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住宅ローンコラム FP菱田雅生が伝授!住宅ローン、賢く利用するためのコツ

住宅ローンの金利がマイナスに!?世界の債券市場が異常な状態に?

2020年06月03日

債券という金融商品は、一般の人にはあまり身近ではないかもしれませんが、実は預金金利や住宅ローン金利などの世の中の金利水準に大きな影響を及ぼしているのが債券の市場なので、とても基礎的かつ重要な金融商品のひとつと言えます。

日本で最も有名で取引量の多い債券は国債です。日本の国は私たちが支払っている税金で運営されていますが、税金だけでは足りないので国債という債券を発行して、個人投資家や金融機関などの機関投資家からお金を借りているわけです。

国債を買ったことがある人は少ないかと思いますが、個人投資家も証券会社や銀行などを通じて買うことができます。普通の国債は5万円単位、個人向け国債は1万円単位で買えるようになっています。

国債を買うと半年ごとに利息をもらえて、満期が来るとお金が戻ってきます。満期は2年から40年までさまざまです。商品性は定期預金とよく似ています。しかし、定期預金とは大きく違う点もあります。それは、中途解約が認められていない点です(個人向け国債は例外的に手数料を支払えば中途解約が可能です)。

国債などの債券は、途中での解約が認められていないので、満期が来る前にお金が必要になった人は、証券会社を通じて誰かに売らなければなりません。誰かに売るときにいくらで売れるのかが、債券の値動きになるのです。

債券の価格は通常、額面金額(満期のときに戻ってくる金額)100円あたりの価格で表示されます。例えば、表面利率年1%、満期10年の国債が100円ちょうどで発行される場合を考えてみましょう。

日本で最も流通量の多い国債は、日々変動する債券市場の利回りに応じて発行価格が決まるので、額面100円当たり100円ちょうどで発行されることは少ないのですが、ここではわかりやすく発行価格100円としています。

発行価格100円で買った投資家はその後、年利率1%の利息を半年ごとに受け取っていきます。利息は額面金額に対して計算されるので、額面100円×1%÷2=0.5円が半年ごとに支払われます(利息からは通常20.315%の税金が差し引かれます)。なので、最低単位である額面5万円で買っていた場合は、半年ごとに5万円×1%÷2=250円(税引前)の利息を受け取り、10年後の満期時には5万円が戻ってくるわけです。

では、10年の満期が来る前にお金が必要になってしまった場合はどうするのかというと、証券会社を通じて誰かに売ることになります。実際には、そのときの価格で証券会社に買い取ってもらいます。

例えば5年後に売ろうとした場合、そのときの国債の利回りの水準によって価格が決まってきます。

この債券の利率は年1%で、満期までの残りの期間は5年です。このとき同じ満期まで残り5年の国債が、債券市場では利回り2%で取引されていたとすると、1%の国債をそのまま100円で買ってくれる人はきっといません。なぜなら、市場で2%の国債を買ったほうが有利だからです。

では、いくらなら売れるのかというと、利回りが2%程度になるまで価格を下げることで売れる可能性が出てきます。利率1%、残存5年の場合だと、計算上は95.45円まで価格を下げれば、年1%の利息と満期時の額面100円との差額(+4.55円)を合わせることで利回り2%と同じ価値になります。

つまり、世の中の金利水準(利回り)が1%から2%に上がっていたとすると、100円で買った国債は95.45円程度まで値下がりするのです。「債券市場の利回りの上昇」は、「債券価格の下落」を意味するわけです。

一方、5年後に売ろうと思ったときに、同じ満期まで残り5年の国債が、債券市場では利回り0.5%で取引されていたとすると、1%の国債をそのまま100円で売ろうとすると、買いたいという投資家がたくさん現れます。この場合は、価格を上げることができます。

利率1%、残存5年の場合だと、計算上は102.43円まで価格を上げれば、年1%の利息と満期時の額面100円との差額(-2.43円)を合わせることで利回り0.5%と同じ価値になります。

つまり、世の中の金利水準(利回り)が1%から0.5%に下がっていたとすると、100円で買った国債は102.43円程度まで値上がりするのです。「債券市場の利回りの低下」は、「債券価格の上昇」を意味するわけです。

世界中の債券のうちの9割方が固定金利なので、債券の価格と利回りの関係はこのような反比例の関係になっているのです。

債券の利回り
債券の価格

さて、このような債券市場ですが、いま世界では数年ほど前から少し異常な状態になってきています。日本でも「マイナス金利」が導入されたという話は聞いたことのある人が多いかと思います。

これは、金融機関が日本銀行に預けている当座預金について、一定額を超える部分に対してはマイナスの金利をつける、つまり、預けている金融機関が日本銀行に利息を支払わなければならないというものです。2016年から導入されて、現在も続いています。

近年、同様の政策がヨーロッパでも行われていて、世界の債券市場ではマイナス利回りの債券が増えています。最近は少し落ち着いてきましたが、2019年8月には過去最大の17兆ドル(約1,850兆円)もの債券がマイナス利回りで取引されている状態でした。このとき、デンマークの住宅ローン金利がマイナスになったことが報じられました。

「住宅ローン金利がマイナス」というのは、にわかには信じがたい世界です。お金を借りているのに利息がもらえるような状態ですから、これまでの常識では考えられません。借入金額よりも、総返済額のほうが少なくなるという状態です。

同様に、債券がマイナス利回りということは、債券を買って満期まで保有すると、損をするという状態です。そんな債券をなぜ買う投資家がいるのかということですが、簡単に言うと、満期まで持たずに売ることで利益を得ることができるからです。債券の利回りが低下していくということは、債券の価格が上がるということ。債券価格の上昇で利益が得られるわけです。

例えば、5年前の平成27年3月20日に発行された10年満期の国債は、表面利率0.4%、発行価格が100.43円でした(利回り0.355%)。それが、令和2年5月25日時点では102.66円まで上昇しているのです(利回りは-0.149%まで低下)。

金融機関などの機関投資家は、債券の売買で利益を得ようとしています。だからこそ、利回りがマイナスであっても売買が成立し、マイナス利回りの債券が世界中に存在する状態になっているのです。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、各国政府はさまざまな支援のための財政出動を増やしています。そうなると、債券の需要よりも供給が増えることで、債券価格が低下し、利回りが上昇する動きになるのが通常ですが、金利上昇による悪影響を起こさないためにもマイナス金利などの政策は今後も続けるでしょう。

したがって、まだしばらくは債券市場の異常な状態が続く可能性があります。もはや、異常ではなく、これが普通の状態にもなってきているのかもしれません。債券市場の動向は、世の中の金利の動きに大きな影響を及ぼしています。預金金利や住宅ローン金利の動向にも関係していますので今後も要注目です。

執筆者:菱田雅生(ひしだまさお)

ファイナンシャル・プランナー(CFP、1級FP技能士)、1級DCプランナー、住宅ローンアドバイザー

1969年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、山一證券に入社し支店営業を経験。山一證券自主廃業後、独立系FPに。以後20年以上にわたり、資産運用や住宅ローンを中心とした相談、執筆、講師業に従事。2000年以降の講演回数は4,000回を突破!(2020年2月現在)。近著には「お金を貯めていくときに大切なことがズバリわかる本」(すばる舎リンケージ)がある。

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