不動産投資コラム

不動産投資の代表的な戦略 後編

第4回は前回に続いて、不動産投資のプランを決定するための事例として、3つの投資法を説明したいと思います。

2回にわたってご紹介する6つの手法は、「アパート建築に向いている土地を元々所有している」「数千万円単位のキャッシュをすでに持っている」というような、いわゆる「資産家」でなくても実践が可能なものばかりです。
ですが、それぞれの手法は、メリット・デメリットはもちろん、実践しやすい人とそうでない人の差も大きく、複数のプランを両立させることが難しい場合もあります。

多くの事例を知り、ベストな選択をしていただければ幸いです。

4.光速投資法

積算、収益とも銀行評価の高いRCマンションをフルローンで購入し、とにかく短期でキャッシュフローを最大化する投資法で、今田信宏さんという著名な投資家さんが名付けたことで、このように呼ばれています。
とにかく「全額融資」にこだわることに重点を置いているため、銀行の担保評価が高い物件にこだわることが特徴です。
都内や大都市圏では10%を超える利回りで平成築のRC物件が出るケースが少なく、土地の銀行評価と売買の実勢価格に乖離がある関係でフルローンが出にくいため、投資エリアは県庁所在地などの地方都市になる場合が多いです。
(※銀行が担保評価の指標にする「相続税路線価」と実際の不動産相場は、都市圏ほど差が大きくなるという性質があります)

◆この手法のメリット
短期で月収100万円を超えるキャッシュフローを生むことができ、ハッピーリタイアメントに最も早く到達できます。
物件の選定方法は、「銀行の評価が高いかどうか」を第一に考えるため、合格点を出せる物件は少ないものの、選ぶのは意外と簡単です。
また、「自分が融資を受けた物件は、次に買う人も融資が受けやすい」場合が多いので、出口戦略が立てやすいこともメリットです。

◆この手法のデメリット
ほとんどの物件で、購入した年度の収益が全体のピークとなり、あとは修繕費や税負担(支払い金利や減価償却費が年々減少するため)の増加、家賃の低下などが発生するため収益は下落していく宿命にあります。
ただし、家賃や入居率については、「大家の経営力」が発揮しやすいエリア(都区内のように頑張らなくても楽勝であったり、過疎地のようにどうしようもなかったりすることがない)であるため、努力とノウハウ次第で経営を安定させることも可能です。

◆この投資法を実践する場合のポイント
高いレバレッジで大規模な投資を行うため、常に出口戦略を考えながら投資をする必要があります。自分だけが融資を受けるような物件を購入してしまうと、売るときに買ってくれる人がなかなか見つからないので大変です。
逆に安定経営を長期で続けられるスキルがあれば、市況を見据えて最も良いタイミングで物件を売却することができるので、莫大な収益を手にする可能性もあります。
この投資法で生み出したキャッシュをもとに、次第に「良い立地」「低レバレッジ」の投資へシフトしていくのがお薦めです。

◆この投資が向いている人
・銀行の審査基準上、一定以上の属性と金融資産が必要です。給与年収が多少低くても、現金で区分や戸建てを購入することで属性評価を上げることはできますが、いくら収入が多くても金融資産が不足していると審査上かなり不利です。(まともに審査してもらえないことも多いです)1億円の物件を融資を受けて買うとしても、2千万円くらいの金融資産が必要になることがほとんどです。
・光速投資法に向いた物件は人気が高く、取り合いになることが多いので、相当な熱意と行動力が必要です。

5.23区限定 狭小新築投資法

戸建て分譲などには向かない土地を激安で購入し、「狭いんだけどそう感じない」というデザイナーズアパートを建築することで、単位面積当たりの賃料を上げ、高い利回りを実現するものです。
地価が元々安い地域では土地を安く仕入れたメリットが出しづらく、賃貸需要が低い場所では狭い間取りは不人気なので、23区内限定の投資法と言って良いと思います。

