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住宅ローンコラム 知っておきたい!住宅ローンテクニック

AIによる住宅ローンの審査ってどこまで進んでいる?

2019年06月05日

AI(人工知能)を活用した住宅ローン審査が進んでいます。銀行にとっては審査の効率を上げるメリットがあり、利用者にとっては審査結果が早く出るというメリットがあります。住宅ローンのAI審査の現状について、先行しているソニー銀行と住信SBIのケースを中心に取り上げます。

ソニー銀行では2018年5月からAI自動審査をスタート

すでに2018年5月より、業界に先駆けてAIを活用した自動審査(仮審査)を行っているのがソニー銀行です。2016年春のマイナス金利政策導入を受け、住宅ローンの申し込みが2~2.5倍に増えたことがそもそもの開発のきっかけとなったそうです。AIモデルを開発し、システム改修を行い、2018年1月からの実証実験を経て、5月にスタートしました。

AIの機能の1つである「機械学習」(与えられた情報を学習し法則やルールを見つける)を活用したもので、仮審査における人間の判断を模倣するモデルとなっています。過去4年分、8万件の審査データを学習させ、それに基づいて審査結果(「可決」または「否決」)を出すというものです。AIによる判定と人間による審査はほぼ100%の一致が見られるそうです。

ただし、AIでは判断できない内容(20%程度)やイレギュラーな申込は「保留」となり、人間が判断する流れになっています。その後も追加学習を繰り返すことで、さらに精度の向上を目指しています(図表1)。

この仮審査をパスすると本審査に進みますが、申請内容が事実と異なっていたり、健康の問題から団体信用生命保険に入れないなどの問題がなければ、本審査で逆転することは通常はありません。

図表1 AI審査の流れ

(ソニー銀行資料より)

AI審査のメリットと課題

AI審査による最大のメリットは、仮審査期間が短縮できることです。審査担当者に案件が回るまでの時間などもあって、人間が担当すると2~6日かかるところを、AIだと最短60分で完了。スピーディな審査は利用者にとってもメリットといえます。

人間が行う審査は、多くの審査項目から基準に合わないものを探す作業で効率的ではなく、特に「返済負担率」(年収に対する年間返済額の割合)が高い場合は慎重になり、担保評価など保全ありきの判断になりがちなのだそうです。

しかし、AI審査では、学習結果に基づく属性や自己資金、信用情報などから総合判断し、「審査基準」という概念もありません。そのため、これまでだったら社内決裁となっていたような「年収倍率」(借入額が年収の何倍か)が高いケースでも、AI審査ではスムーズに「可決」と判定を出します。しかも、担当者の判断による差も生じることはありません。

一方で、ソニー銀行のAI審査では、次のような課題があるそうです。
・ペアローンや個人事業主の審査は情報が十分でないためAI審査はまだ行われていない
・個人信用情報機関が稼働していない時間帯(平日22:00~8:00、土日祝16:00~8:00など)は信用情報が取れず、スピーディな判定ができない
・入力ミスがあると判定に支障が出る

住信SBIネット銀行は日立製作所と新会社を作り地方銀行に提供も

住信SBIネット銀行も、2017年11月から独自にAI審査を行ってきました。実は、時期的にはソニー銀行よりも少し早めのスタートです。

自行内ではすでに住宅ローンのAI審査(仮審査)が取り入れられているほか、次のステップとして、日立製作所との合弁会社を2019年5月に設立し、10月頃より、住宅ローンに関してより精度の高いAI審査がスタートする予定です。新会社によるAI審査は、自行だけでなく、全国の地方銀行にも提供することを見込んでいます。

AI審査では、申込者の情報からローンの可否を判定するだけでなく、より精密な分析により優遇金利の設定なども行うものになるようです。ソニー銀行では仮審査をAI審査が行っていますが、新たなシステムでは、AI審査により住宅ローンの本審査まで完結するサービスとなります。これは、国内で初になると見られています。さらに、住宅ローンだけではなく、カードローンや中小企業向けの融資審査などにもサービスを広げていく計画だそう。

新会社のAI審査では、全国の地銀から住宅ローン借入者の情報(職業や年収、家族構成、貸出しの状況、返済の状況など)を提供してもらうことで、AIに学習させ、デフォルト(債務不履行)などのリスクの確率を算出します。審査に要する時間は「数秒」だそうです。

メガバンクの動きは?

メガバンクもAI審査に乗り出しています。三菱UFJ銀行は2018年10月より特定サイトの利用者を対象にスタートしています。サイト上で勤務先や年収など必要な情報を入力すると、15分程度でAIが仮審査を行い、融資の可否を判定します。将来的には本審査までをAIで行う予定です。

みずほ銀行も2019年度より導入の見込みです。グループ会社のみずほ第一フィナンシャルテクノロジーと共同で、AI審査の実証実験を行っています。

今後は審査がますますスピーディに!

現在は、一部の金融機関のみで、しかも人間がサポートしながらAI審査が行われている状況ですが、業務の効率化を進める意味でも今後は大きく広がっていくと考えられます。しかもそう遠くなく、仮審査だけでなく、本審査や、属性に応じた優遇金利の決定までAI審査へ移行していくのではないでしょうか。

利用する私たちにとっては、審査が早くなることで住宅ローンの比較・検討もしやすくなるというメリットが生まれると考えられます。住宅ローンがスムーズな流れになれば、よりじっくりと家選びもできそうですね。

執筆者:豊田 真弓(とよだ まゆみ)

ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー
FPラウンジ ばっくすてーじ代表。経済誌・女性誌等のライターを経て94年よりFPとして独立。「家計の永続性」をテーマに、個人相談や講演・研修、雑誌や新聞、サイトへの寄稿、監修などを行う。「住宅ローン賢い人はこう借りる」(PHP研究所)、「50代家計見直し術」(実務教育出版)など著書多数。座右の銘は「今日も未来もハッピーに」。

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