住宅ローンコラム 生活設計コンシェルジュ 長尾真一がやさしく解説!今、押さえたい住宅ローン活用術

単身者が住宅ローンを組むときに押さえておきたいポイント

2024年02月07日

持ち家は結婚してから考えるものというイメージがあるかもしれませんが、最近は単身者が住宅ローンを組んで持ち家を取得するケースも少なくありません。そこで今回の記事では単身者が住宅ローンを組むときに押さえておきたいポイントや注意点について解説します。

上昇を続ける未婚率

厚生労働省「2023年(令和5年)版厚生労働白書」によると、50歳時の未婚割合(結婚をしたことがない人の割合)は、1985年には男性4.3%、女性3.9%であったのが、2010年には男性20.1%、女性10.6%に、2020年には男性28.3%、女性17.8%に上昇しており、単身世帯が増加している現状が伺えます(図表1)。

図表1:50歳時の未婚割合の推移

単身者による住宅ローンの利用状況

住宅金融支援機構「2022年度フラット35利用者調査」によると、利用者全体に占める単身者(家族数1人)の割合は7.5%ですが、マンションは23.4%、中古マンションも18.9%と、マンションに限ると住宅ローン利用者の4~5人程度に1人は単身者であることが分かります(図表2)。

図表2:家族数別フラット35利用割合

単身者の住宅購入をシミュレーション

図表3は30歳・年収500万円の独身者が、頭金500万円を貯めて3,500万円の物件を購入する場合(借入金額は3,000万円)の住宅ローン返済額や生活費を試算したシミュレーションです。

図表3:30歳・独身の住宅ローンシミュレーション

年収500万円の人の手取り収入は400万円前後になりますが、仮に400万円と仮定した場合、ボーナスを考慮しなければ毎月の手取り額は約33万円になります。毎月の住宅ローン返済額を差し引いても約23万円は残るので、単身であれば貯蓄もしながら十分生活していけそうです。

また、公益財団法人不動産流通推進センター「2023不動産統計集」によると、東京圏の1LDK~2DKの賃貸マンションの家賃相場は平均111,890円なので、賃貸と同等以下の負担で購入できることになります。ここでは管理費・修繕積立金や火災保険料は考慮しておらず、厳密な試算ではありませんが、単身者の住宅購入が現実的な選択肢であることが分かります。

単身者が住宅を購入するメリット

上述のとおり、単身者が住宅を購入するケースは決して珍しくはありません。それでは単身で住宅を購入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

(1)理想の暮らしを実現できる
分譲マンションは一般的に賃貸マンションと比べて室内設備や共用施設が充実しています。たとえば、常駐のコンシェルジュや24時間ゴミ出し可能なゴミ置き場、ジムやプールなどが共用施設・サービスとして備え付けられている分譲マンションもあります。

また、原状回復義務がある賃貸マンションでは部屋を自由にリフォームすることはできませんが、分譲マンションの場合、専有部分である室内は規約に反しない限りはリフォームも自由にできます。このように賃貸ではなく、購入することで、自分の理想の暮らしを実現できるメリットがあります。

(2)家賃や更新料を支払わなくてすむ
賃貸住まいであれば家賃や更新料を支払い続けないといけません。特に生涯独身であった場合、退職後に年金暮らしになってからも家賃を支払い続けるのは大きな負担になります。その点、持ち家の場合、住宅ローンを完済すれば維持費等以外を支払う必要がありません。

(3)住宅ローンを早く完済できる(若年の場合)
独身の若いうちに住宅ローンを組んだ場合には、そのぶん早く完済することができるので、後々の生活設計に余裕ができます。逆に借入時の年齢が上がれば、そのぶん完済する年齢が上がるか、短い期間で返済する必要に迫られます。なお、住宅ローンは一般的に完済時年齢の上限が80歳に設定されています。また、その上限に関わらず、できれば退職金を使うことなく定年までに完済するのが理想的です。

(4)資産価値がある
住宅を購入すれば自分の資産にすることができます。立地や物件によっては購入後に価格が上昇する場合もあり、特に若年で独身者向けの物件を購入した場合は、将来的に投資用物件として売却や賃貸に出しやすいという利点もあります。最近は不動産の資産性に着目して、住宅を購入する単身者も増えているようです。

単身者が住宅を購入するデメリット

一方で単身者が住宅を購入するデメリットについても考えておく必要があります。

(1)購入予算が限られる
結婚して共働きであれば2人分の収入があるため、購入予算に余裕があります。また、住宅ローンも収入合算やペアローンを利用して借入可能額を増やすことができます。しかし、単身で住宅を購入する場合は自分自身の収入のみで住宅ローンを組み、生活費をやりくりしないといけないため、購入予算が限られる場合があります。

(2)住宅ローンを返済できなくなるリスクがある
住宅購入後、安定した収入を得続けて、住宅ローンを無事完済できればよいのですが、現実には健康リスクや就労リスクなど、住宅ローンの返済に影響を及ぼしかねないリスクが人生には潜んでいます。共働き夫婦に比べ、単身者はそのような場合に収入が完全に途絶えてしまう可能性が高いので、余裕資金の貯蓄や保険などの対策を考えておく必要があります。

