不動産投資コラム

不動産投資というと、すでにある物件、つまり中古の収益物件を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
 
でも、たとえば車を購入するときには、新車を買うか中古車にするかを検討する人も多いかと思います。同様に不動産投資をするときも、新築物件にするか中古物件にするかを検討することも必要なのではないでしょうか。
ただし、車の場合は同じ車種でも新車、中古車という選択肢がありますが、不動産ではそういうわけにはいきません。そのため、数多く流通している中古物件を中心に考えることにもなるのでしょう。そして、価格によっては中古車より新車を購入することが合理的な場合があるように、収益物件でもすべて中古物件が良いとはかぎりません。
 
そこで、中古と新築という二つの選択肢からどちらを選べば良いのか、そのヒントを今回から3回に分けてお話します。

新築物件・中古物件の家賃を比較する

しかし、そのリターンを予測するための数値、たとえば家賃や土地、建物の価格などは算出された時点のもので、将来まで保証されたものではありません。
不動産投資は長期に渡る投資ですので、その時点のデータのみで判断することは困難です。

でも、過去および現在のデータを元に、将来の収益を推測するのが不動産投資の醍醐味とも言えるのです。

その中でも重要なのが家賃ですが、新築家賃と中古家賃を同列に扱うことは危険なのです。
なぜ、危険なのか。それは新築家賃と中古の家賃には「大きな差」があるからです。

そこで今回はその「大きな差」について、すなわち新築物件と中古物件の家賃を比較する際の注意点についてご説明しましょう。

新築家賃の注意点1 新築プレミアム

たとえば、同条件で、新築物件と築5年の部屋があったら、どちらに住みたいと思いますか?
大多数の人が新築を希望するでしょう。希望する人が多いということは、その分、家賃を高くできるということになります。これを一般的に「新築プレミアム」と言います。

でも、この新築プレミアム最初の入居者が退去してしまえば、次の募集からは新築物件ではありませんので、通常の家賃になります。
もし、新築プレミアムが通常家賃に対して8%であったとしたら次の募集家賃は8%ダウンとなります。

プレミアムが高ければ高いほど、次の募集のときに下落幅も大きくなる危険性があり、注意が必要です。

新築家賃の注意点2 想定家賃

新築物件の場合、未完成の物件の購入を検討する場合もあります。

その場合は、もちろん実際に入居者がいるわけではありませんので、家賃については不動産業者が査定した「想定家賃」が提示されることが一般的です。
しかし、この場合の家賃はあくまで「想定」の範囲内で、確約されたものではありません。査定には、その地域の家賃相場を考慮し検討されるのですが、その判断には裁量の余地があります。

一般的には適正に査定されているものと思われますが、家賃相場は常に変動していますので、不動産業者が新築物件を計画した当初の家賃相場が完成時には違っている場合もあります。

実際に購入を検討する場合には、ネット上で調べたり、また実際にその地域の不動産業者にヒヤリングをするなどの調査は不可欠です。

中古家賃の注意点 現状家賃

新築家賃には、新築プレミアムや、未入居物件の想定家賃などの注意点があります。
それに比べ、中古の場合は「実際に入居している家賃だから安心」と思われるかもしれません。しかし、中古家賃の場合でも、注意が必要です。

そのポイントは、実際に入居している人の家賃は、「いつ設定されたものか?」という点です。

たとえば、入居者が新築時から入居し、現在で10年経過しているのであれば、その家賃は10年前の新築プレミアム付きの家賃のままのケースが一般的です。
退去してしまえば、プレミアム部分がなくなり、家賃も現在の相場になることになります。

相場が下落していた場合には、プレミアムの欠落と合わせた家賃下落となる可能性があります。

中古物件の場合、現在入ってくる家賃を中心に考えることが多く、一概に間違いだとは言えません。

しかし、物件の評価をするためには、実際の家賃ではなく、「退去後の再募集家賃はいくらになるのか」を考慮することが大切です。
なぜでしょうか。
それは「今の入居者は永遠に住んでくれるものではない」からです。

一般的に単身世帯の入居サイクルは2~3年、ファミリー物件でも5~6年と言われています。つまり、遅くとも6年後には現在の入居者がすべて入れ替わってしまう可能性が高いということです。

一方、物件で表示される投資利回りは「今、実際に入居している人達の現在の家賃」で算出されますし、これは正しい計算です。

しかし、不動産投資をする場合に大切なのは、長期の収支です。そのため「今、正しい利回り」を将来に当てはめてしまうと、長期の収支は間違ってしまう可能性が高くなるのです。

そこで、現在の賃料がどういう契約なのか、たとえばいつ契約されたものであるのか、更新契約の期間設定はどうなっているのかなど、部屋ごとの過去の履歴を確認することが大切になってきます。

最近の契約ほど家賃が安くなっていれば、家賃は下落傾向であると予測できます。逆に10年前に入居した人の家賃と最近入居した人の家賃が同程度であれば、下落幅は少ないと判断することができます。

家賃の下落がなくとも、空室期間が長い場合は、その家賃設定が相場より高くなっていることも考えられ、このケースが見られる場合には、やはり家賃は弱含みであるとも考えられます。

このように、部屋ごとの入居履歴を詳細に見れば、将来の家賃を長期に予測することは難しくとも、退去後の再募集家賃を予測することは可能です。
そして投資後すぐ、大幅に収支が違ってくる事態は避けることができるでしょう。

家賃推移を考慮する

このように新築物件も中古物件も家賃には注意が必要ですが、そのためには、一般的に家賃が時間の経過とともに、どのように推移するかを念頭に置いていくと良いでしょう。

家賃推移は個々の状況によっては違ってきますが、一般的には新築から当初の10年間で10%の下落、以降は下落率が少しずつ低下し、次の10年間で5%程度の下落、つまり、築年数が長くなるほど下落の傾斜は緩やかになると言われています。

購入後の家賃相場の推移は投資成績に大きく影響しますので、検討する物件が上記グラフのどの位置にあるのかを考えることが、必要になるのです。

沢 孝史
沢 孝史

沢 孝史

1959年生まれ。サラリーマンとして勤めながら、不動産投資を開始。現在8棟のアパートとマンション2棟を所有、年間家賃収入は6,000万円となる。著書に、「不動産投資を始める前に読む本」(筑摩書房)他。

 

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