不動産売却時に必要な書類とは?

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1. 不動産を売却するときどんな書類が必要?

不動産を購入するときにはたくさんの書類が必要ですが、不動産を売却するときにも今度は売主として、購入したときとは違った書類を準備する必要があります。必要な書類は、スムーズな売却のためにも早めに準備しておきたいものです。しかも売却する不動産の種類やローンの有無によっても必要な書類が異なってきます。今回は不動産の売却時に必要な書類について、不動産の種類とローンの有無に分けて解説していきます。

2. 不動産を売却するとき共通して必要な書類

不動産を売却するときにはどんな不動産でも共通して必要な書類がありますので、以下に紹介します。

2-1. 権利証(登記識別情報)

不動産の登記名義人であることを証明する「権利証(登記済証)」または「登記識別情報(通知)」は必要です。いずれかの書類がないと原則所有権移転登記ができず、売買することができません。「権利証」と「登記識別情報」の役割は同じですが、不動産登記法改正後の2005年3月から順次登記情報が電子化された法務局から「権利証」に代わって「登記識別情報」が交付されています。従って、所有権移転など登記した時期によって、登記名義人が持つものは、「権利証」または「登記識別情報」のいずれかが変わります。

さて、権利証や登記識別情報を紛失してしまった場合などはどうすればよいのでしょう。権利証や登記識別情報はいかなる理由でも再発行されません。そこで、紛失した場合は、事前通知という法務局(登記官)が権利者の本人の確認を持って権利移転する方法があります。ところが、この方法では登記申請後に郵送で権利者本人に確認してから登記を行うので、登記の処理に時間がかかってしまいます。そこで、実際の取引では、司法書士など資格者が事前に本人を行って登記申請を行う「資格者代理人による本人確認情報の提供の制度」を採用して所有権移転登記を行うことが多くなっています。いずれにしても権利証や登記識別情報を紛失した場合は、事前に不動産会社の担当や司法書士に相談しておくことが必要です。

2-2. 登記簿謄本(登記事項証明)

不動産売買では、「登記簿謄本」(現在、正式には「登記事項証明書」)が必要ですが、実際の取引では不動産会社の担当や司法書士が準備してくれることが多くなっています。
なお、引越しなどで所有者の登記簿に記載された住所(所在地)と現住所が異なるときは別途、住所変更登記が必要になります。その場合は、別途、登記簿上の住所(所在地)から現在の住所に繋がる住民票または戸籍の附票が必要になります。ただし、途中本籍地の移転や結婚等により新たな戸籍となっている場合には旧住所地や旧本籍地で住民票の除票や戸籍の除附票などの取得が必要になります。

2-3. 身分証明書

2008年3月1日施行の犯罪収益移転防止法(マネーロンダリング防止法)の特定取引にあたる不動産売買では本人確認が義務付けられています。個人が売主の場合に必要な本人確認書類としては、運転免許証や健康保険証、印鑑証明書などとなっています。本人確認は契約当事者の確認として契約時と権利移転に伴う本人確認として決済時に行います。

2-4. 固定資産税納税通知書と固定資産税評価証明書

固定資産税納税通知書はその年の1月1日時点の所有者に送られてくる書類で、所有する土地や建物の固定資産税評価額や税額などが記載されたものです。売買の決済時に買主と固定資産税等の清算を行うため、その年の納税額を確認するために必要な書類となります。また、所有権移転登記の手続きで必要な登録免許税の金額を算出する際にも不動産の評価額の確認のため必要となります。なお、固定資産税納税通知書を紛失した場合などは市区町村の窓口で発行される固定資産税評価証明書でも大丈夫です。いずれも最新のものを用意することが必要です。

2-5. 購入時の重要事項説明書、売買契約書

手元にあれば、購入時の重要事項説明書や売買契約書は準備しておきます。なくても問題はありませんが、不動産に関する物件や条件、法令上の制限など重要なことが記載されていますので、売却時にも非常に参考になり、スムーズな取引に役立ちます。

2-6.【不動産売却時に共通して必要な書類一覧】

1 権利証(登記識別) (紛失した場合)
司法書士等による本人確認
・運転免許証、パスポートなど
・司法書士等が作成する証明書
2 登記簿謄本(登記事項証明書) (登記簿上の住所変更が必要な場合)
・住民票、戸籍の附票
3 身分証明書 ・運転免許証
・パスポート
・健康保険証
・印鑑証明書など
4 固定資産税納税通知書
固定資産税評価証明書
(固定資産税納税通知書がない場合)
・固定資産税評価証明書でOK
(不動産のある市区町村の窓口で発行)
5 購入時の重要事項説明書・
売買契約書
なくても問題ないが、あれば準備しておくとスムーズな売却に役立つ

3. マンションを売却するとき

マンションの売却時に必要な書類は以下のとおりとなります。

3-1. 管理規約、使用細則等

マンションの管理規約と付随する使用細則等が必要になります。マンション全体に共通の約束事が記載されたものですので、売却活動の当初から取引の完了まで必要な重要な書類になります。手元にない場合はマンション管理会社から取得が可能です。仲介する不動産会社にお願いして取得してもらうことも可能です。

