マンションの資産価値は?評価額と相続税額の計算方法

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皆さんはかつて「住宅すごろく」という言葉があったのをご存知ですか?
それは人が就職し、結婚し、家族が増えるなどライフスタイルの変化につれ、家をアパートから、マンション、一戸建てに替えていくことを、「すごろく」というゲームに例えた言葉です。
そこでは結婚してたくさんの子供を持ち、「郊外の一戸建て」を買うことが最終ゴールとされ、より若い年でゴールに達成できる人がゲームの勝者と考えられていました。

このゲームでは、マンションとは家族がまだ少ない新婚さんなどの若い世帯に適した住宅と考えられ、人生における通過点であって、最後に住む家とは考えられていませんでした。
しかし近年では、家族は少数なのがむしろ一般的で、郊外の戸建住宅を売って都心のマンションに終の住処を求めるアクティブシニアなども増え、すごろくのゴールが人それぞれとなったことから、今やすっかりこの言葉が使われることはなくなりました。

現在のようにマンションが終の住処となることが増えれば、「実家」はマンションの1室となり、親の資産をマンションで引き継ぐことや、自分自身が子供に残す資産がマンションである可能性が高まります。
そこで今回はマンションの資産価値に影響を与えるものは何か、また相続税上どのように評価をされるかなどを考えたいと思います。

目次

1. 値下がりしにくい、マンションの資産価値に影響する要素

一口にマンションといってもその資産価値はさまざまさまざまですが、その違いはどこから生じるのでしょうか?一般的に価値の高いといわれるマンションには以下のような特徴あります。

1-1. 人気のエリアにある

東京で例をあげれば、青山や赤坂や麻布などの街自体がブランド化しているエリアにあるマンションはそれだけで資産価値が高いと言えます。また豊洲など再開発でエリア全体が活性化しるエリアのマンションも年々価値が上がる傾向にあります。これらのエリアは交通アクセスも良く、商業施設も充実しており、さらに緑や公園などの公共施設が充実していることが特徴です。

1-2. 景観や日当たりがよい

同じエリアでも住環境が悪ければ資産価値が下がってしまうので、景観や日当たりも大事です。「眺望」に優れたマンションは、資産価値が下がりにくいといえます。

1-3. 維持管理の状態がよい

郵便ポストがきれいに整頓され、共用廊下などの清掃が行き届き、ゴミの処理も適切に行われているマンションは管理がいいことに加え住民の意識も高くなります。結果として、建物の汚れや外壁の劣化、設備の不良に対しても適切な対応をするための管理組合が十分に機能し、適切な修繕積立金によって計画的に修繕がされていると思います。「マンションは管理を買え」といわれますが、特に中古マンションの資産価値に管理は大きな影響を与えます。

1-4. 新築時の売主

マンションも不動産会社が作る“商品”なので、どの会社で作られ、販売されるブランドかによって値段が変わります。人気ブランドのマンションであれば、特に中古で販売する場合に、その安心感から値崩れしにくく、資産価値を維持できることがあります。
ブランドが同じマンションであれば、外装や室内装飾、設備などで一定の社内基準をクリアしているので、この安心感から資産価値が高くなると考えられます。

1-5. 築年数や耐用年数

もちろん同程度の立地とスペックのマンションであれば、新しい建物のほうが市場価値は高いです。しかし、多少古くても行き届いた管理がされ、デザインも希少性があるようなマンションであれば将来にわたっても安定的な資産価値を保つといえます。
また、マンションで採用される鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年ですが、これは税法上で定めた年数であり、実際の耐用年数は個々に違います。
一方、1981年より以前に建築された建物は、建物の耐震基準そのものが現行の基準と異なります。1年の違いが資産価値や安全性の大きな違いにつながる可能性があることに注意しましょう。

2. マンションの評価額はどのように決まる?

