マンション購入を検討するとき、ローンの返済とともに計算に入れるのが、管理費や修繕積立金などの支出でしょう。購入後は必ず払うことになる固定費でありながら、物件によって金額が異なり、この金額は妥当なのか判断に迷うところです。この記事では、分譲マンションの管理費・修繕積立金の役割と相場について確認し、その側面からマンション選びのポイントを解説します。
1. マンション管理費とは?
マンション管理費とは、マンションの共用部分を維持・管理するために使うお金です。共有部分とは、エントランスや共用廊下、宅配ボックス、エレベーター、ゴミ置き場などですが、最近では接客スペース、読書ができるようなラウンジ、庭、テレワークスペースなど、充実した共有スペースを売りにした物件も登場しています。このような共有のスペースやサービスを維持し、居住者が日々快適に生活できるようにするには全体のメンテナンスが必要で、そのためのお金を所有者全員で負担することになります。
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2. マンション管理費の役割は?
管理費から支出される費用として代表的なのは、マンションの日常的な管理・清掃を担当する管理人の人件費です。他にも、共用部分を維持・管理するためには主に以下のような費用が発生します。
「管理費」の主な用途
- 管理員、清掃員の人件費
- 共用部分にかかる水道光熱費
- 共用部分にかける火災・地震保険料
- エレベーター設備、防犯カメラ機器などの保守点検費
- 管理組合の運営費
ほかにも、共有部分で使う清掃用具、電球、トイレットペーパーなどの備品や消耗品の費用、照明器具や消防設備の設置・修繕費用など、その用途は多岐にわたります。
マンションの管理を管理会社に委託しているなら、管理委託費にほとんどが含まれます。管理委託費の内訳は、管理組合と管理会社の契約によって定められますので、居住後も中身をきちんとチェックすることが重要です。
3. マンション管理費と修繕積立金の違い
管理費と修繕積立金は、その集められる目的が異なります。
修繕積立金は、マンションの大規模な修繕に備えるお金です。一般的に、マンションでは10年スパンの長期的な計画に基づき、エントランスや外壁、廊下、屋上など、共用部分の経年劣化や不具合に対する大規模な修繕が実施されます。
また、時代とともに変化する居住者のニーズや、資産価値の向上を図るためのリフォームも必要になるかもしれません。例えば、エントランスへのスロープの設置、階段または廊下への手すりの設置などに代表されるバリアフリー工事や、耐震診断、耐震工事などが挙げられます。
このように一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕、または不測の事故その他特別な事由により必要となる修繕・改修などに使います。
4. マンション管理費は高い?修繕積立金も含めて相場はいくら?
マンション管理費と修繕積立金の相場をご紹介します。
マンション管理費の相場
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査結果」によると、分譲マンションの管理費の全体の平均は217円/m2となっています。管理費は、住戸の広さで負担額が決まります。ルーフバルコニー等の特別な共用施設がついているのでなければ、どの階に住んでいても、同じ広さの部屋なら管理費は変わりません。ファミリータイプの70m2の住戸で平均額を算出すると月額1万5,190円、80m2なら月額1万7,360円となっています。
全国平均217円217円1万5,190円1万7,360円
管理費m2単価 | 換算 | 80m2換算 | ||
---|---|---|---|---|
全国平均217円 | 217円 | 1万5,190円 | 1万7,360円 | |
規模別(総戸数) | 20戸以下 | 254円 | 1万7,780円 | 2万320円 |
31~50戸 | 216円 | 1万5,120円 | 1万7,280円 | |
76~100戸 | 220円 | 1万5,400円 | 1万7,600円 | |
151~200戸 | 210円 | 1万4,700円 | 1万6,800円 | |
01~500戸 | 203円 | 万4,210円 | 1万6,240円 | |
形態別(単棟型) | 3階建以下 | 207円 | 1万4,490円 | 1万6,560円 |
4~5階建 | 260円 | 1万8,200円 | 2万800円 | |
6~10階建 | 214円 | 1万4,980円 | 1万7,120円 | |
11~19階建 | 207円 | 1万4,490円 | 万6,560円 | |
20階建以上 | 306円 | 2万1,420円 | 2万4,480円 |
※出典:「平成30年度マンション総合調査結果」(国土交通省)の「管理費総収入/月/m2当たり(使用料(駐車場資料料など)・専用使用料からの充当額を含む)」より抜粋。
※表中の「70m2換算」「80m2換算」は筆者試算