◆この手法のメリット
都区内の新築ということで、入居付けにまったく困らないのが最大のメリット。サブリースも好条件で契約できることが多いので、客付けに苦労するどころか、客付けをする必要さえない場合もあります。
また、木造新築ということで建築当初は修繕費がほとんどかからず、固定資産税も安いので、キャッシュの手残り率が比較的多いのも特徴です。

◆この手法のデメリット
単位面積あたりの賃料を上げるには、おしゃれなデザイナーズでなければならず、建築士との打ち合わせや作業工程の管理など、通常の新築より手間がかかります。
建築に適した土地を自力で見つけて価格交渉しなければならないことも考えると、実際に収益が発生するまでの期間がかなり長期に。さらに、この投資法の場合は土地をキャッシュで購入しなければならないので、最低でも1千万円以上の現金を持っておく必要があります。
メリットは莫大ですが、参入障壁はかなり高いかもしれません。

◆この投資法を実践する場合のポイント
上記のように、未経験者が試行錯誤しながら行うには大変ですので、建築士さんなどとチームを組んで実践してください。
また、新築の場合はどうしても「建築費を叩く」ことで高い利回りを実現しようとしてしまいますが、やはり安く建築した物件は「それなり」の品質になってしまいます。
土地の方を安く購入することに力を注ぎ、建物は「適正な価格」で建築するよう心掛けてください。

◆この投資が向いている人
・都内近郊に住んでいて、良い土地に素早く買付を入れられる人
・1千万円以上の自己資金がある人
・アパート建築の過程を楽しめる人

6.土地値アパート投資法

人気ブロガーの石渡浩さんが広めた投資法です。
建物にはこだわらず、土地値(路線価)以下で売られているアパートを購入する方法です。更地にすれば路線価以上で売れるのに、上物(アパート)があるためにある程度の利回りを確保しなければならず、その結果土地値以下での売却となっている物件を購入します。 広い駐車場があり、建ぺい率にかなり余裕のあることが多い。

◆この手法のメリット
建物を解体して土地をして売却すれば、少なくとも購入価格以上で売却できるため、出口のリスクは非常に低いと言えます。
また、金融機関は建物に比べて土地の価値を重視して担保評価をするので、物件の築年数に関わらず融資を受けやすいのもポイントです。ハイレバレッジと安全性を両立する投資法だと言えるでしょう。

◆この手法のデメリット
ゆったりとした敷地に余裕をもって建築されている物件が多いため、15%以上の高利回り物件に巡り会える可能性は、首都圏ではほとんどありません。従って、キャッシュフローの面から考えると光速投資法には劣ります。
また、駐車場付きの広い敷地付きのアパートは、首都圏の駅近くにはほとんどありませんので、入居の競争力という意味では劣るかもしれません。

◆この投資法を実践する場合のポイント
築浅のアパートが土地値以下で売りに出ることは稀なので、建物の法定耐用年数を超えた返済期間で融資を受けることが多くなります。そのことが、一部の金融機関に対して次回以降の融資審査上不利になることがありますので、注意が必要です。

◆この投資が向いている人
・すでにある程度のキャッシュフローがあり、今後は資産性を高めていきたい人
・安全に投資規模を増やしていきたい人
・RC投資で発生する多額の税金にうんざりした人
・投資をどんどん加速させていきたい人

まとめ

ということで、最近流行りの投資法について分析と、自分の意見をまとめてみました。
この他にも、地方で新築をする投資法、区分マンションを現金買いしていくような手堅い投資法もあります。

投資のスタンスを決めるにあたっては、ご自身のライフスタイルも考えた上で、投資としてのリスクとリターンだけでなく、自分の性格や目指したい生活に合っているかどうかも重要な選択ポイントになります。

しっかり軸を定めた上で、右往左往せず信じた投資法に突き進むのが、ハッピー&リッチな人生への近道だと思います。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。

 

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