住んでいるマンションが建て替えに。どうなる?費用・築年数・事例など紹介

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築年数が経過している古いマンションに住んでいると、マンションの建て替えがどうなるか気になることも多いでしょう。本記事では、マンション建て替えを検討する築年数や費用、マンション建て替え時に必要な手続き、そして実際の建て替え事例を紹介します。また、建て替え費用が払えない場合はどうなるかもまとめて解説します。この記事を読むことでご自身がお持ちのマンションの建て替えについて理解でき、少しでも不安が解消され、どのように対策をすれば良いのかの参考にして頂ければと思います。

目次

1. 住んでいるマンションの建て替えはあるの? 年数はどれくらい?

国土交通省によるマンションに関する統計・データ等(住宅:マンションに関する統計・データ等 - 国土交通省 (mlit.go.jp))によりますと、全国の分譲マンションのストック数は2021年末時点で約685.9万戸あります。
そして現在総ストックの約17%(約115.6万戸)が築40年以上経過しているマンションです。
さらに今後20年で3.7倍に増える見込みです。
今後、建て替え検討が必要なマンションは増え続けることが容易に想像できます。
一方、マンションの建て替え実施事例は極めて少なく、同調査では2022年4月1日時点で建て替え工事完了済マンションは270件と、全体の棟数から考えれば、極めてまれというレベルの少なさです。
そしてマンションが建て替えられる年数に関しては、計画から実施にいたるまで30年から40年と言われます。しかし、マンション再生協議会(マンション再生協議会 (m-saisei.info))の事例を参考にすると、任意建て替え(区分所有法の建替え決議後に、建替え不参加者に区分所有法に基づき売渡し請求を行い、建替え参加者だけで任意の建替え組織を作る方法)では早い事例もありますが、マンション建て替え円滑化法による建て替えでは、組合認可時点で40年から50年かかっている事例が多いです。建て替えた実例には、区画整理などの特殊事例により老朽化する前の30年未満の建て替えも含むため、純粋に老朽化による建て替えは40年から50年ぐらいと考えたほうが良さそうです。

2. なぜ増えない?マンション建て替えのハードル

マンションは戸建てと違い複数の所有者からなる建物なので、その建て替えには住民の合意をとらなければなりません。
そして建て替えの決議を行う場合には、2022年10月現在では区分所有法第62条により、区分所有者及び議決権者の4/5以上の賛成が必要となります。
なお、建て替えの決議を行わない場合もありますが、その場合には、民法の原則に基づく方法によるので、全員が合意しなければなりません。区分所有法が改正された今では、わざわざ手間のかかる全員合意をいう手段をとることはないので、決議を行いますが、それでも「4/5」の賛成票という数字が大きなハードルになっています。

3. マンション建て替えが実施されないとどうなる?

マンション建て替えが行われない場合、どうなるでしょうか?
マンションの構造で多いRC、すなわち鉄筋コンクリートは税法上の法定耐用年数が47年なので、「47年経てば価値が0になる」と考える人が多いと思います。
確かに会計上はその通りでありますが、実際の建物そのものの性能は目覚ましく向上しており、物理的にも100年持ち、適切な修繕さえ行えば、50年経とうが70年経とうが、実は経済的にも価値があると言えるのです。
まずはマンションの耐用年数を考える場合に、この会計上や税法上の耐用年数と、物理的・経済的な対応年数はまったく違うものであることを認識する必要があります。
それを踏まえると50年経とうが、100年経とうがマンションも維持管理を行えば建て替えなどしなくてもいいことになります。しかし問題は建物の老朽化に伴い、住民が高齢化することです。
住民が高齢化することで、建物修繕に対するお金を拠出することができなくなります。その結果、未来への投資とした修繕なども合意形成が難しくなるのです。やがて居住者が減ることでさらに管理費等が集まらなくなり、老朽化スパイラルに陥ることが問題なのです。
したがって、建て替えが出来ない場合に、維持修繕をし続ければいいのですが、それができない点が問題なのです。

4. マンション建て替えまでの流れ

実例は少ないですが、マンションを建て替えるまでの流れはだいたい以下のように定型化できるかと思います。
各段階について詳しく解説します。

準備
マンション建て替えに向けて、管理組合から特別に検討するチームを作り、情報を収集し、勉強会をする必要があります。その場合、住民である組合員では法律や建築の知識に限界があるので、外部の専門家を招聘して一緒に行う必要があると思います。その専門家についても、客観的な立場から指摘してくれる人をいかにうまくチームに入れられるかでその後の作業のスムーズさが大きく違ってきます。なお、そもそも論として本当に建て替えが必要か否かを吟味し、修繕積立金や管理費の現状も確認しておきましょう。

