相続登記とは、不動産を所有する人が亡くなり、その不動産を相続した場合に、不動産の名義を亡くなった人から相続した人へ変更する手続きです。相続登記は、現時点(2021年時点)では当事者の任意となっているため、登記をしないままでも罰則などは特にありません。
しかし、2021年4月に民法・不動産登記法の法改正が可決され、2024年を目処に「相続登記の義務化」がなされることとなりました。改正法が施行されると、これまで放置されている土地を含め、相続登記を怠った場合に、罰則が付くこととなります。
そのため、今後は多くの人が相続登記についてしっかりと理解しておく必要があるのです。とはいえ、手続きには多くの書類が必要ですので、「どのような書類が必要?」「どこで入手できる?」「何から集めればいいのだろう?」など、わからないこともたくさんありますよね。
そこでこの記事では、相続登記の必要書類や入手方法、実際の申請方法について詳しく解説します。
一覧表にして掲載していますので、いざ申請をするときにはチェックリストとしてもご活用ください。
1. 相続登記は難しい?自力で手続きが可能なケースと難しいケース
相続登記の手続きを自身で行うことは不可能ではありません。しかし、必要書類が多く集めるのにかなりの時間と手間を要する上、登記申請書の内容に間違いがあれば、何度も法務省に出向いたり郵送したりしなければいけません。
また、相続の内容が複雑になるとその分相続登記の手続きも複雑になるため、難易度も上がってしまいます。そのため、自身の都合や、相続の状況を鑑みて、「自力でできるか・できないか」を判断し、難しいと感じた場合には司法書士に依頼するようにしましょう。
1-1. 自力で手続きが可能なケース
- 続人が自分だけ、子どものみなどシンプルなケース
- 役所で必要書類を集める時間を確保できる
- 自分で調べることが得意
相続人が「自分のみ」「配偶者と子どものみ」のように、気の知れた家族だけの場合には、比較的書類も集めやすく、手続きも簡単です。
自身で必要書類や取得方法を調べて、一つひとつ収集できるのであれば、自力で手続きをすることは可能でしょう。
とはいえ、ほとんどの書類は公的機関で取得しなければいけないため、平日の日中に時間を確保する必要があります。そのため、なかなか平日に時間が取れない方は難しいかもしれません。
1-2. 自力で手続きするのが難しいケース
- 不動産の持ち主など権利関係が不明確である
- 不動産の名義が被相続人以外のものだった
- 不動産の売却予定があり、早く手続きをしたい
1.不動産の持ち主など権利関係が不明確である
不動産の所有者が被相続人(亡くなった方)だけでなく複数人いたり、そもそも被相続人が所有しているか不明確である場合には、該当する不動産が「誰のものなのか」「誰がどのくらい所有しているのか」を明確にするために、過去の戸籍謄本をすべて確認しなければいけません。その作業は非常に複雑であるため、自力で手続きをするのは難しいでしょう。
2.不動産の名義が被相続人以外のものだった
不動産の名義が被相続人以外となるのは、主に以下2つのケースがあります。
- そもそも被相続人が親から相続した際に相続登記をしていなかった場合
- 被相続人の親と被相続人が立て続けに亡くなったなど、2つ以上の相続時期が重なった場合
このような場合には、必要書類が期限を過ぎていて取得できなかったり、旧民法に従う必要があったりと複雑になる可能性があるため、自身で手続きをするのは難しいでしょう。
3.不動産の売却予定があり、早く手続きをしたい
自身で行う場合、書類の収集や申請書の作成などでかなりの時間を要することとなります。
そのため、不動産の売却予定があるなど、早く手続きを済ませたいのであれば、司法書士に依頼することをおすすめします。
2. 【パターン別】相続登記の必要書類
相続登記には、以下3つのパターンがあります。
- 遺言パターン
- 遺産分割パターン
- 法定相続パターン
出典:グリーン司法書士OnLine「相続登記の必要書類を簡単チェック【相続パターン別の一覧表】」
上記3つのパターンそれぞれで、必要書類が異なります。
なお、上記の他にも「遺産分割調停・審判による相続登記」というパターンがありますが、この場合には司法書士などの専門家が介入することがほとんどですので、ここでは割愛します。
それぞれ詳しく見てみましょう。
2-1. 遺産分割協議による相続登記
出典:グリーン司法書士OnLine「相続登記の必要書類を簡単チェック【相続パターン別の一覧表】」
相続人全員で「誰が相続するのか」「どの遺産を相続するのか」を話し合った上で決定し、相続登記するパターンです。遺産分割協議による相続登記に必要な書類は以下のとおりです。
書類 | 有効期限 | 取得場所 | 取得費用 | |
---|---|---|---|---|
■登記原因証明情報 | ||||
1 | 書類亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・原戸籍) | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用戸籍:1通 450円 除籍・改製原戸籍・原戸籍:1通 750円 |