(3)転居の必要が生じる可能性がある
住宅を購入したときは単身であっても、その後に結婚することがあれば、ひとり暮らし用に購入した住宅では手狭になるかもしれません。また、単身であるからこそ、転勤や転職をしやすい身軽さがありますが、そうなれば転居の必要が生じるかもしれません。

単身者が住宅ローンを組むときのポイント

それでは単身者が住宅ローンを組む際にはどのようなポイントを押さえておけばよいでしょうか。

(1)計画をしっかりと立てる
住宅ローンを組む前に2つの計画をしっかりと考えておくことが大切です。1つは人生計画(ライフプラン)、もう1つは資産計画です。特に年齢が若いほど将来の不確定要素も多くなります。結婚やキャリアに対する考え方や、生涯独身の場合は老後に身の回りの世話や介護をしてくれる人がいないことなどもふまえて、人生計画や資産計画を考えておいた方がよいでしょう。その上で持ち家があった方がよいのかどうかを冷静に考えてみる必要があります。

(2)リスクに備える
住宅ローンの返済中に病気になる可能性もあります。仕事を続けられないような重い病気の場合、治療費の負担だけでなく、収入が減り、住宅ローンの返済に影響を及ぼしかねません。そのようなリスクの対策として、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険(団信)や、個人で加入する生命保険や医療保険をよく検討する必要があります。

団信には死亡だけでなく、がんや三大疾病で所定の状態に該当した場合や、就業不能状態になった場合にも住宅ローンの残高が弁済される特約が付いたものがあります。また、民間の保険では医療保険やガン保険、所得補償保険、就業不能保険などが、病気や就業不能時の備えになります。

(3)需要が下がりにくい物件を選ぶ
どれだけ計画を立てても、未来のことは誰にも分かりません。結婚や転職などを機に、転居の必要性に迫られる可能性がないとは言えないので、将来的に物件を売却あるいは賃貸に出す可能性も考慮しておいた方がよいでしょう。

つまり、なるべく資産価値が下がりにくく、買い手や借り手が付きやすい立地、面積、間取りの物件を選んでおくことも対策の一つです。なお、原則として住宅ローンを組んで購入した物件を賃貸に出すためには、住宅ローンを完済するか、不動産投資用のローンに借り換える必要がある点には注意が必要です。

まとめ

単身者が住宅を購入することにはメリットもデメリットもありますが、正解はありません。住宅は金額においても、過ごす時間においても、人生の中で非常に重要なものであるからこそ、長所と短所のどちらも押さえた上で、自分自身のライフスタイルやライフプランに合った選択をすることが大切です。この記事が少しでも参考になれば幸いです。

執筆者:長尾真一(ながおしんいち)

ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)、企業年金管理士(確定拠出年金)

1977年広島県生まれ。大学卒業後、医療機器メーカー・エアライン系商社で海外営業として勤務した後、ファイナンシャルプランナーに転身。
生活に関わるお金の不安を解消し、未来に希望をもって暮らしていくためのお手伝いをする「生活設計のコンシェルジュ」として相談業務や執筆業務に従事。
企業や学校での講演・セミナーにも年間100回以上登壇しており、これまでの延べ聴講者数は2万人を超え、わかりやすい説明が好評を得ている。

連載バックナンバー生活設計コンシェルジュ 長尾真一がやさしく解説!今、押さえたい住宅ローン活用術

本コラムは、執筆者の知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めております。掲載内容については執筆時点の税制や法律に基づいて記載しているもので、弊社が保証するものではございません。

  • 生活設計コンシェルジュ 長尾真一がやさしく解説!今、押さえたい住宅ローン活用術
  • FP菱田雅生が伝授!住宅ローン、賢く利用するためのコツ コラムを読む
  • ファイナンシャルプランナー豊田眞弓が徹底解説!知っておきたい!住宅ローンテクニック コラムを読む
  • 住宅ジャーナリスト山本久美子さんがお悩み解決!住宅ローンと購入資金にまつわるQ&A
  • ファイナンシャルプランナーが伝えたい!お役立ちマネー講座~ コラムを読む
  • 住宅ローン分析の専門家が解説!~知っておきたい!住宅ローンの最新動向~ コラムを読む
  • 高田先生に聞く!住宅購入マネー事情 コラムを読む
自分にあった住宅ローンを選ぼう
生涯賃金から考えるライフプランシミュレーション!
健太と美咲の住宅ローン奮闘記 目指せマイホーム・オーナー
ファイナンシャルプランニングサービス

住宅ローンの知識

お得なローンはどれ?
超便利な住宅ローン徹底比較一覧!


■目的から探す
■金融機関から探す

提供:イー・ローン

住宅ローンベスト金利一覧

変動 0.300% 詳細
固定3年 0.650% 詳細
固定5年 0.700% 詳細
固定10年 0.650% 詳細
全期間固定 1.300% 詳細

2024年11月05日 現在
提供:イー・ローン

住宅ローンページをご覧のみなさまへ

住宅ローンのことなら、野村不動産ソリューションズのノムコム。住宅ローンについてプロの視点でわかりやすくアドバイス。これで住宅ローンの情報はバッチリ!