Q. 中古住宅を買ってリフォームしたいけど、ローンはどう借りればいい?
2018年09月05日
A.選択肢はいくつかあるが、手順やダンドリに大きく影響する
中古住宅を購入して、自分好みにリフォームして住もうと考える人が増えています。そこで、第3回のお悩みは、住宅購入とリフォームのそれぞれのローンの組み方について取り上げます。
「住宅ローン」と「リフォームローン」の大きな違い
リフォーム費用についてもローンを借りることができますが、「住宅を買うときには『住宅ローン』を借り、リフォームするときには『リフォームロ-ン』を借りる」と、思っていませんか?必ずしもそういうわけではありません。
銀行などの多くの金融機関では、住まいに関するローンとして、「住宅ローン」も「リフォームローン」も扱っています。その大きな違いは、担保を必要とするか否かです。「住宅ローン」は有担保ローンなので、購入する住宅を担保にしてお金を借ります。金融機関にとっては、返済ができない場合に担保である住宅を処分して貸したお金を回収できるので、リスクが低くなります。一方、「リフォームローン」は無担保ローンです。そのため、それぞれの融資額や返済期間、金利タイプなどが違ってきます。
「住宅ローン」と「リフォームローン」の主な違い
「住宅ローン」(有担保型)
担保: | 必要(抵当権が設定される)。審査が厳しく、借り入れに時間がかかる |
融資額: | 借りられる額が多い(1億円まで) |
返済期間: | 長い(最長35年) |
金利: | 低い |
金利タイプ: | 金融機関によって異なるが、変動型、固定期間選択型のほか、長期固定型の利用も可能。 |
「リフォームローン」(無担保型)
担保: | 不要。審査が少なく、借り入れに時間がかからない |
融資額: | 借りられる額が少ない(500~1,500万円程度) |
返済期間: | 短い(10~15年以内など) |
金利: | 住宅ローンより高め |
金利タイプ: | 変動型、ないしは固定期間選択型。短期間で金利が変動するものが基本 |
「住宅ローン」は審査が厳しいなど借りるのに手間がかかりますが、長期間の返済ができ、低金利のローンが多いのが特徴です。一方、「リフォームローン」はスピーディに借りられる反面、融資額は少なく、返済期間は短め、金利は高めになります。
リフォーム費用もまとめて借りられる「リフォーム一体型住宅ローン」の取り扱いが増加
「住宅ローンを借りる際に、リフォーム費用も上乗せして、まとめて借りられると便利なのに」という声が多かったこともあって、最近では「リフォーム一体型住宅ローン」と呼ばれる商品を取り扱う金融機関が増えています。
住宅金融支援機構が調査した「2017年度民間住宅ローンの貸出動向調査結果」を見ると、取扱中の商品として「中古・リフォーム一体型ローン」を挙げた金融機関の割合が7割程度もあることが分かります。
リフォーム一体型住宅ローンを利用するメリットとして、次のようなことが挙げられます。
・35年返済など長期間の返済で低金利なローンが、リフォーム費用も含めて利用できる
・利用するローンが1つなので、住宅ローンとリフォームローンを組み合わせて利用する場合に比べて、諸費用や手間を軽減できる
ただし、利息は「金利×返済期間」で変わりますので、低金利だからといって支払う利息の合計額が少なくなるとは限りません。リフォームローンの方が金利は高いといっても、利息のかかる期間は5年や10年などです。金利が低くても35年間ずっと利息がかかる場合と比べると、住宅ローンとリフォームローンをそれぞれに組んだ方が利息の合計額が少なくなる場合もあります。
実際には、リフォーム費用や選択した返済期間や金利などによって変わります。低金利=利息が少ないと安易に考えずに、不動産会社や金融機関に試算をしてもらうなどして検討することをおすすめします。
リフォーム一体型住宅ローンを利用するには、段取りの良さがものをいう
リフォーム一体型住宅ローンを利用するには、大きな条件があります。「住宅ローンの申込時にリフォーム工事額が確認できる」ことが必要です。一般的には、リフォーム工事を請け負う事業者による「工事請負契約書」や「リフォーム工事見積書」などの提出を求められます。
ところが、これは簡単なことではありません。リフォーム費用を見積もるには、事業者が住宅の中に入って状態を確認したり、計測したりしますので、原則的には中古住宅の引き渡しを受けて、自分のものになってからとなります。引き渡しを受けるには、中古住宅の代金をすべて支払う必要がありますので、この時点で購入費用の住宅ローンが下りている必要があります。
売り主の了解を得れば、売買契約後あるいは契約前でもリフォーム事業者に住宅の中に入って作業をしてもらうこともできます。その場合でも、リフォーム事業者を選ぶのに時間がかかったり、リフォーム工事の内容に時間をかけてしまうと、見積もりがなかなか確定しません。つまり、中古住宅を選ぶことと並行して、リフォーム事業者選びやリフォームイメージを固めておく必要があるのです。
リフォームは、実際に着工してみると想定外のことが起こったり、着工後にやりたいリフォームが変わったりといったことも多く、工事費用が変わることも少なくありません。借りる額を見積もり等で決めてから厳しい審査を受けているので、簡単には増額できない点も注意しておきましょう。
「中古住宅+リフォーム」ローンの選択肢はさまざま
ではどういった借り方があり、どういった人に向いているのでしょう?
中古住宅の購入費用とリフォーム費用の捻出パターン
中古住宅購入 | リフォーム工事 | |
(1) | 住宅ローン | リフォームローン |
(2) | 住宅ローン(諸費用含) | 自己資金 |
(3) | リフォーム一体型住宅ローン |
(1)住宅ローン+リフォームローン
住宅購入費用とリフォーム費用をそれぞれローンで借りる選択肢です。リフォームローンは5年や10年などの返済期間になるので、その間は住宅ローンの返済とダブルで返済する必要があるので、返済負担は重くなります。ですが、それ以降は住宅ローンの返済額だけになり、負担は一気に軽くなります。共働きの間にガンガン返したい人、5年、10年後に支出が増える人などには、向いている借り方と言えるでしょう。
(2)住宅ローン(諸費用まで)+自己資金
住宅購入はできるだけ自己資金に使わずリフォーム費用に自己資金を回す選択肢です。場合によっては、諸費用まで住宅ローンを利用することになるかもしれません。ある程度自己資金がある人やボーナスなど自己資金が増やせる人に向いていると言えるでしょう。
(3)リフォーム一体型住宅ローン
(1)と(2)は、中古住宅を決めてからじっくりリフォームの内容を決めたい人の選択肢となりますが、(3)は、ある程度築年数が経ったものを購入してフルリフォームをしたいなど、リフォームのイメージが固まっている人の選択肢となります。リフォーム費用の占める割合が多い人に向いている借り方と言えるでしょう。
ただし、金融機関によっては、住宅ローンの最優遇金利が適用されない場合があるなど、さまざまな違いがあるので、事前にリフォーム一体型住宅ローンの条件などを確認しておく必要があります。
いずれの場合も、中古住宅を選ぶ際のパートナーとなる不動産会社に、ローンの借り方や全体のダンドリの仕方などについて事前に相談し、「知らなかったので断念した」ということのないようにアドバイスを受けることをおすすめします。
住宅ジャーナリスト
早稲田大学卒業。リクルートにて、『週刊住宅情報』『都心に住む』などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナー等の講演にて活躍中。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。著書に『買い上手こそ!中古マンション 購入&リフォーム 得する選び方・改装術』(小学館)他
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