2 | 書類亡くなった人の住民票の除票(または戸籍の附表) | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の最後の住所地の市区町村役場(亡くなった人の本籍地の市区町村役場) | 取得費用1通 300円 |
3 | 書類相続人全員の戸籍謄本 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの | 取得場所各相続人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用1通 450円 |
4 | 書類相続関係説明図 | 有効期限なし | 取得場所申請者が作成 | 取得費用 |
5 | 書類遺産分割協議書 | 有効期限なし | 取得場所相続人全員で作成 | 取得費用 |
6 | 書類相続人全員の印鑑証明書 | 有効期限なし | 取得場所各相続人の住所地の市区町村役場 | 取得費用1通 300円 |
■住所証明情報 | ||||
1 | 書類相続人全員の印鑑証明書 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの 不動産を取得する相続人の住所地の市区町村役場 | 取得場所不動産を取得する相続人の住所地の市区町村役場 | 取得費用1通 300円 |
■評価証明情報 | ||||
1 | 書類対象不動産の固定資産評価証明書 | 有効期限相続登記申請を行う最新年度のもの | 取得場所都税事務所又は市区町村役場 | 取得費用管轄ごとに異なる |
■登記申請書類 | ||||
1 | 書類相続登記申請書 | 有効期限なし | 取得場所申請者が作成 | 取得費用 |
■代理権限証明情報 | ||||
1 | 書類委任状 | 有効期限なし | 取得場所司法書士が作成(司法書士に依頼する場合) | 取得費用 |
■書類作成に必要なもの | ||||
1 | 書類対象不動産の登記簿謄本 | 有効期限最新の情報のもの | 取得場所法務局 | 取得費用1通 480円~600円(申請方法により異なる) |
■相続放棄した相続人がいる時に必要な書類 | ||||
1 | 書類相続放棄申述受理証明書 | 有効期限なし | 取得場所管轄家庭裁判所 | 取得費用1通 150円 |
2-2. 法定相続による相続登記
出典:グリーン司法書士OnLine「相続登記の必要書類を簡単チェック【相続パターン別の一覧表】」
法律で決められた相続人(法定相続人)が、法律で決められた相続分(法定相続分)にのっとって相続し、相続登記するパターンです。法定相続による相続登記に必要な書類は以下のとおりです。
書類 | 有効期限 | 取得場所 | 取得費用 | |
---|---|---|---|---|
■登記原因証明情報 | ||||
1 | 書類亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍・改製原戸籍・原戸籍) | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用戸籍:1通 450円 除籍・改製原戸籍・原戸籍:1通 750円 |
2 | 書類亡くなった人の住民票の除票(または戸籍の附表) | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の最後の住所地の市区町村役場(亡くなった人の本籍地の市区町村役場) | 取得費用1通 300円 |
3 | 書類相続人全員の戸籍謄本 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの | 取得場所各相続人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用1通 450円 |
4 | 書類相続関係説明図 | 有効期限なし | 取得場所申請者が作成 | 取得費用 |
■住所証明情報 | ||||
1 | 書類不動産取得者の住民票 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの | 取得場所不動産を取得する相続人の住所地の市区町村役場 | 取得費用1通 300円 |
■評価証明情報 | ||||
1 | 書類対象不動産の固定資産評価証明書 | 有効期限相続登記申請を行う最新年度のもの | 取得場所都税事務所又は市区町村役場 | 取得費用管轄ごとに異なる |
■登記申請書類 | ||||
1 | 書類相続登記申請書 | 有効期限なし | 取得場所申請者が作成 | 取得費用 |
■代理権限証明情報 | ||||
1 | 書類委任状 | 有効期限なし | 取得場所司法書士が作成(司法書士に依頼する場合) | 取得費用 |
■書類作成に必要なもの | ||||
1 | 書類対象不動産の登記簿謄本 | 有効期限最新の情報のもの | 取得場所法務局 | 取得費用1通 480円~600円(申請方法により異なる) |
■相続放棄した相続人がいる時に必要な書類 | ||||
1 | 書類相続放棄申述受理証明書 | 有効期限なし | 取得場所管轄家庭裁判所 | 取得費用1通 150円 |
2-3. 遺言書による相続登記
出典:グリーン司法書士OnLine「相続登記の必要書類を簡単チェック【相続パターン別の一覧表】」
