マンションの売却を検討している方の中には、「不動産会社に任せておけば問題ない」と思っている方も多いのではないでしょうか?
全てを不動産会社任せにしている場合、相場より安く売却して損をする、営業力の低い不動産会社に売却を依頼して売買成立まで時間がかかる可能性もあるので注意が必要です。
この記事では、マンション売却時の流れと、失敗を防ぐために知っておきたい注意点について解説します。
1. マンション売却の流れ
マンションを売却する際の流れは以下の通りです。
1. マンションの売却価格の相場を調べる
2. 不動産会社に売却査定を依頼する
3. 売り出し価格を相談・決定し、媒介契約を結ぶ
4. 売却活動を行う
5. 購入希望者の内覧を引き受ける
6. 購入希望者と売買契約を結ぶ
7. マンションを引き渡す
8. 確定申告・納税する
それぞれの流れについて詳しく見ていきましょう。
1-1. マンションの売却価格の相場を調べる
マンションを売却する際は、まずマンションの売却価格の相場を調べます。
その理由は、マンションを売却する際は不動産会社に査定を依頼しますが、相場を知っておかないとその査定結果が適正かどうか判断するのが難しいためです。
売却相場を簡単に調べる方法として、SUUMOやHOME'Sといった不動産ポータルサイトに掲載されている不動産の売出情報を調べるという方法が挙げられます。
しかし、調査対象を誤ると正確な相場を把握できません。そのため、マンションの売却価格に影響を及ぼす以下のような条件を踏まえつつ、マンションの売却相場を把握することが重要です。
- 最寄り駅
- 最寄り駅からの所要時間(徒歩)
- 間取り・専有面積
- 階数
- 築年数
1-2. 不動産会社に売却査定を依頼する
マンションの売却相場を調べた後は、不動産会社に売却査定を依頼します。
不動産会社の査定方法は、大きく以下の2種類に分かれます。
- 机上査定
- 訪問査定
机上査定とは、現地確認を行わず、類似物件の過去の取引相場、公示地価・固定資産税評価額などの公的価格に基づいて行われる査定です。最短その日のうちに結果が分かりますが、査定の精度は訪問査定より劣ります。
訪問査定とは、机上査定と現地確認によって得られた情報に基づいて行われる査定です。現地調査から1週間程度と結果が出るまでに時間がかかるものの、高い査定結果が期待できます。
不動産会社ごとに査定で重視するポイントは異なるため、査定結果に差が生じます。そのため、査定を依頼する際は、複数の不動産会社に査定を依頼するのが一般的です。
複数の不動産会社に依頼するのは手間がかかりますが、一括査定サイトを利用すると物件情報を1度入力するだけで簡単に複数の不動産会社の査定結果が手に入ります。
まずは机上査定で売り出し価格の目安を把握し、査定結果や不動産会社の対応の良さなどを踏まえつつ、訪問査定を依頼する不動産会社を決定します。
依頼を受けるためにわざと高い査定結果を提示する不動産会社もあるため、査定結果だけでなく、総合的に信頼できる不動産会社かどうかを判断しましょう。
1-3. 売り出し価格を相談・決定し、媒介契約を結ぶ
訪問査定を依頼した不動産会社の中から売却を依頼する会社を決めた後は、売り出し価格を相談・決定し、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社と売主との間で、どのような条件で買主を募集するのかあらかじめ決めておく契約です。
媒介契約は一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類あり、以下のような違いがあります。
契約数 | 自己発見取引 | 指定流通期間への登録義務 | 売主への報告義務 | 契約有効 期間 | |
---|---|---|---|---|---|
一般媒介契約 | 契約数複数可能 | 自己発見取引○ | 指定流通期間への登録義務任意 | 売主への報告義務任意 | 契約有効期間制限なし |
専任媒介契約 | 契約数1社のみ | 自己発見取引○ | 指定流通期間への登録義務7営業日以内 | 売主への報告義務2週間に1回 | 契約有効期間3ヶ月以内 |
専属専任媒介契約 | 契約数1社のみ | 自己発見取引× | 指定流通期間への登録義務5営業日以内 | 売主への報告義務1週間に1回 | 契約有効期間3ヶ月以内 |
一般媒介契約では、複数社との契約、自分で見つけた相手との直接契約も可能なので、自由度が高く複数の不動産会社が競い合うことで買主が見つかる機会が増えます。しかし、複数社から内覧希望がくるため、他の会社と内覧が重ならないよう自分で内覧スケジュールの調整・管理をしなければならない点がデメリットです。
専任媒介契約と専属専任媒介契約では、不動産会社に課された義務が多く、1社のみの契約なので、全力で買主を探してもらいやすいと言えます。しかし、専属専任媒介契約は、自分で購入希望者を見つけたとしても、不動産会社を介さずに売却することが出来ない点がデメリットです。
信頼できる不動産会社を見つけた場合は専任媒介契約や専属専任媒介契約、1社に絞りきれない場合は一般媒介契約のように、状況に応じた媒介契約を締結しましょう。
1-4. 売却活動を行う
媒介契約を締結した後は、媒介契約時に決めた売り出し価格に基づいて売却活動を行います。
売り出し価格は不動産会社と査定金額や相場などに基づきながら決定しますが、値引き交渉の余地を残すために多少高めに設定しておいた方が良いという意見もあります。
