
「基準地価」は、全国各地の住宅地や、商業地における地価動向の基盤となる重要な指標で、不動産取引や資産評価に大きくかかわる数値です。この記事では、基準地価の基本的な仕組みや調べ方、公示地価(地価公示)や路線価などとの違い、不動産市場への影響や、現在の動向などをわかりやすく解説します。
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1. 基準地価とは?
基準地価(都道府県地価調査)は、各都道府県が毎年7月1日に実施する地価調査の結果を元に、土地の標準価格として発表する公的な土地指標のひとつです。土地取引規制に際しての価格審査や地方公共団体等による買収価格の算定基準となることにより、適正な地価の形成を目的としています。
2. 基準地価の調べ方
基準地価を調べる方法には、国土交通省や各都道府県の公式サイトをはじめ、複数の手段があります。自身で知りたい土地の価格やその推移を調べたい場合は、以下のような方法で、国や自治体の公表している公的データを入手することからはじめましょう。
2-1.都道府県地価調査のデータが元になっている
基準地価は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、各都道府県知事が毎年7月1日時点での土地価格を調査して9月下旬に公表するデータです。調査対象となる「基準地」は全国に約2万地点あり、周辺地域の実勢価格や市場状況を考慮して、1地点につき1名以上の不動産鑑定士が1平米あたりの土地価格を鑑定しています。
2-2.不動産情報ライブラリ
「不動産情報ライブラリ」は、不動産取引価格や地価公示(公示価格のこと、サイトでは地価公示と表示)などの価格情報、防災情報、都市計画情報、周辺施設情報などを一括して閲覧できる国土交通省のWebサイトです。
基準地価についても、都道府県ごとにまとめられた地価調査結果を参照できます。地域による比較も簡単で、最新の調査結果や過去の履歴を確認しながら、土地の価値や将来性を把握することが可能です。
2-3.全国地価マップ
「全国地価マップ」は、相続税路線価、固定資産税路線価、地価公示(公示価格のこと、サイトでは地価公示と表示)、都道府県地価調査価格の4つのデータを地図上で確認できる便利なサイトです。住所の検索や地図の拡大縮小で対象エリアを選ぶだけで、周辺のさまざまな公的地価指標の数値を一目で比較できます。
3. 基準地価と関連がある土地指標
土地価格指標には、基準地価以外にも公示地価(地価公示)や実勢価格、路線価、固定資産税評価などがあり、一物五価と呼ばれることもあります。
それぞれ計算方法や調査主体および調査基準日が異なるため、その違いを理解しておけば不動産取引や資産評価の際に役立つでしょう。各指標の概要と基準地価との関係性につい
3-1.公示地価
公示地価(地価公示)は、毎年1月1日時点の「標準地」について、不動産鑑定士が評価した土地価格を国土交通省が公表します。全国で約2万6,000地点が調査対象であり、地価に関する公的指標のなかで最も代表的です。公示地価(地価公示)は国の施策や公共事業の目安として用いられるほか、民間の不動産売買においても取引価格の参考とされます。
3-2.実勢価格
実勢価格とは、不動産市場で実際に取引された成約価格を指します。広告や販売図面に記載されている「売出価格」も広義では実勢価格に含まれます。しかし、売出価格への値下げ交渉によって成約した場合は売出価格と成約価格に乖離が生じるため注意が必要です。
一般的に実勢価格は公示地価(地価公示)の1.1~1.2倍程度といわれますが、実際の取引ではエリアの需要や売り急ぎの事情、同時期の競合物件数などに左右されて価格は大きく変動します。さらに、基準地価は更地として鑑定されるため、建物付き物件の売買価格や付帯条件(借地権や賃貸中など)によっては実勢価格との乖離が大きくなるケースもあります。
3-3.路線価
路線価は、贈与税や相続税における税額計算の基準となる土地価格として国税庁や市区町村が算定している指標で、公示価格の約80%を目安に設定されます。路線価は「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のサイトで調べられます。
具体的には、路線(道路)ごとに土地の単価が設定されており、路線に面している整形地(標準的な四角形)の土地の平米単価を千円単位で表示。なお、路線価が定められていない地域は「評価倍率表」を用いて固定資産税評価額に係数を掛けて算出します。
3-4.固定資産税評価
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税を算出するために市区町村が算定する評価額で、公示価格のおよそ70%を目安に設定されています。
例えば、所有権移転登記時の登録免許税を計算する際には、固定資産税評価額に登記原因ごとに決められた係数を掛けて算出します。評価額は3年に一度のサイクルで評価替えされるため、土地を長期保有している場合には定期的に変動する点に留意しましょう。ちなみに次回の評価替えは2027年の予定です。