調査結果をみると、マンションの総戸数が多いほど入居者が支払う管理費は安くなる傾向にあります。ただし、タワーマンションについては、戸数が多くても管理費が高くなることがあります。
修繕積立金の相場
修繕積立金の相場はどうなっているでしょうか。同様に、国土交通省の調査によると、2018年(平成30年)における修繕積立金の平均は月額11,243円/戸となっています。
修繕積立金は将来もずっと同じ金額なのかというと、一概にそうとは言えません。経年によって徐々に修繕箇所や頻度が増えていくことが分かっているため、長期修繕計画において計画的・段階的に引き上げられるケースが多いのです。ただし管理会社によってその考え方が異なりますので、長期修繕計画書の内容を確認し、将来的な修繕積立金の見込みを確認しておきましょう。
※出典:「平成30年度マンション総合調査結果」(国土交通省)の「現在の修繕積立金の額/月/戸当たり(使用料・専用使用料からの充当額を除く)」より抜粋。
5. マンション管理費が高いマンションの特徴
マンション管理費が高いマンションの特徴をご紹介します。
戸数が少ないマンション
例えば前出の国交省のデータで言えば「20戸以下」のような全体の戸数が少ない場合、管理費を等分する戸数が少ない訳ですから一戸あたりの負担が大きくなります。また、将来的に管理費が増額になる可能性も考えておく必要があります。管理費の滞納が発生していたり予想外の支出が続くなどで管理費の不足が発生したりする場合、管理費の見直しが必要となるからです。その場合も、戸数が少なければ各戸の負担は大きくなります。
タワーマンション
一般的にタワーマンションは共有設備が充実していることが特徴です。フィットネスジムやスカイラウンジ等の豪華な共用設備の他、クリーニングやコンシェルジュなどの有人サービスが充実しているケースがあります。また、窓清掃を専門業者に依頼する必要があったり、機械式の駐車設備もメンテナンス代がかさんだりするため、駐車場使用料を含む管理費が高額になりやすい場合があります。
人件費を要するマンション
管理費の主な用途には管理員・清掃員の人件費が大きな割合を占めています。敷地が広い、設備が多数ある物件であれば、ある程度の人手が必要となりますが、多すぎると管理費が高くなります。自分や家族にとって必要な設備かを判断するのはもちろん、それに見合った人員が配置されているかもマンション選びの重要なポイントになります。
6. マンション管理費支払いを滞納するとどうなる?
管理費や修繕積立金の支払いを滞納すると、まず管理会社や管理組合から書面や口頭による督促があります。その後も支払いがない場合は、理事会での報告、そして総会での議事へと進み、マンション全体の問題として周知されます。それでもなお滞納が続くようであれば、管理組合による訴訟や差し押さえなど法的な手段が実行されることになり、最悪の場合マンションを競売にかけられることもあるのです。
管理費・修繕積立金はマンション購入後にかかる固定費であり、住宅ローンを完済した後も、マンションを所有している限り払い続ける必要があります。購入する前に計算に入れることはもちろん、将来ある程度金額が上昇することもイメージして購入予算を検討しましょう。
7. 共用施設・管理サービスの内容と管理費のバランスをみる
このようにマンションの管理費は利用できる施設、提供されるサービスに比例します。自分が求めるサービス内容と、その対価となる管理費のバランスをみることが重要です。例えば、マンションにジム施設が付いている場合、利用しない人にとっては管理費を押し上げるムダなコストになりますが、外で会費を払ってジム通いしている人にとっては、会費だけでなく時間も節約できるメリットの大きい共用施設となります。または24時間対応の有人管理や、コンシェルジュサービスに価値をおく人もいますが、防犯カメラのほうが安心できてコストも安くすむと考える人もいるでしょう。
自分や家族にとって必要な施設・サービスか、管理費に納得感があるかが大切な指標となります。
8. マンション管理費の相場を理解しよう
ここまでマンション管理費の役割や相場について確認してきました。管理費は安ければ安いほど良い、というわけではないことはお分かりいただけたと思います。マンションを購入する前に、管理費が何に使われているかをチェックしておくと良いでしょう。とりわけプールや滝、温泉施設などの水を利用した施設のメンテナンス費用や、コンシェルジュやジムなどのラグジュアリーなサービスの費用は管理費を大きく押し上げます。自分が使わないからと言って管理費が安くなることはありませんし、管理費が値上がりすることも考えられます。購入後に不公平感を感じることがないよう、予めその費用対効果をチェックしておきましょう。
宅地建物取引士
中学高校の数学教師を経てファイナンシャルプランナーの道に進む。年間100世帯以上の個別相談に対応しながら、確定拠出年金や住宅ローン、ねんきん定期便の見かた等各種セミナー講師も担当。住宅ローンアドバイザー、CFP資格も保有。
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