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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンテクニック

2019年大予想!住宅ローンの金利はどうなる?

2019年01月30日

新年最初のコラムは、2017年、2018年に続く、住宅ローン金利の大予想です。このコーナーでおなじみのお2人の専門家にご協力いただき、2019年の住宅ローン金利の動向を大胆にも予想してみました。ずばり、お2人だったら今年、住宅ローン金利は何を選ぶかについてもうかがってみました。ご自身の住宅ローン選びの際の参考になさってくださいね。

アンケートにご協力くださったのは、こちらのお2人です。

小松英二氏(CFP、経済アナリスト)
深野康彦氏(有限会社ファイナンシャルリサーチ代表)

2018年の住宅ローン予想はほぼ大当たり!

まずは、昨年の住宅ローンの予想から振り返ってみます。
昨年の両氏の予想をまとめると、
・変動金利は変わらず
・10年固定と全期間固定は2018年後半ごろから緩やかに上がる可能性がある
となります。この予想はどうだったでしょうか。

変動金利は、一般に短期プライムレート(金融機関が優良企業に1年以下の短期で貸し出す際の最優遇金利)に連動しますが、短期プライムレートは金融政策の一環として日銀がコントロールしています。金融機関によっては優遇幅を変えるなどして適用金利に多少の変動はあったものの、2018年は短期プライムレートに変動はありませんでした。これは、予想通りだったといえます。

10年固定や全期間固定については、長期金利(10年物国債の利回り)の影響を受けますが、2016年9月に、日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入して以来、長期金利も国債の買入れなどを行ってコントロールされている状態です。

日銀は2018年7月末、金融緩和の微調整として、長期金利の変動幅を±0.1%⇒±0.2%までへ容認しました。これによって長期金利も上昇し、2018年11月までは多くの金融機関で適用金利を上げる動きが見られました。しかし、12月以降は世界景気の下振れが不安視されたことで長期金利が下がり、住宅ローン金利も下がりました。

両氏の予想は、「10年固定や全期間固定は、2018年後半には緩やかに上がる」というもので、まさしく合っていたと言えます。特に、深野氏の「早ければ年後半、あるいは終盤に日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の水準を0.1%から0.2~0.3%に引き上げるかもしれない」というコメントは、恐ろしいほど符合していたように思います。年末に金利が下がるまでの予想はなかったものの、それ以外の点ではほぼ予想通りだったのではないでしょうか。

2019年の変動金利はどうなる?

では、2019年の両氏の住宅ローン金利の予想を見てみましょう。まずは変動金利からです。

変動金利について、小松氏は「2019年の水準は2018年と変わらないと見ている。2020年以降も、よほどのことがない限り、変化は見られないのではないか」と予想しています。その理由としては、「物価上昇率2%を目指すも、日銀が注視している『生鮮食品を除くCPI総合指数(コアCPI)』は2018年11月時点で0.9%にとどまり、超金融緩和政策も長期戦の様相を呈している」ことを挙げます。

深野氏も「2019年中に変動金利の水準が変わることはないだろう。2020年も変わらず、確信は持てないが2021年も変わらない可能性が高い」と予想しています。その理由としては、「日銀の『経済物価情勢の展望レポート』によれば、2020年度でも消費者物価指数が2%に到達できないと予測されている。このため、日銀が金融引締めに転じることは2020年まではないと考える」との回答でした。

両氏の予想は、2019~2020年までは変動金利には動きがないことで一致しています。

図表1 2019年の変動金利は?
小松英二氏深野康彦氏
変動金利はどうなる? 2019年の変動金利の水準は、2018年と変わらないと見ている。2020年以降も、インフレ目標の達成の見通しが立たない中で、よほどのことがない限り、水準に変化は見られないのではないか。 2019年中に変動金利の水準が変わることはないだろう。変わるとすれば、各銀行が優遇幅を変動した場合に限られると思われる。2020年も変わらず、確信は持てないが2021年も変わらない可能性が高い。
理由 変動金利は、日銀の短期の政策金利が変更されない限り、動きにくい。物価上昇率2%を目指すも、日銀が注視している「生鮮食品を除くCPI総合指数(コアCPI)」は2018年11月時点で0.9%にとどまり、超金融緩和政策も長期戦の様相を呈している。 2018年7月末の金融政策決定会合で日銀は「フォワードガイダンス*」を導入した。同行が年4回公表している「経済物価情勢の展望レポート」によれば、2020年度でも消費者物価指数が2%に到達できないと予測されている。このため、日銀が金融引締めに転じることは2020年まではないと考える。2019年4月の金融政策決定会合では、2021年の消費者物価指数の見通しが公表されるが、2%到達の見込みが公表されなければ、2021年度も変動金利の水準は変わらないと予想する。
*中央銀行が前もって将来における金融政策の方針を表明すること。

2019年の10年固定や全期間固定は?

