中古物件を購入する際の注意点

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1.中古物件の注意点

中古物件の中には、価格や立地が優れていてもコンディションは優れていない物件は多々あります。また、築年数の浅い物件から築後50年以上経過している物件など築年数もさまざまです。
今回は、物件価格は安かったけれど住んだ後になって余計にお金が掛かった、といったことがないように、中古(住宅)物件の注意点を紹介します。

2.中古物件とは

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、新築住宅とは工事完了日から起算して1年を経過していない新たに建築された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないものと定義されています。このことから、中古物件とは新築後1年を経過している物件や、すでに人が住んだことのある物件を指すことが一般的です。

3.売主により取引条件は異なる

中古物件の中には、売却する中古物件に住んでいた個人が売主になる場合や、室内や外装をリフォームして再販売する宅地建物取引業者が売主となる場合、社宅などや資産活用として保有していた中古物件を売却する一般法人が売主となる場合などさまざまです。取引条件は中古物件の売主により異なります。

個人が売主の場合 売主と買主の双方が合意すれば、取引の内容はある程度自由に決めることができる
宅地建物取引業者が売主の場合 宅地建物取引業法に基づき、一定の場所におけるクーリングオフ、手付金及び損害賠償額又は違約金の額の上限規定(売買代金の20%)、契約不適合責任の通知期間は「目的物の引渡しの日から2年以上」
一般法人が売主の場合 買主が個人の場合、消費者契約法に基づき、契約不適合責任の通知期間は「目的物の引渡しの日から1年以上」

4.カーテンや照明器具などの取り扱い

中古物件の買主は、その中古物件の建物内のカーテンや照明器具なども含めて物件を気に入ることがありますが、気に入った建物内のカーテンや照明器具が必ずしも物件に付属されているとは限りません。なぜなら、その物件の売主が、つぎの住まいにカーテンや照明器具を持っていってしまう場合があるからです。また、カーテンや照明器具が建物内に残されるとしても、よく確認するとカーテンが破れていたり、照明器具が壊れていたりする場合もあります。そのため、取引に入る前段階から建物内のカーテンや照明器具が残されるかどうかや、傷みや故障がないかなどを確認することが大切です。
なお、エアコンについても同様に建物内に残されるものかどうかの確認を忘れずに行いましょう。

5.中古物件の盲点:シックハウス症候群

住宅の建設やリフォームなどの際に使用される住宅建材、家具などから発生する化学物質により、室内空気が汚染されることで起きる健康被害のシックハウス症候群。
シックハウス症候群では目がチカチカしたり涙が出たりするだけでなく、めまい・吐き気・嘔吐・じんましんなど身体の全身に関わる症状が現れたりするため住宅を選ぶ際にもぜひ気をつけておきたいところです。
シックハウス症候群は一般的に新築住宅特有の症状と思われがちですが、新築時からかなり時間が経過した中古物件でもシックハウス症候群による健康被害が報告されています。例えば、シックハウス症候群が問題となり始めてから少し時間が経過した2003年に建築基準法が改正(シックハウス法と呼ばれています)されました。それによりシックハウス症候群の代表的な汚染物質とされているホルムアルデヒドの放出量が極めて少ないとされているフォースターと呼ばれる等級の材料が使用され始めたり、室内の汚染された空気を室外にスムーズに排出するため汚染された室内の空気全体を2時間で1回以上入れ替えることができる24時間換気システムが導入されたりしています。そのため、2003年以降に新築された建物にはさまざまなシックハウス対策が講じられていますが、それ以前に建築された建物からはいまだに少量ではあるもののホルムアルデヒドが放出されていることもあり、「中古物件だから安心」というわけではないのです。
シックハウス法が施行された2003年以前の中古物件の購入を検討するときは、室内の建材を交換したり、場合によってはフルリフォームを検討したりするなどの対策が必要な場合もあります。

6.建物のコンディションを確認する住宅検査(インスペクション)いろいろ

中古物件の中には新築後かなりの年数を経過している物件もあるため、シロアリの被害を受けている物件や雨漏りしている物件、傾いてしまっている物件などさまざまです。また、大きなダメージはなかったとしても、すでに耐用年数を超えてしまっている建材や設備が使用されている物件も少なくありません。したがって、ある程度築年数が経過した中古物件の購入を検討する際は、購入候補である中古物件のコンディションを確認する住宅検査(インスペクション)の利用も視野に入れることが大切です。
最近は、宅地建物取引業法の改正により売主が売却する建物のコンディションを確認するための建物状況調査といった調査をあらかじめ行っている場合があります。ただ、売主による建物状況調査が行われていない物件の場合には、買主の費用負担で行われる建物状況調査する事例も増えつつあります。中古物件の住宅検査(インスペクション)を検討する際は、物件を紹介してくれる宅地建物取引業者や、中古物件に詳しい設計士などへ相談してみましょう。

7.間取りのレイアウトを大幅に変更するリノベーションの注意点

築後数十年を経過している建物や室内が著しく傷んでいる物件では表面的なリフォームで留まらず、構造耐力上主要な部位の修繕や交換、屋根の葺き替え、給排水設備の全交換なども視野に入れた大規模なリフォーム工事が必要になる場合もあります。
また、大規模なリフォーム・修繕工事に伴い既存の間取りのレイアウトの大幅変更も視野に入れている物件では、希望通りのレイアウト変更が可能かどうかあらかじめ調べておく必要があります。
なぜなら、既存の給排水管の経路やマンションの場合の共用排水竪管の位置によってはキッチン・浴室・トイレ・洗面といった水まわりのレイアウト変更ができない物件や大きさを変えられない物件もあるからです。
中古物件を購入した後で「希望通りの間取りに変更ができなかった」「キッチンや浴室の移動ができないだけでなく大きさすら変えることができなかった」といった話もよくあります。
間取りのレイアウトを大幅に変更しようと思っているときは、詳細な設計図をあらかじめ入手したり、大規模なリフォーム・リノベーション工事を得意とする会社や設計士に相談したりすることをおすすめします。

