不動産を売却する際にも、購入時と同様にさまざまな費用が必要になります。例えば、不動産を売却では一般的に不動産会社に仲介を依頼しますが、売買の取引が成立した場合には仲介手数料を支払います。このほか、印紙代や住宅ローンの繰上げ返済手数料、抵当権の抹消費用などの諸費用も必要になります。この記事では売却時に必要な仲介手数料などの諸費用について詳しく解説していきます。
1. 不動産売却時にかかる仲介手数料とは?
一般的に不動産を売却するときは、不動産会社に売買の仲介を依頼します。仲介とは、不動産の売買では売主と買主、賃貸では貸主と借主の間に入って取引をつなぐことを指します。不動産取引では宅地建物取引業法上の専門用語として仲介のことを「媒介」と呼ぶこともありますが、仲介も媒介も同じものとして理解しても問題はありません。
仲介の立場として不動産会社が間に入り、無事売買など不動産の取引が成立した場合にその仲介(媒介)活動の報酬として支払うものが仲介手数料です。仲介手数料は成功報酬なので、売買など取引が成立しない場合は支払う必要がありません。
1-1. 仲介手数料は何に対する報酬?
一見すると仲介手数料が高く感じる方もいるかもしれません。そこで仲介手数料はどういった活動に対する報酬なのか説明します。
まず仲介の正式な依頼を受けると、不動産会社は集客のための広告宣伝活動を行います。業者登録している不動産会社が情報を共有する指定流通機構(レインズと呼ばれるネットワークシステム)への情報登録(売主との契約が専属専任媒介契約、専任媒介契約は必須、一般媒介契約は任意)、自社のホームページや不動産ポータルサイトへの掲載、新聞折込チラシやポスティングチラシでの告知などさまざまな広告宣伝活動を展開します。
また、こうした広報活動で応募のあった人に対しての相談や内覧(現地見学)の立ち合いなど購入を検討する人に対する対応全般、正式な購入の申込み後は買主と売主の売買条件、契約日程などの調整、数多くの契約に関する書類の作成、引渡しまでの調整や登記などの各種手続きの調整などさまざまな業務があり、これらすべての業務に対する報酬が仲介手数料となります。
不動産会社、不動産のプロとして専門的な知識や経験を活用してこうした活動を行うので、不動産の取引はより安全かつスムーズになります。そういった意味では、仲介手数料は不動産の専門家に依頼したことに対する報酬と考えてもいいかもしれません。
1-2. 仲介手数料には上限がある
仲介手数料は、宅地建物取引業法によって以下のように上限が定められています。
取引金額 | 報酬額(税抜)の上限 |
---|---|
200万円以下 | 取引金額の5% |
200万円超 400万円以下 |
取引金額の4% |
400万円超 | 取引金額の3% |
よく知られている仲介手数料の計算方法で「物件価格の3%+6万円」というものがありますが、これは取引(売買)金額が400万円超の物件を売買するときの計算上の簡便法です。
上記の表で200万円以下の部分は5%、200万~400万円以下の部分が4%、400万円超の部分が3%となっていますので、400万円以下の部分の3%を超える分を計算して足したものが6万円となります。
具体的に計算すると、
●仲介手数料の計算例
- 200万円までの2%(5%-3%) → 4万円(200万円×2%)
- 200万円から400万円までの200万円分の1%(4%-3%)→ 2万円
合計:6万円
また、仲介手数料の計算については、税抜き金額に対して計算することになっています。例えば、売主が消費税事業者である場合、販売している不動産の建物部分に課税される消費税分を除いた金額に指定の料率を掛けて仲介手数料を計算することになります。
ただし、消費税の課税義務がない一般個人が売主となる売却の場合には、売買金額がそのまま取引金額となります。そのため、個人が売却を依頼して支払う仲介手数料はそのまま売買金額に所定の料率を掛けて計算したものになります。
なお、仲介手数料は仲介業務というサービスの対価であり別途消費税が必要になるためで注意してください。
1-3. 仲介手数料の計算例
それでは、仲介手数料の計算の例として、簡単な事例を示して計算してみましょう。
例えば、個人が5,000万円で自宅マンションを売却したとしましょう。この時の仲介手数料は簡便法で計算すると
(50,000,000円 × 3% + 60,000円)+ 156,000円(消費税) = 1,716,000円
となります。
これを簡便法ではなく、正式な計算方法で計算すると
- 200万円まで
2,000,000円×5%= 100,000円 - 200万円超400万円まで
2,000,000円×4%= 80,000円 - 400万円超
46,000,000円×3%=1,380,000円
合計すると1,560,000円で、これに消費税156,000円を加えると1,716,000円となり、簡便法で計算したものと同じになります。
また、不動産の売買取引では仲介する不動産会社が2社となることがありますが、売主は自分が仲介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払えばよく、買主側を仲介する別の不動産会社があったとしてもその不動産会社へ支払う仲介手数料は買主が支払います。
1-4. 仲介手数料の支払い方法は?
