不動産投資において収益をあげるためには、最初に「いかに物件を安く買うか」が非常に重要であるということを前回のコラムでお話ししました。ただ、物件を購入しただけでは意味がありません。購入後に満室稼働させてこそ意味があります。
現在、新築物件が次々と建設され、日本全体の空室率が30%を超えるといわれていますが、私の物件は過去15年間、約98%以上の稼働率で運営しています。そこで今回は、私がどうやって高稼働率で運営しているか、ノウハウをお話ししたいと思います。
■満室稼働させるために必要な2つの力
物件を満室にするために重要なこととして
・物件力
・営業力
の二つが必要です。
お部屋を貸してお客様からお金をいただくわけですから、まずは賃貸に出す物件そのものを見てみたい、住んでみたいと思われなくてはなりません。そのためには物件そのものの魅力が必要です。もちろん、物件の魅力として立地は重要です。都心部であれば駅からの距離、地方であれば駐車場の有無は重要な要素といえるでしょう。
しかし、それ以外にも入居者に選ばれるための「物件力」に必要なことはいくつもあります。また、どんなに良い物件を所有していたとしても自然に入居者が集まるということはありません。「営業力」をあげるためには、その物件を紹介してくれる管理会社・仲介会社の協力が必要です。
この物件力と営業力の両輪があってこそ物件は満室運営を続けられるものです。
それでは、それぞれについて詳しく説明いたします。
1)物件力をあげるためのノウハウ
・建物の周りの徹底的な清掃
物件力を上げるために必要なのは、お金をかけることだけではありません。物件が埋まらないから見て欲しいという相談を受けて実際に見てみると、草はぼうぼう、階段や廊下の天井には蜘蛛の巣が張っていて、ポストのまわりにゴミが散らばっている、なんていう物件はたくさんあります。こんな物件に内見にきた方の第一印象はとても悪いはずです。
定期的に清掃をするのは当たり前ですが、「空室があるときは特に綺麗にする」ことを心がけましょう。台風のあとや落葉の時期などはあっという間に物件が汚くなります。
荒れ放題では物件の第一印象が悪くなります※写真はイメージです
・入居後のイメージが浮かぶホームステージングを
部屋は退去があったらすぐに汚れたクロスの清掃や貼り替えを行い、水回りもふくめてハウスクリーニングを行ってください。たまに入居者が決まってからやる、という大家さんもいますが、ごみや髪の毛だらけの水回りを見せて、決めてくれたら綺麗にするといっても決める訳がありません。それでは遅すぎます。
また、最近はホームステージングといって、ちょっとした観葉植物花や家具を配置している物件も増えてきました。新築のモデルルームも同じ発想ですね。家具などがおいてあることで、生活している自分の姿がイメージしやすくなります。
ハウスクリーニング後に、家具などを置く「ホームステージング」を実施
・最先端設備の導入
今の時代はめまぐるしく変化しています。昔はインターネット無料物件などは全然ありませんでしたが、今はかなり多くの物件でインターネットが無料で利用できるようになりました。また、10年前にはなかったスマートフォンは、ほとんどの人が持っています。パソコンはほとんどノートPCになり、有線でつないでいたインターネットは、ホテルでも喫茶店でも職場でもWi-Fi接続です。
私の物件は地デジ放送も光ファイバーも真っ先に導入してきましたが、ちょっと前から入居者からWi-Fiはないんですかという質問が増えてきて、今はすべての空室をWi-Fi対応にしました。
これからオリンピックにむけて4K・8K放送も本格化します。地デジの時もそうですが、美しい映像に慣れてしまうと元に戻れません。本格的に4K・8K放送が開始された時に物件が対応できていないようでは入居者の不満になり、退去につながりかねませんので、注意が必要です。
ほかにも、Amazonや楽天などの通販でものを買う人が増えているため、宅配ボックスなども必須の設備です。
宅配ボックスは今の時代に必須の設備です
以上のように空室を少しでも早く埋めるためには提供する部屋を価値の高いもの・魅力的なものにしていくことが必要です。不動産経営者として、このような時代の流れに常にキャッチアップする感性は必須です。