3-2. 大規模修繕計画(表)

築年の古いマンションでは大規模修繕計画が策定されていない物件もありますが、策定されている場合はマンションの管理規約等と一緒に準備しましょう。手元にない場合はマンション管理会社から入手することができます。

3-3. 購入時のパンフレット

購入時のパンフレットは、手元にあれば準備しておきましょう。中古で購入した場合など手元にない場合もありますが、なくても問題はありません。

3-4. 住宅設備の取扱説明書

住宅内の設備の取扱説明書もあれば準備しておきます。リフォームを行って新しい設備に変更している場合はその取扱説明書も準備します。この書類も手元になくても問題はありません。

3-5. リフォームの履歴

現在までにリフォームした部分があれば、その箇所とその仕様がわかるものを準備します。
手元にリフォームに関する資料がない場合は、記憶の範囲でも変更した内容を仲介する不動産会社の担当に伝えるようにします。

3-6.耐震診断報告書

築年の古いマンション、特に新耐震基準以前の基準で建てられたマンションでは、耐震診断に関する報告書の有無やその結果が売却の難易度に直結するケースがあります。マンションとして耐震診断を行っている場合は管理組合に依頼して準備しておきましょう。

3-7. アスベスト使用調査報告書

アスベストとは石綿のことで、吸引による健康被害が問題となり、段階的にその使用が禁止されてきました。1975年以前の古い建物では断熱材などとして使用されていた可能性が高いと言われており、それ以降も2006年までは少ないながらも使用されていることがあるため、アスベストの使用についての調査報告書が求められる場合があります。

3-8. 所有者変更届等各種届け出用紙

マンションでは、区分所有者を管理組合員として登録しています。そのため、売買によって所有者が変わった場合は、旧所有者と新所有者の連名で管理組合に届け出る必要があり、所有者変更届とはそのための書類です。あわせて、新所有者が管理組合に届け出る管理費や修繕積立金の口座振替依頼書、駐車場や駐輪場の使用届などの書類も必要になります。これらの書類は売主が用意することもできますが、仲介する不動産会社が準備してくれることも多くなっています。

3-9.【マンション売却時に必要な書類一覧】

1 管理規約・使用細則等 (紛失した場合)
マンション管理会社から入手可能
仲介する不動産会社が代行して取得も可能
2 大規模修繕計画(表) 同上
3 購入時のパンフレット あれば準備しておきたい
4 住宅設備の取扱説明書 リフォームした場合はその取扱い説明書も準備
5 リフォームの履歴(一覧) 書類などがなければ、記憶をもとに作成してもよい
6 耐震診断報告書 実施の有無の確認をマンションの管理組合や管理会社にする
実施していれば、保管しているので、写しを発行してもらう
7 アスベスト使用調査報告書 同上
8 所有者変更届等各種届け出用紙 管理組合またはマンションの管理会社から受け取る

4. 一戸建てを売却するとき

次に、一戸建ての売却の際、必要な書類としては以下のようなものになります。

4-1. 土地の測量図

一戸建ての場合は、所有する土地の面積を確定して引き渡すのが一般的です。そのため、通常は売却に合わせてあらためて測量が必要となります。そこで、測量士や土地家屋調査士に測量を依頼し、土地の測量図を作成してもらい準備します。

4-2. 土地の境界確認書

一般的には、土地の測量と同時に隣接する土地所有者の立会いのもと敷地境界の確認を行って、土地の境界を明確にします(これを「境界確定」と呼びます)。そのとき作成されるのが境界確認書です。境界確定の作業や書類は、測量を依頼する土地家屋調査士などへ合わせて依頼するのが一般的です。

4-3. (私道の場合)通行、掘削承諾書

土地が接する道路が私道の場合、その道路敷地の所有者、共有の場合はその全員から道路の通行と上下水道やガスなどの配管を敷設するための掘削について承諾が必要となります。その承諾書が通行・掘削承諾書です。この書類も土地の測量や境界確定と同時に土地家屋調査士などに依頼して取得してもらうことが一般的です。

4-4. 設計図書(建築図面・建築確認済証・検査済証)

新築時の建物図面と土地の造成図面、建物の遵法性を証明する建築確認済証や検査済証等も必要です。築年が一定以上古くなければ、建築確認済証と検査済証は市区町村で代替の証明書(台帳記載事項証明)を発行してもらうことができます。売却時の広告活動では情報が多いほど反響も増える傾向があり、買主としては安心して購入できる材料の1つなので、準備しておきたい書類です。

  • リフォームの履歴
  • 住宅設備の取扱説明書
  • 耐震診断報告書
  • アスベスト使用調査報告書

以上の4つの書類は、マンションと同様できるだけ準備しておきたい書類になります。

4-5. その他の書類

一戸建てでは、近隣との申し合わせ書面(例:越境物撤去の確認書など)、CATV、ホームセキュリティなどの住宅に関連する各種契約書類といったものがあれば、準備しておきましょう。

