住みかえの手順|必要な費用・ローンの組み方、失敗しないための方法などを網羅的に解説

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転勤や家族構成の変化、築年数の経過などの様々な理由で検討することになるマイホームの住みかえ。

実際に住みかえを行おうと思っても、何から手を付けたら良いのか、どんなことに注意して住宅を選べば良いのかなど、分からないことがたくさんありますよね。

知識が不足した状態では、スムーズな住みかえができない、無駄な支出が増える可能性もあるため、必要な知識を身につけてから住みかえに臨むことが重要です。

この記事では、住みかえの方法や費用、ローンの組み方など、住みかえで失敗しないために必要な知識について解説します。

目次

1.住みかえとは

住みかえとは、現在の住居から新居に移転することを指します。住みかえは、次の3つのパターンが挙げられます。

①賃貸物件から賃貸物件に住みかえ
②賃貸物件から購入したマンション・一戸建てに住みかえ
③マイホームを売却して別のマンション・一戸建てに住みかえ(=買いかえ)

ここでは③の内容を解説します。

2.住みかえの理由ランキング

実際に住みかえを検討している人は、どのようなタイミング(目的)で住みかえを実行するのでしょうか?国土交通省住宅局が発表している「平成30年住生活総合調査結果」によると、今後5年以内に住みかえの意向を持つ世帯における「住みかえ目的のランキング」上位は次の通りです。

第1位:広さや部屋数(42.3%)
第2位:使いやすさの向上(31.9%)
第3位:新しさ・きれいさ(27.4%)
第4位:性能の向上(22.7%)

ランキングからは、出産や子供の独立による家族構成の変化によって住環境が合わなくなった、時代の変化で設備や機器が古くなったことなどが原因で住みかえを検討している人が多いと言えます。

現在の住居が高く売れるタイミングのほか、住環境を合わせる、利便性や住宅性能を向上させる必要が生じたときなども、住みかえにおすすめのタイミングと言えるでしょう。

※参考:国土交通省住宅局

3.住みかえのメリット・デメリット

築年数の経過や家族構成の変化によって間取りが合わなくなったといったケースでは、住みかえだけでなくリフォームや建て替えでも対応できます。

リフォームや建て替えと比べて、住みかえにはどのようなメリット・デメリットがあるのかくわしく見ていきましょう。

3-1. メリット

リフォームや建て替えをすると、費用を全額負担することになりますが、住みかえの場合には、売却代金で購入資金を賄える場合、自己資金の拠出を抑えることができます。

また、リフォームでは間取りを変えられたとしても、建物そのものの大きさは変わりません。建て替えでは土地の大きさはそのままなので、土地の広さに余裕がなければ建て替えられる建物の大きさの大幅な変更はできません。ですので、住みかえは、ライフステージの変化にあわせて、住居の大きさを変更できる、マンションや建売物件、土地を購入して物件を新築するなど柔軟に対応できるのがメリットと言えるでしょう。

3-2. デメリット

住みかえでは、売却代金で購入資金を賄える場合、自己資金の拠出を抑えることができますが、売却してローンを完済できるかどうか見込みが立ちにくいです。売却価格が低ければローンの残債が残ってしまう可能性があり、資金計画を立てにくい点に注意が必要です。

また、住みかえの場合、住み慣れた土地・住居を手放さなくてはならないことも忘れてはなりません。

住みかえのデメリットは、ほとんどが売却益に関するものです。売却益がでるならデメリットは小さくなるケースが多いため、タイミングを考慮しながら売却を進めることが重要です。

4.住みかえにおすすめのタイミング

住みかえのための売却益を少しでも増やすためには、築年数や相場など売却するタイミングが重要です。おすすめしたい具体的なタイミングは、次の2つが挙げられます。

  • 購入して13年経過している
  • 売却の相場が高いとき

なぜ、このタイミングがおすすめなのかくわしく見ていきましょう。

4-1. 購入して13年経過している

住宅ローンを契約して住居を購入した場合、所得税から住宅ローン控除を受けられます。控除の上限は購入から最長13年間となっていて、13年経過後は控除が受けられません。そのため、控除の恩恵を最大限に活かしたいのであれば、13年経過後に売却したほうが良いと言えます。

また、REINS TOWER(公益社団法人 東日本不動産流通機構)が発表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」を見てみると、中古マンション・中古戸建ともに築20年までは価格下落が緩やかであるものの、20年を超えると下落が大きくなる傾向にあります。

