不動産投資コラム

あなたにあった物件とは 状況別傾向と対策

同じ不動産でも、投資家のおかれている状況によって適、不適が分かれることがあります。投資金額、リターンが同じなら一緒ではないかと思われるかもしれませんが、この違いを理解しないと大失敗することにもなりかねません。今回はそのポイントをお話します。

チェックポイント1 投資を始める年齢

まず、ご自身の年齢について考えてみましょう。

現在の不動産投資の主流は、インカムゲイン(家賃収入)によって着実に投資元本の回収と収益をあげることを目的としています。この場合一般的に投資元本の回収期間が終われば投資リスクはなくなります。つまり、元本回収期間を経過すれば『その後の家賃収入』=『純収益』とも考えられるのです。

ですから、投資元本の回収期間が15年だとすると、30才ならば45才以降はリスクゼロでのインカムを手に入れることになりますが、50才の場合、リスクゼロのインカムは65才からと言うことになります。他に収入もある現役世代は多少の投資リスクを負担することも可能ですが、年齢が高くなるほどリスクへの許容度は小さくなっていきますので、現役世代の間に投資元本の回収を目指すことが必要なのです。

チェックポイント2 キャッシュフローか、資産価値の確保か

投資する対象によって、投資利回りは違ってきます。

たとえば、稀少価値のある立地にあり将来も価値が変わらない物件は、10年後の賃貸需要に不安があり、価値が下がる物件よりも利回りは低くなる傾向があります。

高利回りだけれども価値が下がる可能性がある物件と、利回りは低いが価値は下がらないと見込める物件、さて、どちらを選んだら良いのでしょうか。

この選択のポイントは投資する人の資金力です。高利回りの物件であれば融資を受けて購入したとしても当面は毎月の返済に困ることはありませんから、資金力に乏しくともキャッシュアウト(家賃収入が返済額を下回る)(※1)することは稀です。その代り、将来の物件価値の下落率は大きい可能性があり、価値の下落分を利回りから差し引くと高利回りに見えていた利回りがそんなに高くないことになる可能性があります。

ただ、借入金返済は家賃収入ですべて賄え、早期に回収できるのであれば、最終の利回りが表面上の利回りより下がるとしても投資する価値はあるのではないでしょうか。資金力に自信がないけれども、不動産投資にチャレンジしたいという人は、大半をローンで購入してもキヤッシュアウトの可能性が小さいことを第一の条件としたらいかがでしょう。

一方、すでに十分な資金力を持っている人はどうでしょう。

高利回り物件は、もちろん購入できますが、資金力を生かして将来も安定した収益、価値を得られる物件に投資するという方法もあります。

将来の価値は見込めるけれども利回りが低い場合、融資を受けて購入すると、状況によっては家賃収入に加え毎月自己資金を追加して返済する場合も出てくるでしょうが、資金力があれば何ら問題はありません。また購入の際に一定の自己資金を投入し、キャッシュアウトを起こさない程度のローン返済に留めるという方法もあるでしょう。高利回り物件と違い、あまり派手な投資にはならないかもしれませんが、将来の価値を踏まえ着実に資産を増やす投資手法となる可能性があります。

チェックポイント3 税率と建物減価償却費

不動産投資をして家賃を得ると、不動産収入として申告をします。その際、経費として計上できる部分以外は所得となりますので、その所得にかかる税率を考慮しなければなりません。特に所得税は累進税率となっていますから、現在の所得レベルが高い場合には「税引後の手取り額がいくらになるのか」を慎重に検討する必要があります。

この場合のポイントは建物の減価償却費です。

土地、建物の所有権売買では、申告の際に"土地が○○万円、建物が△△万円"と区分けすることになっています。この場合、土地代は減価償却ができませんが建物は減価償却が可能、つまり減価償却分は経費として計上できるのです。

例を挙げてみましょう。
同じ1億円の物件で年間1,000万円の家賃収入があるとします。

   土地7,000万 建物3,000万 建物償却年数15年

   土地4,000万 建物6,000万 建物償却年数15年

単純化のため、建物償却以外の必要経費はないものとして、税率を30%とすると
税引き後の手取り額は

   760万円(※2)
     1,000万-{(1,000万-3,000万/15年)×30%}

   820万円(※2)
     1,000万-{(1,000万-6,000万/15年)×30%}

つまり手取り額が60万円も違ってしまうのです。

ただし、償却が大きいということは相対的に土地の価値が低いということにもなりますので、手取り額の多寡だけで優劣をつけることはできません。しかし、土地、建物の評価法はひとつだけでありません。極論すれば、同一物件でもA、Bのように評価が分かれる可能性もありますので、税率の高い場合には減価償却費がいくら取れるのかが選択の重要ポイントになるのです。

不動産投資は知識の総力戦

今回は、投資を考えるうえで検討すべき項目のごく一部を取り上げました。これ以外にも目指す投資規模、投資リスクの許容度、ライフプランと借入限度額(投資内容によっては個人の住宅ローンなどが制約されることもあります)、資産家の方は相続税対策など様々な要素があります。また、最初は良い投資だったとしても、投資を続け資産規模が大きくなれば最適な投資も違ってきますので、常に「今、自分に合った投資とはなにか」を考えることが必要です。

不動産投資では、常に最新の知識を得て最適な投資とは何かを問い続けることが求められるのです。

 

※1 キャッシュアウト(キャッシュ・アウトフロー)
資金の流出をキャッシュアウト(キャッシュ・アウトフロー)、資金の流入をキャッシュイン(キャッシュ・インフロー)と呼び、その双方を合わせてキャッシュフローと言います。

不動産投資において投資資金の全部、または一部を借入金で賄っている場合は月々のローン返済が必要となりますが、家賃収入がその返済額を上回る場合をキャッシュ・インフロー、下回る場合をキャッシュ・アウトフローと言います。

※2
AおよびBは手取額の差額を算出するための計算式であり、実際にはその他の収入を含め、算出する必要があります。

沢 孝史
沢 孝史

沢 孝史

1959年生まれ。サラリーマンとして勤めながら、不動産投資を開始。現在8棟のアパートとマンション2棟を所有、年間家賃収入は6,000万円となる。著書に、「不動産投資を始める前に読む本」(筑摩書房)他。

 

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