不動産投資コラム

これで完璧!融資の論理

久しぶりに融資のお話を書いてみたいと思います。

ぼくが不動産投資の勉強をはじめた2003年頃は、今と比べると融資の情勢もかなり違っていて、当該分野の書籍や教材には、「基本的にサラリーマンの不動産投資に融資する銀行はありません」と、明確に書かれていたりしていました(笑)。

でも、以前のコラムにも書いたように、融資についての基本的なルールはこれまでもこれからも変わりません。

今回は、そんな普遍的なお話も交えた融資のルールについてです。

「アパートローン」は特殊なローン

収益アパートやマンションを購入するための融資といえば、アパートローンを思い浮かべますが、このアパートローンというローン商品は、銀行が行っている融資の中では、かなり特殊なものだということを最初に理解する必要があります。

アパートローンは住宅ローンやマイカーローンなどと同じく「定型ローン」で、審査基準や借入条件を簡略・明確化することで、借り入れできる対象者の範囲を広げ、融資をしやすくしています。

従って、「給与年収500万円以上」「配偶者のいる30歳以上」というような属性条件や、「融資期間は法定耐用年数以内」「限度額は2億円以内」「土地は路線価、RCマンションの平米単価は17万円で担保評価」のような基準は、個別案件ごとに考慮の余地がほとんどありません。

融資の審査に通らず、「なんでこんなに利回りの高い物件が通らないんだ!」とか「空室率50%でも返済できるのにダメなんだ?」というような不満を持たれた方も、いらっしゃるのではないでしょうか。ぼく自身、審査に落ちた銀行に対して「まったくわかっていない」と、心の中で悪態をついたこともありましたが、わかっていないのは自分の方だったというわけです(笑)。

しかし、アパートローンは同時にとても有り難いローン商品でもあります。本来、銀行はサラリーマンが片手間で始める新規かつ未経験の事業に、何千万円も融資するようなことは絶対にありません。(賃貸業に真剣に取り組んでいても、兼業である以上、銀行からは「片手間」だと思われています)

担保となる土地もない状態から、一棟ものの収益不動産を購入するためには、アパートローンの活用は不可欠でしょう。アパートローンとは、いわば「不動産賃貸業の経営者(=社長)」として認められ、プロパーローンでの審査対象になるまでの登竜門だと言えます。

ですので、所有物件数が少なく賃貸事業者としてのキャリアが短いうちは、この定型化された「アパートローン」の融資基準を熟知して、それに合わせるのが最も効率的な戦略です。良いと思った物件を銀行に持ち込むのではなく、「はじめから銀行の審査基準に合う物件のみを購入対象とする」というイメージです。

事業者への道

アパートローンを使って物件を買い進めていくと、「購入限度額2億円」や「給与年収の20倍以内」というようなアパートローンの融資基準を超えてしまうポイントがきます。月に100万円以上のキャッシュフローを狙うためには、このくらいの購入金額ではちょっと足りません。ここからは、プロパーローンという事業者向けの融資を活用していく必要があります。

プロパーローンは定型商品ではありませんので、すべての案件について金融機関が個別に審査をします。本人の属性や事業実績、事業の安全度、土地と建物の担保評価など、審査のポイントは多岐にわたりますが、金融機関の最大の関心事は「融資したお金を、金利を含めて回収できるか?」に集約されます。

どういう会社に勤務している(していた)かではなく、その人物が信頼に価するかどうかをチェックされます。建物の法定耐用年数で融資期間を決めるのではなく、事業者が何年にわたって安定した経営ができそうかを判断して融資期間が決められます。

アパートローンではなかなか通りにくかった融資も土俵に乗りますし、これまでの投資戦略に失敗してしまった場合は、これまで通った融資も通らなかったりします。

融資を最重要ポイントとした戦略

以上のように、不動産投資における融資戦略は、アパートローンをメインで活用していく時期と、プロパーローンに移る時期とに分かれます。

「融資に有利」であることを最重視し、投資規模拡大に突き進んでいくなら、しばらくはアパートローンに最も有利な「築浅のRCマンション」一本に絞って購入していくに限ります。築浅のRCが高い利回りで売りに出されるケースは少ないので、投資地域は地方または地方都市になります。自己資金割合を高くすれば、首都圏での投資も可能でしょう。

そして、「もうアパートローンはムリです」という状態になったら、今度はプロパーローンを活用します。決算書と確定申告の数値を今まで以上にチェックされるので、余計な節税は行わずにしっかり黒字を継続することも重要です。投資の初期にはあまり意味がなかった「メインバンクを作って積立をする」という戦略も有効になってきます。

また、リフォームや建物の維持管理・価値向上が得意であるなら、その実績を金融機関にアピールすることで、耐用年数を超えた期間の融資も検討されます。そうすると、これまでは不可能だった木造アパートへの投資も可能になります。審査の期間は長引きますが、これまでよりも幅の広い不動産投資ができるようになるでしょう。

担当者も大切

プロパーローンを使う時期になると、融資の担当者も選んでいかなくてはいけません。事業的にとても素晴らしいのに、担当者が不動産投資のことをよくわかっていなかったばかりに、審査で落ちてしまうことがあるからです。

例えば、不動産賃貸業では「売上高に対する融資残高の割合」が、他業種に比べて非常に高いです。利回り10%・1億円の物件をフルローンで購入すると、売上高の実に10年分の融資残高があることになります。これは、普通の会社なら早晩つぶれてしまう水準なのですが、不動産賃貸業では特に高い水準ともいえません。よくわかっていない担当者だと、この数値だけを機械的に判断して、「融資残高が半分くらいになったら検討します」みたいなことを言うのです。

さらに、金融機関は転勤サイクルが早いので、いったん良い担当者を見つけたとしても、早晩いなくなってしまいます。融資を継続的に受けようとするなら、物件を探す努力と同じくらい、金融機関と担当者の開拓を続けていくことが重要です。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。
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