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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンテクニック

あなたは大丈夫?住宅ローンのああ勘違い<2>

2017年03月08日

住宅ローンの勘違いシリーズ第2弾(第1弾はこちらから)です。実際の相談現場で出くわしたことがあるものをピックアップしています。あなたが「勘違い」していたものはいくつありますか?

<勘違い1>低金利の時期に、金利の高い固定金利型を利用するのはもったいない!?

ある銀行の2016年2月時点の全期間固定型の金利は1.34%、変動金利型は0.6%です。3,000万円を35年、ボーナス払いなし、元利均等返済で借りる場合の返済額は、次のようになります。

全期間固定(1.34%)...月返済額89,522円
変動金利型(0.6%)...月返済額79,209円

月1万円も違ってしまうと、変動金利のリスクが頭にあっても心が揺れる人もいます。変動金利型のリスクについては過去コラム「変動金利は金利上昇期の行動を決めて利用しよう」にも書きましたが、返済総額は返し終わるまでわかりません。また、途中で10年固定や20年固定などに借換えをするつもりでいる人には、借換えるタイミングも大事です。

セオリーとしては、低金利期や金利上昇期は全期間固定や長期の固定金利期間選択型を利用し、高金利期や金利下降期(低金利継続期含む)に変動金利型や短期の固定金利期間選択型を利用するべきです。問題は、今が金利上昇期なのか、はたまた金利下降期や低金利継続期なのかの判断ですが、正解は誰にも分りません。

それでも、低金利期に固定金利で借りる行為を「もったいない」と考えるのはナンセンス。変動金利でずっと借りた場合、その総返済額は返し終えるまではわかりません。金利が大きく上がれば、固定金利の総返済額を超えることもあります。そのため、金利差は金利上昇リスクを回避するための「保険料」と見ることができます。

資金的に十分に余裕がある人であれば金利変動リスクをとれるものの、リスクを取れない、取るべきでない人もいます。しかも、今は超低金利。固定金利や長期の固定金利期間選択型を利用するのは、むしろ合理的な方法と言えます。

<勘違い2>金利は申し込んだ時点のものが適用される!?

この勘違いをしている人もたまにいますが、住宅ローンの借入を申し込んだ段階では、実際に適用される金利は決まりません。適用金利が決まるのは、物件が引き渡され、住宅ローンが実行される時点です。そのため、申し込んだ時点から住宅ローン実行までの期間が長いと金利環境が大きく変わる場合もあります。

また、住宅ローンの金利は毎月1日に変更されますので、31日に住宅ローン実行の人と、翌1日に実行の人とでは、金利が異なるケースもありうるわけです。

<勘違い3>「金利が1%未満なら住宅ローン控除でプラスになる!?」

この勘違い、意外と多いように思います。住宅ローン控除の控除額は年末残債の1%のため、「金利が1%を切る住宅ローンを借りれば控除分でプラスになる」という勘違いです。

実際には、住宅ローンを利用するコストである、次のような費用を含めて考える必要があり、これらを含めて1%以下にならなければ、実際には該当しません。
・保証料(かかる場合)
・事務手数料
・団信保険料(かかる場合)

しかも、10年で完済できるのであればそれだけ考えればいいですが、実際には、10年経過後も借り続けることになることの方が多いことでしょう。

例えば、3,000万円を35年、ボーナス払いなし、元利均等返済で借り、繰上返済を行わない場合で、保証料、団信保険料がかからないローンであっても、35年間の適用金利がおよそ0.473%以下でなければ住宅ローン控除の方が総コストを超えて有利になることはありません。当面10年間などの金利が1%を切っているというだけで「プラスになっている」と見るのは誤りです。

