築年数40年超えのマンションと聞くと、その古さから住むことに不安を抱く方もいるかもしれません。しかし、築年数40年超えのマンションでも、「買い」である物件も多く存在しています。なぜ「買い」なのか、どのような物件であれば「買い」なのか、「買い」である理由や、購入の際の注意点について解説します。
1. 築年数40年超え「買い」マンションを見抜く2大要素
新型コロナウイルスの影響により、テレワークが浸透しました。それに伴い、住宅需要が今まで以上に高まり、現在は好立地や好条件の物件を予算内で手に入れようとするとかなりハードルが高い状況です。
築40年超えのマンションを購入対象に含めることで、希望に近い住まいを予算内で手に入れられる可能性は高まるでしょう。ただし、このチャンスが手に入るのは、築年数40年を超えるマンション購入についての知識があってこそです。
築40年超え「買い」マンションを見抜く2大要素は、「管理状態」と「立地の見極め」にあります。マンションは、管理状態によって建物の老朽化具合が格段に違い、管理の良いマンションであれば、築40年を過ぎても良い住み心地を維持できています。
また、立地はマンションの価値に直結すると言っても過言ではありません。のちに建て替えの問題が起こったとしても、立地が良ければ、マンションデベロッパーなど、協力者が参加しやすいと言えるでしょう。
2. 古いマンションが「買い」になってきた背景
首都圏を中心に、築年数を経過したマンションが増えていることは、誰もが実感している と思います。では、中古マンションの現状について、データとともに見ていきましょう。
中古マンションは、値上がりが続くも人気が高い
中古マンション価格は、上昇の一途をたどっています。2024年1~3月期におけるレインズデータによると、首都圏中古マンションの成約状況は、前年同期比で7.0%の成約件数増加、平米 単価は10%増加と、件数・平米単価ともにかなりの伸びを示しています。
築30年以上のマンションについても、成約件数は2%増加、平米単価2.6%増加となっています。ほかの築年数帯にくらべて上昇幅は少ないものの、築年数がかなり経過していることを考えれば、堅調に推移していると言えるでしょう。
マンションの高齢化・非居住化・人材不足
人気は堅調であるものの、築古のマンションではマンション住民の高齢化・非居住化・人材不足が危惧されています。
築40年を超えるマンションは、現在(2023年末時点)の138.1万戸から5年後には197.8万戸にまで増える見込み(国土交通省法改正資料より)ですが、区分所有者(住民)は高齢化し、介護施設に移り住むなどの理由で空き家が増えています。その結果、管理組合の担い手が不足し、組合が機能不全に陥っているマンションも 少なくありません。
マンション管理・建て替えに関する新法が成立・施行
マンションの権利義務関係や維持管理と再生に関する基本ルールは「区分所有法」で定められています。もっとも区分所有法では、特に維持管理の面において現状の問題を捉えきれていないところがありました。
そこで、2022年4月のマンション管理適正化法施行により行政の役割を強化し、国が策定する基本方針に従って地方公共団体が指導助言するという枠組みが作られたのです。さらに管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度が新たにスタートすることで、マンション管理の質の向上を図っています。
さらに、2020年のマンション建て替え円滑化法の改正によって、解体のための要件が緩和されるとともに、建て替え後においては、容積率緩和のメリットが受けられるようになりました。建て替えのハードルが低くなったことで、マンションの建て替えがさらに進む可能性があります。
関連記事はこちら【住んでいるマンションが建て替えに。どうなる?費用・築年数・事例など紹介】
3. 築年数40年超えの場合、どれくらい住める?
