鉄骨造の耐用年数は34年?60年?経営に活かせる基礎知識を解説

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鉄骨造の耐用年数は34年?60年?経営に活かせる基礎知識を解説

建物の構造ごとに、耐用年数という基準が設けられていることを知っているでしょうか。耐用年数は、建物を含めた資産を使用できる期間のことです。建物には、木造や鉄骨造といった構造によって異なる耐用年数が法的に定められています。

本記事では、鉄骨造建物の耐用年数について、概要や具体的な年数などを詳しく解説します。耐用年数の意味を理解していると、メンテナンスや売却のタイミングの理解につながります。鉄骨造の住宅など不動産を所有している人は、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 【独自アンケート】所有する不動産の法定耐用年数を知っている?

本記事では、戸建てやマンションなどの不動産を所有する人々を対象に、所有物件の法定耐用年数を知っているかどうかをアンケート調査しました。

所有する不動産の法定耐用年数がどの程度か知っていますか?

調査の結果、「知らない」と回答した人が57%と過半数を占めました。一方で「知っている」と回答した人は43%にとどまりました。

調査結果から、半数以上の不動産所有者が、自身の物件の法定耐用年数を認識していないことが明らかになりました。法定耐用年数は建物の価値を左右する重要な要素で、将来的に売却をするなら知っておきたい知識ですが、一般的にはなじみが薄い概念であることがうかがえます。

2. 耐用年数とは?

耐用年数とは

耐用年数とは、資産を使用できる期間のことです。1年以上の長期にわたって使用する資産に対して設定されます。建物の他、車や家電、パソコンなどさまざまな資産が対象です。こうした資産は経年や使用頻度などによって価値を失ってしまうため、問題なく本来の役割を果たせると想定される期間を耐用年数として設定します。

耐用年数は税金などの申告にかかわるため、法的に設定されているものもあります。法的に設定された耐用年数(法定耐用年数)は、実際にその資産を使用できる期間とは関係ないケースも多いです。建物も構造によって異なる期間が定められていますが、実際に住み続けられる期間よりも法定耐用年数のほうが短く設定されています。

このように場面やとらえ方によって「使用できる期間」に開きがあるため、建物については文脈に合わせて4種類の耐用年数が使い分けられます。具体的には、法定耐用年数・物理的耐用年数・経済的耐用年数・期待耐用年数の4つです。次の章から、鉄骨造の建物に設定される4種類の耐用年数をそれぞれ詳しく解説します。

3. 種類|鉄骨造の耐用年数

住宅は、文脈に合わせて法定耐用年数・物理的耐用年数・経済的耐用年数・期待耐用年数の4種類の耐用年数を使い分けます。

鉄骨造の種類別耐用年数

鉄骨造の建物も同様に、文脈によって異なる耐用年数を使用するので、それぞれの意味を把握しておきましょう。

3-1. 法定耐用年数

税金の申告など、公的な場面に使用されるのが法定耐用年数です。法定耐用年数は、国税庁が定め、建物の所有者が主に減価償却費を計上する際などに使用します。

減価償却とは、長期的に使用する固定資産について、経年で劣化する価値を経費として計上できる仕組みです。具体的には、固定資産の価値を使用期間全体で均等に分配した分を毎年の経費として計上します。この使用期間を定めたものが法定耐用年数です。例えば、30万円で購入した資産の法定耐用年数が5年とすると、毎年6万円を経費として計上できるという考え方です。

減価償却をすると、経費として収入から差し引くことができるので節税効果があります。また、大きな支出をした年も分配して経費計上でき、赤字になりにくく経営が安定しやすい点もメリットです。

このように、法定耐用年数は減価償却などの税制上で利用するため、実際にどのくらい住み続けられるか、といった年数とは直接関係はありません。家屋の場合、構造や用途によって一律で設定されています。

3-2. 物理的耐用年数

物理的耐用年数とは、資産が物理的に使用できる期間のことです。家屋でいうと、実際に安全に住み続けられる期間のことをいいます。構造や性能が維持できる期間のことで、工学的な診断に基づいて診断される年数です。

法定耐用年数は税法上のルールに則って定められるのに対し、物理的耐用年数は使用した建材や構造、使い方などを見て工学的に判断します。そのため、物理的耐用年数のほうが法定耐用年数よりも長く設定されることがほとんどです。

