住宅ローン控除×iDeCo(イデコ)で節税メリットが減る!?
2017年11月27日
「iDeCo」とは「個人型の確定拠出年金」のことで、2017年から公務員や専業主婦まで対象になり、広がり始めました。すでにiDeCoを始めている人が家を買って住宅ローン控除を受ける場合や、逆に、住宅ローン控除を受けている人がiDeCoを始める場合、注意すべき点は何か、確認してみましょう。
iDeCoの概要を再チェック!
人生100年時代といわれるなか、長い老後を楽しく過ごすには老後資金が不可欠です。老後資金準備法の1つとして、注目されているのが私的年金のiDeCo(個人型確定拠出年金)です。2002年からある制度ですが、対象者拡大を機に再注目されています。
概要を確認しておきましょう。iDeCoは積立投資で老後資金を作る制度ですが、掛け金は月5,000円からで、個人の状況により上限が決まっています(図表1)。会社員は「企業年金」や「企業型確定拠出年金」に入っているかどうかで異なります。
対象 | 月限度額 *2018年より12倍した分が年上限となる | ||||
---|---|---|---|---|---|
国民年金第1号被保険者 (自営業者など) |
国民年金基金と合算68,000円 (付加保険料納付者は67,000円) |
||||
国民年金第2号被保険者 | 会社員 | 企業年金なし | 企業型確定拠出年金 | なし | 23,000円 |
あり* | 20,000円 | ||||
企業年金あり | なし | 12,000円 | |||
あり* | 12,000円 | ||||
公務員 | 12,000円 | ||||
国民年金第3号被保険者 (専業主婦・専業主夫) |
23,000円 |
運用商品は、「元本確保型」と呼ばれる定期預金や保険など安全性の高い商品のほか、「投資信託」が用意されています。金融機関(運営管理機関)によって、運用対象が2本から60本以上まで様々です。
給付は60歳以降で、一時金か年金か、併用か選べます。途中で引き出すことはできません。ただし、加入者が亡くなったときは遺族が死亡一時金として受け取ります。
iDeCoは、拠出時、運用時、受給時にそれぞれメリットがありますが、何といっても最大のメリットは拠出時に掛け金が全額所得控除の対象になり、所得税・住民税が軽減されることです。図表2は上限まで拠出したときの節税効果を試算したものです。主婦や主夫にはこのメリットはありません。
課税所得 | 税率 | 自営業 | 会社員 | 公務員 | 主婦・主夫 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
所得税 | 住民税 | 合計 | 月6.8万円 | 月2.3万円 | 月2万円 | 月1.2万円 | 月1.2万円 | 月2.3万円 | |
195万円以下 | 5% | 10% | 15% | 122,400 | 41,400 | 36,000 | 21,600 | 21,600 | なし |
~330万円以下 | 10% | 10% | 20% | 163,200 | 55,200 | 48,000 | 28,800 | 28,800 | |
~695万円以下 | 20% | 10% | 30% | 244,800 | 82,800 | 72,000 | 43,200 | 43,200 |
ちなみに、運用時と受給時のメリットは下記の通りです。
<運用時>
通常なら運用益に課税(源泉分離課税20.315%)されて再投資されますが、それが非課税で済みます。また、同じ投資信託でも、iDeCoであれば信託報酬という保有中にかかる手数料も低めです。
<受給時>
年金として受け取るなら「公的年金等控除」、一時金なら「退職所得控除」の対象となり、受給時も税金が軽減されます。
メリットが多く、やらなきゃ損!な制度といえます。一方で、コストもかかります(図表3)。国民年金基金連合会と信託銀行のコストは固定ですが、運営管理機関の手数料は金融機関で異なります。
機関など | 加入時 | 運用期間 (積立) | 運用期間 (積立なし) | 受給時 |
---|---|---|---|---|
国民年金基金連合会 | 2,777円 | 103円/月 | - | - |
信託銀行 | - | 64円/月 | 64円/月 | 振込432円/回 |
運営管理機関 | 各社で異なる (0~1080円) |
各社で異なる (0~450円/月) |
各社で異なる (0~450円/月) |
- |
住宅ローン控除の概要を押さえよう
続いて、住宅ローン控除についても概要をおさらいしてみましょう。住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に、図表4の要件を満たせば利用できる「税額控除」が住宅ローン控除です。
□年収3000万円以下 □自ら居住していること(床面積の1/2以上が居住用、住んでいて住民票もある) □床面積が50m2以上 □中古住宅の場合、戸建ては築20年以内、マンションは築25年以内。または、一定の耐震基準に適合するもの □住宅ローンの返済期間が10年以上であること |
住宅ローン控除で受けられる控除は年末の住宅ローン残高の1%ですが、上限額は入居年や消費税率、一般住宅か認定住宅かで異なります(図表5)。
居住開始年月 | 種類 | 適用される消費税率 | 年末残高限度額 | 控除率 | 控除期間 | 所得税からの控除合計最高限度額 |
---|---|---|---|---|---|---|
~平成31年6月 | 一般住宅 | 8%または10% | 4,000万円 | 1% | 10年間 | 400万円 |
中古住宅でかからない | 2,000万円 | 200万円 | ||||
認定住宅 | 8%または10% | 5,000万円 | 500万円 | |||
中古住宅でかからない | 3,000万円 | 300万円 |
一般住宅の場合、消費税8%(または10%)が適用される物件で最大控除額は年40万円、消費税のかからない中古住宅は年20万円。認定長期優良住宅や認定低炭素住宅については、消費税8%(または10%)が適用される物件で年50万円、消費税非課税の物件で年30万円。ただしいずれの住宅でも、不動産業者が売主で中古住宅を購入する場合は消費税がかかるグループに入ります。
なお、ここが要注意ポイントですが、住宅ローン控除が所得税では控除しきれない場合、一部、住民税を軽減してもらうことができます。その範囲は下記の通りです。
□消費税8%(または10%) ⇒ 所得税の課税総所得額×7%(最高136,500円) □消費税が非課税 ⇒ 所得税の課税総所得額×5%(最高97,500円) |
iDeCoと住宅ローン控除の関係は?