とくに木造の戸建住宅の場合、築20年を超えると減価償却によって建物の価値がほとんどなくなるので、土地の価値しか残りません。これらを踏まえて住宅ローン控除が受けられなくなるタイミングが住みかえを検討する1つのタイミングと言えるでしょう。

※参考:REINS

4-2. 売却の相場が高いとき

築年数に関係なく、売却価格の相場が購入時より高い場合も、住みかえにおすすめのタイミングと言えます。理由は、購入時よりも不動産成約価格の相場が上昇していれば、売却益を得られる可能性が上がるためです。

転勤や異動による生活圏(エリア)の変化をきっかけに購入を検討する人が増えることにより、相場が上昇している場合は、2~3月や8~9月などのタイミングを狙うのも選択肢の1つと言えます。

相場は景気と連動していて、景気が悪いと相場が下がり、景気が良いと相場が上がるのが一般的です。例えば、2007~2008年は相場が上昇に転じましたが、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などのタイミングで相場が大幅に下落しました。

今回のコロナショックも同様ですが、いくら不動産のプロでも完全に相場の変動を予想することは困難です。最適なタイミングを逃さないためにも、景気と相場は不動産無料査定などを利用し常に確認しておきましょう。

5. 住みかえで必要なこと

住みかえで必要なことは、大きく「現在の住居の売却」と「新居の購入」の2つに分けられます。

それぞれの流れについてくわしく見ていきましょう。

5-1. 家売却

現在の住居の売却は、次の8つのステップで完了します。

①売却相談
②査定・物件の確認・調査
③媒介契約
④売却活動の準備
⑤売却活動
⑥購入申込み~売買契約の締結
⑦売買契約後の手続き
⑧残代金決済・引渡し

各ステップの詳細は、野村不動産ソリューションズの「不動産売却の流れ」をご参考ください。

5-2. 家購入

新居の購入は、次の8つのステップで完了します。

①購入計画・情報収集
②購入相談
③資金計画
④物件紹介・現地見学
⑤購入申込み~売買契約の締結
⑥ご契約後の住宅ローンの申込み手続き
⑦残代金決済・引渡し
⑧引越し・入居

各ステップの詳細は、野村不動産ソリューションズの「不動産購入ガイド」をご参考ください。

5-3. 賃貸

賃貸物件から住みかえをするなら、早めに大家へ賃貸借契約の解約を申し出る必要があります。

また住みかえを検討するとき、賃貸を利用する方もおられます。
住みかえ先の物件を購入する予算が足りないときや、売り先行で移転先の物件購入が間に合わなかった場合などに賃貸物件へ入居するのです。
仮住まいの賃貸物件に入居しつつ、良い新居を探そうとする方も少なくありません。

賃貸物件に入居すると引越し費用や賃料がかかってしまいますが、条件の変化に合わせて頻繁に住みかえを行うことが可能となるメリットがあります。

6. 住みかえを進める主な2つの手順

住みかえの方法は次の2つに大きく分かれます。

  • 買い先行:新居を購入してから自宅を売却する
  • 売り先行:自宅を売却してから新居を購入する

各方法がどのような人におすすめなのか、メリット・デメリットなどをくわしく見ていきましょう。

6-1. 買い先行

買い先行とは、新居を購入してから自宅を売却することです。

買い先行は、新居を確保した状態で自宅の売却に臨むので、仮住まいを確保せずに済みます。一方、売却代金を手にする前に新居を購入するので、自己資金が必要になります。

そのため、買い先行は仮住まいしたくない人や自己資金に余裕がある人におすすめです。

方法

買い先行の流れは次の通りです。

①新居探しを開始する
②新居の購入・契約をする
③決済・入居する
④現在の住居の売買契約・決済・引渡しまでを行う

新居に住める環境を整えてから現在の住居の売却に取り掛かります。

メリット

買い先行では、自宅の売却よりも新居の購入が優先するため、新居選びにゆっくり時間をかけられます。

新居を確保した状態で売却に臨むため、仮住まいを確保せずに済み、コストを抑えられるのもメリットです。また空き家の状態で自宅を売り出せます。

デメリット

住みかえには購入資金を売却代金で賄えるメリットがありましたが、買い先行では購入後に売却に臨むことになるため、そのメリットを活かせません。

自己資金が少ない場合は余裕を持って購入に臨めないため、資金計画が立てにくい、二重ローンになる可能性があるなどのデメリットが挙げられます。資金繰りが難しい場合はつなぎ融資を利用するという選択肢もありますが、事前に利用できるかどうか確認してから購入に臨む必要があるでしょう。

