民法改正で売主様の瑕疵担保責任が「契約不適合責任」に!不動産売却に生じる影響と対策とは?

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2020年4月1日から、民法(債権法)の改正が施行され、これによって、不動産売買における「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと変わりました。売主様にとってどのような影響が生じ、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

目次

1. 民法(債権法)が約120年ぶりの大改正!

2017年5月に国会で成立した「民法の一部を改正する法律」が、2020年4月1日に施行されました。

民法は1896年に制定されてから約120年間、ほとんど見直しが行われていませんでした。そのため、内容が今の社会経済に対応し切れておらず、一部の実務などで通用していた基本的なルールも法律の条文上で明確になっていなかったのです。
民法改正によって売買契約における「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へ変わり、不動産売買にも大きな影響が及びます。

2. 瑕疵担保責任とは

まずは改正前の民法で規定されていた瑕疵担保責任とはなにか、確認しましょう。

2-1. 不動産売買における「瑕疵」とは?

不動産売買における「瑕疵(かし)」とは、「きず」や「不具合」「欠陥」のことを言います。
雨漏りやシロアリの被害、土壌汚染や地下埋設物などが代表的な例です。
ここでは、分かりやすいように「瑕疵=欠陥」と表現して説明していきます。

●不動産売買における瑕疵の例

設備の不具合

雨漏り

シロアリの害

建物構造上重要な部位の木部の腐食

土地境界線の未確定

地下埋設物

2-2. 瑕疵担保責任とは?その内容を解説

瑕疵担保責任とは、購入した物件に欠陥があることにより「家に住めない」など買主様が物件を購入した目的が達成できない場合に売主様に生じる責任のことです。
改正前の民法(以下、旧法)では、売買契約後に発覚した物件に「隠れたる瑕疵」がある場合に買主様は売主様に対して損害賠償請求ができるとしていました。
「隠れたる瑕疵」とは、買主様が契約時に普通に注意しても分からなかった欠陥のことを指します。
つまり瑕疵担保責任は、買主様がその欠陥に対して善意無過失でなければ適用されませんでした。

3. 契約不適合責任とは

旧法の「瑕疵担保責任」は、改正後の新法で「契約不適合責任」へと変わります。
契約不適合責任は、引渡されたものが契約の目的に適合しないときに売主に発生する義務です。

新法では、「隠れたる瑕疵」があるという要件が「契約の内容に適合しない」に改められ、「買主の善意無過失」は不要となりました。
また、売主様は「売買契約の内容に適合した商品を引き渡す義務」を負います。

3-1. 買主様の4つの権利が明文化

新法では、売主様が「契約に合った物」を引渡さなければなりません(売主の債務)。
「契約に合っていない物」を引渡した場合には、売主様に故意(=わざと)、過失(=うっかり)などの原因があれば、損害賠償請求できるとしています。
なお、ある当事者に故意(=わざと)、過失(=うっかり)などの原因があることを、当事者に「帰責事由がある」と専門用語では言います。
また、買主様から売主様への責任追及の方法(買主様の権利)に「追完請求権」と「代金減額請求権」が追加され、損害賠償請求権、解除権と合わせて4つの権利が明文化されました。

旧法(改正前)新法(改正後)
損害賠償請求
⇒「損害が生じたからお金を払ってくれ」と損害賠償を求める権利
旧法(改正前)
信頼利益の範囲内で損害賠償請求ができる。売主の故意過失は不要。
新法(改正後)
売主に故意過失がある場合、履行利益の範囲内で損害賠償請求できる
契約解除
⇒「これじゃ話が違う、解除してくれ」と契約を解除する権利
旧法(改正前)
契約の目的を達することができない場合に解除できる
新法(改正後)
・催告しても売主が応じない場合は解除できる
・契約の目的を達することができない場合、履行拒絶された場合などには「催告なし」で解除できる
追完請求
⇒「ちゃんと契約どおりの内容で進めてくれ」と契約通りの履行を求める権利
旧法(改正前)×
※規定なし
新法(改正後)
代金減額請求
⇒「欠陥があるなら、その分の代金を値引いてくれ」と減額を求める権利
旧法(改正前)×
※規定なし
新法(改正後)

3-2. 追完請求とは

改正法であらたに追加された「追完請求」とは、引渡された物の種類や品質、数量などが契約内容に適合しないときに、買主が売主へ目的物の修補や代替物、不足分を要求できる権利です。
改正民法では「契約不適合があると、まずは追完請求を行うべき」と規定されています。

