
住宅ローンを借りるときには、住宅に抵当権という担保が設定されます。完済時には抵当権は消滅しますが、自動的に登記簿の記載が変更されるわけではありません。登記簿の記載を変更するには、法務局に抵当権の抹消登記を申請する必要があります。この記事では、抵当権抹消登記の費用や手続き、自分で行う場合の注意点などを、宅建士の資格をもつ筆者が分かりやすく解説します。
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1. 抵当権の抹消とは
抵当権とは、金銭の貸し付けをするときに不動産を担保にする権利です。このとき、銀行や信用金庫・信用組合など金銭を貸し付ける側を抵当権者、借りる側を抵当権設定者と言います。そして、抵当権の抹消とは、ローンの完済などによって抵当権が消滅したときに、登記簿上の抵当権の記載を消去する手続き(抵当権抹消登記手続き)のことを言います。
2. 抵当権の抹消が必要なケース
抵当権の抹消が必要になるのは、住宅ローンを完済したときや、任意売却のとき、相続が発生したときなどです。代表的な例をみていきましょう。
2-1.住宅ローンを完済したとき
住宅ローンを完済すると抵当権が消滅します。このとき、登記を法的な効果の通りに合わせるため、銀行と不動産の所有者が共同で抵当権抹消登記の申請を行います。手続きは銀行が行うのではなく、銀行から委任状を入手して、不動産の所有者が抹消手続きを進めるのが一般的です。登記申請書の作成や書類の収集についても、司法書士に依頼するのでなければ、自分で行う必要があります。抵当権抹消費用も、銀行が負担するものではなく自身で負担します。
2-2.任意売却のとき
任意売却とは、ローンの残債が残ったまま、抵当権の対象となる不動産を売却することを言います。売却するときには、抵当権など物件に付されている負担をすべて除去する必要があり、抵当権の抹消が必要です。
2-3.相続が発生したとき
住宅ローンの債務者が亡くなった場合、団体信用生命保険の保険金によってローンは完済されます。このときは、不動産を相続した方が、抵当権抹消登記を行わなければなりません。
ちなみに、団体信用生命保険が付保されていない一般の不動産ローンの場合、当然、抵当権は消滅せず、抵当権付きのローン債務を相続人が相続することになります。
3. 抵当権抹消費用の計算方法
抵当権抹消費用の手続きを自分で行う場合、司法書士などの費用はかかりませんが、そのほかの必要諸経費が必要です。費用項目には登録免許税のほか、添付書類の取得費用、不動産登記簿謄本の取得費用があります。事前に抵当権抹消費用の計算をしておきましょう。
3-1.抵当権抹消にかかる登録免許税
抵当権抹消のための登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。土地・建物で2,000円が一般的ですが、土地が数筆に分かれている場合には、1筆ごとに1,000円がかかります。土地の筆数は、法務局にて取得できる「公図」で確認しましょう。マンションの場合には、建物と敷地権で2,000円となることが多いです。これらの登録免許税は、登記申請書に収入印紙を貼付することによって納付します。
3-2.添付書類取得費用
自分で申請する場合は、添付書類の取得費用は不要です。ちなみに、抹消登記を司法書士に依頼する場合には、印鑑証明書が必要になり300円程度の取得費用がかかります。
3-3.登記簿謄本取得費用
抵当権抹消の登記申請書を作成するために、事前調査として、抵当権が設定されている不動産の登記簿謄本を取得します。法務局の窓口申請の場合は600円、オンライン請求の場合は500円(郵送取得)もしくは480円(窓口取得)、と細かく値段が設定されています。登記情報提供サービスを利用して、オンラインで閲覧のみを行う場合は331円です。登記完了後も登記簿謄本を取得して、抹消を確認するのが望ましいでしょう。
3-4.司法書士報酬
抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合、書類作成および申請代行費用として15,000円から30,000円程度の報酬となることが一般的です。相続登記は変更登記を同時に行う場合には、別途費用が加算されます。抹消登記後、対象不動産を売却する場合には、買主が抵当権付きの不動産を取得してしまうリスクを避けるため、抵当権抹消登記申請を司法書士に依頼するのが通常です。
4. 抵当権抹消費用は、誰が支払う?
抵当権抹消費用は債務者(不動産の所有者)が支払います。抵当権抹消費用を誰が支払うかは、迷うところかもしれませんが、ローン契約には費用負担の条項が設けられており、抵当権の設定・抹消・変更に関する費用は借主が負担すると定められています。
司法書士に抹消手続きを依頼する場合には、報酬と登録免許税を別々に支払うのではなく、司法書士に一括して支払います。見積もりに、登録免許税や書類作成費用等が含まれていることを確認しておきましょう。
5. 抵当権抹消を自分で行う方法
抵当権抹消手続きは、登記申請書類の作成の手間を惜しまなければ、手続き自体はそれほど難しくはありません。相続や抹消後に不動産を売却するなどの事情がなければ、自分で行うのもひとつの方法です。
5-1.不動産情報の確認
まず、抹消登記の対象となる不動産や抵当権の情報について事前調査を行います。具体的には、法務局で不動産登記簿謄本を取得し、対象不動産の基本的な情報や抵当権の抵当権者・債権額・貸付利率などの情報を確認します。
5-2.必要書類の入手
登記識別情報や弁済証書、委任状などの必要書類を銀行から取得します。ローン完済が近くなったら、抵当権抹消の手続きや書類、抵当権抹消費用について、銀行と打ち合わせをしておくことをおすすめします。
5-3.登記申請書の作成
抵当権抹消登記申請書のフォーマットに従って、登記申請書を作成します。フォーマットや作成の手引きは法務局のホームページよりダウンロードできますので、活用してみましょう。
5-4.登記申請と登記完了の確認
書類が揃ったら、不動産が所在する管轄の法務局に申請書類一式を提出します。一般的には10日から2週間前後で抹消登記が完了しますが、筆数が多かったり、オンライン化が進んでいない不動産であったりする場合には、1カ月前後かかることもあります。登記完了後、登記完了証を受け取り、登記簿謄本を取得して抹消が完了していることを確認します。
6. 抵当権抹消を自分で行うときの注意点
抵当権が消滅したあとは、登記を放置せず、速やかに抹消登記することが重要です。抹消登記の抵当権登記が残っていると、売却時や新たな融資時にトラブルになる可能性もあるため注意しておきましょう。銀行によっては、連絡時期や手続きが異なることもあります。ローン完済が近づいたら早めに銀行とコミュニケーションをとっておきましょう。また、登記申請書は慎重に、正確に作成しましょう。
7. まとめ
抵当権抹消手続きは、住宅ローン完済時など、抵当権が消滅したときに必要になる登記申請手続きです。登記を放置すると、不動産の売却時や相続時にトラブルになる可能性があるので、ローンを返し終わったら速やかに抹消登記を行いましょう。手続きに不安があるのであれば、司法書士に抹消登記申請を依頼することをおすすめします。

宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験をもち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。
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