築40年越えのマンションの購入を検討する場合「あとどれぐらい住めるのか」も気になるところ。これについてはさまざまな研究資料がありますが、ここではその一例をご紹介します。
法定耐用年数と経済耐用年数
マンションの寿命を考えるときに、まず押さえておきたいのは「法定耐用年数」と「経済耐用年数」という用語の意味合いです。SRC・RC造の法定耐用年数は47年と定められていますが、これは会計上の減価償却を行うために定められたものに過ぎず、マンションの寿命そのものを示すものではありません。
会計処理のほか、融資期間を設定する目安に用いられることはありますが、現実的に住み続けられる期間とは異なる概念です。また、経済的に無価値になるまでの年数を経済耐用年数と表現することもありますが 、これも物理的にマンションに住み続けられる年数とは異なる概念です。
マンションにはいつまで住み続けられるのか
国交省発表の資料によると、マンションの寿命は68年という研究結果があります。建て替え事例を見ると、築50年から60年に集中している実情がありますが、これは耐震性が基準を満たしていないことや、融資対象にならないために売却できないといった原因が大きいとされています。マンションが出始めたころのものにくらべ、マンションの耐震性や建材の質は劇的に向上していますので、実際には70年前後は住み続けられると考えて良いでしょう。
4. ヴィンテージマンションの魅力
欧米では築100年を超える建物がたくさんありますが、しっかりメンテナンスをしっかりすることで、快適な居住空間を維持でき、借り手や買い手がついています。日本にも、目黒・赤坂・青山辺りには40年を超えるヴィンテージマンションが存在し、人気を保っています。
パリ・ロンドン・ニューヨークという魅力的な都市にあるという以外に、ヴィンテージがつくマンションは、普通のマンションとなにが違うのでしょう?この違いは「管理」にあります。管理をするうえで、主体となるのは管理会社、管理人だと思われる方も多いかと思いますが、あくまで管理するのは、所有者全員で作られる「管理組合」が主体です。
都心の一等地のマンションというだけで、資産価値はあるでしょう。しかし、維持管理をおろそかにすると、経年、あるいは経年以上に劣化が進んでしまいます。人の健康状態に置き換えて考えてみるとよく分かるかもしれません。
素敵な歳の重ね方をしている人は、早い段階で将来を見据えて健康管理やおしゃれに気をつかっています。当然、そうでない人とでは、見た目も中身も歳を重ねるに連れて差が出てきます。これは、マンションの管理も同じこと。ヴィンテージの称号を手に入れることができる管理組合は、将来の価値を意識した運営を心掛け、古さを魅力に変えられるよう、丁寧に暮らしているのです。
東京では、渋谷区広尾にある「広尾ガーデンヒルズ」、港区南麻布にある「ドムス南麻布」が有名で、シックなデザインと立地の良さから人気を集めています。
5. 築40年超のマンションを選ぶメリット
築40年超のマンションには、新築マンションにはない魅力があります。特に価格面や立地の良さについては、築古のマンションのほうがメリットは大きいと言えるでしょう。また、築年数がたっている分、固定資産税が安いのも見逃せないメリットです。
お手頃な価格感
築年数の古いマンションは、近隣相場にくらべて価格査定が低く、お手頃な価格で売り出されます。2024年1~3月期におけるレインズデータによると、首都圏新築マンションの成約物件における平米単価は122.4万円でしたが、築30年以上の物件の平米単価は42.3万円と約3分の1となっています。
固定資産税が安い
築40年超のマンションは、固定資産税が安いことも大きなメリットです。固定資産税は、さまざまな優遇税制を考慮した課税評価額に一定の税率(1.4%)を掛けて算出しますが、評価額は築年数を経るごとに評価替えされて徐々に減少していきます。築40年超のマンションであれば、課税評価額は、ほぼ土地部分の評価となるため、固定資産税の負担が軽くなっています。
立地が良いマンションを選ぶことができる
築古のマンションは、大規模な開発がされる前に建築されたマンションが多いため、立地の良いマンションを見つけやすい利点があります。40年前は、東京都内においても住宅地に農地(生産緑地)や空地がたくさんありました。その後開発が進みマンション用地が増えていきましたが、立地の良い場所から開発されていったために、築古のマンションからは立地の良いものが見つけやすいと言えます。
6. 築40年超のマンションを選ぶデメリット
築40年超のマンションを選ぶときには、特に資金計画に注意する必要があります。管理費・修繕費が 高い可能性がありますし、リフォーム費用もかさみがちです。また、住宅ローンも審査が厳しめであるため、自己資金に余裕をもって購入計画を立てる必要があります。
管理費・修繕費が高い可能性がある
管理費・修繕費は築年数を経るごとに増加していく傾向にあります。築40年のマンションのなかには管理費・修繕費が相場より高いものも散見されるので、購入前に確認して周辺物件と比較検討しておきましょう。
また、近年の地震・台風等によって修繕費がかさみ、十分な修繕積立金がない管理組合もあります。このような場合、将来的に管理費・修繕費のアップや一時金の徴収に繋がる恐れもありますので、できれば現状の修繕積立金や修繕履歴を確認しておいたほうが良いでしょう。
関連記事はこちら【マンション管理費の相場はいくら?修繕積立金の相場とあわせて解説】
リフォーム費用が高いことがある
築古マンションの場合、設備が老朽化していることは否めません。そのため、リフォームを前提として購入する場合には、リフォーム費用がかさむ可能性があることを念頭に置いておきましょう。
特に、キッチンや浴室などの水回りは要注意です。システムキッチンやユニットバスの現在の規格通りに作られていないため、リフォームするとなると大掛かりな工事になりやすい傾向があります。
住宅ローンが組みにくい
築40年超のマンションを購入するときの住宅ローン審査は、比較的やや厳しめです。まず、旧耐震基準で建築されたマンションは借入条件を満たさないため、住宅ローンを組むことができません。