6-2. 売り先行

売り先行とは、自宅を売却してから新居を購入することです。

売り先行は、売却に時間をかけられるので希望の売却価格に近づかせやすいメリットがあり、売却代金を得た状態で新居の購入に臨めるので資金計画を立てやすくなります。

そのため、売り先行は自己資金での購入が難しい場合や少しでも自宅を高く売りたい人におすすめです。

方法

売り先行の流れは次の通りです。

①現在の住居を売却・引渡し・退去する
②新居が見つかるまでの仮住まいを探して契約し、生活する
③新居の購入・契約・決済・入居する
④仮住まいを退去する

買い先行との大きな違いは、自宅売却と新居購入との間に仮住まいを探す必要がある点です。

メリット

売り先行では新居の購入よりも現在の住居の売却を優先するため、自己資金を確定させてから新居の購入に臨めます。また、売り急ぐ必要がないため、希望に近い価格で自宅を売却しやすいのもメリットです。

とくにローンの残債が残っているケースでは、売却代金で残債を精算してから購入計画を立てられるため、頭金やローンの借入額などの予算を決めやすくなるでしょう。

デメリット

売り先行の場合、引渡しまでに新居を確保できなければ一時的に仮住まいを確保しなくてはなりません。

仮住まいの確保をしたうえ、自宅から仮住まい、仮住まいから新居に引越しを2度行うので、その分の手間と費用がかかります。また、自宅に住みながら売却に臨むため、部屋の片付けが随時必要、自宅の現地見学に加え、住みかえ先の見学スケジュールの調整等が面倒といった点もデメリットと言えるでしょう。

6-3. 売り先行

買い先行と売り先行について、それぞれおすすめするタイプは次のような人です。

  • 買い先行:自己資金に余裕がある人や仮住まいをしたくない人
  • 売り先行:自宅を少しでも高く売りたい人や自己資金を確定させてから購入したい

どちらを選ぶべきか悩んでいる人は、上記を参考にしながら自分に合った方法を選んでみてください。

7. 住みかえにかかる費用

住みかえをスムーズに行うためには、住みかえにどのくらいの費用がかかるのかを事前に把握しておくことも重要です。

住みかえにかかる費用は「家購入時にかかる費用」「家売却時にかかる費用」の2つに大きく分かれます。それぞれの費用の内容をくわしく見ていきましょう。

7-1. 家購入時にかかる費用

家購入にかかる費用をまとめると次の通りです。

概要相場
住宅購入費 概要新居の購入費用 相場実費
仲介手数料 概要不動産仲介会社に支払う報酬 相場物件価格×3%+6万円+消費税
収入印紙 概要売買契約書や住宅ローン契約書に貼付する印紙代 相場売買契約書:1~3万円程度
ローン契約書:2~6万円程度
ローンにかかる経費 概要住宅ローンの契約に必要な費用(融資事務手数料やローン保証料) 相場借入金額100万円あたり、2万円前後(金融機関による)
所有権移転登記費用 概要不動産の所有権移転登記にかかる費用 相場登録免許税(固定資産税評価額×0.1~2.0%)+司法書士への手数料
抵当権設定登記費用 概要抵当権の設定登記にかかる費用 相場登録免許税(借入額×0.1~0.4%)+司法書士への手数料
不動産取得税 概要不動産取得にかかる税金 相場固定資産税評価額×3~4%
保険料 概要火災保険や地震保険の加入費用 相場20~60万円
引越し費用 概要引越しにかかる費用 相場10~30万円程度
その他 概要固定資産税、都市計画税、管理費などの日割 相場実費

※抵当権設定登記費用にかかる登録免許税の税率は、軽減税率実施中のため流動的です。

購入価格の5~10%程度が住宅購入費とは別にかかると想定しておきましょう。

7-2. 家売却にかかる費用

家売却にかかる費用をまとめると次の通りです。

概要相場
仲介手数料 概要不動産仲介会社に支払う報酬 相場物件価格×3%+6万円+消費税
譲渡所得税と住民税※ 概要売却益に対してかかる税金 相場譲渡所得×39.63%(短期)
譲渡所得×20.315%(長期)
抵当権抹消登記費用 概要抵当権の抹消にかかる費用 相場登録免許税2,000円程度(土地1筆、建物1筆の場合)+司法書士への手数料
ローンにかかる経費 概要住宅ローンの契約に必要な費用(融資事務手数料やローン保証料) 相場借入金額100万円あたり、2万円前後(金融機関による)
所有権移転登記費用 概要不動産の所有権移転登記にかかる費用 相場登録免許税(固定資産税評価額×0.1~2.0%)+司法書士への手数料
収入印紙 概要売買契約書に貼付する印紙代 相場1~3万円程度
引越し費用 概要引越しにかかる費用 相場10~30万円程度
その他 概要住宅ローン一括返済費用 相場実費

