不動産投資コラム

資金調達におけるツボとは? その二

購入資金を借入金で賄う場合、返済期間・金利などによって投資の収支は大きく変わってきます。
たとえば、支払い方式は元利均等か元金均等か、また変動金利なのか、全期間固定なのか、長期固定ミックスなのか、などの条件はどうやって選択すれば良いのでしょうか。そこで、今回はその選択の際に気をつけなければならない点についてお話します。

「元利均等」と「元金均等」の違い

まず、最初に考えなければならないのは、元利均等払いか、元金均等払いのどちらを選択するかです。「元利均等」は毎回の返済金額を一定に、「元金均等」は毎月の元金支払額を一定にする方式です。

当初の支払額は"元利均等"の方が"元金均等"に比べて低く抑えられますが、支払総額は"元利均等"の方が"元金均等"よりも多くなります。

一定以上の利回りがない場合に元金均等を選択するとキャッシュフローが厳しくなるため、一般的な投資シミュレーションでは元利均等をベースにしている場合が多くみられます。

元利均等は、返済当初に占める金利の割合が大きく支払金利が損金計上できるために、不動産所得を圧縮できる効果があります。ただし、返済が進むほどその効果は逆に働く、ということにも注意が必要です。また、長期的には支払総額が大きくなることを忘れてはいけません。

元金均等は、毎月一定額の元金を返していく方式ですので、毎月返済額は変わっていきます。金利が変わらないのであれば原則として毎月少しずつ返済金額は減っていき、返済総額は元利均等より少なくなりますので、一定以上の利回りがある場合には元金均等も検討する価値はあります。

ただし、元利均等に比べると返済金額のうち、損金計上できる金利部分は小さくなりますので、不動産所得と税率のバランスも配慮する必要があります。

このような点を考慮し、私は次のように判断しています。

実際にはどう判断するのか

(1) 利回りが高くなく、キャッシュフローがタイトな場合
→ 元利均等を選択

(2) 利回りが一定以上で、どちらを選択してもキャッシャフローに支障をきたさない場合
・建物償却費が大きくとれる物件
→ どちらでも選択可能(元金均等が基本)
・建物償却費が小さい場合
→ 元利均等を選択

不動産の所得の特徴は、修繕費や管理費などの日常必要な経費の部分以外に、実際に支払は発生しないが経費として建物の減価償却費を差し引くことができるという点があります。

しかし、この減価償却の金額は物件によって大きく差があり、減価償却費が極端に小さい場合、表面的なキャッシュフローは良くても税引き後のフローは非常にタイトに、場合によってはマイナスになる可能性もあります。

これは返済当初の間だけの効果となりますが、元利均等によって損金として落とせる支払金利の部分を大きく確保しておいたほうが良いと思われます。

変動金利か固定金利か

さて、支払方法は決まったとして、判断に迷うのは変動金利か、固定金利かの選択です。基本は低金利の状況であったら固定を、高金利であったら変動を選ぶということなのです。

しかし、金利の予測は難しく、2007年後半には多くの人が金利の先高を予想していましたが、その後の金融情勢は様変わりとなっています。

つまり、金利の動向など、専門家の意見を聞いても「誰にもわからない」のです。ということは、どちらをとるのかはコイントスで決めれば良いのかもしれません。でも私の考えは次のようなものです。

選択は金利の予測ではなく、自分のキャシュの状況による

さて、ここで質問です。固定金利で利益を得ている人は誰でしょうか。

金利が安いときに固定にして、その後、金利が上がっても低金利を享受している人でしょうか。
確かにそういう人もいるでしょう。

でも、一番利益を得ているのは、お金を貸している金融機関です。金利が上がれば金融機関は損失を被ることになることもありますね。ならば、利益を得ているとは言えないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。それも正しいでしょう。

しかし、そういった金利上昇による損失リスクを負うかわりに、そのリスク分を上乗せした固定金利を設定することで"変動金利より高い固定金利の差"というリターンを得ています。逆に言えば、変動金利のリスクを負担できる投資家は、そのかわり"固定金利と変動金利との差"の分のリターンを得ることができる、ということなのです。

具体的には、潤沢なキャッシュフローや金融資産があり、金利上昇局面においては、繰上返済などの対応によって、その影響を軽微にできる場合、リスクをとってリターン、つまり低金利を享受するということは有効な選択肢ではないかと私は考えます。

私自身の方法

そうはいっても、私の場合は無尽蔵に金利上昇のリスクに対応できるとは考えていません。そこで実際にやっている方法は、借入金額の半分程度を3年から5年程度の固定で、残りを変動で借りています。

これは、私のキャッシュフローの状態や資金を考慮した結果なので、もちろん半々が良いということではありません。

私はリスクをとるものがリターンを得る、またカバーできる範囲のリスクはリスクではなくなる、と考えています。

このコラムを読んでいただいている皆様も、固定か変動かを判断する際にはご自身のリスク負担力を考慮してみたらいかがでしょうか。

沢 孝史
沢 孝史

沢 孝史

1959年生まれ。サラリーマンとして勤めながら、不動産投資を開始。現在8棟のアパートとマンション2棟を所有、年間家賃収入は6,000万円となる。著書に、「不動産投資を始める前に読む本」(筑摩書房)他。

 

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