不動産投資コラム

収益不動産取得時の諸費用は、資産計上?それとも費用計上?

最近では、1億円の不動産を取得する際に1億円の借入をする方も増えています。これを「フルローン」と言いますが、実際に私もフルローンで不動産を購入していますし、私のお客様の中にもフルローンで不動産を購入されている方がいらっしゃいます。

1億円の不動産で1億円の借入をすれば、一切自己資金を出さずに購入できるように思われるかもしれませんが、実際は、様々な手数料や税金が発生するため、自己資金を持っておかなくてはなりません。

今回は、取得時にかかる様々な費用を取り上げ、それが税務上どのような扱いになるのかご紹介します。

仲介手数料、固定資産税精算金

まず、不動産の仲介業者へ支払う「仲介手数料」があります。これは上限額が物件金額×3%+6万円(税抜)となり、例えば5,000万円だと156万円(税抜)となります。

次に「固定資産税精算金」があります。これは、固定資産税の日割ですね。そもそも固定資産税は、その年の1月1日現在で不動産を所有している人のところへ請求される税金です。つまり、2015年1月2日に不動産を売却した人がいるとすると、2015年は1日しか保有していないのに、1年分の固定資産税の請求がきます。そのため、不動産の売買の時には、1日分を売主負担、364日分を買主負担として精算を行います。仮に36万5,000円が固定資産税の金額とすると、市町村からは売主さんのところへ36万5,000円の請求がきます。そして買主は売主へ36万4,000円を支払う(精算する)ということになります。

ただし、ご注意いただきたいのは、関西の一部地域では1月1日を精算の期日とせずに、4月1日を精算の期日としていることです。少しややこしいのですが、1月1日現在で所有している人のところへ固定資産税の請求がくるのですが、それは4月1日から翌年3月31日までの分であるという考え方です。

例えば、2015年1月2日に不動産を売買した場合、2014年の固定資産税のうち、2014年4月1日~2015年1月1日は売主負担、2015年1月2日~2015年3月31日は買主負担、かつ2015年4月1日~2016年3月31日はすべて買主負担ということになります。

(例)2015年1月2日に不動産を売買した場合

全国 関西の一部地域
固定資産税の請求先 1月1日所有者 1月1日所有者
固定資産税の計算期間 1月1日~12月31日 4月1日~翌年3月31日
売主負担 1日分
(2015年1月1日のみ)
276日分(2年間で計算)
(2014年4月1日~2015年1月1日)
買主負担 364日分
(2015年1月2日~2015年12月31日)
54日分(2年間で計算)
(2015年1月2日~2015年3月31日)
(2015年4月1日~2016年3月31日)

仲介手数料、固定資産税精算金ともに取得経費として「資産計上」となり、建物や土地の金額に含められます。

返還保証金の持回り保証金

いわゆる「返還敷金」や「返還保証金の持回り」と呼ばれるものです。これらは入居者からオーナーが預かっているため、不動産の売買があれば売主から買主へ渡す必要があります。しかし、関西の一部地域ではこれらの金額を渡さないという慣行があります。これを「持回り制度」と呼んでいます。

つまり、入居者から預かっている敷金が1,000万円ある場合、通常は売主が買主に1,000万円を渡すのですが、関西の一部の地域では渡しません。仮に、購入後に入居者が退去してしまった場合は、買主が1,000万円を負担することに。通常の地域で不動産を購入した場合と比べると持回り制度のある地域で不動産を購入した場合、不動産を1,000万円高く購入したことになります。

ちなみに、この保証金は資産として建物や土地の金額に含まれることになります。この持回り制度は、税理士でもよく間違えますのでご注意ください。

登録免許税、不動産取得税

不動産の取得時にしか発生しない税金として、「登録免許税」「不動産取得税」があります。登録免許税は、不動産を登記する際に発生する費用、不動産取得税は不動産を取得することで発生する費用になります。

それぞれ税額は以下の通りです。

登録免許税 不動産取得税
建物 固定資産税評価額×2% 固定資産税評価額×3%(※2)
土地 固定資産税評価額×1.5%(※1) 固定資産税評価額×1/2×3%(※2)
※1 平成29年3月31日まで(延長の可能性あり)
※2 平成30年3月31日まで(延長の可能性あり)。適用されるには「宅地」などの要件が必要。また、新築時に40㎡以上240㎡以下などの条件を満たせば、一定額を控除されます。

支払いのタイミングですが、登録免許税は不動産の所有権移転登記申請時に支払いますので、決済日当日となります。一方、不動産取得税は都道府県から通知が届きます。取得してから半年くらいかかって通知が届く場合もあります。

ちなみに、登録免許税と不動産取得税は、個人か法人かで税務上の扱いが異なります。

個人 法人
登録免許税・不動産取得税 費用計上 費用計上と資産計上の選択可能

収入印紙(印紙税)

金額は小さいですが、不動産売買で忘れてはいけないのが収入印紙です。売買契約書や金銭消費貸借契約書(ローン契約書)に貼ることになります。金額は以下の通りです。

金銭消費貸借契約書(円) 不動産売買契約書(円)
1万円未満 0(非課税) 0(非課税)
1万円超~10万円以下 200 200
10万円超~50万円以下 400 200
50万円超~100万円以下 1,000 500
100万円超~500万円以下 2,000 1,000
500万円超~1,000万円以下 10,000 5,000
1,000万円超~5,000万円以下 20,000 10,000
5,000万円超~1億円以下 60,000 30,000
1億円超~5億円以下 100,000 60,000
5億円超~10億円以下 200,000 160,000
10億円超~50億円以下 400,000 320,000
50億円超 600,000 480,000
契約金額の記載のないもの 200 200
※不動産売買契約書の印紙税額の軽減については、平成30年3月31日まで(ただし、延長の可能性はあり)

ちなみに、収入印紙の税務上の扱いは以下の通りです。

個人 法人
収入印紙 費用計上 費用計上

司法書士費用

不動産を取得すると必ず登記を行います。その際に司法書士の先生に依頼することになりますが、その報酬は登録免許税と同様となります。 つまり、個人であれば費用計上、法人であれば資産計上と費用計上の選択となります。

法人で不動産を取得する場合は、登録免許税や不動産取得税や登記費用について、資産計上か費用計上かを選択できます。金融機関対策をしたいのか、税金対策をしたいのかなど、総合的に勘案してベストな処理の選択をしましょう。

次回は、不動産の売却時の諸費用をご説明します。不動産価額が上昇している中、売却をお考えの方はぜひご覧ください。

塩田 雅人
塩田 雅人

塩田 雅人不動産投資 専門税理士

不動産投資に関する税務をさまざまな角度(所得税・法人税・消費税・相続税など)から検討し、トータルでサポートを行う。個人所有物件の法人化や消費税の還付に精通。銀行との良好な関係を築き、顧問先の借り換え提案や金利交渉に力を発揮する。

 

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