不動産投資コラム

【Q&A】株式会社が自己株式を取得した場合の法人税・消費税の取扱い

【問】

非上場会社の株式会社A(A社)は、取引先の株式会社B(B社)から自己の株式10株を500,000円(1株50,000円)で取得しました(売買価額500,000円は税務上の適正額とします)。このA社の自己株式の取得における、法人税及び消費税の取扱いについて教えて下さい。


なお、A社の1株当たりの資本金等の額が30,000円です。また、A社は消費税の課税事業者であり、簡易課税は選択していません。

【回答】

1. 結論

A社の法人税の計算上、自己株式の取得の対価のうち、資本金等の額に対応するとされる部分は出資の払戻し、利益積立金額に対応する部分は配当とされます。一方、A社の消費税の計算上、自己株式の取得に係るB社からのA社株式の引渡しは課税資産の譲渡等に該当しないため、その自己株式の取得は課税仕入れ等には該当しません。

2. 解説

(1)法人税の取扱い


株式会社が自己株式を取得し、その対価を支払った場合、法人税の計算上は、その取得の対価のうち、資本金等の額に対応するとされる部分は出資の払戻し、利益積立金に対応する部分は配当と考えます。


つまり株主にその取得の対価として交付される金銭等のうち、取得資本金額(注)に相当する金額を資本金等の額から控除し、取得資本金額を超える金額を利益積立金から控除します(法人税法2条16号、18号、法人税法施行令8条1項20号、9条1項14号)。


(注)取得資本金額=1株当たり資本金等の額*×今回取得する自己株式数

*1株当たり資本金等の額=自己株式取得直前の資本金等の額÷(自己株式取得直前の発行済株式総数-直前の自己株取得直前の自己株式数(既取得の株式数))

本問におけるA社の法人税計算上の仕訳は次のようになります。



(注)配当の支払とされる200,000円については、A社において所得税及び復興特別所得税の源泉徴収(200,000円×20.42%=40,840円)が必要となります(所得税法181条、182条等)。


(2)消費税の取扱い


消費税の計算上、課税仕入れに係る消費税額は、課税売上に係る消費税額から控除されます(消費税法30条)。この場合の「課税仕入れ」とは、事業として他の者から資産の譲受け等を受けることをいい、当該他の者が事業としてその資産を譲渡等した場合に課税資産の譲渡等に該当するものに限られます(同2条1項12号)。


本問のように発行法人が自己株式の取得のため、株主からその株式の譲渡を受けた場合、これがその株主において「課税資産の譲渡等」に該当するかどうかを検討する必要があります。


消費税において「課税資産の譲渡等」とは、資産の譲渡等のうち、消費税が非課税とされるもの以外のものをいいます(同9号)。したがって、課税資産の譲渡等に該当するためには「資産の譲渡等」に該当することが前提となりますが、株式会社が自己株式を取得する場合、株主からその発行法人への株式の譲渡は、資産の譲渡等に該当しないこととされています(消費税法基本通達5-2-9)。


「資産の譲渡等」とは、資産につき同一性を保持しつつ、他人に移転させることをいいます(同5?2?1)。株式会社が自己株式を取得する場合には、その株式に係る議決権や配当請求権、残余財産分配請求権等が消滅します(会社法308条2項、453条、504条3項)から、発行法人による自己株式の取得のための株式の譲渡は、資産の同一性を保持しつつ他人に移転させたとはいえないので、「資産の譲渡等」には該当しないこととになります。


上記より、株主(B社)からの発行法人(A社)への株式の引渡しは、課税資産の譲渡等に該当するかどうか以前に、資産の譲渡等に該当しないことから、A社における自己株式の取得については課税仕入れには該当しません。

税理士法人タクトコンサルティング

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