4-6.【一戸建て売却時に必要な書類一覧】

1 土地の測量図 最新の測量を土地家屋調査士等の専門家に依頼して行い、準備する
2 土地の境界確認書 取扱が大変なので専門家に依頼して取得することが多い
3 私道の場合
通行・掘削承諾書
同上
4 設計図書(建築図面・建築確認証・検査済証) リフォームした場合はその取扱説明書も準備
5 リフォームの履歴(一覧) 書類等がなければ、記憶をもとに作成してもよい
6 住宅設備の取扱説明書 できるだけ準備しておきたい書類
7 耐震診断報告書 過去に実施した場合は準備しておく
8 アスベスト使用調査報告書 同上
9 近隣との申し合わせ事項の覚書など 購入時や購入後に取り交わしたものがあれば、準備する
10 CATV、ホームセキュリティなどの契約書 契約しているものがあれば、用意する

5. 土地を売却するとき

続けて土地を売却するときに必要な書類についてご説明しましょう。

  • 土地の測量図
  • 土地の境界確認書
  • (私道の場合)通行・掘削承諾書
  • 土地の造成図面等
  • その他の書類(近隣との申し合わせ書面など)

以上までは戸建てと同様に必要な書類となります。土地の売却では以下の書類が追加で必要になる場合があります。

5-1. 建物滅失登記に必要な書類

土地を売却する際は、既存建物を残してそのまま売買することもありますが、既存建物を解体して更地で引き渡すケースもあります。その場合は、建物を解体したことで登記簿上の建物の存在を抹消する必要もあります。なお、建物の抹消登記は解体後1カ月以内に行うことになっており、登記を行わないと固定資産税などの税金が引き続き徴収されるだけでなく、新たな建物が建てられないこともあるので、必ず手続きしましょう。抹消登記に必要な書類は次のとおりです。

5-2. 建物滅失登記申請書

法務局で入手できます。法務局のホームページからダウンロードすることも可能です。

5-3. 案内図

建物のあった場所を示す地図です。

5-4. 解体証明書

解体した事業者から発行してもらいます。

5-5. 解体した事業者の登記事項証明書・印鑑証明書

解体した事業者の会社登記(登記事項証明)と印鑑証明書が必要になります。
建物の滅失登記申請は基本的に上記の書類を法務局に提出することで手続きできるので、自分で申請することも可能です。

5-6.【土地の売却時に必要な書類一覧】

1 土地の測量図 最新の測量を土地家屋調査士などの専門家に依頼して行い、準備する
2 土地の境界線確認書 取扱が大変なので専門家に依頼して取得することが多い
3 私道の場合 通行・掘削承諾書 同上
4 設計図書(建築図面・建築確認証・検査済証) リフォームした場合はその取扱い説明書も準備
5 近隣との申し合わせ事項の覚書など 購入時や購入後に取り交わしたものがあれがあれば

5-7. 建物解体時に必要な書類(建物滅失登記申請に必要)

6 建物減失登記申請書 法務局で入手する
7 案内図 形式は問わないが場所がわかるものを作成する
8 建物解体証明書など 解体業者から発行してもらう
9 解体事業者の登記事項証明・印鑑証明 解体した事業者から受け取る

6. 住宅ローンが残っているとき

次に、マンションや一戸建て、土地など不動産の売却に共通して、住宅ローンが残っている場合に必要な書類について説明しましょう。
住宅ローンなど融資を利用し、不動産に抵当権が設定されている場合には、物件の引渡しにあたって必ず抵当権の抹消が必要になります。通常、抵当権を抹消するには、ローンを完済する必要があり、事前に金融機関に相談した上で抵当権抹消の手続きを行います。その手続きに必要な書類として以下のようなものがあります。

  • 抵当権解除証書など(登記原因証明情報)
  • 金融機関の登記事項証明書
  • 抵当権抹消登記に関する委任状(司法書士宛)

一般的に売却資金を返済に充てることが多いため、決済の当日、ローンの残債を金融機関の指定口座に振り込み、入金が確認されると金融機関が用意した上記の書類を受け取ることができます。実際の取引では、所有権移転登記と合わせて司法書士に抵当権抹消登記を委託することが多いので、その場合に委任状が必要になります。

6-1.【住宅ローンが残っているとき必要な書類一覧(抵当権抹消登記に必要)】

1 抵当権解除証明書など 金融機関が発行する
2 金融機関の登記事項証明書 同上
3 低証権抹消登記に関する委任状(司法書士宛) 司法書士が準備する

7. まとめ

不動産の売却に必要な書類は意外と多いものです。売却をする場合は事前に売主として自分が保管している書類などをまずは確認してみましょう。万一、権利証などを紛失している場合は、別途準備が必要になりますから仲介する不動産会社に事前に伝えておくこともスムーズな取引には重要になります。
準備する書類等に不安のある方は、上記でご紹介した書類などについて、チェックリストを参考に確認してみましょう。

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不動産を売却する方法と流れ|家や土地を売るときに知っておくべき手続きと注意点

秋津 智幸

秋津 智幸

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント
横浜国立大学卒業後、神奈川県住宅供給公社に勤務。その後不動産仲介会社等を経て、独立。現在は、自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う。その他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆にも取り組んでいる。

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