不動産投資コラム

不動産売却時にかかる税金の計算と節税方法

不動産投資をするにあたって、出口(売却)戦略を考えるのは、非常に重要だと思っています。

購入した物件に思い入れはあるものですが、所有し続けることで建物の大規模修繕費用がかかったり、建て替えも検討しなければなりません。
経営として、その費用をかけるべきか、その費用がかかる前に売却するべきか、冷静に判断する必要があります。

今回は、売却した場合の税金について解説します。

譲渡所得の計算方法

個人の不動産の売却については、譲渡所得に分類されます。
譲渡所得は、分離課税といって、他の所得(不動産所得や給与所得など)とは別に計算をして、税率をかけます。

譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

[譲渡収入]
譲渡収入とは、売却代金のことです。
固定資産税の精算金は、売却代金の一部に該当するので、売却代金に含めないといけません。

[取得費]
取得費は、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料などですが、建物の取得費は、購入代金または建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額になります。

なお、賃貸物件の場合には、購入時の登記費用や不動産取得税は、すでに必要経費とされているため取得費には含まれません。

[譲渡費用]
譲渡費用は、譲渡(売却)のために直接かかった費用になります。

(例)
・売買契約書に貼る印紙代
・仲介手数料
・売却に際して行ったリフォーム費用
・更地で売却する場合の家屋の取壊し費用 など

なお、資産の維持管理のために行った修繕費や所有期間中の固定資産税、(根)抵当権の抹消費用は譲渡費用に含まれません。

譲渡所得がプラスになれば、譲渡益になります。
つまり、売却した結果いくらもうけたのか(キャピタルゲイン)に対して課税されます。

これがマイナスになれば、譲渡損(キャピタルロス)で、課税されません。
譲渡所得の税率は、短期譲渡か長期譲渡かによって異なります。

短期譲渡とは、譲渡する年の1月1日時点で5年以下の所有で税率が39.63%
長期譲渡とは、譲渡する年の1月1日時点で5年超の所有で税率が20.315%

譲渡する年の1月1日時点で判定します。
例えば、平成28年9月に売却した場合、平成23年7月に取得した不動産は、期間は5年を超えているのですが、譲渡する年(28年)の1月1日時点では、5年以下になるので短期譲渡になります。

[計算例]
7年前に1億円で購入した賃貸物件(土地7,000万円、建物3,000万円)を1億3,000万円で売却した場合。
譲渡するにあたって、収入印紙6万円、仲介手数料394万円かかった。
売却した時点の建物の未償却残高は、600万円である。

1億3,000万円-(7,000万円+600万円+6万円+394万円)=5,000万円(譲渡所得)

5,000万円×20.315%(長期譲渡)=1,015万7,500円(所得税、住民税)

譲渡の特例と節税法

次に、売却時に適用される特例と節税について解説します。

(1)平成21年、平成22年に購入した物件を売却する場合
土地の売却益から1,000万円を控除してくれます。
ただし、5年超で保有していることが要件になります。
平成21年に購入された方は、平成27年以後の売却、平成22年に購入された方は平成28年以後の売却から適用になります。

(2)平成21年、平成22年に土地を購入し、届出をした場合
平成21年または平成22年に土地を購入し、その翌年3月15日までに特例の適用を受ける届出をした場合には、その後10年間に別の土地を売却した際に、利益を圧縮(課税の繰り延べ)できる特例があります。

土地を購入した年によって圧縮割合が異なります。

[平成21年に土地を購入した場合]
売却益の80%(21年の土地の取得価額を限度)

[平成22年に土地を購入した場合]
売却益の60%(22年の土地の取得価額を限度)

購入した土地とは別の土地が減税の対象となる点で、(1)と異なります。

(3)10年超保有していた物件を売却し、新たに買い替えする場合
買い替えにより取得した物件の価額により最大80%利益を圧縮(課税の繰り延べ)することができます。

ただし、買換え資産が土地の場合には、土地の面積が300㎡以上のもの(青空駐車場などは不可)で、かつ譲渡した土地の面積の5倍以内という要件があり、適用条件が非常に厳しくなっています。

(4)売却損になる不動産を同じ年に売却する
個人の譲渡税の計算は、給与や不動産収入とは別で計算し(分離課税)、不動産所得の赤字とは相殺はできませんが、同じ年に売却した不動産の譲渡益と譲渡損は相殺することができます。

譲渡益が出る売買をした年は、譲渡損が出そうな物件を損切りするチャンスでもあります。

売却から考える個人と法人の違い

個人の譲渡所得の税率は変えようがありません。
特に短期譲渡の税率は高いです。
今高く売って税金を払った方がよいのか、それとも値下がり覚悟で長く保有して長期譲渡になってから売却した方がよいのか、の選択になります。
どちらの方が、手残りが多く残るかで判断するとよいでしょう。

売却の利益を圧縮したいのであれば、法人の方が有利と言えます。
法人であれば、個人のように不動産の売却が別計算ということはありません。
すべて合算での計算になり、賃貸経営の赤字、他事業の経費などと合算して計算されることになるので、下記のような節税策が使えます。

・給与の支給
・退職金の支給
・倒産防止共済(セーフティ共済)の加入 
月20万円まで(総額800万円まで)掛金が経費になります。40月以上掛けることで解約時に100%戻ってきます(全額収入になります)。

・生命保険の活用
保険の種類によって、保険料が全額または一部経費になります。

・太陽光発電の特別償却
生産性向上設備投資促進税制の要件を満たせば、設備取得価額の50%を特別償却できます(平成29年3月31日まで)。

売却のことまで考えて、個人か法人で所有するのがよいのか、検討することをおすすめします。

渡邊 浩慈
渡邊 浩慈

渡邊 浩慈不動産 専門税理士

大学卒業後、総合商社に入社するも税理士を目指して退職。その後、実家の賃貸経営が危機的状況にあることを知り、税理士の資格を習得すると自ら経営改善に取り組み救出。2011年に税理士・司法書士「渡邊浩滋総合事務所」を設立し、悩める大家さんのよき相談役となるべく日々奮闘中。
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