不動産投資コラム

第9回のコラムで、「高利回り物件であっても入居率が大切」というお話をさせていただきました。そこでは、「家賃に見合った、またはそれ以上の価値を提供する」という、賃貸経営だけでなく、どの商売にも言える原則について説明しましたが、今回のコラムはもう少し具体的なところに言及したいと思います。

現在の入居率とその理由

このコラム原稿を書いている時点で、ぼくの所有物件の空室は2戸でした。当月中の退去予定はあるものの、入居率は97%弱をキープしています。富山県や石川県といった地方に物件を持っている大家としては、かなり高い水準なのではないかと自負していますが、高い入居率の理由は「最新設備を導入している」からでも「間取りがオシャレ」だからでも、ましてや「新築だから」でもありません。

地域平均くらいの広告料は支払っていますが、それ以外は極力お金が掛かる方法をとらないようにしています。例えば、一般的には「バス・トイレ別じゃない3点ユニット」は不人気だと言われますが、その改修に何十万円も掛けたところで、中途半端なセパレートができるだけで、元々の「バス・トイレ別」には並べません。また、畳をフローリングに変更するようなリフォームも、お金が掛かる割には、入居率や家賃アップに結びつきません。(畳をフローリングに替えても、和室が洋室になる訳ではなく、「板張りの和室」ができるだけです。ぼくは和室のみの1DKマンションを持っていますが、現在満室です)

では、どうやって入居率を上げているかというと、以下の3つのポイントに注力しています。

物件の「売りどころ」を知り、広める

まずは入居者の気持ちになって、「自分のアパート・マンションに入居するのなら、その理由は何か?」と考えてみます。

ここで見つかった物件の売りどころは、マーケティング用語でUSP(Unique Selling Proposition)と呼びますが、このUSPは「賃貸仲介の営業マンが、来店者に内見を促す場面」「内見時に成約を促す場面」「大家さんが仲介会社に客付けの依頼をしに行く場面」「チラシやホームページなどの募集ツールを作成する場面」など、様々なところで活躍します。そもそも、「この物件に入居する理由」を大家さんが説明できないようでは、入居者に気に入ってもらうのは難しいです。

ぱっと見では地味で、売りどころなどなさそうに思えるアパート・マンションでも、大家さんが発見していない良さがあるものです。「収納が広い」「学校が近い」「近隣の治安がよい」「自転車置き場がたくさんある」「コンセントが多い」「駅に行く途中にクリーニング店がある」「浴室に窓がある」など、立地や周辺環境、設備(地味なものでも)など、いろんな視点で、USPを探してみてください。目に見えるものだけでなく、「回りに騒音がなくて静かに過ごせる」「夏場でも風通しが良く、ほとんど冷房が要らない」など、五感を活用すると発見しやすいかと思います。

そして見つけたUSPは、内見者が分かりやすいような形でアピールできるようにしておくと、間違いなく成約率アップに結びつくでしょう。

不動産会社にVIP待遇される

拙著「みんなが知らない満室大家さんのヒミツ」(ぱる出版)の第一章に、来店者にお部屋の案内をする仲介営業マンのお話が出てきます。自分の嫌いな大家さんが持っている物件を内見したいという来店者を巧みな話術で誘導し、自分の好きな大家さんの持ち物件に入居を決めさせる...という内容ですが、これは現実の仲介現場でも頻繁に起こっています。賃貸仲介の営業マンは、自分の商品(=部屋のレンタル)を、完全フルコミッションで販売代行してくれている存在であり、賃貸経営の命運を握っていると言っても過言でありません。

そして会社単位でも、また個人の営業マン単位でも、大家さんは「格付け」されています。勤務先での取引先にも、極めて大事な会社とそうでもない会社があり、日頃の対応にも大きな違いがあるのと同じですね。ランキング1位の大家さんと、ランキング79位の大家さんでは、入居の決まり方は当然違ってくるわけですから、少しでも重要な大家さんとして認識されるよう、努力を続けなければいけません。

では、どういう大家さんが重要だと認識されて、いわゆる「VIP待遇」をされるかというと、まずは単純に「規模が大きく、たくさんの管理料や仲介料を払っている」という大家さんが有利です。規模が大きくても、管理料や広告料を値切っていたりすれば、それだけ大家さんとしての重要度は下がっていきます。

また、管理会社はお部屋の原状回復をする際に、工事を紹介したリフォーム会社から紹介料を受け取っていることが多いので、退去が出るたびに自分でリフォームの手配をしていたりすると、管理会社からは「あまり売上に貢献してくれない大家さん」と認識されてしまいます。リフォームのコストダウンも大切ではありますが、入居付けとのバランスを考え、ある程度は割り切らないといけない場面もあるでしょう。

そのほか、「連絡が付きやすい」「判断・レスポンスが早い」「細かいミスでキレない」「忙しいときに長電話や長時間の訪問をしない」「他の大家さんを紹介してくれる」「人間的に尊敬できる」など、いろんな要素が重なって、大家さんの印象を決定しています。

大家さんにとって、不動産会社は「業者」ではなく「パートナー」です。大家さんが不動産会社を様々な角度から評価し、選んでいるのと同じく、不動産会社からも選ばれる存在でありたいものです。

もっとも大切なリフォームとは?

最後に、お金はほとんど掛からないのに、入居の決定を左右する要素についてお話します。

それは、「清潔感」です。

建物が清潔であることは、設備や間取りと同じくらいかそれ以上に、入居付けのプラスになります。また逆に、いかに最新の設備が付いていて、立地の良い場所にアパートがあろうとも、室内が汚れていたり、ゴミや虫の死骸が落ちていたり、トイレや洗面から悪臭が漂ったりしていては入居の申し込みは入りません。

汚い物件であっても、入居者が住む前に掃除をすれば済みますし、逆にキレイな物件であってもしばらく住んでいれば汚くなります。しかし入居者の心理としては、「内見時に見た状態が、入居後もずっと続く」と考えてしまうので、隅々まで掃除がしてあることは、強調しきれないほど重要だということです。

また、清潔感を増加させるものには、明るい電灯や、フローリングのワックスなど、お掃除以外の要素もあります。使えるアイテムは全部使って、ピカピカのお部屋で内見者を迎えてください。

寺尾 恵介
寺尾 恵介

寺尾 恵介

大手保険会社に12年間勤務。2004年から不動産投資を始め、2008年3月までに7物件・94戸の不動産を購入し、サラリーマンを卒業。現在は大家業の他、不動産投資ブロガーとしても活躍中。著書『満室大家さんのヒミツ』(ぱる出版)他。
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