ただし、物理的耐用年数はあくまで工学的に見た場合の年数なので、その期間中安全に使用できると断言することはできません。建物の使用方法やメンテナンスの頻度、内容によって期間よりも短くなることもあります。あくまでも目安としてとらえましょう。

3-3. 経済的耐用年数

経済的耐用年数は、資産が経済的に利益を生み出せる期間のことです。建物の場合は、賃貸用住宅など収益不動産の話題でよく使用されます。収益不動産の場合で考えると、経済的耐用年数とは、物件が収益をもたらすと期待できる期間のことです。

物理的耐用年数は、その物件が寿命を迎えるまでの期間と解説しました。一方で経済的耐用年数は経済的な利益をベースに考えるので、物理的にはまだまだ使用できる物件であっても経済的な面では寿命を迎えるケースも珍しくありません。

例えば、所有する賃貸用アパートの需要が低くなり、借り手がまったく付かない場合には、経済的耐用年数を過ぎていると考えられます。物理的耐用年数の期間内であっても、入居者が現れず利益をもたらさなければ、経済的に見れば寿命といえるでしょう。

経済的耐用年数は物件の市場価値によって左右されます。経済的耐用年数は建物の性能や予想されるニーズなどをもとに設定されますが、市場価値は常に変動するものです。周辺環境や情勢、ニーズの変化によって、設定時よりも長く利益を生み出すケースもあれば、寿命が短くなるケースもあります。築年数だけでなく、立地や間取り、見た目、メンテナンス、地域の治安・住みやすさといったさまざまな要素を考慮する必要があります。

3-4. 期待耐用年数

期待耐用年数という用語もあります。期待耐用年数とは、資産を使い続けられると期待できる期間のことです。物理的耐用年数と似た印象を受けますが、物理的耐用年数が理論上使用できる期間を表すのに対して、期待耐用年数は実際の使い方やメンテナンスを施すことを踏まえて判断する耐用年数です。主に中古物件やリフォーム・リノベーションの話題で使用されます。

住宅の場合、設備の破損や不具合が生じたら、設備交換やリフォームをして対応するのが一般的です。期待耐用年数は、こうしたメンテナンスを繰り返すことを想定し、住み続けられる期間を表します。物理的耐用年数はこうしたメンテナンスや実際の使い方が考慮されないので、期待耐用年数よりも短く設定されることが多いです。

期待耐用年数は、中古住宅の資産価値を正しく評価し、流通を促すことを目的に設定されています。築年数などの変えられない要素だけをみて評価するのではなく、メンテナンスやリフォームなどが反映されるため、資産価値を高められるとして注目を集めています。

4. 鉄骨造の実際の耐用年数

建物に関わる4種類の耐用年数を解説しました。続いては、鉄骨造の建物が具体的にどのくらいの耐用年数で評価されているかを解説します。4種類の耐用年数をそれぞれ解説するので参考にしてください。

4-1. 法定耐用年数は19年〜34年

まず、鉄骨造住宅の法定耐用年数は19〜34年です。年数に開きがあるのは、骨格材の厚みによって耐用年数が異なるためです。また、事務所として使う場合は22〜38年と住宅よりも長いなど、用途によっても年数は異なります。

以下の表に骨格材の厚み・用途ごとの耐用年数をまとめました。

骨格材の厚み 店舗・住宅の法定耐用年数 事務所の法定耐用年数 飲食店・車庫の法定耐用年数 工場・倉庫の法定耐用年数
3mm以下 19年 22年 19年 17年
3mmを超え4mm以下 27年 30年 25年 24年
4mm超え 34年 38年 31年 31年

骨格材の厚みを知りたい場合は、建築当時の図面で確認できます。図面が見当たらない場合や、厚みに関する記載が見つからない場合は、建築会社やハウスメーカー、購入した不動産会社などに問い合わせるとよいでしょう。

4-2. 物理的耐用年数は50~60年

鉄骨造の建物の物理的耐用年数は、50〜60年程度に設定されることが多いです。やや古いデータですが、2011年の調査によると、鉄骨造の建物の平均寿命は次のとおりです。