また、積極的な設備投資やホームステージング等の演出を行っていくためにも、資金の確保、つまりキャッシュフローを意識した運用が必須となります。
空室があるのにすべてのキャッシュフローを次の物件購入の再投資資金にしてしまうのではなく、普段から一定の金額を所有物件への機能アップのための資金として残しておくことが重要です。既存物件に対する追加の投資は必ず必要になるものと認識してください。それがその物件の家賃の維持もしくは家賃のアップにつながり、結果として稼働率を向上させ、さらなる手残り資金の増加につながります。
2)営業力を上げるためのノウハウ
いい部屋を提供すれば満室になるかというと、そう簡単にはいきません。世の中のどのような商品も、同じ商品でも営業担当者や営業店によって売り上げが全然違います。不動産も、同じ部屋でも仲介会社や管理会社によって入居申し込み率が変わり、その多くが営業担当者にかかっています。優秀な営業担当者が自分の部屋を優先的に決めてくれるようにするにはどうすればいいかをお話しします。
・不動産会社へのレスポンスを早くする
今は入居者の多くがインターネットから知識を得ていて、単純に募集家賃のまま決めてくれる方ばかりではなくなってきています。すなわち、様々な条件交渉が入ります。家賃があと1割くらい安かったら、礼金を無くしてくれたら、といった交渉が現場では行われます。
その際に仲介会社は大家や管理会社に連絡を取り、条件交渉に応じられるかどうかを聞いてきます。その時に即答できるかどうかはとても大事です。「あとで返答します」と答えて相手を待たせている間に他の物件に申し込まれてしまいます。
このような交渉事は気持ちがホットな時に決めてしまわないと決まりません。時間的猶予はないのです。こういう時にすぐに返答してくれる大家さんの物件は営業担当者にとってもやりやすいのです。絶対に交渉に応じないとか、いつも文句ばかりいう大家さんの物件は営業担当者の中で優先順位が落ちてしまいます。
今の時代、交渉が入るのは当たり前と理解して、自分が直接回答するときはもちろんのこと、管理会社にも「どの程度の条件交渉であれば即答して良いか」を伝えておくことは大切です。私は内見の連絡が来たときには「多少の条件交渉には対応するので、なるだけ決める方向でよろしくお願いします」と伝えるようにしています。このような対応を続けることでこの物件の大家さんは話が早いと営業担当者にも認識され、積極的に内見者を連れてきてくれるようになります。
・募集条件を需要と供給に合わせて変更する
賃貸募集の繁忙期と言えば1月から3月ですね。この時期は多くの内見希望者がやってきます。すなわち物件に対する需要が一番高い時です。
世の中では需要と供給のバランスが崩れると価格の変動が起こります。需要が高くて供給が少ないと価格は上がり、需要が減って供給が多いと価格は下がります。同じことが不動産業界にも言えます。繁忙期は需要が高い時期ですので物件は家賃が多少高くても決まりやすく、それを過ぎると需要が大きく減って決まりにくくなってしまいます。
例えばスーパーのお惣菜、閉店間際で売れ残りが多いと最初は20%、次に30%、最後は50%引きになりますね。需要がなくなり、商品が売れ残れば廃棄することになってしまいますので、優秀な経営者ならこのような価格調整を行います。
賃貸経営も同じです。需要が大きく変わっても敷金・礼金・家賃および広告費も何も変えずにひたすら入居者を待つ方が本当に多い。需要が多いうちは強気の家賃で募集してもかまいませんが、需要の変化に応じてこのあたりを調整してしっかりと空室を埋めてしまうほうが、多少の家賃の低下があったとしても、何ヵ月も空室にするよりはずっとましだと思います。
いかがでしょうか。
いくら日本全体の空室率が上がってきているとはいえ、満室経営している大家さんはたくさんいます。その一方で、空室に苦しんでいる大家さんもたくさんいます。しかし、それには理由があります。もし自分自身の所有物件に空室が多いのだとしたら、何か問題があるはずです。きちんとした対応さえとれば、必ず満室になるはずです。今回のコラムが空室対策の参考になれば幸いです。