仲介手数料は成功報酬であるため、取引が成立して初めて支払います。支払いのタイミングとしては、売買契約時に仲介手数料の半分、物件の決済・引渡し時に残りの半分を支払うことが多いです。
また、支払いの方法は不動産会社によって異なりますが、指定する金融機関の口座への振込み、または現金あるいは銀行振出の預金小切手などで支払います。通常は不動産会社から請求書とともに支払い金額や方法について案内されますので、それに従って支払います。
なお、仲介手数料はあくまで成功報酬であるため、契約時に仲介手数料の半分を支払ってから「融資利用の特約」「買替特約」に基づく解除など依頼者側に原因がない理由で契約が解除され取引が成立しなかった場合は、契約時に支払った仲介手数料は全額返金されます。
2. 売却時に必要なその他の費用は?
最後に不動産売却時に必要な仲介手数料以外の費用について、簡単にご紹介しておきましょう。
2-1. 印紙代
不動産の売買契約では、契約書に印紙を添付して印紙税を支払う必要があります。印紙代は契約書に記載された売買代金(物件の価格)によって金額が決められています。令和4年3月31日までは軽減措置が適用され、1億円以下までは本則の半分となっています。
記載された 契約金額 | 印紙代 (本則) | 印紙代 (特例) |
---|---|---|
100万円超 500万円以下 |
2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 |
1万円 | 5,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 |
2万円 | 1万円 |
5,000万円超 1億円以下 |
6万円 | 3万円 |
1億円超 5億円以下 |
10万円 | 6万円 |
5億円超 10億円以下 |
20万円 | 16万円 |
2-2. 住宅ローンの繰り上げ返済手数料
売却の時点でまだ売却物件に住宅ローンの残債がある場合は、売却に合わせて残債全額を返済しなければなりません。その際、ローン全額の繰り上げ返済(一括繰上げ返済)をしますが、その返済時に金融機関に支払う返済手数料がかかることがあります。
返済手数料については、不要な金融機関もあれば、一律所定の金額あるいは返済する金額に応じた率で定めている金融機関もありますので、早めに確認するようにしましょう。
2-3. 抵当権の抹消登記費用
住宅ローンなど融資を受けて購入した不動産には通常、担保として抵当権が設定されています。売却時には融資を全額返済してこの抵当権を抹消しなければ相手(買主)に不動産を引き渡すことができません。
この抵当権を抹消する登記手続きに費用が必要となります。一般的には司法書士に依頼して抹消手続きをすることが多く、その登記費用としては20,000円~30,000万円程度かかります。
2-4. 必要書類の取得費用
売却する際には、不動産の固定資産税評価証明書や印鑑証明書など公的な証明書が必要になります。これらの証明書の取得費として1部につき数百円程度の費用が発生します。(取得する各市区町村の役所へ支払います。)
2-5. 土地の測量代など
一戸建てや土地を売却する際には、土地の面積や隣地との境界を明確にするための確定測量を行うケースがあります。この測量は売却前あるいは売却と並行して行います。その費用は、依頼した測量会社や土地の面積などで金額が異なりますが、数十万円からの金額になりますので、あらかじめ実施をした場合の金額を確認しておくようにしましょう。
3. まとめ
ご紹介したように不動産の売却時にかかるさまざまな費用がありました。仲介手数料は費用の中では金額が大きくなるので売却費用として事前に計算しておき、どのくらいの費用がかかるのか把握しておいたほうがいいでしょう。
不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
横浜国立大学卒業後、神奈川県住宅供給公社に勤務。その後不動産仲介会社等を経て、独立。現在は、自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う。その他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。
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