3-5.土地指標の違いと比較表
土地指標にはそれぞれ調査団体や調査基準日、公表日、鑑定方法などに違いがあります。
一般的には「 実勢価格 > 公示地価 (地価公示)≒ 基準地価 > 路線価 > 固定資産税評価 」です。
以下の比較表を参考に、各指標の特徴や違いを理解しましょう。
基準地価 |
地価公示 |
路線価 |
固定資産税評価 |
|
調査団体 |
都道府県 |
国土交通省 |
国税庁 |
市区町村 |
準拠法 |
国土利用計画法 |
地価公示法 |
相続税法 租税特別措置法 |
地方税法 固定資産評価基準 |
基準日 |
毎年7月1日時点 |
毎年1月1日時点 |
毎年1月1日時点 |
毎年1月1日時点 |
公表日 |
毎年9月下旬 |
毎年3月下旬 |
毎年7月下旬 |
毎年4月下旬 |
対象地域 |
都市計画区域内外の住宅地、商業地のほか、工業地、林地など |
都市計画区域内外の住宅地、商業地 |
市街地の道路に面する土地で、都市計画区域内およびその周辺が対象 |
全国の全ての土地や建物等が対象 |
調査地点 |
都市計画区域外も含まれる2万もの基準地 |
都市計画区域内の2.5万もの標準地 |
ー |
ー |
鑑定方法 |
1地点に不動産鑑定士1名以上で調査 |
1地点に不動産鑑定士2名以上で調査 |
国税庁が地価公示価格を基準に算定 |
各自治体の担当者が固定資産評価基準に基づいて算定 |
備考 |
地価公示とは補完関係にある |
公共事業用などにも活用 |
相続税・贈与税の算定基準 |
固定資産税・都市計画税などの算定基準 |
4. 2024(令和6)年の地価調査による全国の地価動向
2024年(令和6年)の地価調査結果では、全国平均は引き続き上昇傾向を示しています。国土交通省の資料によれば、大都市圏はもちろん地方の主要都市でも引き続き需要が堅調であり、全用途平均も継続して上昇中です。
引用:令和6年都道府県地価調査の概要の(1)地価動向の図|国土交通省
4-1.地域別の地価動向
地域別の地価動向は以下の通りです。
<全国平均>
全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続上昇している。
<三大都市圏>
全用途平均は4年連続、住宅地は3年連続、商業地は12年連続で上昇と顕著な伸びをみせている。
<地方圏>
地方の主要都市を中心に、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも2年連続で上昇するなど、都市部との差はあるものの徐々に回復基調の兆しを感じる。
4-2.全体的な特徴
全国的に見ると、大都市圏ではオフィス・商業施設・住宅地の需要拡大によって上昇基調が一層強まっています。一方、地方圏でも利便性の高いエリアを中心に地価が安定上昇を続けており「二極化」が顕在化してきました。公共交通の利便性や再開発の有無、リゾート需要の高まりといった個別要因が、地価を押し上げるケースも目立ちます。
4-3.用途別の特徴
用途別の地価動向は以下の表をご参照ください。
住宅地 |
・低金利の継続で住宅需要は堅調で、大都市圏の中心部で上昇傾向が一層強い ・人気のリゾート地では週末利用や移住の需要が高まり、高水準を維持 ・鉄道の新路線開業エリアでは周辺エリアより上昇率が大幅に拡大 |
商業地 |
・主要都市では店舗、ホテル、オフィスの需要が堅調で収益性が安定 ・インバウンド需要が強い観光地では高い上昇率 ・再開発エリアでは将来の期待感も重なり上昇傾向が継続 |
その他 |
・大型の製造工場および関連企業が進出するエリアでは、住宅や店舗など生活施設の需要が急増 ・ネット通販市場の活況により、高速道路へのアクセスが良い工場地で高い上昇が見られる ・令和6(2024)年の能登半島地震被災地では、地価の大きな下落が深刻化 |
5. まとめ
土地価格には、基準地価、公示地価(地価公示)、実勢価格、路線価、固定資産税評価などいくつもの指標があり、それぞれ目的や調査主体、算定方法などが異なります。基準地価は都道府県が独自に調査し、全国各地の地価動向を半年刻みで把握できる重要なデータです。
実際の売買価格査定では、基準地価や公示地価(地価公示)、路線価と照らし合わせ、さらには、実勢価格の動きを調査することで、より正確な市場相場を把握できるでしょう。

宅地建物取引主任士、管理業務主任者
司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、個人顧客を中心に不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事。また、外資系金融機関にも2年間従事し個人顧客へ金融資産形成や相続税の節税アドバイスなどを担当。現在は不動産/金融業界での経験を活かし、記事を執筆にもあたっている。
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