では、iDeCoと住宅ローン控除の関係を考えてみましょう。両者とも節税になると前述しましたが、大きな違いがあります。iDeCoは所得控除、住宅ローン控除は税額控除だという点です。そのため、税金を計算する際に、iDeCoは課税所得を下げる形で税金が軽減され、住宅ローン控除はストレートに税額を差し引く形になっています。
計算の順番としても、iDeCoの控除を加味して所得税額が計算され、そこから住宅ローン控除を引くという形です。
新築の住宅を購入し、年末に2500万円の住宅ローン残高があり、25万円の控除を受けられるケースで考えてみます。会社員で、iDeCoを月2万円(年24万円)行ったとします。
iDeCoを始める前の課税所得が300万円の人の例で試算してみました。
所得税額 20.25万円 iDeCoを始めた場合の所得税 ▲2.4万円 所得税の残額 17.85万円 ↓ 住宅ローン控除 ▲25万円 (所得税の納税額 0円) ↓ 控除しきれなかった住宅ローン控除▲7.15万円 ↓ 住民税からは13.65万円まで引ける⇒全額控除できる! |
このケースでは、住宅ローン控除も引ききることができましたが、住宅ローンをたくさん借りて住宅ローン控除が大きければ結果は異なる可能性があります。
また、実は課税所得が下がると、iDeCoと住宅ローン控除は有効に引ききれないケースが増えます。控除が多かったり、ふるさと納税などをたくさんやっていて納税額が少ない人も同様です。住宅ローン控除とiDeCoの控除があってさらにふるさと納税もという場合は、試算しつつ利用しましょう。
住宅ローン控除が引ききれない場合は?
iDeCoを行っている人がこれから住宅を購入する際に、試算してみたところ住宅ローン控除が引ききれないということが分かった場合に、どうしたらいいでしょうか。
1つは、先に家を買ってしまっている人にはできないことですが、夫婦で家を買う場合は、2人で住宅ローンを組むなどして住宅ローンをシェアすることです。「夫婦2人で住宅ローンを組むメリットと注意点」を参照してください。 2つめは、控除を有効活用できるように所得アップを図ることです。
1も2も無理だという人は、最後の選択肢は「気にしない」ことです。iDeCoで所得控除を受けているわけですから、住宅ローン控除が受けられなくても良しと考えてはいかがでしょう。iDeCoには前述のように保有中も給付時もメリットがありますし、老後資金の準備も必須な時代ですから、控除が低減したとしてもiDeCoを行う意味はあるという考え方もあります。
どうしてもその状況が許せないと考える人は、iDeCoの掛け金を下げることもできます。年に1回までは変更ができますので、それで調整するのも手です。しかし、そこで浮いた分を繰上返済に回す、つみたてNISAに回すなど、しっかり管理することも大切です。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。
連載バックナンバー知っておきたい!住宅ローンテクニック
- 2019/11/13
- 2019/10/16
- 2019/09/11
- 2019/08/07
- 2019/07/03
本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めております。掲載内容については執筆時点の税制や法律に基づいて記載しているもので、弊社が保証するものではございません。
住宅ローン新着コラム
-
毎月の返済額、返済総額、借り換え、賃貸とマイホームの比較、
繰上げ返済額をシミュレート。
住宅ローンの知識
提供:イー・ローン
2024年11月05日 現在
提供:イー・ローン