3-3. 代金減額請求とは

代金減額請求とは、引渡された目的物が契約目的に適合しないときに、買主が売主へ売買代金の減額を求める権利です。
追完請求を行っても売主が応じない場合に代金減額請求ができます。

3-4. 解除

契約目的に適合しないものを納品されたとき、買主は契約を解除できます。売主へ催告してから解除するのが原則ですが、履行不能な場合や履行を拒否されている場合などには催告なしで解除が可能です。

3-5. 損害賠償

売主に故意や過失があって買主に損害が発生した場合、買主は売主へ損害賠償請求ができます。

4. 瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

瑕疵担保責任と契約不適合責任とでは何が違うのか、みてみましょう。

4-1. 隠れたる瑕疵でなくても請求できる

旧法の瑕疵担保責任は「隠れたる瑕疵」でなければ発生しませんでした。つまり買主が瑕疵について善意無過失でなければ請求できませんでした。
契約不適合責任では欠陥が隠れている必要はありません。
買主が善意無過失でなくても(欠陥を知っていたり不注意で知らなかったりしても)売主へ責任追及できます。

4-2. 請求できる権利の拡充

瑕疵担保責任では、買主は損害賠償請求か解除しかできず、解除できるのは「契約目的を達成できないとき」に限定されていました。

契約不適合責任では、買主に修補請求権や代金減額請求権も認められますし、契約目的を達成できるかどうかにかかわらず債務不履行があれば解除が可能です。

4-3. 損害賠償における過失の要否

瑕疵担保責任では、売主が善意無過失であっても買主からの損害賠償請求が可能でした。
新しい契約不適合責任では、売主に故意過失がなければ損害賠償請求できません。

4-4. 損害賠償の範囲

改正により損害賠償請求の範囲も変わります。
瑕疵担保責任では「信頼利益」の範囲に限定されていました。つまり「契約が有効と信じたために発生した損害」しか請求できなかったのです。具体的には点検費用や鍵を変えた費用などが該当します。

一方、契約不適合責任では「履行利益」まで請求できるようになりました。例えば「転売していれば得られたであろう利益」なども請求できます。
損害賠償の範囲は大きく拡大されたと言えるでしょう。

4-5. 請求期限の違い

瑕疵担保責任の場合、売主は瑕疵を知ってから1年以内に明確に権利行使する必要がありました。

契約不適合責任になると、欠陥を知ってから1年以内に相手に「通知」さえすれば権利が保全されます。
その後は5年以内に権利を実現すれば、時効に間に合います。

なお売主が欠陥について悪意や重過失がある場合、期間制限は適用されません。

5. 契約不適合責任は短縮、免除できる

民法は契約不適合責任の原則を規定していますが、当事者が納得すれば変更できます。「契約不適合責任」は任意規定だからです。任意規定とは「双方の合意により排除可能な規定」ということです。
つまり契約ごとに、特約でもって買主様の行使する権利を限定的にしたり、売主様の責任が及ぶ範囲を狭くしたりすることで、この規定を排除ないし免責にすることが可能です。
ただし、売主が知りながら買主に告げなかった契約不適合については特約の対象外となります。
このことからも、契約不適合責任を問われないためにも知っている事実についてはなるべく事前に伝え、
売主買主双方合意のもと契約を結ぶ方が良いでしょう。

例えば当事者が合意すると、契約不適合責任について以下のような修正が可能です。

  • 修補請求をしなくても代金減額請求できる
  • 代金減額請求はできないものとする
  • 契約不適合責任が発生しないものとする(免除)
  • 契約不適合責任の通知期間を短縮する

特に中古物件の個人間売買では、売主の契約不適合責任を免除するケースも少なくありません。残すとしても、期間を短縮するケースがよくあります。

もちろん売主にとっては責任が免除、あるいは短縮されているほうが有利です。

6. 売主様はどこに気をつけたらいい?