※建物の所有期間が5年以下の場合は短期、5年超の場合は長期

家購入よりかかる費用は少ないものの、それでも売却価格の4~6%程度かかると想定しておきましょう。

8. 住みかえ費用を抑えるコツ

住みかえにかかる費用を抑えるには、以下のような対応を検討してみてください。

相場を知り、適正~チャレンジ価格で、適切な時間をかけて売却
費用がかさむケースは、売却価格が相場と比べ高い価格で、ずっと売りにだしているという状況で発生やすくなります。希望価額で売却を実現しやすくするには、まず周辺相場の把握からはじめ、不動産仲介会社と相談しながら売出~契約までのスケジュールを計画しておくことが大切です。 そうすることで高値売却が見込め、買いかえ先の費用を払いやすくなります。

引越し費用は安く抑える
引越し費用はシーズンや業者によって大きく異なります。安いシーズンを狙って複数業者から見積もりをとり、なるべく安い業者を選ぶと費用を抑えやすくなります。

税金控除を適用する
住みかえにはさまざまな税金の控除制度が適用されます。 気づかなければ恩恵を受けられないので、適用される特例はすべて適用しましょう。 また所有期間が5年を超えると譲渡所得税率が下がるので、例えば4年半所有している方などは、半年、売却時期をずらすとそれだけで節税が可能となります。

9. 住みかえに利用できる税金控除

現在の住まいがせっかく高く売れても、譲渡所得税を徴収された場合、新居の購入に充てられる資金が減ってしまいます。しかし、次のような控除制度をうまく利用すれば、税額を減らす効果が期待できます。

  • 3,000万円特別控除
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 買換え特例
  • 譲渡損失の損益通算
  • 住宅ローン控除

各控除制度の詳細を見ていきましょう。

9-1. 3,000万円特別控除

3,000万円特別控除とは、譲渡所得が3,000万円までであれば、譲渡所得税が課されずに済むという特例です。次の条件を満たしていれば、控除を受けられます。

  • 自分が住んでいる自宅を売却する(仮住まいや別荘は含まない)
  • 自分が住まなくなってから3年後の12月31日までに売る※
  • 売った年の前年や前々年に同じ控除、譲渡損失の損益通算、繰り越し控除の特例を利用していない
  • 売った年、その前年や前々年に買いかえや交換の特例を利用していない
  • 住宅ローン控除の適用を受けていない
  • 売却相手が自身の親族や直系血族、配偶者といった身内など特別な関係者ではない

※2021年3月に住まなくなった場合、2024年12月31日までに売る

ただしすべての条件を満たしても、自動的に適用されるわけではありません。適用を受けるためには、必要書類を添えての確定申告が必須なので、忘れないように注意しましょう。

9-2. 10年超所有軽減税率の特例

10年超所有軽減税率の特例とは、売却した不動産の所有期間が10年を超えている場合に税率が軽くなる特例です。譲渡所得に対してかかる税金(所得税・住民税)が6,000万円以下の部分の場合、税率は14.21%、6,000万円超の部分の場合、税率は20.315%に軽減されます。

※これらの税率には現在、復興特別所得税(2013年から2037年まで)として所得税における2.1%相当が上乗せとなっています。

次の条件を満たしていれば、特例が適用されます。

  • 自分が住んでいる自宅を売却する(仮住まいや別荘は含まない)
  • 自分が住まなくなってから3年後の12月31日までに売る※
  • 売った年の前年や前々年にこの特例を利用していない
  • 買いかえや交換の特例など他の特例を利用していない(ただし、3,000万円特別控除とこの特例は併せて利用する事が可能)
  • 売却相手が自身の親族や直系血族、配偶者などの身内など特別な関係者ではない
  • 住宅ローン控除の適用を受けていない
  • 売却した年の1月1日時点で家屋と土地の所有期間がともに10年超

※2021年3月に住まなくなった場合、2024年12月31日までに売る

所有期間は「不動産を売却した年の1月1日」が基準となります。見た目上は「10年」を達成しているようでも実際には達成できていないケースもあるので注意が必要です。 こちらも必要書類を添えての確定申告が必須です。