種類 平均寿命
鉄骨造住宅 59.29年
鉄骨造アパート 55.07年
鉄骨造事務所 46.32年
鉄骨造工場(一般) 54.14年
鉄骨造倉庫 53.01年

このデータからみても、鉄骨造の建物は平均して50〜60年ほどで寿命を迎えると考えられます。使用用途によっても物理的耐用年数は異なりますが、60年ほど経過すると取壊しやリノベーション・リフォームといったメンテナンスが必要になるでしょう。

4-3. 経済的耐用年数は物件によって変動

経済的耐用年数は、物件そのものの状況や取り巻く環境などによって異なります。一概に何年程度と言い切ることは難しいでしょう。ただ、一般的な賃貸物件では、おおよそ30年を経過した頃から借り手が現れにくくなるといわれています。鉄骨造の物件でも、30年の基準を大きく外れることはないのではないでしょうか。

経済的耐用年数は、物件による収益が得られなくなった状況をいいます。つまり、物件の管理・維持にかかる費用が収益を上回るようになったら、経済的耐用年数を超えたと考えてよいでしょう。経済的耐用年数を長くする目的でも、適切なメンテナンスは必要です。

4-4. 期待耐用年数も物件によって変動

期待耐用年数も、物件の状況や使用状態によって異なります。期待耐用年数を一概に述べることはできませんが、鉄骨造の建物は構造躯体だけを残してリフォームすれば、100年以上使用することも可能といわれています。適切なメンテナンスを施すことで、かなり長く使用することができるでしょう。

期待耐用年数は、物件の構造・使用状況・メンテナンス履歴のほかに、気候条件や自然災害リスクなどの条件も加味して設定されます。適切にメンテナンスされている物件でも、海風などによる錆のリスクが高い場合など、条件によっては短く設定される場合も多いです。

また、物件全体でなく、設備ごとに期待耐用年数を設定する考え方もあります。設備ごとに期待耐用年数が設定されると、気候条件など環境にデメリットのある物件でも評価が上がりやすいです。

5. 鉄骨造の耐用年数を知っておくメリット

鉄骨造の耐用年数を把握することにはいくつかのメリットがあります。この章では、マンションなど物件経営をしている人向けに、耐用年数を把握するメリットを解説します。

5-1. 長期計画が作りやすい

まず、耐用年数を知ると、物件を管理・維持するうえで長期的な見通しが立てやすくなります。所有する建物が将来どのような維持管理・改修を必要とするか、どのタイミングまでに資金を用意しなければならないのかなど、具体的な計画が立てやすくなる点がメリットです。

長期的な見通しが立っていると、将来必要な修繕費用にもある程度予想がつくようになります。定期的にメンテナンスを施すことで建物の価値を維持しやすくなり、管理不足による大規模修繕も避けられるので結果的に経費削減にもつながるでしょう。

5-2. 投資するべきか判断できる

物件の耐用年数を知ることは、資産価値を考えるうえでも重要です。耐用年数を把握しておくと、物件の購入・売却・投資などの判断材料になります。長期的に見てメリットがあるかわかるので、後悔のない選択を取りやすいです。

一般的には、耐用年数が長いほど建物から得られる収益期間も長くなる傾向にあります。適切な管理・メンテナンスで物理的耐用年数を延ばし、長期的に運用できるように心がけましょう。

6. 耐用年数を超えた建物の注意点

耐用年数を超えた建物の取り扱いには、いくつか注意点があります。価格が安いからといって安易に購入すると、経済的なデメリットが発生する可能性もあります。この章では、特に法定耐用年数を超えた建物を購入する際の注意点をまとめました。

6-1. 融資がおりないことも

耐用年数を超えた物件は、ローンを使用した購入が難しい場合があります。金融機関は、法定耐用年数の残り期間で物件の価値を判断することが多く、耐用年数を超えた物件には融資の基準が厳しくなる傾向にあるためです。

ローンを組んで購入する場合、購入する不動産を担保にお金を借ります。しかし、法定耐用年数を超えた物件は評価額が低く、担保として認められないケースも多いです。融資を受けられても、ローンの期間が短くなったり、融資額が低くなったりすることがあります。

このように、耐用年数を超えた物件を購入する場合、ある程度の自己資金がないと経営を始められない場合も多いです。予想収益と合わせて初期費用に充てられる自己資金がどのくらいかも考慮して購入する物件を決めましょう。