今回の民法改正による変更により、買主様の権利が拡充され、相対的に売主様の責任の及ぶ範囲が広くなったと言えます。売買契約後に契約不適合責任を問われないため、売主としては以下のようなことに特に注意しましょう。

6-1. 把握している欠陥を必ず不動産仲介会社や相手に告げる

売主が物件の欠陥を知っているにも関わらず相手に告げなければ、引渡し後に契約不適合責任を問われるリスクが高まります。
シロアリ、傷、雨漏り、過去に物件内で発生した事故や事件の内容など、把握している問題点はすべて不動産仲介会社を通じて買主へ告げましょう。

「重要事項説明書」などの契約関係書類に不動産の状態や状況を事細かく明記して、買主様との間で不動産の情報を極力共有するようおすすめします。

6-2. 特約で契約不適合責任を限定する

契約不適合責任は特約によって免除や期間制限ができます。
免除や期間制限してもらえると売主にとっては有利です。制限は残すとしても期間を1年より短期にしてもらえると安心です。

なお不動産仲介会社を通さず自分たちで契約書を作成すると、より高いリスクが発生します。リスクを減らすためにも、必ず事前に専門家によるチェックや監修を受けておくべきです。

6-3. 瑕疵保険へ加入する

万一欠陥が発覚した場合に備えて瑕疵保険へ加入しておくと、損害賠償金などが補填されるので安心です。

7. 野村の仲介+(PLUS)の「あんしんPLUS」で、
民法改正後にも安心を

これまで説明してきたように、民法改正によって売主様の責任を問われる機会が増えることが予想されます。

しかし、ご自身で不具合を発見したり、床下や屋根裏など普段見られない場所の状況を正確に把握したりすることは困難です。また、瑕疵を見つけてもご自身でどう対処すればよいのか分からないというお悩みやご不安を抱えられる方がたくさんいらっしゃいます。

野村の仲介+(PLUS)では売主様をサポートするため、マンション、戸建、土地の売却にあたり、それぞれの信頼性向上を図る4つのサービスを<あんしんPLUS>として提供しています。

●あんしんPLUS 4つのサービス

  • あんしん PLUS

    あんしん設備補修

    住宅設備に関して、専門家が検査・補修し、お引渡し後、万が一不具合が発生した場合、補修を受けることができるサービスです。

  • あんしん PLUS

    あんしん建物補修

    建物に関して、専門家が検査・補修し、お引渡し後、万が一不具合が発生した場合、補修を受ける事ができるサービスです。

  • あんしん PLUS

    あんしん土地診断(土地測量)

    お客様が所有する土地に対して、土地測量の専門家が調査を実施し、無償で仮測量を作製いたします。

  • あんしん PLUS

    あんしん土地診断(埋設物撤去)

    お客様が所有する土地に対して、埋設物撤去の専門家が調査を実施し、埋設物が発見された場合は無償で撤去いたします。

事前に検査や調査を行い、契約後もアフターサポートを提供することで、引渡し後のトラブルを軽減します。(あんしん設備補修、あんしん建物補修では、専門家が検査を行い、不具合が発見された場合、事前に補修(5万円まで)を受けることができます)また、不動産の購入に不安を抱く買主様の不安払拭にもなり、スムーズな売却活動に繋がります。
※上記売却サポートサービスは予告なく変更・終了する場合がございます。
【法制度に関する監修】
飯沼総合法律事務所 児玉 譲氏(弁護士)

8. よくある質問

8-1. 売主の瑕疵担保責任期間はいつから?

中古物件の取引における瑕疵担保責任の期間は、売主が個人、宅建業者、その他法人によって異なります。
(買主は自己居住用として個人が買うものとします。)
・宅建業者が売主の場合は、物件の引渡し日から2年間。買主が瑕疵を知った日から1年間です。
・個人が売主の場合は、物件の引渡しから2~3か月程度です。
2020年4月に改正された時に瑕疵担保責任から「契約不適合責任」へと変わり
契約不適合を知った日から1年以内に通知し、5年以内かつ引渡から10年以内に損害賠償等の権利行使が可能です。
実際の取引では、旧制度である瑕疵担保責任と混同しないように注意しましょう。

8-2. 契約不適合責任との違い

契約不適合責任では、売主が負担する責任が瑕疵担保責任よりも大きくなり、損害賠償請求、契約解除の他
追完請求、代金減額請求が可能となりました。

8-3. 瑕疵担保責任(現:契約不適合責任)を負わないようにするためには?

売主は契約前にホームインスペクションを実施し、瑕疵担保保険に加入するなどの対策が有効です。
自分でも気づいていない不具合がないかを明確にしておくことで、契約前に買主の購入目的に
沿っているかを判断してもらうことができます。
また実際の書類作成にあたっては、特約による免責事項を設けるなど不動産仲介会社などに相談しましょう。

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