9-3. 買換え特例

買換え特例とは、特定の居住用不動産を2021年12月31日までに売却し、一定の要件を満たしている新居に買いかえた場合、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられる特例です。

次の条件を満たしていれば、特例が適用されます。

  • 売却代金が1億円以下である
  • 家屋とともに敷地や借地権も一緒に売る
  • 仮住まいや別荘などの一時的な住まいではなく、自分が住んでいる不動産である
  • 売却した不動産と買いかえた不動産は日本国内にあるものである
  • 売った年の前年や前々年に同じ特例を利用していない
  • 売った年の前年や前々年に3,000万円特別控除、10年超所有軽減税率の特例を利用していない
  • 売却相手が親族や直系血族、配偶者などの身内など特別な関係者ではない
  • 売却した年の1月1日時点で家屋と土地の所有期間がともに10年超
  • 不動産を売った年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に新居を買いかえる
  • 買いかえた新居には、取得した年の翌年12月31日までに居住する
  • 中古不動産の場合は、新築後25年以内であるか、一定の耐震基準を満たしている
  • 住宅ローン控除の適用を受けていない
  • 買いかえる建物の床面積が50m2以上、土地の面積が500m2以下である

自宅の売却価格が新居の購入価格よりも低い場合、売却したタイミングでは課税されません。将来家を売却するときまで課税が繰り延べられます。売却価格が購入価格を上回る場合は、①:「売却価格-購入価格=収入金額」、②:「収入金額-(自宅の取得費用+譲渡費用)×(収入金額÷売却価格)」で算出した譲渡所得(①-②)に対して税率をかけて、譲渡所得税が課されます。
こちらも必要書類を添えての確定申告が必要です。

9-4. 譲渡損失の損益通算、繰越控除

譲渡損失の損益通算とは、自宅を2021年12月31日までに売却し、新居を購入するにあたって譲渡損失が生じた場合に、その年の他の所得と損益通算をすることができる制度です。
繰越控除は、1年で損益通算できない場合に翌年以降3年間繰り越せる特例です。

次の条件を満たしていれば、損益通算や繰越控除の特例が適用されます

  • 仮住まいや別荘などの一時的な住まいではなく、自分が住んでいる不動産である
  • 譲渡する年の1月1日における所有期間が5年を超える資産で、日本国内にあるものの譲渡である
  • 以前住んでいた家屋の場合は、住まなくなってから3年後の12月31日までに売る
  • 不動産を売った年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に新居を買いかえる
  • 買いかえた新居には、取得した年の翌年12月31日までに居住する
  • 買いかえる建物の床面積が50m2以上、土地の面積が500m2以下である
  • 新居を所得した年の12月31日において、償還期間10年以上の住宅ローンを有する
  • 売った年の前年や前々年に同じ控除、その他の控除・特例を利用していない
  • 売却相手が親族や直系血族、配偶者などの身内など特別な関係者ではない

こちらも必要書類を添えての確定申告が必須です。

源泉徴収されている会社員の方等の場合、損益通算や繰越控除を適用すると所得税の還付を受けられます。売却して赤字になった方は必ず申告しましょう。

9-5. 譲渡損失の損益通算、繰越控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンを契約して新居を取得する場合に、一定要件を満たせば所得税の控除が受けられる特例です。

次の条件を満たしていれば、控除を受けられます。

  • 住宅の引渡しから6ヶ月以内に居住し、適用を受ける年の12月31日まで引き続いて住んでいる
  • 合計所得金額が2,000万円以下
  • 住宅の床面積が40m2以上、床面積の2分の1以上が居住用
  • ローンの契約期間が10年以上
  • 居住の用に供した年とその前2年・後3年の計6年間に他の特例・控除を受けていない※

※譲渡が2020年3月31日以前だと、居住の用に供した年とその前後2年ずつの計5年

こちらも確定申告が必要です。居住の用に供した年によって、控除期間や控除限度額などが異なります(現在の控除期間は13年、限度額は21万円)。住宅ローン控除を受けたい場合は、譲渡損失の損益通算は併用できるものの、その他の特例・控除は併用できないので注意しましょう。

10. ローン残債があるなら住みかえローンやつなぎ融資を検討しましょう

ローン残債がある場合は、「住みかえローン」や「つなぎ融資」を利用すれば、負担を軽減できる可能性があり、返済に余裕が生まれます。住みかえローンとつなぎ融資の特徴を簡単にまとめると次の通りです。