6-2. 修繕コストがかかる

耐用年数を超えた物件は、築年数の浅い物件と比べて修繕コストが高くなりやすいです。外壁や内壁、室内設備、共有部分の設備など、多くの部分にメンテナンスが必要になり、コストがかかることは念頭に置いておきましょう。

一般的に、住宅設備は10〜20年前後で寿命を迎えることが多いといわれています。必要なメンテナンスを施していても、20年までには交換が必要になる場合が多いです。法定耐用年数である19〜34年が経過する時期には、多くの住宅設備に修理・交換が必要になるのでコストがかかります。

物件自体が安く購入できても、メンテナンスに予想外の費用が発生する場合があります。また、耐用年数を超えた物件は大規模修繕や建て替えの時期が近づいていることも多いです。築年数がたった物件は、メンテナンス費用や時期が予想しづらいケースもあるので、購入時には入念な調査をおこない、ゆとりある計画を立てましょう。

7. 耐用年数を超えた物件の扱い方

続いて、所有する不動産が耐用年数を超えた場合や、耐用年数を超えた物件を購入する人に向けて、そうした物件で利益を生み出すための方法を3種類紹介します。

7-1. 建て替える

立地などの環境条件の良い建物なら、建て替えたほうがメリットが大きいかもしれません。物件を新たに建て替えて最新のデザイン・設備に生まれ変われば、需要が大きく伸びる可能性があります。

もちろん建て替えには既存の建物の取り壊し費用と新築費用がかかります。ただし、古い建物の大規模修繕や設備交換に費用をかけ続けるなら、建て替えてしまったほうが長期的に見て得になるケースもあるでしょう。周辺環境や競合物件を見て、建て替えた場合に需要が見込まれるかチェックしてみてください。

ただし古い物件の場合は、現在の建築基準法を満たさないために再建築ができないことも多いです。例えば道路に接していない物件や、接道幅が2mを満たない物件などは再建築ができません。これから古い物件の購入を考える場合は、再建築不可でないかどうか確認しましょう。

7-2. リノベーション、耐震・劣化工事をする

リノベーションや耐震・劣化工事を施すことで、物理的耐用年数や経済的耐用年数を延ばすことができます。適切なメンテナンスを施せば、耐用年数34年程度の鉄骨造住宅でも、100年以上安全に住み続けられる例もあります。

建て替えに比べて費用がかかりにくいので、リノベーションや補強工事によってニーズが見込まれる場合はまずこちらの対応がおすすめです。スケルトン部分だけを残すリノベーションなら、再建築不可の物件でも建て替えのように新しく生まれ変わらせることもできます。

また、建て替えに比べて建材などを再利用できるので環境に優しい点もメリットです。

7-3. 売却する

耐用年数が過ぎてしまった場合、売却して現金化することも選択肢のひとつです。リフォームやリノベーションといったメンテナンスにかかる費用を払うことが難しい場合や、修繕しても需要の回復が見込めない場合には、売却したほうが負担減につながるかもしれません。

ただし、耐用年数が過ぎてしまった物件は売却に時間がかかるケースも多いです。価格も取得時に比べてかなり安くなることが多いので、「売却で利益を上げよう」とは意識しないほうがよいでしょう。

物件の状態や周辺環境によっては、解体して更地にしてから売却したほうがよいケースもあります。信頼できる不動産会社に相談しながら、売却方法を検討しましょう。

8. まとめ

鉄骨造物件の法定耐用年数は19〜34年です。骨格材の厚みや建物の使用目的によって年数に開きがあり、減価償却などの申告に使用されます。

また、法定耐用年数以外にも3つの耐用年数があります。工学的寿命である物理的耐用年数は50〜60年、利益を生み出す期間である経済的耐用年数はおおよそ30年です。しかし、適切なメンテナンスをおこなった鉄骨造物件なら、期待耐用年数は100年以上ともいわれています。

鉄骨造の物件の耐用年数を延ばすには、定期的なメンテナンスや適切な管理が必要です。長期的な管理計画を立てるためにも、4種類の耐用年数を把握しましょう。

※本記事は2024年3月12日時点の情報をもとに記載しています。法令等の改正により記載内容について変更となる場合がございますので、予めご了承ください。

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