続いて、10年固定や全期間固定の住宅ローンの金利動向の予想です。こちらは微妙に両氏の予想が異なります。

小松氏は「2019年の10年固定、全期間固定は、年初の水準から0.2%程度の上下の変動にとどまるのではないか。2020年以降も大きく動かないのではないか」と予想しています。

理由としては、「日銀が、長期金利の水準を引き上げる可能性はかなり低下したものと思われる。歴史的に、日銀の金融引締め方向への転換は、米国FRBが利上げを続けるか、少なくとも利下げ局面にない環境で行われている(米国が景気後退で利下げに入ると、日銀の出口戦略の第一歩はタイミングを逸することになる)。米中貿易摩擦が激化し世界景気に暗雲が垂れ込める中、米国FRBの利上げの終了時期はそう遠くないとの観測も出てきている。日本でも、タフな日米貿易交渉が予想され、さらに消費増税も予定される中、長期金利の水準の引上げイメージは描き難い」としています。

一方、深野氏は10年固定や全期間固定について「2019年前半は再び緩やかに低下していくと考える。その後は横ばいになり、日銀の金融政策が変更(微調整)されれば、もう1段階下がる可能性もある。2020年以降は、消費増税で景気後退に直面すればさらにもう1段の金利低下もありうる」と予想しています。理由については次のように述べています。

「米国の長期金利は3.25%前後でピークを付けた可能性が高い。米国に景気減速感が出てきたため、投資家のリスク回避姿勢が高まり長期金利は低下傾向にあり、これを受けて日本の長期金利も低下している。この流れは2019年も続き、米国の長期金利が低下すると日米の金利差が縮まるため、円高になる可能性もある。想定以上に円高が進めば、消費者物価指数の2%達成がさらに遠のき、日銀は再び変動幅を±0.10%に戻すかもしれない」

2019年の10年固定や全期間固定の住宅ローン金利は「上がらない」という点では両氏ともに一致しています。ただし、細かく見ると、「0.2%の範囲で変動はある」(小松氏)、「前半は再び緩やかに低下し、その後は横ばいになり、日銀の金融政策が微調整されればもう1段階下がる可能性もある」(深野氏)と、微妙な表現の違いがあります。深野氏は「下がる」という予想を明確にしています。

図表2 2019年の10年固定や全期間固定金利はどうなる?
小松英二氏深野康彦氏
10年固定、全期間固定はどうなる? 2019年の10年固定、全期間固定は、日銀のイールドカーブ・コントロールにおいて長期金利の水準の引上げはできないとの想定のもと、年初の水準から0.2%程度の上下の変動にとどまるのではないか。2020年以降も、長期金利の水準の引上げは困難であると思われることから、2019年年初の水準から大きく動かないのではないか。 2018年8月以降に上昇した10年固定、全期間固定だが、2019年前半は再び緩やかに低下していくと考える。その後は横ばいになり、日銀の金融政策が変更(微調整)されればもう1段階下がる可能性もある。2020年以降は消費増税で景気後退に直面すれば、さらにもう1段の金利低下もありうる。ただし、2016年8月の最低金利(フラット35)を下回ることはないと予想する。
理由 日銀が、「0%のまま不変」としている長期金利の水準を引き上げる可能性はかなり低下したものと思われる。歴史的に、日銀の金融引締め方向への転換は、米国FRBが利上げを続けるか、少なくとも利下げ局面にない環境で行われている(米国が景気後退で利下げに入ると、日銀の出口戦略の第一歩はタイミングを逸することになる)。米中貿易摩擦が激化し世界景気に暗雲が垂れ込める中、米国FRBの利上げの終了時期はそう遠くないとの観測も出てきている。日本でも、タフな日米貿易交渉が予想され、さらに消費増税も予定される中、長期金利の水準の引上げイメージは描き難い。 2018年7月に日銀が長短金利操作の変動幅を引上げた背景には、米国の長期金利上昇の影響があったと考える。その米国の長期金利は3.25%前後でピークを付けた可能性が高い。米国に景気減速感が出てきたため、投資家のリスク回避姿勢が高まり長期金利は低下傾向にあり、これを受けて日本の長期金利も低下している。この流れは2019年も続くと予測している。米国の長期金利が低下すると日米の金利差が縮まるため、円高になる可能性もある。想定以上に円高が進めば、消費者物価指数の2%達成がさらに遠のき、日銀は再び変動幅を±0.10%に戻すかもしれない。

借りるなら変動?固定?

両氏の予想を見てきましたが、では、これから住宅ローンを借りる場合、変動金利か固定金利か、どちらを選べばいいのでしょう? この答えは本来、自己責任で決めるものですが、参考まで、ご自身だったらどちらを選ばれるかという禁断の質問も両氏にぶつけてみました。

答えは2つに割れました。小松氏は固定金利、深野氏は変動金利です。「金利が上がらないからこそ固定金利」「上がらないからこそ変動金利」という、もはや流儀の違いで、正解・不正解はないように思います。

投資などに慣れていて、きちんとリスク管理ができるのであれば、変動金利で様子を見ながら、固定金利の金利が大底だと思えるタイミングで固定金利に借換えをする、という方法もあるかもしれません。

個人的には、投資でいうところの「頭と尻尾はくれてやれ」ではないですが、全期間固定に借換えるつもりなら、初めから全期間固定で借りて、ほかのことに時間と労力を使うかもしれません。

図表3 どの金利タイプを選ぶ?
小松英二氏深野康彦氏
固定金利 固定金利、変動金利とも歴史的に極めて稀な低金利である。とりわけ、固定金利は長い時間軸で歴史的な低金利の恩恵を受けられる魅力がある。 変動金利 日銀が政策金利を引上げることが当面できないと予測しているため。変動金利は短期プライムレート連動で、日銀が政策変更をしない限り金利が上がることはないと考えている。

終わりに

2019年の予想をまとめると、変動金利は変わらず、10年固定や全期間固定は多少の変動がある程度か、場合によってはやや低下する可能性もある、という内容です。昨年の予想では、2018年中に金融緩和の出口探しが行われるものと考えられていましたが、すでにそのタイミングではなく、むしろさらなる金融緩和が必要な場面もあるかもしれません。

とはいえ、状況はどう変わるかはわかりません。このコラムも、あくまでも予想です。15年以内に返し終わる規模の住宅ローンを組むのであれば、ずっと変動金利でいいかもしれませんが、そうでない方は、慎重に金利タイプを選んでくださいね。

執筆者:豊田 真弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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