  • 住みかえローン:新居購入とローン完済に必要な融資
  • つなぎ融資:一時的な資金不足を補うための短期融資

それぞれの違いについてくわしく見ていきましょう。

10-1. 住みかえローン

住みかえローンとは、自宅を売却してローン残債の完済に充てようとしたものの、売却価格が安く、残債の返済が残ってしまうようなケースで利用するローンです。

金融機関に申し込み、残債の返済に必要な資金と新居の購入に必要な資金の両方を合算した金額の融資を受けます。前の住宅ローンは完済して新しい住みかえローンに一本化します。

金融機関によっては「買換えローン」という名称を使用している場合もあります。

住みかえローンの利用手順

住みかえローンは、自宅の売却と新居の購入を両方行う必要があります。

住みかえには、買い先行と売り先行の2つの方法がありましたが、どちらを選んでも問題ありません。

ただし住みかえローンを利用する場合は、売却日と購入日の決済日を揃えなくてはならない点に注意が必要です。

住みかえローンの利用手順<

住みかえローンは、自己資金が足りなくても住みかえられるのが魅力です。しかし、現居の残債が残っている場合、通常の住宅ローンの金利が1%程度やそれ以下であるのに対し、住みかえローンは2~3%と高くなるケースがあり、返済負担が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。事前に金利を確認しましょう。

また借入金額が大きくなるため審査が厳しくなり、簡単には借りられない可能性があることを理解しておきましょう。

10-2. つなぎ融資

つなぎ融資とは、新居の購入に自宅の売却代金を充てようとしていたものの、新居の購入までに自宅を売却できず、一時的に資金不足に陥ってしまうようなケースで利用するローンです。

返済期間が1ヶ月~1年以内の比較的短期の融資で、自宅を売却して売却代金が手に入ると同時に融資を完済させます。

つなぎ融資の利用手順

つなぎ融資を利用するタイミングは住みかえにかかる費用を支払わねばならないときです。例えば、土地を購入する(土地代金)、建築会社が工事に着手する(着手金・着工金)、上棟金(中間金)などの費用を支払うとき、資金が不足すれば利用しましょう。

つなぎ融資を利用する際は、住宅ローンの申込と同様で、金融機関に申請します。審査に時間がかかる可能性があるため、逆算して申し込みましょう。

つなぎ融資の注意点

つなぎ融資には利用回数や金額に制限があります。また、つなぎ融資は住宅ローンより金利が割高で、印紙代や事務手数料などの諸費用もかかるので注意が必要です。

つなぎ融資を申請する際は、住宅ローンを申し込んだ金融機関に一緒に申し込む必要があることも覚えておきましょう。

野村不動産ソリューションズでもつなぎ融資のサービスを紹介しています。

11. 住みかえにはダブルローンもできる

ダブルローンとは、自宅を購入する際に契約した住宅ローンを残した状態で、新居も住宅ローンを新規に契約して購入する方法です。

ダブルローンはメリットだけでなくデメリットも伴うため、双方をしっかり理解した上で選択することが重要です。ダブルローンのメリットとデメリットをくわしく見ていきましょう。

11-1. ダブルローンのメリット

現居の住宅ローンを解消するためには、売り先行によって得た売却代金や住みかえローン、差額分を現金などで残債の一括返済を行う必要があります。しかし、ダブルローンであれば、売却活動と購入活動を並行して行える、買い先行を選択することも可能です。

買い先行の場合、自宅が売れるまで時間がかかっても仮住まいを確保する必要がなく、空き家の状態で内覧を進められるため、住みかえをスムーズに行いやすいでしょう。

11-2. ダブルローンのデメリット

ダブルローンは借入金額が多くなるため、ローンの審査が厳しくなります。
また同時に2つのローンを返済しなければならないので、家計負担が非常に大きくなってしまいます。
また現居の売却金で、現居の残債を全額返済できない場合、足りない分は預貯金をもって完済しなければならないなど完済条件が付くことがほとんどです。
そのため、ダブルローンは支払いに余裕がある場合のみ選択したほうが良いと言えるでしょう。

12. 住みかえ先物件を選ぶポイント

住みかえ先の物件選びを誤った場合、住みかえの目的を達成できない、次に住みかえる際に売却損が生じる可能性があるので注意が必要です。
そのため、住みかえ先の物件を選ぶ際は、次の4つのポイントを押さえながら物件を選ぶことが重要です。

  • 資産価値の落ちにくい物件を選ぶ
  • 中古物件の場合は少しでも取得価格を抑える
  • 新築物件の場合は立地条件を考慮する
  • 予算が足りなければ賃貸住宅も選択肢に含める