しかし、むやみやたらに高く設定した場合、候補から外される、値下げしたのでまた値下げする可能性があるといったように悪影響を及ぼす可能性もあるので注意が必要です。
希望価格や売却スケジュールなどを営業担当とよく相談し、条件に合った価格設定と価格改定のスケジュールを事前に決めておくことが大切です。
1-5. 購入希望者の内覧に対応する
売却活動を行っていて購入希望者が現れた場合は内覧対応をします。
内覧とは、購入希望者が実際に現地を訪れてどのような物件なのか家の中を確認することです。
居住しながらの売却の場合、不動産会社が購入希望者を連れてきますので、ホスト役として購入希望者の対応をします。
内覧は基本的に不動産会社が先導してくれますが、ホスト役の売主も購入希望者と雑談しながら案内することが一般的です。
また、内覧前は家の中を清掃し、空気を入れ替えておく、スリッパを用意しておく等の準備も必要となります。
居住しながら売却活動を行う場合は、購入判断には内覧の印象が大きく影響することから、室内の清潔感などに気を付けることが重要なポイントと言えるでしょう。
尚、空き家の状態で売却する場合は、内覧は全て不動産会社に任せることができます。
1-6. 購入希望者と売買契約を結ぶ
購入希望者と条件の合意に至ったら、売買契約の締結に移行します。
購入意思を固めた購入希望者は売主と売買契約を締結する前に、まず不動産会社を経由して購入申込書を受け取ります。
購入申込書の記載内容は以下のような項目です。
- 購入希望価格
- 購入希望者の融資利用の有無
- 各種金員の支払い条件(手付金・内金・残代金など)
- 引き渡しまでのスケジュール
購入申込書の内容に双方が合意すると、ようやく売買契約の締結に移行します。
売買契約前に、不動産会社は買主に対して重要事項の説明を行います。
売買契約では、売主と不動産会社、買主の3者で下記の手続きを行います。
- 契約書の交付と説明、記名・押印
- 手付金の授受
住宅ローンの残債がある場合、引き渡し時に残債分を一括返済して抵当権の抹消手続きを行います。
抵当権を抹消するには、銀行が保有している書類が必要です。
引き渡しには住宅ローンを借りている銀行の担当者にも同席してもらう必要があるため、引き渡しの日時と場所が決まったら銀行の担当者に連絡することを覚えておきましょう。
1-7. マンションを引き渡す
売買契約を締結した後は、引き渡しに向けて手続きを進めます。
売買契約書に記載された引き渡し日までにマンションの鍵や管理規約・パンフレットなどの必要書類を用意し、引っ越しを完了させなくてはなりません。
引っ越しのタイミングは買い替えなのか単純な売却なのかによって大きく異なるため、不動産会社に事前に相談することをおすすめします。
1-8. 確定申告・納税する
マンションを引き渡す際に残代金の決済が行われますが、売却結果によっては確定申告・納税が必要となります。
確定申告・納税が必要なのは、マンションを売却したことで売却益が生じた場合です。売却益とは、売主から受け取った売却代金から取得費や諸経費などを差し引いてもプラスになっている状況です。
取得費や諸経費などを差し引いてマイナスになった場合は納税の対象となる課税譲渡所得が生じていないため、確定申告は必要ありません。しかし、他の所得との損益通算により税金を抑えられるケースもあるため、確定申告についても調べておくことをおすすめします。
確定申告が必要なケースでは、譲渡した年の翌年2月16日~3月15日までに確定申告を行います。確定申告の手順は以下の通りです。
1. 確定申告に必要な書類を用意する
2. 譲渡所得を算出する
3. 確定申告書を作成する
4. 所轄の税務署で確定申告を行う
確定申告は書類準備や手続きに時間と手間がかかるため、税理士に依頼する方も。しかし、税理士に依頼した場合、税理士報酬が発生するという点に注意が必要です。
2. マンション売却に必要な費用・税金
マンション売却には以下のような費用がかかります。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記費用
- 住宅ローン一括返済費用
- 譲渡所得に生じる税金(所得税・住民税・復興特別所得税)
仲介手数料とは、売買契約を成立させた不動産会社に対して支払う報酬です。宅地建物取引業法(国土交通省の告示)に仲介手数料の上限が定められており、取引額が400万円超の場合、「(売買価格×3%+6万円)+消費税」という速算式で算出できます。
印紙税とは、売買契約書に貼付して納める税金です。売買価格によって異なり、1,000円~6万円程度となります。
登記費用とは、抵当権抹消の登記にかかる費用です。抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。マンションは通常、土地1個、建物1個で構成されているため、2,000円となることが一般的となっています。司法書士手数料は1万円~2万円程度を想定しておくと良いでしょう。
住宅ローン一括返済費用とは、住宅ローンの残債の一括返済時にかかる繰上返済手数料です。金融機関によって異なりますが、1~3万円程度となります。
