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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンテクニック

あなたは大丈夫?住宅ローンのああ勘違い<1>

2017年02月15日

住宅を購入する段階になって、急に勉強に迫られることが多い住宅ローン。わかっているようで、ひょっとして「勘違い」していることはありませんか? 実際の相談現場で実際に見かけたことがある「勘違い」の例を取り上げます。

<勘違い1>変動金利型の金利は5年間変わらない!?

変動金利型に関して勘違いをされている方は少なくないように思います。その1つが、「変動金利型の金利は5年間変わらない」というもの。

変動金利型に関しては、過去記事「変動金利型は金利上昇期の行動を決めて利用しよう」の中でもその特徴を整理していますが、変動金利型の返済額は5年ごとの改定になっています。ですが、実際の適用金利は年2回見直されています。

「返済額が変わらない」ことを「金利が変わらない」と思い込んだがゆえの勘違いでした。実際には、適用金利が変われば、返済額が変わらなくても、元金と利息の割合が変わっているのですが、こうした仕組みをしっかり理解していないと、勘違いが起こるのでしょう。

<勘違い2>変動金利型は金利が1.25倍までしか上がらない!?

もう1つ、変動金利型でまれにみられる勘違いがコレです。返済額は5年間変わらないものの、6年目には返済額も見直されます。このとき適用金利が大きく変動していても、返済額は従前の1.25倍が限度となっています。金利ではなく返済額が1.25倍までということです。金利には上限は設けられていません。

変動金利を利用しようと考えているにも関わらず、こうした勘違いをしている方に、「未払利息」について聞いてみると、「よくわからない」と答えるケースがほとんどです。金利上昇が続くと、返済額の中の元金と利息の割合が変わって利息分が増え、結果、元本があまり減らずに利息ばかり支払う状況になる場合もありうるのが、変動金利型のリスクです。

さらに金利上昇が続くと、返済額<金利となることもあり、「未払利息」が発生します。未払利息が発生すると、毎月の返済額で金利分すら払い切れずに、元金が増えていく状況です。よほどでなければ起きませんが、そうしたリスクが全く頭にない状態で変動金利型を利用しようとしているのは、キケンすぎます。

<勘違い3>金利変動リスクを回避するには、とにかく全期間固定がよい!?

「金利変動リスクをとりたくない」からと、全期間固定を選べばいいかというと、そうとは限らない場合があります。

当初は期間35年で借りるものの、途中の繰上返済が見込めたり、あるいは少なくとも定年時に退職金で完済する予定であれば、全期間固定である必要がない場合もあるでしょう。

例えば、3,000万円を35年、全期間固定、ボーナス払いなし、元利均等返済で借りる場合を想定します。ある銀行では、20年固定で1.294%、20年超1.404%です(2017年2月時点)。借入者が現在40歳で、退職金を60歳で受取れるケースで考えた場合、はたして35年固定を選ぶ必要があるでしょうか。

20年間で完済する見込みの場合は、20年固定を選択すれば、実質的な全期間固定になります。返済総額で見ると、約52万円の差になります(表1)。

表1 20年固定で繰上返済vs全期間固定で繰上返済
(借入額3,000万円、全期間固定、期間35年、ボーナス払いなし、元利均等返済、繰上返済は期間短縮型)
条件金利月返済額返済総額
20年固定で借り、20年経過時点で残債を全額繰上返済 1.29% 88,80円 約3,583.8万円
35年固定で借り、20年経過時点で残債を全額繰上返済 1.40% 90,393円 約3,636.2万円
*240回目に繰上返済

退職金だけでなく、繰上返済を予定に入れる方も少なくありません。私も相談業務の中で、繰上返済のシミュレーションを行うことがありますが、無理のある返済計画は危険ですので、確実な路線で行います。その上で、固定金利期間を決める材料にすることはあります。

<勘違い4>保証料がかからない住宅ローンの方が有利!?

住宅ローンを借りる際に、金融機関によっては保証料がかかります。保証料は、ある銀行で、3,000万円、借入期間35年で借りた場合、約61.8万円かかります。住宅ローンの中には、フラット35をはじめ保証料がかからないものもあります。保証料がかからずこの金額が浮くのであれば、これはお得!と思いがちですが、一概にそうとは言えません。単純な思い込みは「勘違い」のモトです。

保証料がかからなくても、事務手数料が同程度かかる場合や、団体信用生命保険にかかるコストで、逆転する場合もあり、結局のところ、諸費用などを含む総返済額で比較をする必要があります。

表2に示した事例のように、保証料がない商品よりも、保証料があっても有利になるケースもあります。保証料や事務手数料、団体信用生命特約料といった諸費用を加味して比較して初めて、どちらが有利かがわかります。決めつけずに、しっかり試算して比較することが大事です。

表2 保証料あり住宅ローンvs保証料なし住宅ローン
(借入額3,000万円、全期間固定、期間35年、ボーナス払いなし、元利均等返済)
金融機関A銀行(保証料あり)B銀行 フラット35
(保証料なし)
金利 1.29% 1.10%
(融資率90%以内の場合)
保証料 61.8万円
事務手数料 3.24万円 32.4万円(借入額1.08%)
団体信用生命 204.1万円
月返済額/総返済額 88,801円/3,729.6万円 86,091円/3,615.8万円
総額 3,794.7万円 3,852.3万円

ちなみに、保証料はかつては一時払いのみでしたが、現在は0.2%を金利に上乗せするタイプもあります。金融機関によっては、両方の保証料タイプを用意しているところもあります。

表2のA銀行と同条件で試算した場合、金利は1.49%となり、総返済額は3,851.7万円で、金利相当額は122.1万円。一括払い保証料が61.8万円なので、金利上乗せタイプは約2倍の負担と言えます。

<勘違い5>(同じ金利タイプなら)住宅ローンは金利が低い方が有利!?

この勘違いをされる方もたまにいらっしゃいます。同じ金利タイプであれば、金利が低い方が有利と決めつけをして判断してしまう方がいます。金利が低くても、総返済額で本当に有利かどうかを比較する必要があります。

金利が低くても、次の3項目の諸費用の内容により、金利差分がひっくり返るケースはいくらでもあります。
・保証料(かかる・かからない。かかる場合は一括払いか金利上乗せか?)
・事務手数料(定額化、元金に対する割合か?)
・団体信用生命特約料(かかる・かからない)

前項の表2を見ていただくと、金利が低い方が返済総額では多くなっているのがわかります。そのため、住宅ローンは金利が低い方が有利とは言い切れません。住宅ローンを金利だけで比較してはいけないということです。やはり、総返済額をしっかり試算した上で比較すべきです。

以上5つの「勘違い」を見てきましたが、あなたは問題なかったでしょうか。勘違いに陥ることなく、よりよい住宅ローンを選んでくださいね!

執筆者:豊田 真弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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