不動産を親族や友人同士で「個人間売買」すると、不動産仲介会社へ仲介手数料を払う必要がありません。費用の節約になります。
しかし個人間売買には非常に高いリスクを伴うので、安易に行うべきではありません。
今回は不動産の個人間売買が可能なのか、どういったリスクがあるのかお伝えします。不動産の個人売買が可能なのか、個人売買の手順、必要書類や費用、リスクの順でご説明します。
1. 不動産の個人間売買は可能か
不動産の個人間売買とは、不動産仲介会社を通さずに売主と買主が直接取引する方法です。
「個人間売買なんてできるの?」と疑問に思う方もおられますが、法律やその他の制度によって禁止されているわけではないので、個人間での契約も可能です。
不動産仲介会社に仲介手数料を払わなくてよいので、その分費用を抑えられるというメリットがあります。
ただし当事者がプロでない限り専門知識が不足するため、知らず知らずのうちにリスクの高い契約を結んでしまう結果になりかねません。
下記でまずは売買の手順と、その後個人間売買のリスクについて説明します。
2. 不動産の個人間売買の手順
個人間でマンションや戸建て物件などの不動産を個人間売買するときの手順を解説します。
STEP1 買主を見つける
まずは相手方を見つけなければなりません。不動産仲介会社が探してくれないので、自力で探す必要があります。心当たりのある人に声をかけるか、個人売買用のサイトで購入希望者を募る方法などで探しましょう。ただしサイトで公募する場合、相手がどういった人か分からない不安がついてまわります。
内見の際も、買主候補とスケジュールを合わせて立ち会う必要がありますし、1日に何件も対応したりする必要もあり、管理が大変です。
また、購入検討度合いが不明なためご自身で質問して相手の人となりを見極めたり、物件のアピールをしたりしなければなりません。
STEP2 契約交渉
不動産の売買価格や支払い方法、引渡し時期などの契約条件を交渉して取り決めます。価格交渉も自分自身で行う必要がありますが、相手との良好な関係性との両立に気を使いながら交渉する作業は心身に大きな負担となる可能性があります。
STEP3 契約締結、手付金の授受
契約条件が合意できたら売買契約書を作成します。一般的には契約成立時に買主から売主へ「手付金」を交付します。手付金の授受があると、売主が自己都合で解約するには手付金を倍返しする必要があり、買主が自己都合で解約するには手付金を放棄しなければなりません。かといって安易に手付金を受け取らない契約にすると、引渡し直前に突如解約されてしまうリスクも高まります。
STEP4 決済と引渡し、名義変更
契約で定めた引渡し時期に買主が売主へ手付金を除く残代金を支払って決済し、売主は不動産を引渡して登記名義の変更を行います。代金が分割払いになる場合、確実に支払いを受けられないリスクがあります。
3. 不動産の個人間売買の必要書類と費用の種類、金額
不動産を個人間売買するときの必要書類や費用の種類、金額をお伝えします。
3-1. 必要書類
主な必要書類と取得方法をみてみましょう。
- 不動産の登記簿(全部事項証明書)…法務局で取得
- 公図…法務局で取得
- 固定資産評価証明書…不動産のある自治体で取得
- 登記識別情報通知(権利証)…不動産を取得したときに法務局から交付されている
- 測量図…土地測量を行った際に作成されます。
- 境界確認書…境界確認を行った際に作成します。
その他、耐震診断書や地盤沈下調査に関する書類、住宅性能評価書などがあれば用意してください。
マンションの場合、マンション管理規約や管理組合の総会議事録、新築物件を購入したときの販売パンフレット、大規模修繕の予定があれば予定表などの書類も用意しましょう。
3-2. 費用
印紙税
個人間売買であっても、売買契約書を作成したら収入印紙を貼って印紙税を払わねばなりません。金額は物件の売買価額によって変わります。
売買価格 | 印紙税額 |
---|---|
100万円を超える~500万円以下 | 1000円 |
500万円を超える~1000万円以下 | 5000円 |
1000万円を超える~5000万円以下 | 1万円 |
5000万円を超える~1億円以下 | 3万円 |
1億円を超える~5億円以下 | 6万円 |
5億円を超える~10億円以下 | 16万円 |
10億円を超える~50億円以下 | 32万円 |
50億円を超える | 48万円 |
登録免許税
不動産を登記するときにかかる税金です。所有権移転登記の場合、固定資産税評価額に1.5%をかけた金額となります。抵当権を抹消する場合、1件について1000円かかります(例えば土地と建物であれば2000円です)。
測量費用
土地売買に先立って測量を行う場合、土地家屋調査士へ即呂費用を払わねばなりません。相場は40~50万円程度です。
譲渡所得税、住民税
売却によって利益が出たら、譲渡所得税を払わねばなりません。ただし居住用物件の場合、3000万円までの控除を適用できます。