検討
建て替えの方法として組合の施行の法定建て替えにするか、任意建て替えにするかなどを検討します。
また建て替えをするにもその合意形成や実施には時間もかかり、その間に発生する修理や修繕の費用なども考慮しなければなりません。これらの検討と検証により、建て替えについて住民からの理解が得られ始めたら、「本当にマンションの建て替えを行うべきか否か」の合意形成を行ううえでも、管理組合の集会で建て替え計画の検討を行うことを理事会として住民に諮る、「建て替え推進決議」を行うこととなります。

計画
計画段階では、設計や施工を行うディベロッパーなどにも協力してもらい、具体的な計画を策定します。
その内容としては、建築に要する費用や期間はもちろん、建て替え後はどんな部屋で専有面積は何㎡になるかまで詰める必要があります。
この段階になると、検討段階ではなんとなく賛成だった人も、建て替えまでに要する期間や費用などから、面倒くさいと考えるようになり、合意形成が難しくなる傾向にあると思います。
しかし、建て替えることが結局すべての住民にとってメリットになることを根気よく説明し、区分所有者である住民の4/5以上の賛成を得る必要があるのです。

実施
無事に住民の4/5以上の賛同が得られれば、組合方式の場合には権利変換計画の認可を得て建て替え事業を実施し、任意建て替えの場合には、参加者が自ら資金調達をするか等価交換方式によって建て替えを実施します。
建物は何年もかけて建てるものではないですが、権利関係の調整に時間がかかり、現在の住民にすべて退去してもらう必要があります。新しく建てて、また再入居してもらってから新たな管理組合を作り直すまでには10年以上かかることもあり、なかには途中で計画が頓挫してしまうこともあるようです。

5. マンションの建て替え費用はいくら?

マンションを新築で建てた場合、1戸当たりの目安として、建築費は350,000円/㎡ならば80㎡で2,700万円と約3,000万円程度と言えます。新築で3,000万円なら、建て替えはどうなるかという点では、安く上げればその1/3の1戸当たり1,000万円で済みますが、新築同様に1戸当たり3,000万円がかかってもおかしくなく、大いに幅があると考えられます。
理由として、既存の建物の基礎や主体をうまく使えれば安くできますが、建て替えにあたり、すべてを1からやり直す場合には新築相当のコストがかかるのは、一戸建て住宅の場合と同様に考えることができるでしょう。
そして見逃せないのが、建物の建て替え費用以外に、既存の建物の解体費用や、今の住民の仮住まいに要する費用、そして建て替えの計画や話し合いなどの組合等の運営事務費用もかかる点に注意が必要で、これらのコストが嵩むと新築相当を超えて、新築以上にかかる場合もあり得ると思います。

6. マンション建て替えの事例

マンション建て替え円滑化法を利用した事例を3つほどご紹介します。
(出典:http://www.manshon.jp/docs/manshon_saisei/pdf/manshon_7.pdf

  • 天城六本木マンション&ホーマットガーネット
    ホーマットガーネット(s55に分譲、8階建の事務所店舗付きマンション)、天城六本木マンション(S46分譲、8階建の事務所店舗付きマンション)、天城アネックスビル(s59に分譲、3階建の事務所店舗ビル)を一つにまとめて28階建ての事務所店舗付きマンションに建て替えました。
  • 稲毛台住宅マンション
    昭和30年に竣工し、15,291㎡の敷地に4階建てで10棟あった建物を5棟に集約しつつも床面積は広く取り、戸数はほぼ同じになるよう立て替えました。
  • 新鎌田住宅マンション
    昭和44年に竣工された5階建ての3棟の建物を集約し、11階建ての1棟にして、床面積を場合以上に増やして戸数を増やしました。

ここで見られる事例はいずれも容積率に余裕があり、また建て替えに関して外部コンサルタントの活用がうまくいったのがその要因とみられています。

7. マンション建て替えに備えよう

かつてマンションは戸建住宅に住みかえる前の通過点というイメージでしたが、終の棲家としてマンションを購入する人も増え、それに伴い、人間と同様にマンションも高齢化問題が生じています。

この高齢化したマンションは、メンテナンスの限界が訪れたときには、建て替えをせざるを得ず、その数は今後急速に増えていくでしょう。この建て替え問題は自分自身も当事者になりうる問題として真剣に考える時期に来ていると思います。

田井 能久

田井 能久

不動産コンサルタント
不動産鑑定士として25年のキャリアを持つ。訴訟や調停、並びに相続等の税務申告のための鑑定評価書の作成が得意。 最近はマレーシアを中心としたビザの取得と海外移住のサポートを通して、トータルな資産コンサルティングも展開している。

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