらまでなら控除を受けられるのでしょうか。
前述のとおり、自己負担額の2,000円を除いた分が全額控除の対象になります(上限あり)。例えば、40,000円分のふるさと納税を行うと、2,000円を引いた38,000円が所得税と住民税から控除されます。
総務省「ふるさと納税ポータルサイト」には、ふるさと納税を行う人の年収と配偶者控除や扶養控除がある家族の人数などに基づく、控除上限額の大まかな目安額が示されています。ただし、あくまで目安にすぎませんので、具体的には住んでいる自治体(ふるさと納税をした翌年1月1日時点で住んでいる自治体)で確認をと強調されています。
ふるさと納税を行う人の給与 | 独身 | 共働き(配偶者控除なし) | 片働き(配偶者控除あり) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
共働き | 子1人(高校生) | 子2人(大学・高校生) | 片働き | 子1人(高校生) | 子2人(大学・高校生) | ||
300万円 | 28,000円 | 28,000円 | 19,000円 | 7,000円 | 19,000円 | 11,000円 | ― |
400万円 | 42,000円 | 42,000円 | 33,000円 | 21,000円 | 33,000円 | 25,000円 | 12,000円 |
500万円 | 61,000円 | 61,000円 | 49,000円 | 36,000円 | 49,000円 | 40,000円 | 28,000円 |
600万円 | 77,000円 | 77,000円 | 69,000円 | 57,000円 | 69,000円 | 60,000円 | 43,000円 |
800万円 | 129,000円 | 129,000円 | 120,000円 | 107,000円 | 120,000円 | 110,000円 | 85,000円 |
1,000万円 | 176,000円 | 176,000円 | 166,000円 | 153,000円 | 166,000円 | 157,000円 | 144,000円 |
1,500万円 | 386,000円 | 386,000円 | 374,000円 | 358,000円 | 374,000円 | 362,000円 | 346,000円 |
*社会保険料控除額は給与収入の15%と仮定
(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より一部引用)
図表2を参照しながら、もう少し詳しく控除額の計算の仕方を見てみましょう。
<所得税の控除>
所得税からの控除額は下のように計算します。
所得税の控除額 =(ふるさと納税額-2,000円)× 所得税率 |
所得税率は、ふるさと納税を利用する本人の税率で計算します。平成49年までは復興特別所得税を加えた税率となります。
なお、会社員・公務員の方が、住宅ローン控除の2年目以降に「ワンストップ特例」を利用する場合は、5か所までのふるさと納税が申請のみで済みます。ただし、「ワンストップ特例」の場合は所得税は対象にならず、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税の減額のみで控除が行われます。といっても、所得税の控除分が受けられなくなるわけではなく、まとめて住民税から控除されるだけの話です。
<住民税の控除>
住民税の控除には「基本分」と「特例分」があります。
まず、基本分は下記の式で計算します。
住民税の控除(基本分) =(ふるさと納税額-2,000円)×10% |
特例分は次の式で計算します。
住民税の控除(特例分) = (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-住民税基本分10%-所得税率) *住民税の控除の特例分は住民税所得割額の20%まで。
|
特例分が住民税所得割額の20%までのため、それ以上の控除は受けられません。その場合、<(ふるさと納税額-2,000円)×20%>の全額の控除を受けることができず、実質の自己負担額は2,000円を超えます。
上限額を超えてふるさと納税を行ったときや、住宅ローン控除を受けて住民税の控除を受けている場合など、思っていたような控除が受けられないこともあるので要注意です。前出の図表1は住宅ローン控除などを受けていない場合の目安であることを忘れないでください。
住宅ローン控除の対象者は「ふるさと納税」を慎重に!
ふるさと納税の控除額の概要はつかめたでしょうか?
今年住宅ローンを借りて家を買った人や、住宅ローン控除を受けている人は、「ふるさと納税」は慎重に行いましょう、と前回も書きました。住宅ローン控除によって、図表1の上限額ではなくなります。
住宅ローン控除額は年末の住宅ローン残高の1%で、10年間控除を受けられますが、最大控除額は入居年や消費税率で異なります。一般住宅の場合、最大控除額は消費税8%または10%が適用される物件で年40万円、中古住宅の個人間売買(仲介)で消費税がかからないものだと年20万円。(中古住宅でも、売主が不動産業者などの物件を購入した場合は消費税がかかります)
居住開始年月 | 種類 | 適用される消費税率 | 年末残高限度額 | 控除率 | 控除期間 | 所得税からの控除合計最高限度額 |
---|---|---|---|---|---|---|
平成26年4月~平成31年6月 | ||||||
一般 住宅 |
8%または10% | 4,000万円 | 1% | 10年間 | 400万円/年 | |
5%または中古住宅でかからない | 2,000万円 | 200万円/年 | ||||
認定 住宅 |
8%または10% | 5,000万円 | 500万円/年 | |||
5%または中古住宅でかからない | 3,000万円 | 300万円/年 |
*住宅ローン控除が所得税で控除しきれない場合、翌年の住民税も控除対象に。 ・消費税8%・10% ⇒ 所得税の課税総所得金額×7%(最高136,500円) ・消費税非課税・5% ⇒ 所得税の課税総所得金額×5%(最高97,500円) |
住宅ローン控除の住民税額がいくらくらい残るのかを把握しないままやみくもにふるさと納税をすると、控除のない単なる寄付になってしまい、メリットがない場合もあります。
住宅ローン控除を受けつつ、ふるさと納税も行いたい場合は、
<1>今年の所得見込み額から、所得税と住民税を試算する
昨年と同様なら、昨年の源泉徴収票を参照して大まかに把握するのも手です。
<2>住宅ローン控除額を試算(特に、住民税まで及ぶかどうか)
今年末の住宅ローン残高がいくらかを調べ、それに1%をかけて住宅ローン控除額を計算します。
まずこの2つをご自身でやっていただく(あるいは税理士に依頼する)ことになります。
<3>住宅ローン控除後に残る所得税は?住民税は?
住宅ローン控除後にどれくらいの所得税・住民税が残っているかによって、最終的なふるさと納税の目安や、そもそもふるさと納税を行うべきかどうかがわかります。
ちなみに、住宅ローン控除が所得税で控除しきれない場合、翌年の住民税も控除対象になることも加味して考えましょう。一般住宅の場合、消費税8%・10%適用なら、住民税は最高13.65万円まで、中古住宅の個人間売買で消費税が非課税なら、住民税は最高9.75万円まで控除を受けられる可能性があります。
住宅ローン控除分を引いた後の所得税、住民税はどうなるでしょう?
□所得税・住民税とも残っている(所得税 円、住民税 円) □住民税は残っている(金額 円) □所得税・住民税ともあまり残らない |
所得税・住民税に残る部分があるなら、ふるさと納税が受けられる可能性がありますが、反対に残りがほぼないようなら、ふるさと納税の節税メリットはなくなります。所得税・住民税に残りがあってもそれが全額ふるさと納税に充てられるわけではありません。<住民税の所得割の20%>を1つの目安にするといいでしょう。
苦手な人も多い税金。ふるさと納税や住宅ローン控除をきっかけに勉強してみるのもいいですね。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。
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