不動産投資コラム

借入れをしてまで不動産投資をするのは何故?

不動産投資では投資資金を自己資金100%でまかなう人はごく僅か、一般的には借入金を併用して購入するものです。そのためできれば借入れをしたくないけれども、利用をしなければならないと感じている方も多いと思います。
しかし、借入れをすると自己資金だけの投資より、効率的な資金活用ができる場合もあります。だからこそ借入金を使ってまで投資をするのです。なぜ借入金を使って投資をするのか、その理由を知るためのキーワードは「レバレッジ」「イールドギャップ」「ROI」の3つです。そして、この3つを理解することで「借入れをしてまで不動産投資をする理由」がわかるようになります。

第一のキーワード レバレッジ

レバレッジ(Leverage)とは直訳すれば"てこ"の意味ですが、投資では、借入れを利用し、自己資金よりも大きな投資を行うことを指します。最近よく耳にするFX(Foreign Exchange/外国為替保証金取引)なども、保証金額の何倍もの金額を取引しますが、これもレバレッジを使った投資になります。

では、不動産投資のレバレッジとはなにかと言えば、投資総額のうちの自己資金を除いた金額すべてがレバレッジを使った投資と言えるでしょう。

不動産投資ではFXのように「倍率」といった言葉は使いませんが、投資総額が1億円で、自己資金が2,000万円(20%)であれば自己資金に対して5倍の投資、自己資金1,000万円(10%)であれば10倍の投資をしていることになります。つまり、レバレッジとは単に自己資金以上に借入れをすることではなく、自己資金だけでできる投資の枠を超えて、大きな投資を行うことのためにする借入れであるということを理解しておきましょう。

第二のキーワード イールドギャップ

「レバレッジは単に借入れをすることではなく、投資のための借入金である」ことですから、その借入れの大前提は「利益」を借入金によって上げることになります。

では、借入れをして利益をあげるとはどういうことでしょうか。これを率であらわすのがイールドギャップです。

イールドギャップとは、投資利回りと長期金利との差を示しますが、不動産投資では、借入金の金利と投資物件の利回りの差と考えれば良いでしょう。仮に年間の家賃収入が400万円、物件価格が5,000万円であれば利回りは8%になります。一方この不動産のための購入資金を銀行が金利3%で貸してくれるとすると、投資利回り8%と借入れ金利3%との差5%がイールドギャップです。

利回り8%の投資を金利3%の借入金で行うことができるとすると、実際のお金の動きはどうなるのでしょうか。

この5,000万円の物件の場合、一年間に入ってくる家賃収入は8%の400万円です。それに対して5,000万円の借入金に対して支払う金利は5,000万円の3%で150万円ですね。

つまり400万円の家賃収入から150万円の金利を支払った残りの250万円が理論上の収益になります。

この250万円は投資総額5,000万円の5%に当たります。

つまり、イールドギャップは借入金の金利と投資物件の利回りの差を表していますが、その差というのは借入金を使った投資で得られる収益を率で表したものなのです。

第三のキーワード ROI(Return on Investment)(投資利益率)

ただし、これはその投資がその予測どおりに推移した場合の話ですし、実際には金利に加え元金返済が必要になります。また利益が発生すれば税金も払わなければなりませんので、250万円がすべて手取金額として入ってくるということではありません。ここではレバレッジを使った投資のリターンの源泉はイールドギャップであることを理解しておきましょう。

さて、今の例は、自己資金がゼロ、つまり100%借入金(レバレッジ)を使った場合ですが、実際の投資で自己資金がゼロで物件を購入するのは一般的に困難です。物件にもよりますが、通常は10%~30%程度の自己資金が必要となります。この場合、投資に使った自己資金に対してのリターン(利益)を比率(%)で表したものがROIです。

では上記の5,000万円の物件を自己資金1,000万円、借入金4,000万円で購入した場合のROIはどうなるのでしょうか。

支出となるローン返済額は、4,000万円を金利3%、25年返済(元利金等方式)で借入れをした場合、年間で約228万円となります。一方、収入(投資利回り)は8%ですから5,000万円×8%=400万円になります。そうすると年間の収支は400万円-228万円=172万円になります。これを、投資資金1,000万円を基準にして考えると、1000万円の投資に対して172万円のリターンですから、ROIは172万円÷1,000万円=17.2%になるのです。

現在の低金利の時代にROI(自己資金に対する利回り)が17.2%というと驚かれるかもしれませんが、イールドギャップに一定の差がある投資であれば、レバレッジ、具体的には借入金を利用することによって、この17.2%という利回りは可能になるのです。またこれは低金利が続く今の日本だからこそできる投資手法なのです。

このように不動産投資は自己資金と借入金を効率よく活用することによって、投資効率を飛躍的に向上させる可能性があります。

不動産投資とは、資金面のみで考えれば、この3つのキーワードの組み合わせで考えるものとも言えるのです。

 

上記の計算については、投資物件の維持管理費、公租公課等を考慮しておりません。

沢 孝史
沢 孝史

沢 孝史

1959年生まれ。サラリーマンとして勤めながら、不動産投資を開始。現在8棟のアパートとマンション2棟を所有、年間家賃収入は6,000万円となる。著書に、「不動産投資を始める前に読む本」(筑摩書房)他。
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