定年後に、都心のマンションに住まいを買いかえる人が増えています。また、子育て期には郊外の一戸建てへという従来の常識を覆し、教育目的での都心回帰も増加中です。そんな新たなトレンドを、事例を交えてご紹介します。
1. 定年後は、3つの住み替え。
「近居・同居・高齢者施設」
以下の60歳前後の方の3つの住みかえ事例に共通するのが、定年後の年金生活に入る時期に、住まいの環境改善と生活資金の創出を同時に実現していることです
(表1)。
表1.定年を機に考える3つの「住み替え」
これまでの住み替えステップは、「職場に近い賃貸アパート→準都心のマンション購入→郊外の一戸建てへ買いかえ」という都心から外側に向うのが主流でした。しかし、定年後の人生が20年以上に及ぶ「人生100年時代」、従来のゴールの先に「郊外の一戸建て→都心のマンション」という新たなステップが生まれているわけです。
ケース1:「近居」で縮小買いかえ
子どもが独立して夫婦二人になり、スペースの余った一戸建てを売却して、小ぶりのマンションを購入するパターンです。郊外や準郊外から都心近くへ、最寄り駅から遠い場所より近い場所へ、交通利便性の高い立地を選ぶのが一般的です。
定年して間もないAさんは、夫婦二人で住んでいた練馬区の一戸建てを売却。港区にある2LDKのマンションを現金で購入し、老後の生活には充分な手元資金を残しました。
Aさんが購入したのは、娘夫婦が住んでいるマンション内の住戸でした。つまり「近居」を始めたわけです。このように、買いかえ先としては、娘や息子のマンションの近くなどを選ぶケースが少なくありません。
ケース2:複数物件に分割し、そのうちの1戸に「同居」
買いかえが相続対策にも結び付くパターンです。主な財産が自宅ひとつで、子どもが複数いる方に適しています。将来の相続に備えて遺産分割しやすいように、自宅を売却して子どもの人数分のマンションを購入しました。
Bさんは、渋谷区の自宅をおよそ1億円で売却し、二人の子どものために4,000万円程度のマンションを2戸購入しました。諸経費を差し引いても、1,000万円以上の余裕資金が残りました。子どもの一人はまだ学生のため、夫婦が同居しています。
ケース3:「高齢者施設」への住み替え
自宅を売却して得た資金を、シニア住宅への入居資金に充てるケースです。Cさんは、世田谷区内の一戸建てを売却して、入居金に充てました。月々の費用は年金で支払い、入居一時金を除いた売却代金は、いざという時の余裕資金として残しています。
最近では、高額な入居一時金が不要で、月払いの「賃料+管理費」だけで入居できるシニア住宅も増えてきました。
2. 子育て世帯は、都心への「お受験」買いかえも活発!
子育て世帯にも、これまでとは違った住みかえパターンが見られるようになっています。最近の子育て世帯では「準郊外のマンション→都心のマンション」という住み替えが珍しくありません。
従来型の「夫婦二人の都心近くの住まい→子ども部屋を確保するため広めの郊外」に住み替える方ももちろん多いのですが、逆に、子どもを著名な学校に通わせるなどのために、多少狭くなっても都心に住み替えるケースが増えています。
3. 「買い先」のリスクを抑えるサポートサービス
紹介した3つの事例では、すべて住み替え先を決めてから、自宅を売却しています。
住み替えの目的、つまり新居の条件が重視されていたからです。一般的に、「ここなら住みたい」「このマンションは希望条件に合う」という気持ちにならなければ、今住んでいる家を売る気にならない人が多いようです。その一方で、「先に購入先が決まっても、自宅が売れなかったらどうしよう」と不安になり、購入に踏み切れない方もいます。
こうした買いかえのジレンマを解決するため、大手仲介会社の多くが買いかえに関するサポートを用意しています。購入資金を確保するための「つなぎ融資」や、万が一売れない場合に仲介会社が買い取ることを保証する「買換保証」サービスです。会社によって適用条件やサービス内容が異なりますので、ご利用の際には個別に確認をしてください。
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