8.旧耐震基準・新耐震基準と2000年の建築基準法改正

地震が多い日本において、建物の耐震性は中古物件の購入において非常に大切な要素と言えます。そのため、都道府県市区町村では大地震への備えとして、住宅の耐震診断や耐震補強工事に対する助成が行われています。耐震診断や耐震補強工事の費用の一部が助成される建物は、原則1981(昭和56年)年6月1日以前に新築工事に着手した、いわゆる旧耐震基準と呼ばれる建物です。
1981年6月1日に建築基準法が改正されました。それ以降に新築された建物の耐震性は、それ以前に建築された旧耐震基準の建物よりも耐震性が高くなっています。新耐震基準と呼ばれる建物は、震度6強から7程度の大規模地震でも建物が倒壊・崩壊しない程度の耐震性を有していると考えられています。

なお、2000(平成12年)年にも木造住宅を中心とした建築基準法が改正されています。具体的には、地盤調査の実質義務化や木造の建物における接合金物の規定及び地震に耐える耐力壁の量とバランスの規定が規定されたことから、主に木造住宅の耐震性がさらに向上されることになりました。

9.ローン控除に必要な耐震基準適合証明書

住宅ローンを利用して中古物件の購入を検討しようとするときに絶対に確認しておきたいのが、住宅ローン控除が利用できる物件かどうかといった点です。
住宅ローンを利用したときに、年末の借入残高の1%(最大控除額40万円(年)、控除期間は購入した住宅に住み始めた時期により異なります)が所得税から控除される制度のことで、住宅ローンを利用するならぜひ利用したい制度です。

ただし、この制度を利用するためには、住宅の床面積が50m2以上(一部、40m2以上)であり、床面積の1/2以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものでなくてはならないことと、築年数が20年以内(マンションの場合は25年以内)である必要があります。築年数が20年を超えている(マンションの場合、25年を超えている)場合には、耐震基準適合証明書といった書類を入手することができれば、住宅ローン控除といった大きな恩恵を享受できます。築年数が20年を超えている(マンションの場合、25年を超えている)物件を検討する際は、あらかじめ耐震基準適合証明書の入手が可能かどうか、物件を紹介してくれる宅地建物取引業者などへ確認しておくことが大切です。

10.戸建の中古物件の中には違法増築を行っている物件も

マンションではあまり見かけませんが、一戸建ての中古物件の中には、違法な増築が行われている物件があります。具体的には、本来は吹き抜けであるべき部分に床が敷かれ部屋として利用されていたり、本来は屋根裏の一部として利用できない部分に床が敷かれ納戸の一部として利用されていたりする例があります。あるいは、もともとは一階と二階の間の屋根だった部分が部屋として増築されている場合もあります。
こういった増築部分があることで、建築基準法の規定による建ぺい率や容積率を超過している物件では、そのままの状態では住宅ローンが利用できないことや、違法な増築部分を元の状態に戻さないと住宅ローンが利用できない場合があります。部屋としての利用に違和感がなくても、違法な増築や建築基準法違反が行われていない建物かどうか宅地建物取引業者などに確認しておくことが大切です。

11.中古物件の予算計画はリフォーム費用も含めて検討

中古物件の取引では築年数・室内・建物の外装の状態により、物件価格とは別に多額のリフォーム費用が必要になる場合があります。また、建物のコンディションによっては、リフォーム以前に多額の修繕費用が必要になる場合もめずらしくありません。 したがって、中古物件の購入を検討する際は物件価格だけでなく、中古物件特有のリフォーム費用や修繕費用が必要になる場合があることと、物件価格以外に掛かるリフォーム費用や修繕費用がどの程度掛かりそうかも含めて資金計画を立てることがポイントです。最近は物件価格以外に掛かる諸費用だけでなく、リフォーム費用や修繕費用も住宅ローンと同じ金利で借入できる住宅ローンもあるので、リフォーム会社ともよく打ち合わせのうえ物件を検討しましょう。

12.建物の保証が継承できる場合も

築後10年を経過していない一戸建ての中古物件では、所有者が代わっても新築時の10年保証がそのまま継続できる場合があります。
保証が継承できることを知らない売主も多いことから、その住宅を新築した際の建設会社に直接尋ねるなど、保証の継承の可能性について確認しておくといいでしょう。
また、保証は継続できるものの、一定の修繕費用を負担することが前提となっている場合もありますので、保証の継承の可否だけでなく保証を継続するための条件なども忘れずに確認しておきましょう。

13.まとめ

中古物件は新築住宅と違い、経年劣化からリフォームや修繕工事が必要な場合があるため、選ぶ物件によっては資金計画に大きな影響を与えます。また、検討している中古物件が、建築された時期によっては耐震性にも大きな違いがあります。
中古物件は築年数や築後の経過年数、建物のコンディションなどにより注意しなければならないポイントも違いますので、さまざまな点に注意しながら物件を探してみましょう。

三上隆太郎

三上隆太郎

株式会社MKM 代表取締役
宅地建物取引士・2級ファインシャル・プランニング技能士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士
資格予備校にて宅地建物取引士試験講座の宅地建物取引業法専属講師。
著書に「自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本」(自由国民社:共著)。

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