譲渡所得に生じる税金(所得税・住民税・復興特別所得税)とは、マンションの売却で売却益が発生した場合に納める税金です。譲渡所得に対する税率は、マンションを売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下だと39.63%、5年超だと20.315%となります。
仲介手数料はあくまでも上限なので、媒介契約を締結する際に金額を確認しておきましょう。
3. マンションを売る際の注意点
マンション売却の失敗を未然に防ぐには、売却の流れや費用・税金に関する知識を身に付けておくだけでは不十分です。以下の2つの注意点を押さえた上で売却に臨むことも重要です。
- 売却までの期間は半年を見積もっておく
- 買い替えの場合は売り先行か買い先行か決めておく
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
3-1. 売却までの期間は半年を見積もっておく
1つ目の注意点は、売却までの期間は半年を見積もっておくという点です。
不動産会社に売却を依頼すれば、1~2ヶ月程度で売買契約の締結に至ると考えている方も多いと思います。しかし、実際の売却までの期間は、購入希望者がなかなか見つからない、見つかっても手続きに時間がかかるため、半年程度の期間を要する傾向があります。
順調に売却活動が進めば2~3ヶ月程度で済みますが、売れない場合は要因が何かを不動産会社と相談し、対策を講じましょう。
3-2. 居住中の場合は売り先行か買い先行か決めておく
2つ目の注意点は、買い替えの場合は売り先行か買い先行か決めておくという点です。
売り先行とは、マンションを売却してから新居を購入するという方法です。住宅ローンが残っている物件を売る場合、買い替え時の経済的な負担が軽く、売り急ぐ必要がないので、自分の条件に合った購入希望者を見つけやすいというメリットがあります。一方、引き渡しまでに新居が見つからなければ、仮住まいが必要になるという点がデメリットです。
買い先行とは、新居を購入してからマンションを売却するという方法です。新居探しに十分時間を確保できるというメリットがあります。一方、売り急ぐことによって売却価格が安くなりやすい、売却に時間がかかって二重に発生する住宅ローンが負担となるという点がデメリットです。
買い替え時に経済的な負担を軽くしたい方は売り先行、経済的な負担に耐えることができ、新居選びに妥協したくないという方は買い先行が向いているでしょう。
4. マンションを売る際の失敗談
マンションを売る際にどのような失敗談があるのかを事前に把握しておけば、対策を練ってから売却に臨めるため、失敗を未然に防ぎやすくなります。
マンションを売る際のよくある失敗例として、以下の2つが挙げられます。
- 査定を1社にしか依頼しなかった
- 不動産会社を査定金額だけで選んでしまった
それぞれの失敗談を詳しく見ていきましょう。
4-1. 査定を1社にしか依頼しなかった
失敗談の1つ目は、査定を1社にしか依頼しなかったというケースです。
査定を依頼したのが1社だけの場合は、査定結果の妥当性が分かりません。妥当性が分からなければ、誤った売り出し価格を設定して売却活動に何らかの支障が生じる可能性があるという点に注意が必要です。
適切な売り出し価格を設定するためには、3~5社程度に査定を依頼することをおすすめします。複数の不動産会社に査定を依頼するのが面倒に感じる方は、一括査定サイトを利用すれば負担を軽減できるでしょう。
4-2. 不動産会社を査定金額だけで選んでしまった
失敗談の2つ目は、不動産会社を査定金額だけで選んでしまったというケースです。
複数の不動産会社に査定を依頼した場合は「一番査定金額が高い会社=高く売却できる」というイメージがあるため、査定金額の高い不動産会社に依頼しようと考える方も多いと思います。
しかし、不動産会社の中には、自社を指名してもらうために根拠のない高い査定結果を提示するところもあるので注意が必要です。
そのため、不動産会社を選ぶ際は、査定結果だけでなく、想定通りに売れなかった場合にどのような提案ができるのか、対応・修正などの能力が高いかどうかも確認しながら選びましょう。
5. まとめ
マンションを売却する際は、不動産の専門家である不動産会社に依頼するのが一般的です。「不動産会社はプロなので任せておけば安心」と思っている方も多いかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。
不動産会社の提示した査定金額の妥当性が分からずに売り出し価格を決めてしまった、営業力の低い不動産会社に依頼してしまったといったケースでは、安く売却して損をする、スムーズに購入希望者を見つけられない可能性があるので注意が必要です。
マンションの売却での失敗を未然に防ぐには、売却の流れと注意点を押さえた上で売却に臨むことが必要不可欠です。マンション売却を成功に導くためにも、記事に書かれているポイントをしっかり押さえてから売却に臨みましょう。
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不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者の代表取締役。
不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士の資格を保有。
大阪大学出身。
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