こんにちは。投資家けーちゃんこと、寺尾恵介です。
改めましてノムコム・プロのコラムをご覧いただきまして、ありがとうございます。新シリーズでは装いも新たに、【所有物件 調査・購入ドキュメント】ということで、自分の購入した物件を例にしながら不動産投資の具体的なノウハウや実務についてお話できればと思います。
今回は、「物件の目利き力」をテーマに、外れのない不動産を選んで購入する方法についてご説明させていただきます。
目利き力とは「場数と比較」
不動産に限らず、ある物の価値を判断する能力があることを「あの人は目利き力がある」というような言い方をします。安いものでも数百万円、高額なものは億単位にもなる不動産を購入するにあたり、この「目利き力」を養うのはとても重要なことですよね。では、この「目利き力」とはどのような能力で、どうやって高めていくのでしょうか?
最初に結論から言うと、物件の「目利き力」の正体は「多くの不動産をチェックする」ことで養われる「比較の正確さ」のことです。この「比較」というのが重要で、あらゆる物の価値判断は「これまでに経験したものとの比較」で行われていることを知っておかなければなりません。
例えば、街を歩いている途中、のどが渇いたのでスターバックスのようなカフェ(でもスターバックスではなくて、初めて見たお店)に入ったとします。カウンターでアイスコーヒーのMサイズを注文しました。値段は400円でした。あなたはお金を払ってそのまま購入しますが、普通は「あれ、ちょっと高いなぁ。スタバと変わらない店なのに」と感じるはずです。
一方、別の日に、初めて入った高級ホテルのラウンジで打ち合わせがありました。ラウンジの中心には白いグランドピアノが置いてあります。ウエイターに案内されてふかふかのソファに座り、同じくアイスコーヒーを注文しました。今度は500円でした。今度は逆に、「へー、ここのラウンジは安いな」と感じるでしょう。
スタバのようなお店もホテルも、どちらも初めて入店したにも関わらず、アイスコーヒーの値段について高い安いの判断をしています。しかも、ホテルのアイスコーヒーの方が高かったにも関わらず、そちらの方が安いと感じました。不思議ですよね。
このような価格についての判断ができるのは、これまで様々な場所で何回もアイスコーヒーを注文した結果、「こういう場所では、アイスコーヒーの値段はこれくらい」という相場観が養われているからに他なりません。(それにしても、ホテルのラウンジは、びっくりするような高い値段でコーヒーを出してますよね。)
さらにいえば、スタバのようなお店のアイスコーヒーMサイズで350円だったら高いとは思わなかったりするわけです。誤差2割未満で適正価格を把握しているなんて、よく考えてみたらすごいことです。不動産で同じことができたら、物件の高値づかみをする可能性はほとんどなくなるでしょう。
選別眼を養う物件の調査方法
不動産をたくさん見て選別眼を養うためには、実際に「買うつもり」でひとつひとつの物件を検討していかないといけません。立地、築年数、構造、建物の状態、その物件の入居率、周辺の入居率、間取り、付帯設備など様々な構成要素と、その不動産の販売価格がセットになっているからこそ、自分の中に「不動産価格のデータベース」が蓄積されていくのです。
「同じような立地や構造で利回りも同じだけど、今回の物件は築年数が浅い。ということはお買い得である可能性が高い」というような比較ができてこそ、その不動産の適正価格はいくらなのか、購入価格はいくらが妥当かの判断が可能になるということですね。ですから、売り物ではない(=価格のついてない)物件をいくつ見ても、もちろん意味がありませんし、物件の外観をさらっと見るだけでは、価格を構成している様々な要素を、自分のデータベースに取り込むことができません。ひとつの売り物件を、詳細に検討することが大切です。現地を見るのも、投資に必要な数値が記載されている資料を読み込むことも、それぞれ同じくらいの価値があります。
偏った要素ばかりに目がいくと、例えば「おっ!平成築のRCなのに利回り10%を超えている!」と浮かれてしまい、それくらいの利回りが当たり前の地域で、高い値段の物件を買ってしまうような失敗をしてしまいます。
目利き力が養われていった経緯
ぼくの「目利き力養成」経験はちょっと変わっていて、最初は今保有しているような地方の一棟ものではなく、主に都内の区分マンションを購入対象と考えてチェックしていました。ネットで毎日数十件の売りマンション情報を閲覧し、1週間で20枚くらいの物件資料を取り寄せて詳細に読み込んでいました。
資料の中では、どうしても「利回り」に目がいくのですが、ときどき高い利回りが目に飛び込んできても、借地の上に建築されたマンションであったり、修繕積立金が不足していて管理状態がめちゃめちゃであったり、または昭和50年代前半の建築であったりと、高い利回りには「それなりの理由」があるのだなということが分かるようになりました。
ところがそのうちに、高い利回りであっても上記のような「それなりの理由」が特に見あたらないというマンションを発見しました。こういう物件こそが「お買い得」であるのは間違いありません。案の定その物件は、ぼくが現地に行った頃には買い付けが何本も入っていました。誰が見ても良い物件というのは、そう簡単には購入できません。特にぼくの場合は、当時地方に住んでいたので、スピードで勝負しなければいけない都内の区分マンションを買うのは難しいなと考え、投資対象を変更したという経緯です。
余談ですが、どの地域、どの種類の物件を購入する場合でも、都内や首都圏の物件を見ておくのは非常に勉強になります。なぜ良い場所の物件は、さほど高い利回りでなくても売れてしまうのかも理解できますし、利回りのちょっとした差で、すぐに売れたり長期間残ったりします。それに加えて、やはり売り物件の情報が他の地域と比べて格段に多いので、そういう意味でも知識や事例の蓄積に役立つことと思います。