亡くなった方が遺言書を遺しており、遺言の内容通りに相続登記するパターンです。
このパターンで必要な書類は以下のとおりです。
書類 | 有効期限 | 取得場所 | 取得費用 | |
---|---|---|---|---|
■登記原因証明情報 | ||||
1 | 書類遺言 | 有効期限なし(自筆証書・秘密証書の場合は検認済みのもの) | 取得場所公証役場、法務局、自宅 | 取得費用 |
2 | 書類亡くなった人の住民票の除票(または戸籍の附表) | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の最後の住所地の市区町村役場(亡くなった人の本籍地の市区町村役場) | 取得費用1通 300円 |
3 | 書類亡くなった人の戸籍謄本 | 有効期限なし | 取得場所亡くなった人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用1通 450円 |
4 | 書類不動産取得者の戸籍謄本 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの | 取得場所不動産を取得する相続人の本籍地の市区町村役場 | 取得費用1通 450円 |
■住所証明情報 | ||||
1 | 書類不動産取得者の住民票 | 有効期限亡くなった人が死亡した日以降に発行されたもの | 取得場所不動産を取得する相続人の住所地の市区町村役場 | 取得費用1通 300円 |
■評価証明情報 | ||||
1 | 書類対象不動産の固定資産評価証明書 | 有効期限相続登記申請を行う最新年度のもの | 取得場所都税事務所又は市区町村役場 | 取得費用管轄ごとに異なる |
■登記申請書類 | ||||
1 | 書類相続登記申請書 | 有効期限なし | 取得場所申請者が作成 | 取得費用 |
■代理権限証明情報 | ||||
1 | 書類委任状 | 有効期限なし | 取得場所司法書士が作成(司法書士に依頼する場合) | 取得費用 |
■書類作成に必要なもの | ||||
1 | 書類対象不動産の登記簿謄本 | 有効期限最新の情報のもの | 取得場所法務局 | 取得費用1通 480円~600円(申請方法により異なる) |
遺言による相続登記の場合、必要な相続人の戸籍謄本は遺言によって不動産を取得する人のもののみです。また、亡くなった方の戸籍謄本も、出生から死亡までの戸籍謄本は必要なく、死亡記載のある戸籍謄本のみを準備すれば問題ありません。
関連記事はこちら
【土地の名義変更のやり方とは?手順・必要書類などを解説】
3. 相続登記を申請する3つの方法
相続登記に必要な書類が集まったら、不動産所在地を管轄する法務局に申請をしましょう。
管轄の法務局は、以下のページから検索することができます。
相続登記の申請方法は、3つあります。
- 法務局窓口での申請
- 郵送での申請
- オンラインでの申請
法務局管轄一覧:
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html
3-1. 法務局窓口で申請する
事前に揃えた書類を持参して管轄の法務局に行き、窓口で申請をする方法です。窓口で申請をすれば、不備があった際には指摘してくれるため、その場で訂正することができます。修正には申請書に押印した印鑑が必要になるので、必ず持参するようにしましょう。
窓口で申請をすると10日程度で登記が完了し、登記識別情報通知書などの登記完了書類が交付されます。登記識別情報通知は、不動産の所有者であることを証明する書類となりますので、大切に保管してください。
3-2. 郵送で申請する
事前に揃えた書類を、管轄の法務局に郵送して申請する方法です。郵送で申請すれば、登記完了書類も郵送で取り寄せることが可能です。ただし、書類に不備があった場合は受け付けてもらえない可能性があります。
3-3. オンラインで申請する
登記のオンライン申請システムを利用して申請する方法です。オンライン申請であれば自宅から申請が可能であり、平日の夜21時まで申請が可能です。しかし、一般の方がオンラインでの申請をするのは難しいため、あまり現実的ではありません。
4. まとめ
相続登記には、多くの書類が必要な上、ケース別に必要な書類が異なります。また、必要書類は公的機関で取得するのがほとんどであるため、平日の日中に集めなければならず、自身で収集するのが難しいという方も多いでしょう。司法書士に相談すれば、煩雑な書類収集や、登記申請書の作成を一括で任せることが可能です。
「時間がない」「手続きに不安がある」「手続きを急いでいる」という方は、ぜひ司法書士への依頼を検討しましょう。簡単な相続登記は自分で、難しかったり急いでいたりする相続登記は司法書士というように場合分けをして考えるといいでしょう。
グリーン司法書士法人のパートナー司法書士
グリーン司法書士法人は相続の相談件数が業界でもトップクラスの年間3278件以上。(平成29年度)2016年度には船井総研の司法書士事務所経営研究会で相続部門において最優秀賞を受賞。お客様へはわかりやすい言葉で「最適解」を提案し、より良いリーガルサービスを心掛けます。
東京司法書士会所属
登録番号東京第8699
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