マンションの値段を調べようとすると今ではさまざまな比較サイトがあり、場所や面積を入力するだけで査定できてしまいますが、それがどのように計算されて算出されるかご存知でしょうか?ここでは相続における評価と売買における評価の違いについて説明します。

2-1. 相続における評価方法

マンションと戸建住宅は異なる形態の建物ですが、税務上は全く同様に土地と建物に分けて評価し、その額を合算して評価額を決めます。

土地の求め方は、マンションが存在する敷地全体の土地価格に対し、敷地権の割合を乗じて求められます。注意すべき点は、例えば自分の住んでいる棟は広い道路に接面していて、別の棟は狭い道路に接面していても、棟ごとの個別性は考えず、あくまでも全体の土地で考えるという点です。
そしてこの敷地権の割合は共用部分も含んでいるので、建物の専有面積の割合より大きくなることが一般的です。

一方、建物については、すでに固定資産税上の評価額が出ていますので、これをそのまま採用し、土地価格に加えれば算出できます。
そして相続税上では、マンションを人に貸している状態、すなわち借家権の設定がしてあると所有者が自由に使えないため価値が下がるという考え方を取っており、土地と建物の評価額が下がるという特徴を持っています。

2-2. 売買や不動産鑑定における評価方法

売買では土地と建物を分けて考えず、一体として考え、どちらかというと建物の専有面積を基準にその価値判断がされます。
従って土地の持ち分が大きいことより、建物の専有面積が大きい方が市場価値は高くなり、その建物も築年や構造以外の景観とかデザインとか住民の質など定量化できない定性的な要因が強く作用し、その価値が決まることが多いと思います。
さらに不動産鑑定では、人に貸した場合に得られる収益性や投資採算性の観点からもその価値を判断します。いわゆる売買事例から判断する「比準価格」以外に「収益価格」も算出するのです。その時に法人契約など賃貸人の質が高く、収益が安定している物件は、むしろ貸していることで価値が高いと判断されることがあります。

以上のように一口に評価といっても相続と売買ではその目的が違うため着眼点が違い、評価額が一致することはありません。そしてその評価額が上がる要因も下がる要因も異なっていることに注意する必要があります。

3. マンションの相続で知っておきたいポイントとは?

相続税上の評価では眺望や景観が影響しないので、高層階であればあるほど税務上の評価と市場価値の乖離が生じる節税効果があり、そのため一時期は富裕層が高層階から買っていく「タワマン節税」が大いに流行しました。
しかし平成29年(2017年)度の税制改正により、タワーマンションの固定資産税の課税評価額が変更になり、高さ60メートル超、おおよそ20階建て以上の物件であれば、高層階ほど家屋の固定資産税額を高くする制度が導入されました。

この制度では、例えば50階建てのタワーマンションなら、25階の中間階では従来と変わりませんが、50階なら1割ほど評価が上がり、逆に1階なら1割ほど評価が下がる試算になるようです。
従って、現在では、相続上の負担を減らしたいならば評価額が低くなった低層階のほうが有利であると言えます。

ただし、この制度の適応の対象になるのが「2018年以降に引き渡された新築物件」というごく一部に限られているため、市場価値での変化には至っていません。しかし、今後の相続ではこの築年の違いが評価額の違いになることに注意しなければなりません。
以上はタワマンの例ですが、どんなマンションであろうと税法の改正は相続に大きく影響するので、その動向に注意する必要があります。

4. まとめ

「エリア」「景観」「維持管理」などは極めて基本的で伝統的なマンションの資産価値に影響をあたえる要素といえますが、その要素は日々刻々と変わっていきます。
コロナの前はとにかく駅に近く利便性の高いコンパクトマンションの需要が増大していましたが、テレワークが普及し家で過ごす時間が増えると、通勤の便利さよりも室内空間の広さや快適さが求められるようになりました。

このようにマンションの市場価値そのものより、その市場価値を決める要素や要因が時代によって急激に変わり、ある時は自分のマンションにとってプラスに、またあるときはマイナスに働くことがあるので、売買ではその「風向き」を正確にとらえる必要があるでしょう。
そして、このような風向きをとらえつつ、マンションの相続に関しては市場の評価の違いと税法上の評価の違いを把握し、税法の改正についてチェックする必要があります。

それはかなり大変な作業のようにも思えますが、「今、自分が売ったり買ったりしたら……」とか、「今、自分が資産を引き継いだり、子供に引き継がせることになったら……」という、常に自分目線で危機感や興味を持てば自然に情報に目が行き、脳裏に焼きつくものであります。
このような日々の情報収集が最大の資産防衛策であり、相続対策といえるのではないかと思います。

田井 能久

田井 能久

不動産コンサルタント
不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のための鑑定評価書の作成が得意。 最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。

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