各ポイントについてくわしく見ていきましょう。

12-1. 資産価値が落ちにくい物件を選ぶ

再度住みかえることを想定した場合、次のような資産価値の落ちにくい物件を選ぶことが重要です。

  • 駅からの距離が近い
  • 築年数が浅い
  • 最新・利便性の高い設備が設置されている
  • 安全性が高い(災害面・防犯面)

これらの条件を備える物件は初期費用が高くなりがちですが、資産価値が落ちても下落幅が小さいため、将来住みかえる際に損をしにくいと言えます。

12-2. 中古物件のメリット・デメリット

住みかえ先の物件として中古物件を選ぶメリットとデメリットは次の通りです。

【メリット】

  • 価格が割安のものを見つけやすい
  • 物件数が多く、選択肢が豊富
  • リフォームできる※

※マンションは共用部分の他、専有部分であっても建築基準法に違反するものは制限される

【デメリット】

  • 維持費や修繕費が高いものがある
  • 耐震性が低い可能性がある
  • 耐震性が低い可能性がある

中古物件は価格が割安なので購入費用を抑えられるうえ、物件の選択肢が豊富なので条件の良い物件が手に入りやすいです。一方、購入後の支出が多く、資産価値が下がりやすい点に注意が必要です。

そのため中古物件を選ぶ際は、売却損を抑える、または購入後の支出に充てるために、少しでも割安な物件を選ぶほか、資産価値が落ちにくい条件が揃っているか確認しましょう。

12-3. 新築物件のメリット・デメリット

住みかえ先の物件として新築物件を選ぶメリットとデメリットは次の通りです。

【メリット】

  • 新築~築浅のタイミングは修繕すべき箇所が少ないため、ランニングコストが少ない
  • 設備の保証期間が長い
  • 最新設備が導入されている

【デメリット】

  • 初期費用が高い
  • 物件数が少なく、選択肢が限られる
  • 資産価値の下落幅が大きい可能性がある

新築物件は中古マンションと比べ当然築年経過によるランニングコストがかかりにくいメリットがあります。マンションでも最新設備が導入されているものがあり、ワンランク上の生活を満喫しやすいでしょう。一方、初期費用が高く、中には購入後の価格下落幅が大きい物件がある点に注意が必要です。

そのため、新築物件を選ぶ際でも中古物件と同様に人気エリア、再開発が予定されている、駅から近い、安全性が高いなどの資産価値の落ちにくい物件を選ぶことが重要と言えるでしょう。

13. 住みかえで失敗しないための注意点

住みかえでの失敗を未然に防ぐには、次の5つの点を押さえておくことが重要です。

  • 住宅ローンの仮審査は事前にしておく
  • 住みかえローンのシミュレーションをしておく
  • 万が一希望通りの売却ができなかった場合の保証を付けておく
  • 売却時は不動産仲介会社を比較するべき
  • 住みかえ先を十分に確認する

各注意点についてくわしく見ていきましょう。

13-1. 住宅ローンの仮審査は事前にしておく

新居を購入する際は住宅ローンを利用するケースが多いですが、審査に必ず通るとは限りません。審査に通らなければ、せっかく気に入った物件を買いそびれてしまいます。中でも団体信用生命保険への加入が認められず非承認となるケースは比較的多く、健康上不安がある場合などは審査前に営業担当者や銀行のローン審査担当に伝えておくほうが良いでしょう。
住宅ローンの仮審査を事前に済ませておけば、このようなトラブルが起きる可能性を下げられるため、必ず仮審査を事前に済ませておきましょう。

13-2. 住みかえローンのシミュレーションをしておく

住みかえローンを利用する場合、借入総額が増えることによって返済負担が大きくなるため、無理のない返済計画を立てられているかシミュレーションで確認することが重要です。月々の返済額はいくらなのか、返済期間は何年になるのかを細かく調べ、無理がないかどうかを確認します。

専門家のアドバイスが欲しい人は不動産仲介会社のファイナンシャルプランナーに相談すれば、自分のライフプランに合わせた設計を立ててくれるため、返済計画に支障が生じるリスクを抑えられるでしょう。

13-3. 買い取り保証を付ける

買い取り保証とは、所定の期日までに売れなかった場合など、希望通りの売却ができなかった場合、媒介契約を締結している不動産仲介会社等が、予め決められた条件で不動産を買い取り、住みかえをサポートしてくれるサービスです。