住宅ローンの借入期間は法定耐用年数を参考に決定されるため、借入期間が少なく見積もられることもあります。また、担保評価という点においても、物件によっては購入価格と乖離があることがあるため、希望の借入額から減額されることもあります。
7. 中古マンションを選ぶポイント
ここでは、実際に築古マンションを選ぶにあたって、気を付けるべきポイントについて解説します。築年数が古いことから躯体や管理、設備の状態はもちろん、法的な制約についても十分な検討が必要です。
物件を探す段階で、ある程度希望に沿うような物件が見つかり、内見をして買う意思が固まったら、契約までに次の三つの資料を確認してください。
- 重要事項調査報告書
- 管理規約
- 長期修繕計画
旧耐震基準か新耐震基準か
旧耐震基準で建てられたマンションか、新耐震基準で建てられたマンションかは非常に重要です。地震で倒壊の恐れがあれば生命の危険があるほか、ご紹介したように住宅ローンを組めません。建築確認日が1981年6月以降のマンションであれば、新耐震基準のマンションですので、購入時に確認しましょう。築40年前後のものであれば新耐震基準のものが多いですが、それ以上築古のものになると旧耐震のマンションも増えてきます。
既存不適格建築物か否か
既存不適格建物とは、建築当時は適法であったものの、その後の法改正等によって同等の建物が建てられない状態の建物のことです。
建て替えの際に同じ規模のマンションが建築できない恐れがあるため、利用価値が限られてしまうほか、建て替え・解体時にデベロッパーに思うように売却できなかったり、再開発できなかったりするなどのトラブルが起こる可能性も否定できません。
重要事項調査報告書
「重要事項調査報告書」は、マンションの全体像が分かるような資料です。管理会社に委託しているのか自主管理なのかという管理の仕方や、管理の状況、修繕積立金の滞納者はいないか、いるなら滞納額はどれくらいか、耐震診断実施の有無、アスベスト使用調査の有無、駐車場や駐輪場の使用に関する状況まで書かれています。管理会社が発行するものなので、仲介業者に依頼をして、売主側から入手してください。
もし、検討中のマンションの管理形態が管理会社への委託ではなく、「自主管理」の場合、重要事項調査報告書の入手は難しいため、その場合は、できるだけ多くの情報を売主側からもらうと良いでしょう。
修繕積立金や管理費の滞納者や滞納額が多い場合は、管理がうまくいっていない可能性があります。議事録を閲覧して組合運営が行われているか、回収の見込みがあるかなどを確認してみましょう。
駐車場がある場合、立体駐車場かどうか、空きがあるかないかで、修繕費用に影響を及ぼす可能性があります。維持管理費用が割高な立体駐車場で、なおかつ空きが多い場合は注意が必要です。
管理規約
「管理規約」には、組合運営について、および生活上の具体的な決まりごとが書かれています。例えば、理事会の任期や再任の可否、ペットの飼育が可能か、事務所利用が可能か、喫煙についてのルールなどです。リフォームについては、決まりごとや禁止事項、さらに材料の指定なども定められています。
比較的リーズナブルに築古物件を手に入れ、理想のデザインにリフォームすることが築古物件購入の醍醐味でもありますが、いざリフォームする段になって、規約で禁止されているためにリフォームできないということがないように、必ずリフォーム業者とともに確認しておきましょう。
長期修繕計画
「長期修繕計画」は、築年数が古いマンションでは策定されていないこともありますが、適切な維持管理をするためには欠かせない情報です。
国交省の長期修繕計画作成ガイドライン(2008年)では、計画期間を25年以上(新築時は30年以上)とすると書かれており、中古マンションのフラット35の審査でも、20年以上の計画期間が定められていることが審査の条件となっています。
長期修繕計画は、いわば長期修繕「資金」計画ですので、修繕工事に必要な資金が適切に積み立てられているか、資金不足になる心配はないかを確認しましょう。修繕工事の中身を細かく見ていく必要はありません。
8. リフォームに向けたチェックポイント
リフォームを前提として、築古マンションの購入を検討する方も多いことでしょう。旧来の工法で建築されたマンションは、設備の規格が現在のものと異なります。そのため、現在の設備を新規で取り付ける場合には、大規模なリフォームになりやすいことを念頭において購入を検討しましょう。
水回り(キッチン・浴室)のリフォーム
現在の規格のシステムキッチンやユニットバスは、40年前に建築されたマンションにはほとんど採用されていません。当時は、マンションごとに異なった寸法で建付けられているものが多くなっています。現在の規格のものがそのまま使えない場合が多いため、システムキッチンやユニットバスを設置するために壁を移動したり、配管を整備し直したりと、大規模な工事になるケースが散見されます。
アスベストが含まれている建材が多い
40年以上のマンションには、アスベストを含む建材が使われている場合が多いです。必要に応じて、専門業者に除去費用の見積もりを依頼しましょう。
壁やスラブ床の厚さなど断熱性や遮音性にかかわる事項
住宅性能という面においては、築古のマンションが新築マンションに劣るのは否めません。建材の質が年々向上していることに加え、換気システムや省エネ水準が改善されているからです。特に、断熱性や遮音性については現状どのような性能かしっかり確認しておきましょう。
9. まとめ
少子高齢化のなかで、マンションのストックは増え続け、築40年を超えるマンションは2030年に200万戸に迫ります。マンションは戸建にくらべて中古市場が発展しており、情報収集も容易ですので、メリットのある築古マンションを探すこともそれほど難しくはありません。ぜひ、築40年超のマンションについても、購入候補に加えてみてはいかがでしょう。ぜひ、未来の姿を思い浮かべながら、ご自身の理想のマンションを選んでみてください。
宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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