その他、引渡し時期に応じて固都税の清算金やマンションの場合は管理費の精算金が必要となります。
4. 不動産の個人間売買のリスク
不動産を個人間売買すると、さまざまなリスクが発生します。
4-1. 相手を見つけにくいリスクがある
取引相手が決まっていない場合、自分で買主を見つけるのはかなり困難です。個人間売買を行うなら、当初から取引相手が決まっている場合に限るべきでしょう。
4-2. 瑕疵を見つけにくい
個人間売買の場合、不動産仲介会社が調査や説明をしてくれないので、物件の瑕疵(欠陥)を見つけにくいデメリットがあります。
シロアリや雨漏りなどの物理的瑕疵、過去の自殺、火災事故などの心理的瑕疵、建築制限などの法令上の瑕疵などが後から見つかり、トラブルになるケースが少なくありません。
4-3. 時間と手間がかかる
不動産仲介会社が間に入ってくれないので、自分で相手と交渉しなければなりません。
売買契約書の作成、決済の日時場所の調整、登記の段取りなどすべて自分で行わねばならず、手間がかかります。
4-4. 住宅ローンを利用しにくい
ほとんどの金融機関では、個人間取引でのローン審査が非常に厳しくなります。ローンを使えない場合、代金は一括払いにするか、ローンなしで分割払いにする必要があります。分割払いにすると、途中で支払われなくなるリスクも高くなるでしょう。
ローンを使えるとしても、金利優遇を受けられず条件が悪くなってしまう可能性があります。
不動産仲介会社が入る場合、銀行との関係性によって優遇金利を受けられるケースが多いからです。
4-5. 代金を払ってもらえないリスクがある
個人間売買では、買主が約束通りに代金を払わないトラブルもよくあります。
特に分割払いにすると、途中で払われなくなるリスクが高まります。
4-6. 登記に協力してもらえないリスクがある
買主が登記名義の変更に協力してくれないトラブルもあります。最悪の場合、売主が登記を請求する訴訟を起こさねばなりません。
4-7. 契約書の作成方法が分からない、誤った書面を作成してしまうリスクがある
売買契約書は、個別事情に応じた内容にしなければトラブルを効果的に予防できません。しかし実際には、適正な作成方法が分からない人も多数います。自己判断で一般に出回っている「ひな形」を使うと、個別事情に対応できず予想外の不利益を受けるリスクも高くなります。
4-8. 価格が不適正になるリスクがある
個人間取引をすると、物件の適正価格が分からず相場と大きく外れて一方に不利益が及ぶケースもあります。
5. 不動産取引は不動産仲介会社に依頼しよう
不動産の個人間売買には高いリスクを伴います。安全に取引を進めるため、例え友人同士や親族間であっても不動産仲介会社に依頼するのが得策です。
不動産仲介会社に依頼するメリットをみてみましょう。
5-1. 手間と時間を削減できる
不動産仲介会社に依頼すれば、買主探しや内見の日程調整、売買条件の交渉や売買契約書の作成、決済の段取りや登記申請など、ほとんどすべての手続きをしてもらえます。
手間と時間を大きく削減できるのは大きなメリットです。
5-2. しっかり調査してもらえて安全に取引できる
不動産仲介会社が間に入る場合、物件状況をしっかり調査して当事者に重要事項説明を実施します。シロアリ、雨漏り、過去の事件事故などの瑕疵、建築制限なども事前に確認できて、安全に取引できるメリットがあります。
5-3. 住宅ローンが好条件で利用しやすい
不動産仲介会社が入れば、個人間取引の場合よりも住宅ローンを利用しやすくなります。また、煩雑な書類の記入法や手続きの不備がないか不動産仲介会社がチェックするので、スムーズに手続きを進められるメリットもあります。売主としても、プロがしっかりとサポートしてくれると安心感があります。
5-4. 決済や登記まで任せられる
不動産仲介会社は決済にも立ち会ってくれて売買を最後まで見届けてくれます。司法書士を紹介してくれて、登記完了までサポートしてもらえるメリットもあります。
6. まとめ
個人間売買は可能ですし、仲介手数料がかからないメリットがあります。しかしリスクが高すぎるので、親子間取引などよほど信用できる場合以外はおすすめできません。
実際には仲介手数料を払っても、不動産仲介会社へ依頼するほうが安心ですしスムーズにやり取りできます。高額な不動産の売買で失敗しないため、信頼できる不動産仲介会社へ相談してみましょう。
ライター、元弁護士
弁護士として10年の実務経験を積み、ライターへ転身。法律や不動産関係の記事を得意としている。弁護士時代から不動産事件を多数取り扱ってきた経験を活かし、売買や賃貸、任意売却、離婚や相続、税金などの記事の執筆監修を行う。「難しく専門的な内容をわかりやすく伝える」をモットーに、読み手にとって「本当に役に立つ記事」を作成。専門分野において「もっと正確で役に立つコンテンツを増やしたい」という使命感をもってライティングに取り組んでいる。
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