であれば、表1のように、住宅ローン控除分も加味した返済総額で比較をして、最も有利な住宅ローンを選択する方がいいでしょう。

なお、住宅ローン控除は所得税(一部住民税)を取り戻すもののため、戻せる税金がない場合は絵に描いた餅になってしまいますので注意しましょう。

表1 住宅ローン控除を含めた比較
(3,000万円を35年、ボーナス払いなし、元利均等返済で借り、繰上返済なしの場合)
金利タイプA銀行
10年固定
B銀行
10年固定
(自己資金10%以上)
(参考)
A銀行
全期間固定
当初金利 0.500% 0.787% 1.290%
当初月返済額 7.78 8.17 8.88
11年目以降の金利 1.4%
(店頭金利3%-1.6%)
2.4%
(店頭金利3%-1.6%+1%)
1.787% 変更なし
総返済額 3,538.1 3,856.5 3,718.1 3,729.6
事務手数料 3.24 3.24 4.32 3.24
保証料 61.8 61.8 0.0 61.8
団信料 0.0 0.0 0.0 0.0
住宅ローン控除 -256.1 -256.1 -257.9 -261.0
総支払額 3,347.0 3,665.4 3,464.5 3,533.6
(2017年2月実行分) ※単位:万円
表2 住宅ローン控除の概要   *( )は認定住宅
居住開始年月適用される消費税率年末残高限度額*控除率控除期間所得税からの控除合計最高限度額*
~平成31年6月 8%または10% 4,000万円
(5,000万円)
1% 10年間 400万円/年
(500万円/年)
5%または中古住宅でかからない 2,000万円
(3,000万円)
200万円/年
(300万円/年)

<勘違い4>返済が苦しいので、金利の低い変動金利型に借換える!?

まれに、「返済が苦しくなってきたので、金利が低い変動金利に借換えたいんです」という相談を受けることがあります。毎月の返済額を下げる目的で、それまで全期間固定などで借りていたものを変動金利に借換える、というのです。

固定金利⇒変動金利への借換えは、返済額の引き下げにはなるものの、それまでなかった金利変動リスクを抱えることになります。当面はよくても、金利が上がってくればその影響を受ける可能性があります。つまり、家計が厳しくて変動金利に借換えるケースは、一時しのぎの対策で、時間稼ぎにしかならないのです。

変動金利に借換えて家計が少しラクになった間に、世帯収入をアップするか、家計を見直して支出を抑えるなど、大幅な見直しを行う必要があります。変動金利への借換えだけでは根本的な解決にはならないのです。

<勘違い5>繰上返済は早くたくさんした方がトク!?

住宅ローンを借りると、多くの方は、「とにかく早く返したい」と考えがちです。早く返し終えることが「トク」であるのは否定しません。

ただし、ライフプランとの兼ね合いで考えた場合は、単純に正解とはいえません。たとえば、繰上返済を急ぎすぎた結果、教育費がピークになる大学の時期に教育資金不足になってしまい、教育ローンや奨学金を借りることになったり、あるいは、本来はどんなときでも手元に残しておくべき予備費まで繰上返済に回した結果、家族が大きな病気をしたときにフリーローンを借りることになったり。......いずれも実際に相談を受けたことがあります。

「教育資金がかかる前に完済したい」とやみくもに頑張る人もいますが、どれくらいのペースで行えばいつごろ終わるのか、そこに無理はないのか、などを見極めた上で行うべきです。

今はまだ保育園児の子どもを、将来、私立中高一貫校に入れたいと考え、教育費を貯めるよりも繰上返済にいそしんでいる方の相談を受けたことがあります。繰上返済のシミュレーションを行ってみたところ、中学1年の途中までかかることが判明。私立中高一貫校に入るには小4くらいから塾通いも必要になり、年間で80万~100万円の塾代がかかることが計算に入ってなかったのです。

「こんなはずでは」という状態に陥ることがないよう、繰上返済は目先の損得だけで判断せず、慎重に計画的に行いたいものです。

以上、今回も5つの「勘違い」を見てきましたが、あなたが勘違いしていたことはあったでしょうか? こうした「勘違い」が起きないよう、普段からマネーセンスを磨くことも大事ですね。

執筆者:豊田 真弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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