このサービスを利用すれば、万が一買い手が見つからなかったとしても、予め決まっている条件で取引ができますので、資金計画も立てやすくなります。
ただし買い取り金額は相場の7~8割前後となるのが一般的です。

また物件や不動産仲介会社によってはこのようなサービスを提供しているとは限らないため、サービスがあるかどうかを確認し、利用したほうが良いのかをよく考えてから利用しましょう。

野村不動産ソリューションズでも買取保証サービスを用意しています。

13-4. 売却時は不動産仲介会社を比較するべき

自宅を売却する際は、不動産仲介会社に査定を依頼しますが、不動産仲介会社ごとに営業力や査定で重視するものが異なるため、査定結果に差が生じます。

査定結果は売却価格にも影響を与えるため、売却後に後悔しないためにも、2~3社の不動産仲介会社に査定を依頼することをおすすめします。

査定結果が一番高い不動産仲介会社を選ぶのではなく、適正な価格で査定した金額の根拠を明確に説明できるのか、信頼できる担当者なのかを踏まえながら選びましょう。

13-5. 住みかえ先を十分に確認する

住みかえ先を選ぶ際は、物件価格だけで決めてはいけません。居住を開始してから後悔しないかどうか、将来の住みかえを見据えながら物件を選ぶことが重要です。

確認する主なポイントは、立地条件や築年数、地域環境などです。これらを確認することで、利便性の良し悪しや、耐震性が高いかどうかが分かるため、契約してから後悔するリスクを軽減できるでしょう。

駅近など立地が良いところか

生活しやすいか、資産価値が下落しにくいかを考慮した場合、住みかえ先は駅から徒歩10分圏内であることが1つの目安と言えます。

住みかえ先は駅から少しでも近いに越したことはありませんが、駅に近ければ初期費用が高くなるため、資金にどのくらいの余裕があるのかを踏まえたうえで物件を選びましょう。

同好会やサークルがあるか

地域によっては同好会やサークルなどのコミュニティを築く環境が整っているケースもあります。人付き合いが苦手という人もいるかもしれません。しかし、地域のつながりの強さは防犯性の高さと結びつきやすく、安心して暮らせる環境が整っていると言えます。

都市部は利便性という点では優れていますが、隣近所との関係が希薄になりがちで、空き巣被害に遭うリスクが高い場合もあります。老後を見据えた場合、利便性の高さも重要ですが、コミュニティを築く環境が整った地域のほうが安心して暮らせるでしょう。

14. 住みかえする際の不動産仲介会社の選び方

売却の仲介を依頼する不動産仲介会社は4~6社を比較したうえで決定しましょう。その際、判断材料になるのが以下です。免許番号の更新回数を調べる

14-1. 免許番号の更新回数を調べる

不動産売却の仲介は、宅地建物取引業法の規制によって、免許を受けた者しか行うことができません。免許番号を確認すれば、免許を受けているかどうかだけでなく、5年ごとの更新をこれまでに何回行ったか分かります。

更新回数の多い不動産仲介会社は、経験・ノウハウが豊富な不動産仲介会社なので、安心して依頼できます。

基本的には営業実績の高い不動産仲介会社を選択するのがおすすめです。

しかし、更新回数の少ない不動産仲介会社でも、ITを積極的に取り入れるなど他の不動産仲介会社と差別化を図っている場合もあるため、総合的に判断することが重要と言えるでしょう。

15. まとめ

一生住むつもりで持ち家を取得しても、転勤や家族構成の変化、築年数の経過などによって、住環境の見直しが求められることがあります。

そうなった場合の選択肢の1つとして住みかえがありますが、正しい知識を身に付けないまま住みかえを進めようとした場合、無駄な支出が増える、売却損が生じる可能性があるので注意が必要です。

この記事では、住みかえの方法や必要な費用、ローンの組み方など住みかえの失敗を未然に防ぐために必要な知識を網羅して紹介しました。

自分だけで解決しようとするのではなく、信頼できる不動産仲介会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するほか、将来の住みかえを視野に入れながら物件を選ぶことが住みかえを成功に導く近道と言えるでしょう。

小泉 寿洋

小泉 寿洋

住まいの終活・相続アドバイザー/賃貸経営コンサルタント
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・2級FP技能士・AFP。一部上場グループに所属する管理会社で賃貸仲介、賃貸管理部門で社員から管理職まで約14年半経験。その後、空室対策・不動産・リノベーション工事の会社を仲間と立ち上げ、現在は賃貸経営や終活に関してのコンサルティング・不動産関連のライターを担っている。

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